漫画を読むことが読書に入るかどうかは、何を目的にするかで答えが変わります。物語を楽しむことが目的なら、漫画も読書に含めて差し支えありません。一方、文章だけで情報を受け取る力を鍛えたいという目的なら、漫画と文章中心の本は別のものとして扱う必要があります。
この記事では、両方の立場の根拠を整理したうえで、漫画と文章の本で「読み手がすること」がどう違うのかを説明します。
漫画は読書に入るのか(両方の立場の根拠)

| 立場 | 根拠 | 成り立つ場面 |
|---|---|---|
| 読書に入る | 本の形をしていて、ページをめくって物語を読み進める点は同じ | 物語を楽しむ・知識を得ることが目的のとき |
| 読書に入らない | 情報の多くを絵から受け取っており、文章を読む行為とは異なる | 文章を読む力を鍛えることが目的のとき |
| どちらとも言える | 物語を追って感情が動くという体験は共通している | 読書の効果を「気分の切り替え」で考えるとき |
「本の形をしている」という根拠
漫画も本として作られ、ページをめくりながら物語を追っていきます。作品によっては何十巻にもわたり、登場人物の関係や伏線を覚えながら読み進めることになります。
この点だけを見れば、小説を読む行為と大きな違いはありません。物語を受け取る手段として本を開いているという意味では同じです。
「絵から受け取っている」という根拠
一方で、漫画は登場人物の表情、場面の様子、動きの速さといった情報を、主に絵から受け取ります。小説では同じ情報を、すべて文章から読み取ることになります。
つまり読み手が補う情報の量が違います。小説では、書かれていない映像を自分で組み立てる必要があります。漫画ではその工程の多くが省かれます。この差をもって「読書ではない」とする意見が出てきます。
漫画と文章の本、それぞれ得意なこと

優劣の話ではなく、向いている場面が違います。
| 漫画 | 文章中心の本 | |
|---|---|---|
| 理解の速さ | 速い。状況が絵で一目で分かる | 遅い。文章から場面を組み立てる |
| 読み進めやすさ | 高い。何十巻でも続けて読める | 作品と体力によって差が大きい |
| 読み手が補う情報 | 少ない | 多い(映像・声・間合いなど) |
| 向いている用途 | 全体像をつかむ・入門する | 細かい理屈や心理を追う |
漫画は「理解の入口」として強い
絵で状況が示されるため、内容がすぐに頭に入ります。歴史や科学のように前提知識が要る分野では、教科書を読むより漫画のほうが最初の理解が早いということがよく起こります。
理解しやすいと集中も続きます。何十巻の作品を読み通せるのは、途中で意味が分からなくなる場面が少ないからです。
文章の本は「補う練習」になる
文章だけの本では、場面も表情も声の調子も、読み手が頭の中で組み立てます。この工程がある分だけ時間はかかりますが、書かれていないことを推測しながら読む経験は文章中心の本でしか積めません。
資料や契約書、説明文といった実務の文章は、絵の助けがない状態で読むことになります。文章に慣れておく意味はここにあります。
漫画は文章の本への入口になる

子どもが漫画ばかり読んでいて本を読まない、という悩みはよく聞きます。ただし漫画を読んでいること自体は、物語を楽しむ習慣がすでにあるということです。ここは出発点として悪くありません。
文章の本へ移りたい場合は、次の順序が現実的です。
- 絵や図が多い本から始める…文章の割合を少しずつ増やしていく
- すでに好きな作品の原作やノベライズを選ぶ…筋を知っているぶん文章を追う負担が軽い
- 読み聞かせを続ける…小学生になってからでも効果がある。耳から物語を受け取る経験になる
- 興味のある分野の本にする…小説である必要はない。図鑑や解説書も文章の本
大切なのは、別世界の物語や知らない世界を楽しいと感じる経験を重ねることです。そこさえあれば、形式は後から広がっていきます。
挿絵があって文章量も控えめな作品から入りたい場合は、ボカロ小説のおすすめをまとめた記事も入口になります。
監修者の視点:漫画も文章の本も、中古市場では同じ棚に並ぶ
田中寛大編集の立場から言うと、漫画と読書を対立させる議論には実利があまりありません。読み手にとって必要なのは、いま自分が読めるものを読み続けることです。
オンライン古書店を運営していた時期(2019〜2022年)に、開業から約2年半で8,000冊超の中古書籍を扱いました。6,951タイトルのうち959タイトル(13.8%)が2冊以上売れていて、繰り返し求められるのは形式に関係なく、長く読み継がれている作品でした。
漫画から入って文章の本に移った人もいれば、漫画をずっと読み続けている人もいます。どちらが上ということはなく、途中で読むこと自体をやめてしまうことのほうが問題だと考えています。
よくある質問
- 漫画は読書に入りますか?
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目的によります。物語を楽しむことが目的なら読書に含めて差し支えありません。文章を読む力を鍛えることが目的なら、絵から情報を受け取る漫画と、文章から組み立てる本は別のものとして扱う必要があります。
- 漫画ばかり読んでいると読解力は身につきませんか?
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漫画と文章の本では、読み手が補う情報の量が違います。文章だけの本では場面や心理を自分で組み立てるため、その経験は文章中心の本でしか積めません。ただし漫画を読むこと自体に問題があるわけではなく、両方読むのが現実的です。
- 子どもが漫画しか読みません。どうすればいいですか?
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無理に取り上げる必要はありません。絵や図の多い本、好きな作品の原作、興味のある分野の解説書など、文章の割合が少しずつ多いものへ移していく方法があります。読み聞かせは小学生になってからでも有効です。
- 読書感想文に漫画を選んでもいいですか?
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応募先の要項を確認してください。青少年読書感想文全国コンクールの応募要項では字数の上限だけが定められていますが、学校独自の宿題では対象を指定している場合があります。
まとめ:目的で決めれば迷わない
漫画が読書に入るかという問いに、ひとつの正解はありません。物語を楽しむのが目的なら入る、文章を読む力を鍛えるのが目的なら別物と考えると整理できます。
どちらか一方に決める必要もありません。漫画で世界を広げ、文章の本で細かい理屈を追う。使い分けたほうが読めるものは増えます。










