日本文学作品とは『どのようなものか』『具体的にはどんな作品なのか』と疑問を投げかける人もいるかもしれませんんね。本記事では、日本文学作品の意味合いやジャンルについて解説し、近現代の小説からおすすめの作品を紹介します。
目次
日本文学作品といえばどのようなジャンル?
日本文学作品はどのような種類を指すのでしょうか。意味やジャンルについて考えてみましょう。
日本文学作品とは?優れた日本の文学作品のこと
日本文学作品は、思想や感情を日本語で表現した作品のこと。優れた日本語の文学全般を指しています。小説だけではなく、紀行文やエッセイ、軍記物などの歴史を書き留めたものなど。文章だけでなく、詩や和歌、俳句など日本語で書かれたすべてのジャンルの作品を含みます。
親しみやすい文章の近現代の作品がおすすめ!
どの日本文学作品を選んだらいいのか、あまり親しんでいない人には難しく感じるかもしれません。現代人の話し言葉に近い近現代文学の作品がおすすめです。親しみやすい文章で書かれ、何が書かれているのかわかりやすく、登場人物の考え方、微妙な心の動きをつかみやすいでしょう。
日本文学作品は古典文学も含む!
日本文学作品の対象となるのは、古典から近現代に至るまですべての時代に書かれたもの。たとえば現存する中で日本最古の物語とされる『竹取物語』、現代まで読みつがれる『源氏物語』なども日本文学作品。竹取物語は子供向けのおとぎ話でよく知られていますが、源氏物語は古語辞典で意味を調べながらでないと読みこなすのは困難です。
古典文学の鑑賞の仕方は?
現代に使われている言葉と大きな隔たりのある古典文学。どのように鑑賞して、作品の良さを理解するといいでしょうか。現代語訳や注釈が付いた本がおすすめです。内容がわかりやすく、理解を深められます。
作家が現代語訳を書いた『源氏物語』の例は下記の通り。
- 『源氏物語(全8巻)』河出文庫(現代語訳…角田 光代)
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古典にあまり親しんだことのない人にも、文章が読みやすく、話の展開がわかりやすいと高評価。恋の駆け引きや嫉妬など、繊細な心の動きも理解できます。
- 『全訳 源氏物語(全5巻)』角川文庫(現代語訳…与謝野晶子)
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美しい言葉が使われ、人物の描き方が見事。多少文体が堅く、注釈も少ないため、ある程度古典を読みこなせる人におすすめです。
日本文学作品のおすすめ10選!読みやすい近現代文学から紹介!
日本文学作品のおすすめを10編紹介します。比較的読みやすい近現代文学のジャンルが中心です。
『浮雲(うきぐも)』二葉亭四迷(ふたばていしめい)
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当時(明治20年代)の話し言葉に近い文章で書かれた、日本初の小説。要領の悪い主人公の男が役所を免職になってしまい、人付き合いの良い友人は反対に出世していきます。主人公の従妹は彼を見限り、友人に心変わりをしてしまい、彼女の母のおばにも見放されてしまいますが…。不器用で世渡りが下手な主人公の姿に自らを重ねてしまう人もいるようです。
『野菊の墓(のぎくのはか)』伊藤左千夫(いとうさちお)
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本作は作者のデビュー作。旧家の息子の主人公の政夫が2歳年上の従姉の民子に恋をして、主人公の家族や双方の親族の思惑で引き裂かれてしまう話。実らない恋の悲しさとやるせなさが感じられます。諦めて結婚した後で民子に悲劇が訪れて…。可憐な野菊が民子の姿と重なるようです。
『恩讐の彼方に(おんしゅうのかなたに)』菊池寛(きくちかん)
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短編小説でも、敵への憎しみを乗り越える登場人物の心の動きに打たれる作品。舞台は江戸、旗本の妾を巡り、主君を斬った家臣。彼は罪を償うために出家します。旅の途中の九州で、岩場から落ちる馬子に遭遇。一人でも掘削工事を続けて、安全な道を作ろうとします。賛同する奉行や石工の協力で工事を進めるなか、仇討ちをしようと亡き主君の息子が姿を現し…。
『刺青(しせい)』谷崎潤一郎(たにざきじゅんいちろう)
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本作は、浮世離れした雰囲気の中で話が展開します。元浮世絵師で彫り師の清吉は、美女の体に自分の作品を彫り込めたいとかねてから願っていました。駕籠から見える白い足の女性を見て、自分の理想の女性だと確信します。怖がる若い娘を眠らせて背に女郎蜘蛛を描きますが、麻酔から覚めた彼女は妖艶な女性に変貌し…。
『砂の女』安部公房(あべこうぼう)
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昭和30年代を舞台にした安部公房の代表的な作品で、国内外で高く評価されています。砂丘に昆虫採集にきた主人公の男は、村人に勧められて一人暮らしの女性のいる民家に宿泊を決めます。村内では、蟻地獄のような形をした砂の穴の下に住居があり、縄梯子で行き来するとのこと。宿泊すると縄梯子が外されて、男は砂に閉じ込められてしまいます。
『蟹工船(かにこうせん)』小林多喜二(こばやしたきじ)
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本作品は昭和初期の労働者の苦労を描写した作品で、2000年代に再度脚光を浴びることになりました。アジア諸国を中心にいろいろな国で翻訳されています。劣悪な環境の中、ロシア近海で蟹漁をして缶詰加工をする船に乗る出稼ぎの労働者たちの群像劇。劣悪な環境の中で、外国人に影響されて権利意識に目覚めてストライキを敢行しようとする姿を描いています。
『沈黙』遠藤周作(えんどうしゅうさく)
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島原の乱が終決した後の江戸初期の頃の史実にもとづいて書いた作品。キリスト教の棄教を進める動きとキリシタン同士の裏切り行為などがある中、ポルトガルの司祭が神に問いかける様子が印象的です。キリスト教を信ずるべきだが、布教はかえって民衆を傷つけることになりはしないかと迷う描写があります。非常に重いテーマで、信者の中には嫌う人もいますが、国外でも広く翻訳され高評価です。
『檸檬(レモン)』梶井基次郎(かじいもとじろう)
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好きなレモンを買って、作者をモデルにしたような主人公が病気や借金の不安を取り除かれるように感じ、重苦しい雰囲気から開放される様子を描いています。憂鬱な気分が立ち込めてきた時には、彩りも鮮やかなレモンを爆弾に見立てて爆発させるようなイメージで、嫌な気持ちを振り払っているかの様子。レモン1つでとてつもない力が湧いてきそうですね。
『一握の砂(いちあくのすな)』石川啄木(いしかわたくぼく)
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1910年頃までの作品を収録した歌集。話し言葉に近い文体で3行に分けて書く形で、リズムも良く読みやすいです。暮らし向きが良くならない様子などの実生活を描いた作品や、岩手での中学生時代、北海道での暮らしを東京で懐かしむような作品を多く残しています。
『友情』武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)
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作者らが設立した『新しき村』に移住した際の作品。入村する若者に向けて結婚や失恋をする人も含めて彼らを応援するつもりで書いたといわれています。主人公の脚本家の野島は、友人の作家、大宮と互いを認め合っていました。野島は杉子という女性に恋をしますが、2人の間に大変な影響を及ぼすことに…。
日本文学作品を楽しみたい人へ!読みやすいものを選ぶのがおすすめ!
日本文学作品を鑑賞して楽しみたい人は、自分が読みやすいと感じるものから挑戦するのがおすすめです。小説以外は含まれないのではと不安に感じるかもしれませんが、日本語で書かれた作品であればジャンルは問いません。本記事では近現代の文学作品を挙げましたが、他に興味のあるものがあれば自由に楽しみましょう。