大沢在昌(おおさわ ありまさ、1956年〜)は、愛知県名古屋市出身のハードボイルド作家です。代表作は『新宿鮫』(1990年)。1991年に第12回吉川英治文学新人賞と第44回日本推理作家協会賞を同時に受賞しました。直木賞を受けたのはシリーズ第4作の『新宿鮫 無間人形』(1993年)です。
初めて読むなら『新宿鮫』から刊行順に進むのが確実です。この記事では、おすすめ10作を刊行年と受賞つきで紹介し、新宿鮫シリーズ全12作と魔女シリーズ全4作の読む順番も表にまとめます。
大沢在昌とは|直木賞も受けた日本のハードボイルドの代表格

大沢在昌は1956年3月8日、愛知県名古屋市の生まれ。1979年、23歳のときに「感傷の街角」で第1回小説推理新人賞を受賞してデビューしました。2022年には紫綬褒章を受けています。
作品を読むうえで押さえておきたい特徴は3つです。
- 信念を貫く主人公…困難な状況に置かれても自分の筋を通す人物が中心に立つ
- 都市と社会のリアリティ…新宿をはじめとする街の風景と、その時代の社会問題が具体的に書き込まれる
- ジャンルの幅…ハードボイルドだけでなく、冒険小説・ミステリー・特殊設定ものまで手がける
受賞歴は次のとおりで、日本冒険小説協会大賞は5度受けています。
| 賞 | 年 | 対象作 |
|---|---|---|
| 第1回 小説推理新人賞 | 1979年 | 「感傷の街角」 |
| 第4回 日本冒険小説協会大賞(最優秀短編賞) | 1986年 | 『深夜曲馬団』 |
| 第12回 吉川英治文学新人賞 | 1991年 | 『新宿鮫』 |
| 第44回 日本推理作家協会賞 | 1991年 | 『新宿鮫』 |
| 第110回 直木三十五賞 | 1994年 | 『新宿鮫 無間人形』 |
| 第19回 日本冒険小説協会大賞 | 2001年 | 『心では重すぎる』 |
| 第20回 日本冒険小説協会大賞 | 2002年 | 『闇先案内人』 |
| 第17回 柴田錬三郎賞 | 2004年 | 『パンドラ・アイランド』 |
| 第25回 日本冒険小説協会大賞 | 2007年 | 『新宿鮫IX 狼花』 |
| 第14回 日本ミステリー文学大賞 | 2010年 | 作家としての業績に対して |
| 第30回 日本冒険小説協会大賞 | 2012年 | 『新宿鮫X 絆回廊』 |
| 第48回 吉川英治文学賞 | 2014年 | 『海と月の迷路』 |
同じ都市を舞台にした警察小説では、「警察小説のおすすめ10選」もあわせて読まれています。
大沢在昌の読む順番|新宿鮫シリーズは刊行順に読む
大沢在昌には単発の長編も多く、そちらは順番を気にせず読めます。順番が重要なのは、鮫島警部を主人公にした新宿鮫シリーズと、水原を主人公にした魔女シリーズです。
新宿鮫シリーズの読む順番(全12作)
1990年の第1作から2022年の第12作まで、30年以上にわたって書き継がれているシリーズです。登場人物の関係が巻をまたいで積み上がるため、刊行順に読むのが基本になります。
| 巻 | 作品 | 刊行 |
|---|---|---|
| 1 | 『新宿鮫』 | 1990年9月 |
| 2 | 『毒猿 新宿鮫II』 | 1991年8月 |
| 3 | 『屍蘭 新宿鮫III』 | 1993年3月 |
| 4 | 『無間人形 新宿鮫IV』 | 1993年10月 |
| 5 | 『炎蛹 新宿鮫V』 | 1995年10月 |
| 6 | 『氷舞 新宿鮫VI』 | 1997年10月 |
| 7 | 『灰夜 新宿鮫VII』 | 2001年2月 |
| 8 | 『風化水脈 新宿鮫VIII』 | 2002年3月 |
| 9 | 『狼花 新宿鮫IX』 | 2006年9月 |
| 10 | 『絆回廊 新宿鮫X』 | 2011年6月 |
| 11 | 『暗約領域 新宿鮫XI』 | 2019年11月 |
| 12 | 『黒石 新宿鮫XII』 | 2022年11月 |
魔女シリーズの読む順番(全4作)
| 巻 | 作品 | 刊行年 |
|---|---|---|
| 1 | 『魔女の笑窪』 | 2006年 |
| 2 | 『魔女の盟約』 | 2008年 |
| 3 | 『魔女の封印』 | 2015年 |
| 4 | 『魔女の後悔』 | 2024年 |
このほか、デビュー作『感傷の街角』の主人公・佐久間公を継いだ『心では重すぎる』(2000年)のようなシリーズ作品もあります。
大沢在昌の代表作と映像化された名作

まずは代表作と、映画になった作品から紹介します。
『新宿鮫』|吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞のダブル受賞(1990年)
『新宿鮫』は1990年に刊行された大沢在昌の代表作で、1993年10月に滝田洋二郎監督・真田広之主演の映画『眠らない街・新宿鮫』として映像化されました。主人公・鮫島警部が新宿を舞台に繰り広げる犯罪捜査は、リアルでスリリングな展開が特徴です。
本作は1991年に第12回吉川英治文学新人賞と第44回日本推理作家協会賞を同時に受賞しています。映画版では、新宿という都市の闇と鮫島の孤独な戦いが描かれ、多くの観客を魅了しています。
『新宿鮫 無間人形』|直木賞受賞作(1993年)
『無間人形』は新宿鮫シリーズの第4作で、1993年10月の刊行。1994年に第110回直木三十五賞を受賞しました。大沢在昌の全著作のなかで、直木賞を受けたのはこの一作です。
新種の合成麻薬が新宿に出回りはじめ、鮫島は密売ルートの解明に踏み込んでいきます。シリーズのなかでも評価が高い一作ですが、人物の関係が第1作から積み上がっているため、『新宿鮫』(1990年)から順に読んでから手に取るのがおすすめです。
『天使の牙』|脳移植を扱ったハードボイルド・サスペンス(1995年)
『天使の牙』は1995年に刊行され、2003年に『天使の牙 B.T.A.』として映画化されました。この物語は、新型麻薬を巡る犯罪組織との戦いを描いたハードボイルド・サスペンスで、主人公である女性刑事・明日香が脳移植によって別人として生まれ変わり、復讐と正義の狭間で葛藤する姿が描かれています。映画では、大沢たかおや佐田真由美が出演し、緊張感あふれるストーリーとアクションシーンが高く評価されました。
『走らなあかん 夜明けまで』|大阪を舞台にした逃走劇(1993年)
1993年に刊行された『走らなあかん 夜明けまで』は、青春と犯罪をテーマにした異色作です。1996年には映画も公開されました。主人公たちが夜明けまで続く逃走劇を繰り広げるこの物語は、スピーディーな展開と若者たちの葛藤が見どころです。映画版では、原作の持つ緊張感とエモーショナルな要素が巧みに再現され、観客に強い印象を残しました。
「青春と犯罪」「若者の葛藤」を描いた作品が好きな方はこちらもおすすめです。

大沢在昌の初心者向けの名作

ハードボイルドやミステリーを読み慣れていなくても入りやすい作品を3つ紹介します。
『感傷の街角』|小説推理新人賞を受けたデビュー作(1982年)
表題作は1979年、大沢在昌が23歳のときに第1回小説推理新人賞を受賞したデビュー作です。単行本は1982年に刊行され、7つの短編を収めています。物語は、失踪人調査のプロである佐久間公を主人公に、依頼人たちとの人間関係や日常の中での葛藤を描いています。ハードボイルドでありながらも青春小説のような感覚が味わえる点が特徴です。
『海と月の迷路』|吉川英治文学賞受賞作(2013年)
『海と月の迷路』は2013年に刊行され、2014年に第48回吉川英治文学賞を受賞した長編ミステリーです。舞台は、高度経済成長期に実在した炭鉱の島「軍艦島」。少女の不審死をきっかけに、新任警察官・荒巻が島の掟や組織に立ち向かう姿を描いています。リアルな島の情景描写と緊迫感あるストーリー展開が魅力であり、ミステリー初心者にも読みやすい作品です。当時の日本社会や人々の暮らしぶりも興味深く描かれており、大沢在昌の新たな代表作として評価されています。
『黄龍の耳』|特殊能力を持つ主人公が犯罪組織と対峙する(1993年)
『黄龍の耳』は、幻想的な要素と現実的な犯罪描写が融合した異色作です。物語は、超能力を持つ主人公が犯罪組織と対峙するという設定で進みます。スリリングな展開と独特な世界観が特徴であり、大沢在昌作品ならではの新しい一面を楽しむことができます。ハードボイルドになじみがない読者でも楽しめるのでおすすめです。
大沢在昌の隠れた名作

代表作以外にも、賞を受けた作品や作風の幅を感じられる作品があります。
『パンドラ・アイランド』|柴田錬三郎賞受賞作(2004年)
『パンドラ・アイランド』は2004年に刊行され、同年に第17回柴田錬三郎賞を受賞した作品です。舞台は東京から約700km離れた孤島で、主人公は元刑事で島の保安官として赴任した高洲。着任初日に老人の転落死事件が発生し、その背後に隠された島の秘密が徐々に明らかになっていきます。静かな導入から物語が徐々に動き出し、最後まで読者を引き込む構成の作品です。
『魔女シリーズ』|ミステリーとファンタジーを融合した4部作(2006年〜)
『魔女シリーズ』は、ミステリーとファンタジーを融合させた異色のシリーズです。シリーズ第3作『魔女の封印』では、特殊能力を持つヒロイン・水原が裏社会で活躍する姿が描かれています。彼女は男性の本質を見抜く能力を持ち、その力を駆使して国家安全保障局から依頼された調査に挑みます。ハードボイルドとファンタジー要素が絶妙に絡み合い、他の大沢作品とは一線を画すシリーズです。『魔女の笑窪』(2006年)から始まり、『魔女の盟約』(2008年)、『魔女の封印』(2015年)、『魔女の後悔』(2024年)と続く4部作で、刊行順に読むのが基本です。
『心では重すぎる』|日本冒険小説協会大賞受賞作(2000年)
『心では重すぎる』は2000年に刊行され、2001年に第19回日本冒険小説協会大賞(国内部門)を受賞した作品です。デビュー作『感傷の街角』と同じ、失踪人調査を仕事にする佐久間公を主人公にしたシリーズの一作でもあります。大沢在昌の得意とするハードボイルド要素に加え、人間関係や心理描写に重点が置かれています。主人公が抱える葛藤や人間ドラマが深く描かれており、読後には深く余韻が残るでしょう。
深い心理描写や、読後に静かな余韻が残る作品が好きな方はこちらもおすすめです。

編集長のひとこと:シリーズは巻数より刊行年で確認する
田中寛大BOOK CRUNCHでシリーズ物の記事を編集していて、いちばん確認に時間をかけるのが巻数と刊行順です。出版社が付けたシリーズ番号と実際の刊行順、作中の時系列が一致しないことが珍しくないからです。
読む側としては、迷ったら刊行順で通すのがいちばん安全だと考えています。作者が書いた順に読めば、伏線も人物の関係も意図された順で入ってきます。この記事で新宿鮫シリーズ全12作と魔女シリーズ全4作に刊行年を入れているのは、その確認を読者に肩代わりしてもらわないためです。
大沢在昌のおすすめ作品に関するよくある質問
- 大沢在昌の代表作はどれですか?
-
『新宿鮫』(1990年)です。1991年に第12回吉川英治文学新人賞と第44回日本推理作家協会賞を同時に受賞し、1993年に映画『眠らない街・新宿鮫』として映像化されました。
- 大沢在昌の直木賞受賞作は何ですか?
-
『新宿鮫 無間人形』です。1993年10月刊行のシリーズ第4作で、1994年に第110回直木三十五賞を受賞しました。
- 新宿鮫シリーズはどの順番で読めばいいですか?
-
刊行順です。『新宿鮫』(1990年)→『毒猿』(1991年)→『屍蘭』(1993年)→『無間人形』(1993年)→『炎蛹』(1995年)→『氷舞』(1997年)→『灰夜』(2001年)→『風化水脈』(2002年)→『狼花』(2006年)→『絆回廊』(2011年)→『暗約領域』(2019年)→『黒石』(2022年)の全12作です。
- 大沢在昌を初めて読むならどれがおすすめですか?
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『新宿鮫』(1990年)です。シリーズの第1作で、作風がもっともはっきり出ています。1冊で完結するものから読みたい場合は、デビュー作の短編集『感傷の街角』(1982年)という選び方もあります。
- 魔女シリーズは何作ありますか?
-
4作です。『魔女の笑窪』(2006年)、『魔女の盟約』(2008年)、『魔女の封印』(2015年)、『魔女の後悔』(2024年)の順に刊行されています。
- 大沢在昌の作品で映像化されたものはありますか?
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『新宿鮫』が1993年10月に映画『眠らない街・新宿鮫』として公開されました(滝田洋二郎監督・真田広之主演)。『天使の牙』は2003年に『天使の牙 B.T.A.』として、『走らなあかん 夜明けまで』は1996年に映画化されています。
大沢在昌は『新宿鮫』から刊行順に読むのが確実
大沢在昌の作品は、単なるエンターテインメントで終わらない厚みがあります。とくに新宿鮫シリーズは30年以上にわたって書き継がれ、その時代ごとの新宿と社会の変化がそのまま記録されています。迷ったら次の3つを目安にしてください。
- まず1冊…『新宿鮫』(1990年・吉川英治文学新人賞/日本推理作家協会賞)
- 直木賞受賞作から…『新宿鮫 無間人形』(1993年・第110回直木賞)
- 短編から試す…『感傷の街角』(1982年・デビュー作の短編集)
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