童話とは、子どもをおもな読者として書かれた物語のことで、昔話や寓話を子ども向けに書き直したものと、作家が一から創作したものの両方を含みます。まず読むなら、海外はグリム童話やアンデルセン童話の『赤ずきん』『裸の王様』、日本は新美南吉の『ごんぎつね』(1932年)と宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』が定番です。
この記事では、海外5作・日本3作の計8作を、作者・国・発表年の一覧表とあわせて紹介します。童話と昔話・絵本の違いや、大人が読み返したい作品、青空文庫で無料で読める作品もまとめました。
- おすすめ童話8作の作者・国・発表年の一覧
- 童話と昔話・民話・絵本の違い
- 『赤ずきん』のペロー版とグリム版で結末が違う理由
- 大人が読み返したい童話と、無料で読める作品
童話のおすすめ8選の一覧表|作者・国・発表年
紹介する8作を、発表年と種類つきで一覧にしました。「童話」として紹介されることが多い作品でも、厳密には児童文学・絵本・短編小説に分類されるものがあるため、種類の列で区別しています。
| 作品 | 作者 | 国 | 発表年 | 種類 |
|---|---|---|---|---|
| 赤ずきん | ペロー/グリム兄弟 | フランス/ドイツ | 1697年(ペロー版)/1812年(グリム版) | 昔話をもとにした童話 |
| 裸の王様 | アンデルセン | デンマーク | 1837年 | 創作童話 |
| 星の王子さま | サン=テグジュペリ | フランス(刊行はアメリカ) | 1943年 | 児童文学 |
| 赤毛のアン | L・M・モンゴメリ | カナダ | 1908年 | 児童文学 |
| わすれられないおくりもの | スーザン・バーレイ | イギリス | 1984年(日本語版1986年) | 絵本 |
| 銀河鉄道の夜 | 宮沢賢治 | 日本 | 1934年(没後の全集で初出) | 創作童話 |
| ごんぎつね | 新美南吉 | 日本 | 1932年(『赤い鳥』1月号) | 創作童話 |
| 走れメロス | 太宰治 | 日本 | 1940年(『新潮』5月号) | 短編小説 |
童話とは?昔話・民話・絵本との違い

童話とは、子どものために作られた物語のことです。辞書では、昔話・伝説・寓話を含む広い意味と、作家が新しく創作した物語に限る狭い意味の両方が示されています。似た言葉との違いは次のとおりです。
- 童話:子どもをおもな読者とする物語。昔話の再話も、作家の創作も含む
- 昔話:「むかしむかし、ある所に」で語り始める、口伝えで受け継がれてきた空想的な話。時代や場所を特定しない
- 民話:民間に伝わる話の総称。昔話・伝説・世間話を含む
- 寓話:動物などに託して教訓を伝える短い話。イソップ寓話が代表
- 絵本:絵が主役になる本の形。中身は童話でも昔話でもよく、ジャンルではなく本の形式を指す
日本で「童話」が作家による創作の意味で広く使われるようになったのは、大正時代からです。国立国会図書館国際子ども図書館の「日本の子どもの文学」第2章「童話」の時代によると、1918年(大正7年)に鈴木三重吉が児童雑誌『赤い鳥』を創刊し、同誌などを舞台に童話や童謡がさかんに書かれました。1924年には宮沢賢治の生前唯一の童話集『注文の多い料理店』が刊行され、1932年には新美南吉の『ごん狐』が『赤い鳥』に載っています。
海外童話の3つの源流:グリム・アンデルセン・イソップ
海外の童話でよく名前が挙がるのは、次の3つです。成り立ちがそれぞれ違うので、選ぶときの目安になります。
- グリム童話:ドイツのグリム兄弟が民間の昔話を集めた『子どもと家庭のメルヒェン集』。初版第1巻は1812年(86編)、第2巻は1815年(70編)に刊行され、1857年の第7版まで改訂が続いた
- アンデルセン童話:デンマークの作家アンデルセン(1805〜1875年)が1835年から発表した創作童話。『裸の王様』『人魚姫』など
- イソップ寓話:紀元前6世紀ごろの古代ギリシャの語り手アイソーポス(イソップ)の作と伝えられる寓話。動物を主人公にした短い話で教訓を伝える
童話の選び方は「発表年」と「テーマ」の2軸

童話は、古い昔話をもとにした作品か、作家が創作した作品かで読み味が大きく変わります。まず発表年と成り立ちを見て、次にテーマで絞り込むと選びやすくなります。
発表年で選ぶ:昔話がもとの古典か、作家の創作か
グリム童話やペローの『赤ずきん』のように昔話をもとにした古典は、筋がシンプルで、読み手に伝えたいことがはっきりしています。一方、アンデルセンや宮沢賢治、新美南吉のような作家の創作童話は、登場人物の心の動きや、答えの出ない問いが描かれることが多いのが特徴です。定番をひと通り押さえたいなら古典から、いまの気分や悩みに合う物語を探したいなら創作童話から選んでみてください。
テーマで選ぶ:教訓・ファンタジー・命と別れ
同じ童話でも、テーマによって雰囲気が大きく変わります。本記事の8作をテーマで分けると次のとおりです。
- 教訓・生き方:赤ずきん/裸の王様/走れメロス
- ファンタジー・空想:星の王子さま/銀河鉄道の夜
- 成長・家族:赤毛のアン
- 命と別れ:わすれられないおくりもの/ごんぎつね
童話とあわせて、想像力を広げられる物語を探している方は、ファンタジー小説もおすすめです。

対象年齢は出版社の表示を目安にする
子どもが読むのに向いているかどうかは、子どもの読書経験によって大きく違います。そのため本記事では年齢を断定せず、出版社が本に示している対象(「小学中級から」など)を紹介しています。同じ作品でも絵本・児童文庫・大人向けの文庫で対象が変わるので、版を選ぶときの手がかりにしてください。
海外のおすすめ童話5選|赤ずきんから星の王子さままで

海外の童話から、昔話がもとの古典・創作童話・児童文学・絵本を1作ずつ含む5作を紹介します。
「赤ずきん」ペロー/グリム兄弟:版によって結末が違う昔話
森に住むおばあさんの家へお使いに行った赤ずきんが、途中で出会った狼にだまされてしまう昔話です。文字で残った最も古い形は、1697年にフランスで刊行されたペローの童話集に収められたもの。その後、ドイツのグリム兄弟も1812年の『子どもと家庭のメルヒェン集』に収録しました。
2つの版は結末が違います。ペロー版は赤ずきんが狼に食べられたところで終わり、猟師は登場しません。グリム版では猟師が狼のお腹から赤ずきんとおばあさんを助け出します。紹介している文響社の『せかいのいちばん童話 あかずきん』は、出版社が「フランスでもっとも有名な童話のひとつ」と紹介している絵本で、対象年齢は4〜7才と示されています。絵本は版ごとに結末の描き方が違うので、読み聞かせる前に大人が一度目を通しておくと安心です。
「裸の王様」アンデルセン:1837年の創作童話
デンマークの作家アンデルセンが1837年に発表した童話です。原題は『皇帝の新しい着物』。「地位にふさわしくない者や愚か者には見えない布」を売り込まれた王様が、見えないとは言い出せないまま行進し、子どもの一言で真実が明らかになります。
本当のことを言う勇気や、周りに流されずに自分の目を信じることを考えさせる物語で、読み終えたあとに「どうして誰も言えなかったんだろう?」と話を広げやすいのが魅力です。紹介しているきいろいとり文庫版は、日本語と英語の2言語で読める電子書籍版です。
「星の王子さま」サン=テグジュペリ:1943年刊行の児童文学
フランスの作家サン=テグジュペリが、1943年にアメリカで刊行した物語です。砂漠に不時着した飛行士が、小さな星からやって来た王子と出会い、王子がめぐってきた星々の話を聞きます。
王子が出会う大人たちはどこか滑稽ですが、その姿には大人の社会が映し出されています。読む年代によって受け取る意味が変わるため、子どもの頃に読んだ人ほど、大人になって読み返す価値のある作品です。紹介している新潮文庫版は、2006年に刊行された河野万里子の訳です。
「赤毛のアン」L・M・モンゴメリ:1908年のカナダの児童文学
カナダの作家L・M・モンゴメリが1908年に発表した児童文学です。孤児のアン・シャーリーが、プリンス・エドワード島で暮らすマシュウとマリラの兄妹に引き取られ、学校や友人との出会いを通して成長していきます。自然描写やユーモアも豊かな作品です。
紹介しているポプラ世界名作童話版(2015年)は、柏葉幸子の文・垂石眞子の絵による子ども向けの版で、出版社は対象を6歳・小学1〜2年生と示しています。長い原作をいきなり読むのが難しい場合の入り口になります。
「わすれられないおくりもの」スーザン・バーレイ:死と別れを描く絵本
イギリスのスーザン・バーレイが1984年に発表した絵本で、日本語版は1986年に評論社から小川仁央の訳で刊行されました。森のみんなに頼りにされていたアナグマが亡くなり、残された仲間たちが、アナグマから教わったことを思い出として分かち合っていく物語です。
「死」や大切な人との別れをやさしく伝える作品で、教育出版の小学3年生の国語教科書で教材として採用された実績もあります。童話というより絵本に分類される作品ですが、大人が読んでも心に残る一冊です。
日本のおすすめ童話3選|ごんぎつね・銀河鉄道の夜・走れメロス

日本の作品からは、宮沢賢治と新美南吉の創作童話2作と、童話と一緒に読まれることの多い太宰治の短編を紹介します。3作とも著作権の保護期間が終わっており、青空文庫で無料で読めます。
「銀河鉄道の夜」宮沢賢治:没後の1934年に初めて活字になった童話
宮沢賢治の代表作のひとつです。賢治は1933年に亡くなっており、この作品は草稿のまま遺され、1934年の文圃堂版『宮沢賢治全集』第三巻で初めて世に出ました(青空文庫「銀河鉄道の夜」図書カード)。
少年ジョバンニが、親友のカムパネルラとともに銀河鉄道に乗り、星々の世界を旅する物語です。詩的でやわらかい文章ながら、生きることや死について考えさせられます。紹介している角川つばさ文庫版は「グスコーブドリの伝記」「よだかの星」なども収めた童話集で、出版社は対象を小学校中学年からとしています。賢治のほかの作品も読みたい方は、宮沢賢治のおすすめ作品もあわせてどうぞ。
「ごんぎつね」新美南吉:1932年『赤い鳥』掲載の童話
新美南吉が18歳のころに発表した童話で、初出は1932年(昭和7年)の『赤い鳥』1月号です(青空文庫「ごん狐」図書カード)。一般に読まれているのは、掲載時に主宰の鈴木三重吉が手を入れた版です。1956年に初めて小学校の国語教科書に載り、小学4年生の教材として長く読み継がれてきました。
いたずら好きの子ぎつね「ごん」は、村の兵十の母が亡くなったことを知り、自分のいたずらを悔いて償いを始めますが……。短い話ながら感情の動きが丁寧に描かれ、読後に深い余韻が残ります。紹介しているあすなろ書房版は、かすや昌宏が絵を描いた絵本です。
「走れメロス」太宰治:1940年発表の短編小説
太宰治が1940年に雑誌『新潮』5月号に発表した短編小説です(青空文庫「走れメロス」図書カード)。厳密には童話ではありませんが、子ども向けの童話集や児童文庫に収められることが多い作品です。
友の命を救うため、王との約束の刻限までに走り抜こうとするメロスの姿を通して、信頼や友情、誠実さを描いています。紹介している講談社青い鳥文庫版は、西加奈子が編んだ全7編の短編集で、出版社は対象を「小学上級から」、すべての漢字にふりがなつきとしています。ほかの短編も読みたい方は太宰治の短編おすすめも参考にしてください。
大人におすすめの童話は『星の王子さま』『銀河鉄道の夜』『わすれられないおくりもの』
大人が読み返すなら、答えが一つに決まらない作品を選ぶのがおすすめです。本記事の8作では、次の3作が大人向けに向いています。
- 星の王子さま:王子が出会う大人たちの姿に、読む側の年齢や立場が映る
- 銀河鉄道の夜:生きることと死を幻想的な旅として描き、推敲途中のまま遺された作品
- わすれられないおくりもの:大切な人を失ったあと、思い出をどう受け継ぐかを描いた絵本
童話より少し長い物語を大人の視点で読みたい方には、大人が読む児童文学のおすすめも紹介しています。
編集長のひとこと:童話は「どの版で読むか」で中身が変わる
田中寛大本を読んできた経験から言うと、童話は、あらすじは知っていても元の本を読んだことがない、ということが起こりやすいジャンルです。そして童話ほど、どの版で読むかによって中身が変わるジャンルも多くありません。
たとえば『赤ずきん』は、1697年のペロー版では赤ずきんが狼に食べられたところで話が終わり、猟師が助け出す結末になるのはグリム版です。『ごんぎつね』も、広く読まれているのは『赤い鳥』に掲載されたときに鈴木三重吉の手が入った形です。大人になってから読み返すなら、作者名だけでなく、どの版・どの訳で読むのかを確かめてから選ぶと、子どもの頃とは違う読み方ができます。
童話のおすすめに関するよくある質問

- 童話と昔話の違いは何ですか?
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童話は子どものための物語の総称で、作家の創作も含みます。昔話は「むかしむかし」で語り始める、口伝えで受け継がれてきた民間の話です。グリム童話のように昔話を集めて書き直したものは、童話と昔話の両方の性格をもっています。
- 有名な童話にはどんな作品がありますか?
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海外では『赤ずきん』『裸の王様』、日本では『ごんぎつね』『銀河鉄道の夜』が代表的です。『赤ずきん』はペロー(1697年)とグリム兄弟(1812年)、『裸の王様』はアンデルセン(1837年)、『ごんぎつね』は新美南吉(1932年)の作品です。
- 大人も楽しめる童話はありますか?
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あります。『星の王子さま』『銀河鉄道の夜』『わすれられないおくりもの』は、読む年代によって受け取る意味が変わるため、大人が読み返すのに向いています。
- 読み聞かせにはどんな童話がおすすめですか?
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短くて筋がはっきりした昔話がもとの童話から始めるのがおすすめです。『赤ずきん』などの絵本版には出版社が対象年齢を示しているものが多いので、それを目安にしてください。長い作品は、数日に分けて読むと無理なく楽しめます。
- 海外と日本の童話にはどんな違いがありますか?
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海外の古典童話は、グリム童話のように民間の昔話を集めて書き直したものが土台になっています。日本で童話が作家の創作として広がったのは、1918年の『赤い鳥』創刊以降で、宮沢賢治や新美南吉の作品もこの流れの中で書かれました。
海外の文化や価値観にさらに深く触れてみたい方には、『ピノッキオの冒険』などの名作児童文学も生み出したイタリア文学もおすすめです。イタリア文学のおすすめ作品については、下記の記事で詳しく解説しています。
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あります。『ごんぎつね』『銀河鉄道の夜』『走れメロス』は著作権の保護期間が終わっており、青空文庫で無料で読めます。
童話は「原作者と発表年」を確かめてから選ぶと外れにくい
童話は、同じ題名でも原作者・版・訳によって中身が変わるジャンルです。選ぶときは次の3点を確かめてみてください。
- 原作者と発表年:昔話がもとの古典か、作家の創作童話か
- 版と訳:『赤ずきん』のように、版によって結末が違う作品がある
- 出版社の対象表示:絵本・児童文庫・一般の文庫で対象が変わる
まず読むなら、海外は『赤ずきん』『裸の王様』、日本は『ごんぎつね』『銀河鉄道の夜』から。子どもの頃に知っていた話も、原作や別の版で読み直すと新しい発見があります。










