近年、女性の探偵役を主人公にした推理小説が多くなっています。人気の秘密はどのようなところにあるでしょうか。本記事では女性の探偵を主人公に据えた小説を紹介します。
目次
女性探偵の小説が注目されるのはなぜ?
女性が活躍する探偵小説は、探偵を職業にする人や他の職業に就いている人、警察小説などさまざまなジャンルに属しています。女性の探偵役の人気の理由はどのようなところにあるのでしょうか。
ヒロインの成長に共感
探偵として活躍するうちに、さまざまな事件を通じて大きく成長していくヒロインに共感できるという評価も多数見られます。最初は頼りない雰囲気だった主人公が、悔しいこと悲しいことを経験しながら成長するところに応援する気持ちで感情移入するのかもしれません。シリーズ化している作品もありますよ。
事件を解決する姿が魅力的
小説での女性探偵の推理力で解決するところ、相手が強い立場の人や女性を見くびる男性であってもためらいなく解決に挑む姿が魅力的で人気となる小説も多く見られます。ドラマ化など映像化をされている作品もありますね。若い女性からある程度歳を重ねた女性など、主人公の年齢に関係なく評価されている作品も少なくありません。
女性探偵が活躍する小説を10編紹介!
女性の探偵が活躍する推理小説のおすすめを10編紹介します。
『天久鷹央の推理カルテ 完全版』 (実業之日本社文庫)知念実希人
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天才医師の天久鷹央(あめくたかお)は、天医会総合病院の統括診断部の部長です。多くの疾患の治療をしている彼女のもとには、病院内で診療が困難とされる患者が集まり、原因不明の病を治そうと奮闘しています。本作品では4つの短編と書き下ろしの掌編を所収。
天久鷹央を主人公にした小説はシリーズ化されています。くせのある話し方をしても、頭脳明晰で圧倒的な知識量のある女性医師の活躍を好ましく見ている愛読者も。医療を扱う推理小説でありながら、内容がわかりやすいと評価が高いです。
『扉は閉ざされたまま』 (祥伝社文庫)石持浅海
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大学の仲間で同窓会を開くことになり、学生時代に仲が良かった友人たちと参加者の妹、碓氷優佳(うすいゆか)が参加します。メンバーの伏見亮輔は密室状態を作り、メンバーの1人を事故を装い殺害。自殺説も出てうまく逃げおおせそうになりますが、優佳だけは納得しません。伏見は彼女を納得させられるでしょうか。
碓氷優佳を主人公にした小説はシリーズ化され、犯人が事前に明かされています。犯人との行き詰まる頭脳戦が人気です。
『万能鑑定士Qの事件簿 Ⅰ』(角川文庫)松岡圭祐
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東京都内に貼られる力士シールの謎を追う週刊誌記者の小笠原は、瞬時に物の真贋を見破る鑑定士の凜田莉子(りんだりこ)と出会います。彼女の協力を得て事件解決を図りますが。本作はⅠとⅡの長編連作です。劣等生だった凜田莉子の高校時代と力士シールに関係する事件が交互に書かれ、彼女が鑑定士として大きく成長していく様子が描かれています。
本作は全12作で完結。最後まで夢中になって読破する人も少なくありません。殺人事件などの残虐な場面はあまりなく、暴力的なシーンが苦手でも推理小説を楽しみたい人におすすめ。
『新装版 顔に降りかかる雨』(講談社文庫)桐野夏生
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ミロシリーズの一作目。親友のノンフィクションライターが1億円の大金を持って行方不明に。関与を疑われた主人公の村野ミロは、過去に暴力団とつながりのある成瀬時男に協力を依頼して、友人の行方を追い真相の解明に動き出します。ミロは少しずつ真相に迫っていくようにも感じられますが、事件は予期せぬ方向に…。
『覆面作家は二人いる 新装版(1)』(角川文庫)北村薫
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雑誌編集者の岡部はデビューした覆面作家を担当することに。作家は新妻千秋といい、富豪の令嬢で19歳、推理小説作家とはおもえないほど控えめで可愛らしい印象。しかし、事件となると活発な性格に変貌し、名推理を発揮します。岡部はワトソン役を務めることに。3つの連作短編集で本格的な推理小説という評価もありますが、全体的にほのぼのとした雰囲気が楽しめます。殺人事件もありますが、日常的な謎を解くような話が主です。
『ストロベリーナイト』(光文社文庫)誉田哲也
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東京都内の植え込みでビニールシートに包まれた遺体が発見されます。捜査一課の警部補で姫川班の責任者、姫川玲子が調査をし、近くの池に他の遺体があるのではと推測。被害者に共通しているのは性格が変化したこと、毎月決まった日に謎の行動をしていたことが明らかに。連続殺人事件が起こり、姫川班にも魔の手が迫ります。
本作品はコミック化や映像化がされていて人気のシリーズです。主人公の姫川玲子は過去に犯罪の被害者になり、警察官になってもトラウマに悩まされる役どころ。捜査を必死で行う彼女の姿が人気となっています。
『セプテンバー・ラプソディ』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)サラ・パレツキー
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医者の友人の依頼で麻薬患者の女性を探す主人公の探偵ヴィク。失踪した患者の女性は怯えていたようで、助けを呼ぶメッセージが残っていました。同じように彼女の息子も行方がわからぬまま。後に息子は企業秘密を盗んで失踪した疑いがかかります。本作は女性探偵の『V・I・ウォーショースキー』のシリーズで、ヴィクの強さと活力に溢れた前向きな姿勢が人気です。
『女には向かない職業』(ハヤカワ・ミステリ文庫)P.D.ジェイムズ
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『探偵の仕事は女には向いていない』と周囲の人は口を揃えてやめさせようとしたが、コーデリアは探偵をしようと決意。初めての依頼は大学をやめて自殺した男性について、死を決意した理由を調べてほしいということでした。大変な事件には見えない印象でしたが、事件は二転三転します。『コーデリア・グレイ』シリーズは2作しかなく、『ダルグリッシュ警視シリーズ』の番外編の扱いとのこと。彼女のひたむきで健気な姿で評価が高いです。
『ミス・マープルと13の謎【新訳版】』(創元推理文庫)アガサ・クリスティ
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どこにでもいる可愛らしい老婦人、ミス・マープル。彼女の家に客が集まり、語り手のみが答えを知る謎を挙げて他の人が解答を寄せるという会を開くことに。最初は田舎暮らしのマープルに謎が解けるわけがないと考えていたメンバーたちだが…。彼女の洞察力と推理力で謎が解明されていきます。
ミス・マープルシリーズの小説はドラマ化されていることもあり、世界の多くの人に親しまれている女性探偵です。本作はマープルがはじめて登場した本で、13編の連作短編集。推理小説になじみがない人でも読みやすいでしょう。
『修道女フィデルマの叡智』(創元推理文庫)ピーター・トレメイン
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前の王の王女で弁護士と裁判官の資格を持つ修道女のフィデルマ。修道院での事件を内々に解決するよう依頼されたり、あらぬ疑いをかけられた人の冤罪を晴らすために遠隔地に赴いたりして活躍します。本作品は5編の短編集で日本独自でまとめられています。フィデルマシリーズをはじめて読む人にも読みやすい作品が揃っています。
本作所収の5編は以下の通り。
- 聖餐式の毒杯…聖杯からワインを飲んだ聖職者が毒殺されて、修道院長から解決を依頼。
- ホロフェルネスの幕舎(ばくしゃ)…フィデルマの親友が夫と息子を殺害した容疑で捕まり…。
- 旅籠の幽霊…宿の幽霊の正体を探る話。
- 大王の剣…疫病で王が亡くなり、剣がないと即位が難しいことに。翌日までに探すようフィデル魔に依頼。
- 大王廟の悲鳴…1500年ぶりに霊廟を開くことに。しかし、内部には裁判官の遺体が入っていて…。
女性探偵の小説は主人公の活躍が楽しめる!
女性が探偵を務める推理小説は、主人公がしたたかに立ち回って活躍する姿を楽しめます。シリーズ化されているものも多く、シリーズ当初と比べてだんだんと成長していく様子も見ものです。短編集を試しに読んでみるのもおすすめですよ。