坂口安吾は無頼派の小説家、とはいえ、具体的にはどのような作風であるのかわかりにくいかもしれません。本記事では坂口安吾の作風を解説しながら、おすすめの小説について紹介しています。
目次
坂口安吾の作風とは?
坂口安吾の作風について解説しています。一言で表せない、多くのジャンルの作品を書いて高い評価を得ている作家です。
『無頼派(ぶらいは)』の作家
坂口安吾は無頼派の作家と呼ばれています。無頼派とは、第二次世界大戦後に戦前の社会常識とされた規範や道徳などについて、人の生き方や考え方、行動の仕方を覆すような存在を登場人物に据えて書いた作家をいいます。
似たような存在の作家を挙げるとすれば太宰治。無頼派の作品は当時の若い世代を中心にもてはやされ、戦後の意識改革を促し、生き方を考えさせられるきっかけになったということです。
多ジャンルにわたる小説
坂口安吾は多くのジャンルで傑作を残した作家。生き方を説いたエッセイ、戦後の日本の行く末を考える評論などの作品はよく知られているかもしれません。他には軽妙な語り口の時代小説や世相を反映したミステリーなども評判が高いです。幻想的な雰囲気の小説なども多数書かれています。
坂口安吾のおすすめ作品10選!
坂口安吾のおすすめの作品を10編紹介します。
『堕落論』
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本作品は、戦中から戦後にかけての日本人の意識を問う評論。作者は、戦後の日本人が敗戦で堕落したのではなく、『もともとそのような本質を持っていたのでは』と疑問を投げかけます。しかし、本当に堕落したと考えられる原因は…。人の本質を見極めて、自身の生き方を見つめ直すことが大切なのかもしれません。
『日本文化私観』
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建築家のブルーノ・タウトを引き合いにして、日本の文化について作者が私見を述べた評論です。ひたすらに海外の権威(ここではブルーノ・タウト)の説を借りて、彼が褒めた建築物をありがたがる風潮がないかと警鐘を鳴らしています。新しい考え方だとして、支持する知識人もいたようです。ただ評論が書かれたのは戦中で戦後ではありません。時代を先取りする作者に感嘆する人も。
『白痴』
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本作は敗戦が近い戦争末期を舞台にした退廃的な小説。映画の演出見習いをしている男性が主人公で、隣家の知的障害のある女性と一緒に過ごす日々を描写。空襲の火から女性を見捨てず、主人公と二人連れであてもなく逃げる場面から、女性の醜悪な姿と攻撃で亡くなった人の姿とを比べるところもあり、混沌とした人や世の中の動きを感じさせます。
『風博士』
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本作品は笑い話のような雰囲気の短編小説。登場人物達の言いたいこと、正体、死の理由など深く考えないほうがよさそうです。いかにも図々しい様子の語り手『僕』は『風博士』の弟子。師匠の死の疑いをかけられています。弟子は弁明をしようと、風博士が残した遺書を公開。そこには知人の『蛸博士』へのくだらない悪口がずらずらと並べられていました。
『桜の森の満開の下』
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本作は、満開の桜の風景が恐ろしくも、幻想的で美しい短編小説。主人公の山賊は強盗を働き、気に入った女性がいると無理やり妻にする恐ろしい男。そんな主人公でも桜の森は、恐ろしく苦手でした。ある日、旅人を殺害してその妻を自分の元に連れてきましたが、彼女は彼を恐れることがありません。一緒に暮らすうちに彼女の怖さを知ることになり…。
『二流の人』
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本作は歴史小説で、主人公は長らく豊臣秀吉の家臣を務めた『黒田官兵衛(隠居後は如水)』。切れ者の軍師として知られていましたが、それゆえに下剋上を起こされるのではないかと考えられて秀吉に疎まれてきました。二流といってもけなしているわけではありません。黒田官兵衛のことを、野望や才能があっても時勢に合わずに天下を取れなかった武将として描いています。
『不良少年とキリスト』
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坂口安吾が書いた評論。同じ時期に活躍した作家『太宰治』の死について、作者自身がどのような心持ちでいたのか、追悼の意を示しているような印象を受けます。太宰にあてて文句を書きながらも、あまりにも早すぎる死を非常に悔しく感じ、生きていてほしかったという気持ちがあふれでているようです。
『肝臓先生』
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本書は短編で戦中の伊東温泉が舞台。主人公の医者は、患者の病気をすべて肝臓病に見立てて診察するため、『肝臓先生』とあだ名され慕われていました。ある日、医師は重病の患者のために海に出ますが、運悪く敵機が近づいてきて…。坂口安吾の軽妙な文章が、医師のユーモアがありながら真面目な人となりをうかがわせ、語り手達の悲しみを強く感じさせます。
『明治開化 安吾捕物帖』
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本作品は捕物帳とはいえ、舞台となったのは文明開化真っ盛りの明治20年頃。探偵小説や冒険小説に近い作品です。軽妙でユーモアあふれる文体で読みやすいでしょう。多くの作品で主役を務めるのは、警視庁からの信頼も厚い探偵『結城新十郎』。隠居の身の勝海舟が、安楽椅子探偵のように推理で真相を解決しようと試みますが、大抵は頓珍漢な結果で終わります。
『不連続殺人事件』
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本作品は推理小説の作家からも高評価で、トリックも見事。疎開先の屋敷周辺の限られた場所で殺人が起こるクローズドサークルものです。戦後2年が経過し、詩人の歌川から人里離れた大邸宅に招かれた語り手達。語り手の友人探偵の巨勢博士以外は、歌川家と恋愛関係や利害関係にある人ばかりで不穏な様子で殺人事件が発生。登場人物への皮肉や軽い語り口が特徴で、最終章の犯人の悲哀が色濃い印象です。
現状を打破したい人に!坂口安吾の作品がおすすめ!
坂口安吾の作品は、自分に行き詰まりを感じている人におすすめ。新しい考え方や生き方に触れて、他の方法を試してみようかという気になれますよ。また、坂口安吾を読みこなせるかどうか不安な人は、さまざまな作品を書いているため、読み慣れているジャンルから選ぶと良さそうです。