探偵といえば、まず思い浮かぶのがシャーロック・ホームズ。漫画や映画、テレビドラマなど、さまざまなメディアで目にしたことがあるという人も多いでしょう。
コナン・ドイルによるシャーロックホームズシリーズは、多くの出版社から刊行されていますが、どの順番で読めばいいのか迷ってしまう人も少なくありません。
本記事では、ネタバレを避けながら、シャーロックホームズシリーズをどの順番で読むのがおすすめかを解説します。簡単なあらすじとともに、映画版についても紹介しています。
目次
シャーロックホームズシリーズを読む順番とは?
明確な決まりはありませんが、シャーロックホームズの本は出版された順番で読むのがおすすめです。一般向けのシャーロックホームズシリーズは、4冊の長編と5冊(出版社によっては6冊)の短編集で構成されています。ここでは出版された順番に沿って、各巻の特徴や注意点をまとめています。
シャーロックホームズシリーズのタイトルと出版された順番
シャーロックホームズの本のタイトルを、出版順に紹介します。
スクロールできます
出版された順番で読むメリット
出版された順に読むメリットは、ネタバレがしにくいこと。決して時系列で公表されているわけではありません。しかし、シャーロックホームズのシリーズでは、時系列に関係なく、後に出版された話の中にそれ以前のエピソードが書かれていることがあります。内容がわかって興ざめすることもないでしょう。
最初に『緋色の研究』『四つの署名』の長編が並び、読むのが大変ですね。ワトソンとホームズの出会いが書かれ、お互いに興味を持ち友情を育む様子が描かれています。初めに2冊を読んだほうがよいでしょう。
『最後の事件』の後に『空き家の冒険』を読む理由
『シャーロック・ホームズの思い出』の後に『シャーロック・ホームズの帰還』を読むように注意しましょう。これは、『シャーロック・ホームズの思い出』の最終の『最後の事件』で一旦シリーズが終わるからです。
ホームズの最後に納得できない熱烈な愛読者が多く、復活を希望。『シャーロック・ホームズの帰還』の最初の短編『空き家の冒険』でシリーズが再開します。作者のコナン・ドイルは、他のジャンルの作品の執筆を望み、たびたび断筆。皮肉なことに、コナン・ドイルの代表作は、ホームズのシリーズと考える人が少なくありません。
『シャーロック・ホームズの叡智』は新潮文庫のみの出版
実は、『シャーロック・ホームズの叡智』は新潮文庫のみの出版。ホームズシリーズを出版の際に、すべての話を所収するのが難しいという事情がありました。それぞれの短編集からもれた話をまとめて載せられています。
シャーロック・ホームズの映画を楽しむのもおすすめ
シャーロック・ホームズは、ミステリー小説の金字塔として知られる作品ですが、映像化された映画も大変人気です。原作の重厚な推理劇に加え、映画版ではアクション要素や迫力ある映像美が加わり、よりダイナミックに楽しめるのが魅力。
読書が苦手な方でも、映像を通してホームズの世界観に触れられます。以下のように、小説と映画の特徴を比較して、自分に合った楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょうか。
スクロールできます
種類 | 作品数 | 特徴 |
---|
小説 | 60編 | 緻密な推理と人間ドラマが描かれる正統派ミステリー作品 |
映画 | 3部作 | アクションとスリルを加えた新感覚ホームズ、視覚的にも楽しめる内容 |
映画版シャーロック・ホームズは、ロバート・ダウニー・Jr.演じるホームズと、ジュード・ロウ演じるワトソンの絶妙なコンビネーションも人気の理由。ミステリーファンはもちろん、エンタメ好きにもおすすめです。
シャーロックホームズ!シリーズごとのあらすじ
シャーロック・ホームズのそれぞれのシリーズについて、あらすじを紹介します。(『シャーロック・ホームズの叡智』は内容は変わらないため、タイトルだけ記載してあらすじは割愛。)
『緋色の研究』
リンク
戦争で怪我をした軍医のワトスン博士は、ロンドンに帰国します。知人から紹介された探偵のホームズとベイカー街の下宿でルームシェアを決め、彼の観察力と推理力に感嘆。警察からホームズに、壁に血液で『RACHE(ドイツ語:復讐)』と書かれた殺人事件捜査の依頼が来て、ワトスンはホームズの事件解決に興味を持ち、記録をし始めます。
『四つの署名』
リンク
下宿で暇を持て余すホームズとワトスンの元に、若い女性の依頼人が訪問。陸軍の大尉だった依頼人の父が行方不明で、6年前から1年ごとに大粒の真珠が届き、さらに面会を求める手紙も来るようになりました。2人は依頼人に同行します。彼女の父は生きているのでしょうか。
『シャーロック・ホームズの冒険』
リンク
12篇が収録されています。タイトルとあらすじは以下の通りです。
スクロールできます
タイトル | あらすじ |
---|
ボヘミアの醜聞 | ある王族の女性問題を解決する話。ホームズは忘れられない女性と出会う。 |
赤毛連盟 | 『真の赤毛の髪の人だけが加入できる』という奇妙な条件の求人広告。裏には大掛かりな犯罪計画があった。 |
花婿失踪事件 | タイピストとして働く女性が依頼人。結婚式の日に突然姿を消した花婿を探す話。 |
ボスコム谷の惨劇 | 息子が父殺害の疑いで逮捕。息子の幼なじみの女性は、無実を信じて捜査を依頼する。 |
5粒のオレンジの種 | 父親が殺害され、息子宛にもオレンジの種が5粒入った脅迫が届く。ある組織の関与が疑われる。 |
唇のねじれた男 | 治安の悪い場所で失踪した男。姿を消した室内には、街で人気の唇のねじれた男しかいなかった。 |
青い紅玉(ガーネット) | クリスマスから2日後の朝、ガチョウをさばいて、お腹の中に青い宝石を見つける。発見者は驚き、ホームズの元に宝石を持ち込む。 |
まだらの紐 | 2年前に結婚直前の双子の姉が亡くなった女性。自分の身の危険を感じ、ホームズに助けを求める。 |
技師の親指 | 親指に重傷を負った技師の男性。治療をしたワトスンは、殺されかけた彼を、ホームズの元に連れて行く。 |
花嫁失踪事件 | イギリスの貴族とアメリカの富裕層の女性の結婚式で、花嫁が突然失踪してしまう。新郎は、妻を探すようホームズに依頼。 |
緑柱石の宝冠 | 融資の担保として、高名な依頼人から緑柱石の王冠を預かった銀行の頭取。厳重に保管していたが、何者かに盗まれてしまう。 |
ぶな屋敷 | 『ぶな屋敷』に住み込んで、子どもの世話を頼まれた家庭教師の女性。主人夫妻に違和感を抱く彼女は、ホームズの元を訪れる |
『シャーロック・ホームズの思い出』
リンク
短編12篇が収録されています。タイトルとあらすじは以下の通りです。
スクロールできます
タイトル | あらすじ |
---|
白銀号(銀星号)事件 | 競馬で本命と言われる白銀号が行方不明。さらに担当の調教師が死体で発見される。 |
ボール箱 | 切り取られた耳がボール箱に入れられて郵送された事件。誰が何のために送ったのか、警察の捜査が難航する。 |
黄色い顔 | 弁護士の未亡人と結婚した裕福な男。妻が近くの家に入るのを見かけると、黄色い顔の怪しい人物がいた。 |
株式仲買人 | 勤務先の倒産後、転職を決めた株式仲買人。新しい勤務先の社長が怪しいと考えた彼は、ホームズに捜査を依頼をする。 |
グロリア・スコット号事件 | 事件の記録をするワトスンは、ホームズになぜ探偵を志すようになったのか質問。きっかけとなった事件の話をしだす。 |
マスグレーヴ家の儀式 | 伝説の家宝について調べていたホームズの友人。その直後執事と女中の行方がわからなくなる。 |
ライゲートの大地主 | 過労で倒れたホームズはライゲートで静養中。静養先の近所で殺人事件が起こる。 |
背中の曲がった男 | インドで戦功をあげた大佐が殺害され、夫人が昏倒した事件。夫人は背中の曲がった男と出会ったという証言が上がる。 |
入院患者 | 入院患者に資金提供を受ける開業医の男性。妙な通院患者父子を診察してから、おかしなことが起こり、ホームズに相談する。 |
ギリシャ語通訳 | ホームズの兄、マイクロフトが同じアパートに住むギリシャ語通訳を会わせる。彼は、犯罪に巻き込まれた男女を心配していた。 |
海軍条約文書事件 | 外務大臣の甥のワトスンの旧友が、海軍条約の原本を盗まれた。彼はワトスンを通じて、ホームズに文書の捜索を依頼する。 |
最後の事件 | ロンドンの未解決事件のほとんどに携わる、悪の組織の元締め。彼は解決に導くホームズを敵視し、ライヘンバッハの滝で対峙する。 |
『バスカヴィル家の犬』
リンク
犬の呪いで命を落とすバスカヴィル家の当主。例にもれず、先代の当主の亡骸の側にも犬の足跡が残されていました。次の当主の元に、『バスカヴィルの屋敷に来ないように』と、警告文が送られます。先代の当主の主治医で友人でもある医師が心配して、ホームズに捜査を依頼。ホームズの代理でワトスンが屋敷に派遣されます。
『シャーロック・ホームズの帰還』
リンク
短編13篇が収録されています。タイトルとあらすじは以下の通りです。
スクロールできます
タイトル | あらすじ |
---|
空き家の冒険 | 『最後の事件』から3年が経過。妻とも死別して孤独なワトスンは、カード賭博を巡る殺人事件に興味を持ち、推理する。調査に出たワトスンは思わぬ人物と出会う。 |
ノーウッドの建築業者 | 再びロンドンで探偵をするホームズ。身に覚えがない殺人の嫌疑をかけられた弁護士が、ベーカー街の下宿に来訪して助けを求める。 |
踊る人形 | ホームズの依頼人が持ち込んだ、人形が描かれた手紙を見ていたずらだと笑う。しかし、この暗号文は依頼主の妻に宛てた恐ろしいメッセージだった。 |
孤独な自転車乗り | 当主の娘の家庭教師は、自転車に乗っていると妙な男に付けられていることに気づく。ホームズは彼女の危機と陰謀を察知する。 |
プライオリ・スクール | 学校の寄宿舎から公爵家の一人息子が失踪した事件。名門校の校長が調査を依頼する。教師の1人も行方不明だと判明する。 |
ブラック・ピーター | 『ブラック・ピーター』というあだ名の船長が殺された。イニシャルが入った遺留品があり、犯人はすぐに見つかると思われたが。 |
犯人は二人 | ホームズは貴族に依頼され、多額の現金をたかる恐喝者から手紙を取り戻そうとしていた。交渉は決裂し、ホームズはある計画を立てる。 |
六つのナポレオン | 6つ1組で売り出されたナポレオン像が4つ、次々と割られる事件。あと2個狙われるのではと考えたホームズは、残りを見つけようとする。 |
三人の学生 | ある大学の奨学金を資格を得るための試験で、試験問題を盗み見る事件が発生する。容疑者は受験をする3人の学生だった。 |
金縁の鼻眼鏡 | 外国から移住した教授の秘書が殺される。眼鏡と犯人を指し示す証言があったが、容疑者の見当がつかない。 |
スリークォーターの失踪 | 大学のラグビーチームのキャプテンが失踪した。チームメイトが誘拐事件を心配し、ホームズにキャプテンの捜索を依頼する。 |
アベイ農園 | 屋敷の当主が自宅で殺された。付近では連続強盗事件が発生し、その犯行だと見られていたが、ホームズは疑いを持った。 |
第二のしみ | 国家間の戦争に及ぶ事態が懸念される、ヨーロッパの君主からイギリスへの私文書が紛失した。ホームズの捜査で、スパイが関係する可能性が高まる。 |
『恐怖の谷』
リンク
犯罪組織とつながる人間から暗号文を入手したホームズ。解読すると、『バールストン館の当主に危険が差し迫っている』とのことでした。すでに殺人事件が起こり、『最後の事件』の登場人物、ホームズの敵の犯罪組織の元締めがかかわっていることが判明します。現在と過去の事件の二部構成で、別々の推理小説として楽しめるでしょう。
『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』
リンク
8篇収録の短編集。それぞれのタイトルとあらすじは以下の通りです。『ボール箱』は、作風が倫理的にそぐわないと作者自身が一旦削除を決定します。しかし、社会情勢を見て問題がないと判断し、コナン・ドイルが再掲載の許可を出しました。
スクロールできます
タイトル | あらすじ |
---|
ウィステリア荘 | 親しくなった屋敷の主人に招かれた男。翌朝、誰もいなくなり、主人は離れた場所で遺体となって発見された。容疑をかけられ、ホームズに助けを求める。 |
ボール箱 | 『シャーロック・ホームズの思い出』から削除。再掲載。 |
赤い輪 | 部屋を貸した男が、部屋から出ずに10日間も姿を見せない。不安がる家主はホームズに解決を依頼。家主の夫が借家人と間違えられ、襲撃される事件が起こる。 |
ブルースパーティントン設計書 | 兵器工場に勤務の青年が、図面にかかわって殺害される。兄のマイクロフトがホームズに、盗まれた潜水艦の3枚の図面の捜索を依頼。 |
瀕死の探偵 | ベーカー街の下宿先の家主ハドソン夫人が、結婚後独立したワトスンを訪問。奇病にかかったホームズが重篤な状態だと告げる。 |
レディ・フランシス・カーファックスの失踪 | 貴族の女性の家族が、探し出すようホームズに依頼。彼女は宝石を持ち歩き、誘拐される恐れがあるという。 |
悪魔の足 | 体調を崩したホームズをコーンウォールへ転地療養させるワトスン。その地で兄二人が発狂、妹が死亡する痛ましい事件に遭遇する。 |
最後の挨拶 | 第一次世界大戦直前のイギリスで、ドイツのスパイが暗躍。国家を守るためにホームズとワトスンが活動する。時系列で本作はもっとも後の作品、この後しばらく、作者はホームズシリーズを断筆する。 |
『シャーロック・ホームズの事件簿』
リンク
短編を12篇収録。各タイトルとあらすじは以下の通りです。本作の『ショスコム荘』でホームズシリーズは終了します。
スクロールできます
タイトル | あらすじ |
---|
マザリンの宝石 | ホームズはマザリンの宝石の盗難事件で命を狙われている。容疑者一味は判明していても、どこに宝石を隠したかまだわからずにいた。 |
ソア橋 | アメリカの議員で鉱山を持つ裕福な男。彼が好意を寄せる住み込みの家庭教師が、後妻に収まるために夫人を殺害したと疑われる。ホームズに彼女の無実を証明するよう依頼した。 |
這う男 | 大学教授の娘と婚約中の助手が、教授の様子がおかしいとホームズに調査を依頼。怒りっぽい、這って歩くなどの奇行が目立ち始める。 |
サセックスの吸血鬼 | ワトスンの旧友は、妻が生まれたばかりの子どもの血を吸っているのではと心配し、ホームズに調査を依頼する。旧友の家庭は複雑な関係だった。 |
三人のガリデブ | 植物学者のガリデブは弁護士のガリデブから、『3人のガリデブが揃えば莫大な遺産がもらえる』と妙な遺言を持ちかけられる。不審に思った植物学者はホームズに相談をした。 |
高名な依頼人 | ある高名な貴族からの依頼があった。将軍の娘と悪人の外国の貴族との縁談を壊してほしいとのこと。娘は頑固で、無実の貴族との邪魔をしているとして耳を貸さない。証拠品の手記が突破口になりそうだが、見つかるのだろうか。 |
三破風館(さんはふうかん) | ホームズの知り合いで三破風館に住む夫人は、屋敷と身の回りのものをすべて買い取りたいと条件を出されたが、断った。ホームズの下宿先には、乱暴な男たちが乗り込み、ちょっとした騒ぎを起こす。 |
白面の兵士 | 戦争から帰国した男性は、軍務で仲良くなった友人の行方がわからずホームズに相談。友人の実家の父は家を訪ねると怒って追い返されてしまう。 |
獅子のたてがみ | ホームズは探偵を引退し、サセックスの海辺で養蜂業を営んでいる。知人がダイイングメッセージを残し死亡。被害者には、ひどいみみず腫れが残っていた。 |
隠居した絵具師(えのぐし) | 元絵具会社の経営者が『妻と友人の医師が不倫をして、有価証券と現金を盗んで持ち逃げした』と、ホームズに相談する。ホームズは忙しく代理でワトソンが捜査に向かう。 |
覆面の下宿人 | ホームズは下宿を経営する大家の女性から、借家人の女性が自殺を考えている様子だと相談を受ける。借家人は、サーカス団でライオンに夫を殺され、自身は顔に重傷を負っていた。 |
ショスコム荘 | ホームズはショスコム荘に住む家主がおかしいと、従業員の調教師から相談を受ける。彼の姉妹への態度にも妙な点があり、ホームズは調査に乗り出す。 |
『シャーロックホームズの叡智』(新潮文庫のみ出版)
リンク
他の短編集にあらすじを記載しているため、8つの作品のタイトルを紹介します。あらすじを割愛し、どの短編集に収載されているかのみ記載。
- 技師の親指…『シャーロック・ホームズの冒険』(9話)
- 緑柱石の宝冠…『シャーロック・ホームズの冒険』(11話)
- ライゲートの大地主…『シャーロック・ホームズの思い出』(6話)
- ノーウッドの建築士…『シャーロック・ホームズの帰還』(2話)
- 三人の学生…『シャーロック・ホームズの帰還』(9話)
- スリー・クォーターの失踪…『シャーロック・ホームズの帰還』(11話)
- ショスコム荘…『シャーロック・ホームズの事件簿』(11話)
- 隠居絵具屋…『シャーロック・ホームズの事件簿』(12話)
シャーロックホームズシリーズを読む順番は連載の中断と再開時期に注意
シャーロックホームズのシリーズを読破する場合は、ネタバレがないように出版された順番に読み進めるのがおすすめ。とくに、短編集の『シャーロック・ホームズの思い出』の後に『シャーロック・ホームズの帰還』を読むように、連載の中断や再開の時期に注意するとよいでしょう。