ストーリーのおもしろさはさることながら、作品の数の多さでも有名な「中山七里」。シリーズものも多く、どれから読めばよいのか迷ってしまうことも。
この記事では、中山七里の数多くの作品の中から厳選した7作品を紹介します。また、作品の楽しみ方についてもまとめたので、ぜひ読書の参考にしてみてください。
目次
中山七里とはどのような作家?
中山七里は1961年、岐阜県生まれのミステリー小説家です。幼少期から読書に親しみ、高校時代から創作活動を始めましたが、社会人となってからは25年間執筆から遠ざかっていました。
転機となったのは2006年、ミステリー作家・島田荘司のサイン会との出会いです。これをきっかけに執筆を再開し、2010年、48歳でデビュー作『さよならドビュッシー』を発表。この作品で「このミステリーがすごい!大賞」を受賞しました。
ペンネームは生まれ故郷の地名に由来しているそう。また、代表作『護られなかった者たちへ』など、多くの作品が映像化されています。推理小説を中心に執筆活動を行い、幅広い世代から支持を得ている人気作家の一人として知られています。
中山七里作品の楽しみ方
中山作品の特徴を踏まえながら、読み方や楽しみ方をまとめました。
どんでん返しが楽しめる
中山七里作品の特徴として、ラストで世界観が大きく変わる「どんでん返し」が挙げられます。その巧みな仕掛けから「どんでん返しの帝王」とも呼ばれているほど。また、作品には物語の最初から緻密な伏線が張り巡らされており、人間の感情描写も丁寧に描かれています。
登場人物の特徴としては、何かが欠けた人物を描くことが多く、とくに複数作品に登場する古手川和也については「成長するキャラクター」として描き続けたいという願いを込めているそう。また、登場人物の名前には、まだ読者に気づかれていない共通点があるとのことです。
シリーズの垣根を超えて楽しめる
中山七里の作品の特徴は、作品間で世界観や登場人物が相互にリンクしていることです。これは本格ミステリーのような「犯人探し」や「手口の謎解き」だけでは読者を楽しませられないという作家自身の認識から生まれた手法です。そのため、作品の重点は犯行の動機解明に置かれています。
シリーズの垣根を超えて物語を楽しめる点は、中山作品の特徴でしょう。
とにかく多くの作品を楽しみたい人にも
新作の刊行がとにかく早い点も知られています。かつて新作単行本を12か月連続で刊行したことがあるなど、偉業ともいえるスピードも人気の秘密でしょう。
物語を楽しませるだけでなく、緩急をつけた文章にもこだわりがあり、心地よいスピードで読んでもらえるような工夫が随所に織り込まれているそうです。
中山七里のおすすめ小説7選
数ある中山作品の中から、おすすめの7冊を紹介していきます。
『さよならドビュッシー』
リンク
幼い頃の火事で大火傷を負った遥は、ピアニストを目指して懸命にレッスンを重ねます。しかし、コンクール優勝を目指す中で不吉な出来事が相次ぎ、殺人事件にまで発展。
ドビュッシーの調べが印象的な、「このミス」大賞受賞です。読者を引き込む大きなどんでん返しが効いた音楽ミステリー小説。
『ヒポクラテスの誓い』
リンク
研修医の栂野真琴が浦和医大法医学教室に配属され、法医学の権威である光崎教授と外国人准教授のキャシーと出会います。光崎は事件性がないと思われる遺体も強引に解剖し、既往症のある遺体についても刑事に報告するよう指示を出し、真実に迫ります。
死者の声なき声を聞き取っていく法医学ミステリー作品です。
『護られなかった者たちへ』
リンク
仙台市の福祉保険事務所課長で「人格者」として知られる三雲忠勝が、身体を拘束され餓死した状態で発見。怨恨や窃盗目的とは考えにくく捜査は難航しますが、事件の直前に出所した模範囚が過去の出来事の関係者を追跡していることが判明します。
社会福祉と人々の正義が交錯する物語です。
『切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人』
リンク
社会派警察医療ミステリー「刑事犬養隼人シリーズ」の第1作です。深川警察署前の公園で発見された、臓器を抜き取られた遺体。混乱する捜査本部に「ジャック」を名乗る犯人からの声明文が届き、第二の事件も発生する中、警視庁捜査一課の犬養が真相に挑みます。
大きなどんでん返しを織り込んだ作品で、シリーズ累計40万部突破、ドラマ化も果たした人気作です。
『連続殺人鬼カエル男』
リンク
マンションの13階で発見された、フックにぶら下げられた女性の遺体。現場に残された稚拙な犯行声明文と共に、殺人鬼「カエル男」による連続殺人が幕開けします。捜査は難航、事件は続発し、街は恐怖と混乱に包まれる中、驚愕のどんでん返しが待ち受けていました。
『このミステリーがすごい!』大賞で史上初のダブルエントリーを果たし、ドラマ化もされたサイコサスペンスです。
『総理にされた男』
リンク
売れない役者の加納慎策が、容姿が似ていることから意識不明の総理大臣の替え玉を務めることに。政治知識のない彼は、野党や官僚との対立、国際的な危機など、次々と押し寄せる困難な課題に直面。
国民の怒りや願いを代弁しながら奮闘する姿を通して、政治・経済・外交の世界をわかりやすく描いたエンターテインメント作品です。
『合唱 岬洋介の帰還』
リンク
「平成最悪の凶悪犯」とされる仙街不比等は、幼稚園児を殺害後に覚醒剤を使用。担当検事の天生は、刑法39条による無罪判決を避けるため、取り調べで殺意の立証を試みます。しかし途中で意識を失い、目覚めると仙街の銃殺死体を前に自身が容疑者となってしまいました。天生の無実を証明するため、ある男が事件解決に乗り出す物語。
中山七里の世界を楽しもう
中山七里の小説は、泣ける青春ものから過激な社会派ミステリーまで、幅広い作風とどんでん返しが特徴です。小さな仕掛けが施してある中山作品は、読めば読むほどはまっていくこと間違いありません。ぜひお気に入りの1冊を見つけてみてください。