ダークで重厚な作風が魅力の作家、中村文則さん。ミステリやノワール小説の要素を含んだ名著を発表し続けており、多くの文学ファンから支持を得ています。
この記事では、中村文則さんのおすすめ作品を紹介します。初めて読む方向けに選書のポイントも紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
中村文則の経歴
中村文則さんは、1977年愛知県生まれの作家です。福島大学を卒業した後、2002年に「銃」で新潮新人賞を受賞しました。2004年に「遮光」で野間文芸新人賞、2005年には「土の中の子供」で芥川賞を受賞しています。
また、ノワール小説の分野に貢献した作家として、日本人初のデイビッド・グーディス賞も受賞しました。代表作に「掏摸(スリ)」「悪と仮面のルール」「去年の冬、きみと別れ」「教団X」などがあります。
中村文則作品の選び方
中村文則さんの作品を選ぶポイントを紹介します。
受賞歴のある作品
初めて作品に触れる方は、受賞歴のある代表作から読んでみましょう。中村文則さんの作品は国内外でさまざまな賞を受賞しており、高い評価を得ています。
2002年 「銃」新潮新人賞
2004年 「遮光」野間文芸新人賞
2005年 「土の中の子供」芥川賞
2010年 「掏摸(スリ)」大江健三郎賞
2016年 「私の消滅」Bunkamuraドゥマゴ文学賞
2024年 「列」野間文芸賞
映像化された作品
重厚でセンセーショナルなテーマを扱う中村文則さんの作品。映像化作品も多いので、原作となる小説を読んでみましょう。
映画化作品
2014年「最後の命」
2016年「火 Hee」(原作:火「銃」併録)
2018年「去年の冬、きみと別れ」
2018年「悪と仮面のルール」
2018年「銃」
中村文則のおすすめ小説
中村文則さんのおすすめ小説を紹介します。
土の中の子供
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2005年に発表された、著者の代表作品です。第133回芥川賞を受賞しています。
幼少期に親に捨てられ、その後引き取られた養父の元でも壮絶な虐待を受けて育った27歳の主人公。重い過去のトラウマをなぞるように、破滅行動を繰り返す日々を送っていました。逃れられない死への欲求と、わずかに内在している生への希望を淡々と綴った作品です。
心の闇と過去との対峙に触れる本作。初めて中村文則さんの作品を読む方にもおすすめの作品です。
掏摸 スリ
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大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラー小説です。
掏摸師として生きる主人公は、かつて一度だけ共に仕事をした闇社会の男・木崎と再会します。やがて木崎から三つの任務を命じられ、命がけで挑むことに─…。他人の人生を支配するとはどういうことなのか、過酷な運命に抗うことはできるのか。自分の人生を自分で選ぶことの難しさが真摯に描かれている作品です。
最後の命
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2007年に刊行された作品です。2014年に映画化されました。
幼馴染だった明瀬桂人と冴木裕一は、小学2年生の時にとある事件に遭遇します。それ以来、最低限の人との関わりの中で生きていた桂人は、高校を卒業してから7年ぶりに裕一に会うことに。しかし、二人が再会を果たした夜、桂人の知り合いの女性が自分の部屋で殺された状態で発見されてしまい─…。
幼少期の記憶に人生を歪まされてしまった男たちの、心の闇を描いた本作。重く暗い内容でありながら、読者を惹きつける作品です。
教団X
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2014年に刊行された長編小説です。著者の最長にして圧倒的最高傑作と謳われています。
突然姿を消した女性を探しているうちに、とある宗教団体に辿り着いた楢崎。さらに団体と敵対するカルト教団の存在を知り、やがて悦楽と破滅への道を行くことに。
宗教、性、テロなど、現代社会の闇を突きつける本作は、テレビ番組で多くの著名人にも絶賛されました。中村文則さんの話題作を読みたい方は、ぜひご一読ください。
銃
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2002年に新潮新人賞を受賞した、著者のデビュー作です。
とあるきっかけで銃を拾い、次第にその万能感や可能性に憑りつかれるようになる青年を描いた作品。主体性を失い、思考や行動のすべてを銃に支配され翻弄される様子を描いています。ラストにかけての衝撃の展開は必読です。初心者の方にもおすすめの一冊。
悪と仮面のルール
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2010年に刊行された作品です。英訳版である「EVIL AND THE MASK」がウォール・ストリート・ジャーナル紙「2013年ベストミステリーの10作品」に選ばれました。2018年に映画化されています。
大財閥である久喜家の末子として生まれた主人公の文宏。11歳の時に出生の秘密を知らされますが、14歳になったある日、少女を守るため父親を殺害していまいます。やがて大人になった文宏は、整形によって別人の顔を手に入れ、第二の人生を歩むことに。しかし、テログループのメンバーや実の兄の影が近づいていました。
サスペンスの要素を含んでいながら、純愛小説としても評価されている本作。人の内面を繊細に描いた作品です。
去年の冬、きみと別れ
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2013年に刊行され、2018年に映画化された作品です。
結婚を控えたフリーライターの「僕」。猟奇殺人で死刑判決を受けていた男を追ううちに、やがて数々の不可解な謎に気付きます。衝撃の真相とは一体何だったのか。作中に張り巡らされた伏線に、もう一度読み返したくなったという声も。ミステリと純文学が融合した傑作です。
中村文則の重厚な世界観に触れてみよう
重々しく、心の闇に迫るテーマを取り扱う中村文則さん。初心者の方は、受賞歴のある代表作や映像化作品から読むのがおすすめです。中村文則作品が持つ、唯一無二の世界観を楽しんでください。