心あたたまる穏やかな文体が特徴の寺地はるなさん。等身大の人々を丁寧に描く作風が、多くの読者から共感を得ています。
この記事では、寺地はるなさんのおすすめ小説を紹介します。選書のポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
寺地はるなとは?人物と作風
寺地はるなさんは、1977年佐賀県生まれの作家です。パートタイマーとして会社に勤務する傍ら、35歳の時に初めて小説の執筆を開始したという経歴を持っています。2014年に「ビオレタ」でポプラ社小説新人賞を受賞し、作家としてデビューしました。
人の成長や心の揺らぎを丁寧に描く筆致で、「自分らしさ」とは何かに気付かせてくれる優しい作風が特徴です。
寺地はるな作品の選書のポイント
寺地はるなさんの小説を選ぶポイントを紹介します。
刊行順に読む
2015年にデビュー作が出版してから、多くの作品を刊行している寺地はるなさん。作品選びに迷ったら、刊行順に読み進めてみましょう。どの作品も瑞々しく、穏やかな文体を楽しめます。
受賞作品を読む
寺地はるなさんの作品は、多数の賞を受賞し、高く評価されています。受賞歴のある代表作から読むのもおすすめです。
2014年「ビオレタ」ポプラ社小説新人賞
2020年「夜が暗いとは限らない」咲くやこの花賞
2021年「水を縫う」河合隼雄物語賞
2023年「川のほとりに立つ者は」本屋大賞9位
2024年「ほたるいしマジカルランド」大阪ほんま本大賞
寺地はるなのおすすめ小説
寺地はるなさんのおすすめ作品を紹介します。
ビオレタ
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2014年にポプラ社小説新人賞を受賞したデビュー作品です。
婚約者から別れを告げられ、失意のどん底に堕ちていた妙。ひょんなことから、風変わりな雑貨屋・ビオレタで働くことになります。「棺桶」と呼ばれる美しい箱を売るそのお店で、大切なことに気付き始める妙の再生と成長の物語です。
人生を自分で切り拓くことの大切さを瑞々しく描いています。初めて寺地はるなさんの作品を読む方にもおすすめです。
今日のハチミツ、あしたの私
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2017年に刊行された作品です。「心ふるえる長編小説」と謳われ、多くの読者から支持されています。
暗く苦しい過去を持つ主人公の碧は、結婚を予定している彼の地元で蜂蜜の手伝いをすることに。知らない街で居場所がなく戸惑っていた碧でしたが、やがて人々との出会いを通じて自分自身と向き合い始めます。
前向きで勇気の出るストーリーに、涙したという声も。読みやすい文体で、読書に慣れていない方にもおすすめの作品です。
夜が暗いとはかぎらない
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2019年に刊行された連作短編集です。大阪近郊のとある町を舞台に、13篇の物語が紡がれています。
長い歴史に幕を下ろし、ついに閉店が決まったあかつきマーケット。そのマスコットである「あかつきん」が町の随所に現れ、人々の日常に関わっていきます。
住人たちが抱えるそれぞれの不安や葛藤に優しく寄り添う、心あたたまる作品です。各話の登場人物たちの繋がりにも注目してみてください。
水を縫う
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2020年に発刊された短編集です。河合隼雄物語賞を受賞し、2021年には読書感想文全国コンクールの課題図書にも選ばれました。
高校一年生の清澄は、男でありながら手芸が好きという理由で学校では浮いた存在に。過去のトラウマからかわいいものが苦手になってしまった姉のため、ウェディングドレスを手作りすることになりました。
ドレス作りを通して、家族一人ひとりの想いが丁寧に描かれています。世の中の「普通」とは何なのか?多様性の時代を生きるすべての人に読んで欲しい一冊です。
ほたるいしマジカルランド
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2021年に刊行された作品です。老舗遊園地を舞台に、そこで働く人々の群像劇が綴られています。
願いごとを叶えてくれるという人気のメリーゴーラウンドがある遊園地「ほたるいしマジカルランド」。来場するお客様のため仕事に励む従業員たちですが、心の内にそれぞれの葛藤を抱えて過ごしていました。そんなある日、社長が入院したという知らせをきっかけに、従業員たちに変化が起こり─…。
普遍的でささやかな日常に寄り添う、等身大の物語です。
ガラスの海を渡る舟
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兄妹の絆をテーマにした、傑作長編小説と謳われる作品です。
大阪・心斎橋近くの「空堀商店街」にあるガラス工房。人付き合いが苦手で他人の気持ちが理解できない兄と、そんな兄とは対照的な妹がいました。衝突が続く2人のもとに、とある客から「ガラスの骨壺」の依頼が届きます。
相容れない兄妹が歩んだ10年間を繊細に描いています。他者を理解する事の大切さを教えてくれる作品です。
川のほとりに立つ者は
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2022年に刊行された作品です。本屋大賞にノミネートされ、9位に選ばれました。
喧嘩別れした恋人が怪我をして、意識が戻らないと知った主人公。彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人の知らなかった「秘密」を少しずつ目の当たりにします。
他者との関わりの中で、自分が見ているものは果たして正しいのでしょうか?見えない心の内側を丁寧に救い上げる、希望を描いた物語です。
わたしたちに翼はいらない
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2023年に刊行された長編小説です。サスペンス的な要素が含まれ、話題となりました。
同じ町に生まれ、現在もそこに暮らしている3人の男女。シングルマザー、専業主婦、会社勤務の独身男性と、それぞれの人生を歩んでいる3人だが、過去のしがらみが複雑に絡み合っていました。
モラハラ、いじめ、母の呪縛など、人の抱える心の闇を描いた作品です。重いテーマの寺地はるな作品を読みたい方におすすめ。
寺地はるなの優しくて心あたたまる世界観に浸ろう
寺地はるなさんの作品は、人の心の内側を丁寧に描いた作風が特徴です。希望を感じる前向きな作品が多いので、ぜひご一読ください。初心者の方はデビュー作から読むのがおすすめです。心あたたまる読後感を味わいましょう。