ノーベル賞作家カズオ・イシグロのおすすめ小説5選を紹介

古本市
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日系イギリス人作家、カズオ・イシグロは、ノーベル文学賞、ブッカー賞などを受賞した世界的に著名な作家です。また、近年では映画脚本を担当するなど活躍の幅を広げています。この記事では、カズオ・イシグロの作品の魅力や、ぜひ読んでおきたい5作品を紹介します。気になる作品をチェックしてみてくださいね。

目次

ノーベル賞作家「カズオ・イシグロ」の生い立ちや経歴

ヨーロッパの野花

カズオ・イシグロは、1954年長崎県生まれの作家です。幼少期に父親の仕事の関係でイギリスへ渡り、以降、現地の学校へ通いました。成人を機にイギリス国籍を取得し、1974年にケント大学英文学科、1980年にはイースト・アングリア大学大学院創作学科へ進学。創作を学び、大学卒業後も福祉事業などに従事しながら執筆を続けました。

1982年、長編小説『遠い山なみの光』でデビューし、王立文学協会賞を受賞。1986年には『浮世の画家』でウィットブレッド賞を受賞し、1989年には『日の名残り』で、イギリス最高峰の文学賞といわれているブッカー賞を受賞しました。また、2005年の『わたしを離さないで』では、アレックス賞のほか多くの賞を受賞しています。

2017年にはノーベル文学賞を受賞。多くの作品が映画化・ドラマ化され、イギリスではもちろんのこと、日本ほかイギリス国外でも高い評価を受けている作家です。

カズオ・イシグロ作品の魅力とは

ページの開かれた洋書

カズオ・イシグロの小説は、記憶やアイデンティティ、人間の感情などの普遍的なテーマが語られることが多く見られます。ノーベル賞受賞後の記者会見でも「私の一部は、いつも日本人と思っていた」と語っているなど、日本人の両親のもとイギリスで育った環境が、小説のテーマに大きく反映していると考えられます。

小説では、登場人物が自身の過去を振り返り、その記憶がしばしば曖昧であるというシーンがよく登場しますよね。自己認識やアイデンティティの根幹を揺るがすような「不確かな記憶」に直面し、それが物語の緊張感となっているのです。

また、『日の名残り』や『わたしを離さないで』などでは、社会的な階層や職業によって制約される登場人物たちが、自らの選択に対して道徳的な疑問を抱きます。イギリスの階級社会の枠組みも多く描かれており、そこに生きる人々の自己犠牲や忠誠心、抑圧された欲望なども物語の中心として存在しているようです。

カズオ・イシグロの小説では、『わたしを離さないで』に登場するように、架空の、どこか不安を抱かせるような世界が描かれていることもあります。このような世界観の中で、登場人物たちは、自己の存在意義や自由意志について悩みを持つのです。未来的な設定を背景にしながらも、極めて人間的な感情や葛藤が描かれる点も特徴といえます。

カズオ・イシグロおすすめ小説5選

積まれた本

多くの読者を虜にしてきたカズオ・イシグロの小説。おすすめの作品を5作紹介します。日本が題材になっている作品もあり、読み進めやすく身近に感じられるかもしれません。

『遠い山なみの光』

カズオ・イシグロのデビュー作です。イギリスに暮らす日本人女性・悦子が過去を回想する形で展開される物語。悦子が再婚した英国人との間に生まれた娘・ニキは、母を励ますためイギリスに帰省します。その間、悦子は戦後の長崎で過ごした日々を振り返り、謎めいた友人・佐知子との思い出を通じて、自身や家族との関係について考えを巡らせます。回想を通じて、悦子の自殺した娘・景子の死に関する複雑な感情が描かれていく作品です。

記憶や喪失、アイデンティティといった普遍的なテーマを静かな筆致で描いています。戦後の変わりゆく日本を舞台に、人間の内面に深く迫り、デビュー作でありながらイシグロの作風が色濃く反映されている一冊といえます。

『浮世の画家』

かつて日本画家として名声を得た主人公・小野益次が、戦後の日本で静かに暮らしながら、自らの過去について振り返っていきます。小野は、日本の戦時中、愛国心に根差した絵を描き、戦争を支持するような活動に関わっていました。しかし、戦後の時代が進む中で、自身の行動が果たして正しかったのかどうか、後悔や疑問を抱くようになります。

戦争を背景にした社会的な責任という深いテーマを扱いながらも内省的な筆致で描かれ、イシグロの特徴が表れている作品です。

『日の名残り』

第二次世界大戦後のイギリスを舞台に、執事として生涯を捧げた主人公が過去を振り返り、自分の人生について考察する物語です。主人公・スティーブンスは、かつて名門ダーリントン・ホールで貴族の執事として長年仕え、誇りを持って働いてきた男性です。現在の雇い主の勧めで旅に出た彼は、かつての同僚ミス・ケントンとの思い出を振り返ります。やがて、彼女との関係や自らの人生に潜む後悔や葛藤に気づき始めます。

1989年にブッカー賞を受賞し、映画化もされるなど国際的な評価を受けた作品です。

『わたしを離さないで』

物語の語り手であるキャシーは、「提供者」と呼ばれる人々が育つための寄宿学校である「ヘールシャム」の出身者です。絵画や詩などの芸術活動を重んじる教育を受け、彼女は、自分たちが「特別な存在」であることをぼんやりと理解していきます。成長するにつれ、自分たちが、臓器を提供し、最終的に「完了」する運命にあることが明らかになります。

避けられない運命に対する葛藤や、人間としての尊厳について考えさせられる作品です。

『忘れられた巨人』

舞台はアーサー王の時代から間もない古代ブリテン。この地では、人々の記憶が霧によって覆われ、過去の出来事や個人の記憶が思い出せません。主人公の老夫婦、アクセルとビアトリスもまた、この「忘却の霧」に悩まされており、彼らの間の思い出も曖昧です。しかし、二人は遠くに住む息子に会いに行こうと決心し、霧の中を旅に出ます。

ファンタジーというジャンルでありながら、深い内面描写と哲学的なテーマがカズオ・イシグロらしい一冊です。

カズオ・イシグロのおすすめ作品を読んでみよう

世界的にも高い評価を受けるノーベル賞受賞作家、カズオ・イシグロ。小説では、人間とは何か、また生きることについてなどが、普遍的なテーマを彼独自の世界で扱われています。深いテーマながら読みやすい文体なので、初めて読む人でもすんなりと世界に入り込めますよ。おすすめ作品をぜひチェックしてみてくださいね。

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この記事を書いた人

図書館勤務、会社員を経て現在ライターとして活動中。幼い頃からの趣味である読書を活かし、言葉に関するコラム記事やライフスタイル記事などを執筆。好きなジャンルは心理学・哲学・小説など。地元メディアでの取材ライターとしても活動している。

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