現実を離れて、幻想的な世界観を楽しめる「ファンタジー小説」。緻密に練られた設定や魅力的なキャラクターが登場する作品が多く、学生から大人まで幅広い世代から人気があります。
この記事では、ファンタジー小説のおすすめ作品を紹介します。ジャンル別に解説しますので、ぜひ選書の参考にしてください。
目次
ファンタジー小説の選び方に迷ったら
作品選びに迷ったら、次のポイントを押さえましょう。
長年親しまれている名作を読もう
ファンタジー小説は、非常に歴史の長いジャンルです。国内外問わず、長年親しまれているベストセラー作品がたくさんあります。選書に迷ったら、まずは「名作」と呼ばれる小説から読んでみましょう。
映像化作品で選ぶのもおすすめ
近年のCG技術の発展によって、ファンタジー小説を原作とした映像作品が数多く登場するようになりました。映画は観たけど小説版は未読…という場合は、ぜひ原作も手に取ってみてください。小説ならではの設定や世界観が楽しめるかもしれません。
【必読のおすすめ名作ファンタジー】
まずは、ファンタジー小説の代表的な作品を紹介します。
「はてしない物語」ミヒャエル・エンデ
リンク
1979年に刊行された、ドイツの作家ミヒャエル・エンデによる作品です。
学校でいじめられ、母を亡くし、父との関係も悪化してしまった少年・バスチアン。どこにも居場所がない彼は、たまたま駆け込んだ古本屋で「はてしない物語」という不思議な本に出会います。人目を忍んで本を読み始めるバスチアンでしたが、やがてとてつもなく壮大な物語の旅へと引き込まれていき─…。世界中で愛され続けている、不朽の名作です。
「ハリー・ポッターシリーズ」J・K・ローリング
リンク
1997年にイギリスで刊行された、世界的ベストセラーシリーズです。全7巻が刊行されています。
主人公ハリーの学園生活を中心に、家族愛や友情、そして因縁の敵ヴォルデモートとの闘いが描かれている本作。ワクワクドキドキの魔法の世界が、魅力たっぷりに描かれています。読みやすい文体なので、読書に慣れていない方にもおすすめ。「映画しか見たことない」「子どもの頃に読んだきり」という方も、ぜひいま一度読んで欲しい作品です。
「十二国記」小野不由美
リンク
1992年から続いている、小野不由美さんによる異世界ファンタジー小説です。
12の国が幾何学模様のように配置された異世界を舞台に、選ばれし王や霊獣である麒麟、その国で生きる人々の運命を描いた壮大な物語です。多様な登場人物の葛藤と、それぞれの国の在り方が重層的に描かれています。人間の成長や苦悩を真摯に綴っている本シリーズは、幅広い年代から高い評価を得ています。
「モモ」ミヒャエル・エンデ
リンク
1973年に刊行された、児童文学の代表的な作品です。
つぎはぎだらけの服を着た無口な少女・モモには、みんなの話を本当に聞いてあげることのできる能力がありました。モモと話すことで笑顔が溢れ、豊かな毎日を過ごす町人たち。しかし、灰色の男たちによって「時間」が奪われ、幸せだったはずの人々は常に忙しく余裕のない日々を送るようになってしまい…。現代を生きるすべての人に読んでほしい傑作ファンタジーです。
「ブレイブ・ストーリー」宮部みゆき
リンク
2003年に刊行された作品です。異世界冒険ファンタジーの金字塔とされています。
ゲームが好きな小学5年生の三谷亘。平凡だった日常がある日、父の離婚宣言で一変してしまいます。「運命を変えたかったら、幻界へ行け」。絶望の淵に立たされた亘は、家族を取り戻すために壮大な冒険の旅へと出発することに。異種族や魔導士、騎士団など魅力的なキャラクターが多く、ファンタジーの世界観を存分に楽しめる作品です。
【おすすめ海外ファンタジー作品】
人気の海外ファンタジー作品を紹介します。
「ナルニア国ものがたり」C・S・ルイス
リンク
アイルランドの作家C.S.ルイスが執筆した作品です。1950年に出版された「ライオンの魔女」から始まる、全7編のシリーズ作になっています。
古い屋敷の衣装箪笥から、異世界「ナルニア」に引き込まれた4人の兄弟。そこは魔法が生きており、動物たちが言葉をしゃべる不思議な世界でした。ライオンの創造主や悪い魔女、小人や巨人など、ファンタジーらしさを味わえる作品です。
「ダレン・シャンシリーズ」ダレン・シャン
リンク
2000年にイギリスで刊行された人気シリーズです。全12巻が発売されています。
蜘蛛とサッカーが好きな平凡な少年、ダレン・シャン。奇怪なサーカスを観に行った夜、毒蜘蛛のマダム・オクタに魅了されてしまいます。しかし、このことがきっかけで親友のスティーブが命の危機に。親友を救うため、ダレン・シャンは闇の世界へと踏み出します。世界を魅了したダークファンタジーの傑作です。
「指輪物語」J・R・R・トールキン
リンク
イギリスの作家、J・R・R・トールキンによる長編小説です。ファンタジー文学界に大きな影響を与えたとされています。
世界を支配する力を秘めた「一つの指輪」をめぐる冒険を描く本作。指輪を破壊するため旅に出たホビットの青年・フロドが、仲間とともに過酷な使命に挑む様子を描いています。多様な種族の歴史や文化が細かく描写されており、物語に没入できる作品です。ファンタジーの傑作が読みたい方におすすめ。
「オズの魔法使い」L・F・ボウム
リンク
1900年にアメリカで刊行された作品です。ミュージカルや映画の影響で、いまなお注目を浴びています。
竜巻にさらわれた少女ドロシーは、愛犬のトトと魔法の国オズに辿り着きます。家に帰る方法を探すため、一風変わった仲間たちと旅に出ることになったドロシー。しかし、西の悪い魔女があの手この手で邪魔をして…。はたしてこの旅の行く末は?困難を乗り越えながら、それぞれが自分の強さを見つけていく物語です。
「月の骨」ジョナサン・キャロル
リンク
アメリカの作家、ジョナサン・キャロルの作品です。
素敵な男性と結婚し、幸せな生活を送る主人公・カレン。しかし最近、奇妙な夢を見るように。そこはロンデュアと呼ばれる世界で、隣には存在しないはずの息子・ペプシがいました。やがてロンデュアでのできごとが、現実世界と重なっていき…。静かなダークファンタジーを読みたい方におすすめの作品です。
「エラゴン」クリストファー・パオリーニ
リンク
2003年に刊行された、ドラゴンライダーシリーズの第1作目です。
伯父と共に農村で暮らしていた15歳の少年・エラゴン。ある日、狩りに出かけた先で青く輝く美しい石を見つけます。誇り高き雌の若竜サフィラとの出会い─…その瞬間から、彼の人生は世界の運命と共に大きく動き出すことに。ドラゴンや古代語など、ワクワクする世界観が魅力の作品です。
「九年目の魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
リンク
1994年に刊行された作品です。著者のダイアナ・ウィン・ジョーンズは「ハウルの動く城」の原作の著者として知られています。
19歳のポーリィは、ある時「自分の記憶が二重になっている」と気付きます。違和感の元を辿るべく過去のことを思い出すと、やがて10歳の夜に経験した「ある記憶」に行きついて…。少女の成長と愛を描いた、壮大な物語です。妖精やケルト神話を扱ったイギリス文学らしい内容で、大人も楽しめます。
「バーティミアスシリーズ」ジョナサン・ストラウド
リンク
2003年から刊行されている人気シリーズです。
魔術師たちが支配する街・ロンドンを舞台に、見習い少年ナサニエルと妖霊バーティミアスがコンビを組み宿敵に立ち向かう冒険譚です。ユーモラスな皮肉やブラックジョークがちりばめられており、読者に慣れていない方や小学生でも読みやすいと評価を得ています。主人公コンビの成長も見どころです。
「毒見師イレーナ」マリア・V・スナイダー
リンク
世界的ヒットした作品です。日本では2018年にラジオドラマが放送され、話題となりました。
死刑囚の少女・イレーナは、絞首刑から逃れる代わりに国の最高司令官の毒見役になることに。しかし、逃走防止の猛毒のため、毎日与えられる解毒剤なしには生きられなくなってしまいました。過酷な状況でも生きることを諦めない少女の壮絶な日々を描いた作品です。ロマンス要素も楽しみたい方におすすめ。
【おすすめ国内ファンタジー作品】
日本で出版されたファンタジー小説を紹介します。
「空色勾玉」荻原規子
リンク
日本ファンタジーを代表するひとり、荻原規子さんのデビュー作です。1988年に刊行され、日本児童文学者協会新人賞を受賞しました。
神々と人が交錯する世界で、闇の一族に生まれた少女・狭也(さや)が過酷な運命に立ち向かう様子を描いた本作。狭也の出生の秘密とは?輝の御子・稚羽矢が背負う運命とは?日本神話のエッセンスを感じる、壮大で切ないファンタジーの傑作です。
「光の帝国 常野物語」恩田陸
リンク
常野物語シリーズの第1作です。2001年にテレビドラマ化されました。
特別な能力を持つ一族「常野」の人々を描いた短編集です。時代や場所を越えて、常野の者たちがどのように世の中と寄り添いながら生きているかが優しく描かれます。連作短編集なので、隙間時間にファンタジーを楽しみたい方にもおすすめです。
「精霊の守り人」上橋菜穂子
リンク
守人シリーズの第1作です。児童文学書でありながら、幅広い年代から高く評価されています。
命を懸けて皇子チャグムを守る用心棒のバルサ。チャグムの体内に宿る「精霊の卵」の秘密をめぐって、ふたりの逃避行が始まります。はたして、ふたりを待ち受ける運命とは─…。絆と成長を描いた、壮大なファンタジー冒険譚です。
「新世界より」貴志祐介
リンク
2008年に刊行された作品です。2012年にテレビアニメ化されています。
物語の舞台は1000年後の日本。念動力を持つ人類が暮らす町で育つ少女・早季は、先史文明が遺した端末「ミノシロモドキ」と出会います。やがて社会の歪んだ仕組みと封じられた真実に気付いた早季は、仲間と共に運命に立ち向かうことに…。この世界に隠された残酷な秘密とは一体?壮大なスケールで描かれたSFファンタジー小説です。
「かがみの孤城」辻村深月
リンク
2017年に刊行されたベストセラー小説です。映画化され大ヒットを記録しました。
不登校の少女・こころが辿り着いたのは、鏡の中にある不思議な孤城。そこにいたのは、謎の少女・オオカミさまと、現実に居場所のない7人の子どもたちでした。なぜこの7人が、なぜこの場所に?それぞれの心の痛みと向き合っていく、感動の群像劇です。
「アルスラーン戦記」田中芳樹
リンク
1986年から2017年まで刊行された壮大な大河ファンタジー作品です。「鋼の錬金術師」の荒川弘が作画を担当したコミカライズ版が、現在も連載されています。
無敵を誇ったパルス王国は、突然の裏切りにより崩壊。生き残った王太子・アルスラーンは、信頼できる仲間と共に再起を誓います。この壮大な戦い旅の果てに、何が待っているのか…。理想の王を目指す少年の、苦悩と戦いの長編ファンタジーです。
「ペンギンハイウェイ」森見登美彦
リンク
2011年に刊行された作品です。アニメ映画化、漫画化して話題となりました。
ペンギンが突然現れた夏の日。小学4年生のアオヤマ君は、その謎を解こうと調査を始めます。不思議な力を持った歯科医院のお姉さんとの冒険の先に、思いがけない真実が待っていました。少年たちの友情や甘酸っぱい恋心など、ノスタルジックな気持ちも味わえる瑞々しい作品です。
「夜の国のクーパー」伊坂幸太郎
リンク
2012年に刊行された、伊坂幸太郎の10冊目の書き下ろし長編小説です。
「ちょっと話を聞いてほしいんだけど」見知らぬ場所で目覚めた男の前に現れたのは、1匹の猫。猫は自分の国と、戦争に敗れた町の人々について語り始めます。空想と現実が交錯する、ミステリー要素のあるファンタジー作品です。
「カラフル」森絵都
リンク
1998年に刊行された、ヤングアダルト文学を代表する作品です。
死んだはずの「ぼく」は天国で抽選に当たり、別の少年の体で人生をやり直すことに。仲の悪い両親、意地悪な兄、馴染めない教室。再挑戦の日々の中で、人の弱さや優しさに触れ、生きることの意味を見つけていきます。大人にもおすすめの不朽の名作です。
「獣の奏者」上橋菜穂子
リンク
2006年に刊行された作品です。
獣の医術に長けた母を持つ少女エリン。幸せに暮らしていた彼女の日々は、母の死によって大きく変わってしまいます。やがて王獣との出会いをきっかけに獣ノ医術師を目指すエリンですが、王国を左右する運命に巻き込まれることに…。ファンタジーの名作を読みたい方におすすめ。
「No.6」あさのあつこ
リンク
2003年から刊行されている人気シリーズ作品です。
理想都市である「No.6」。この場所で完璧な将来を約束されていたはずの主人公・紫苑は、謎多き少年ネズミとの出会いを機に、支配の歪みと向き合うことになります。友情と葛藤のなか、ふたりは未来を変えようと立ち上がりますが…。近未来ディストピアを舞台にした、ダークファンタジー小説です。
【大人向けのファンタジー作品】
幻想的な文体や緻密な世界観が楽しめる、大人向けのおすすめファンタジー小説を紹介します。
「ラピスラズリ」山尾悠子
リンク
幻想文学作家・山尾悠子さんの書き下ろし作品です。
冬のあいだ眠り続ける“冬眠者”たちを描いた連作長編です。繊細で美しい言葉で織りなされる本作は、文学ファンから高く評価されました。読後には静かな感動が沁みわたります。ゆっくりと時間をかけて読書に没入したい方におすすめの作品です。
「家守綺譚」梨木香歩
リンク
2004年に刊行された、連作短編集です。
舞台はおよそ100年前の日本。親友の実家で家守をすることになった私は、河童や桜鬼など、天地自然の「気」たちと出会います。のびやかで生き生きとした「人あらざるもの」との暮らしを描いた本作。四季折々の情景に癒されたい方におすすめです。
「グッド・オーメンズ」 ニール・ゲイマン/テリー・プラチェット
リンク
テレビドラマ化し、大ヒットした作品です。
黙示録に記された世界の終焉を実現すべく、人間界に反キリストの赤ん坊を送り込むことになった悪魔のクロウリー。しかし、いつの間にか赤ん坊が入れ替わってしまい…!?人間界をこよなく愛する悪魔と天使が、ハルマゲドンを回避するために立ち上がる痛快コメディです。
「バベル オックスフォード翻訳家革命秘史」R・F・クァン
リンク
アメリカのSF・ファンタジー作品に与えられる「ネビュラ賞」を受賞した作品です。
翻訳による「意味のずれ」と銀で生まれる魔法により、世界の覇権を握る大英帝国。広東出身の少年ロビンは語学の才能を見出され、王立翻訳研究所・通称バベルの新入生となります。やがてロビンは、この国の支配と抑圧の現実を知ることになり…。ミステリーやSF要素も味わえる、圧巻の学園ファンタジーです。
「フォース・ウィング」レベッカ・ヤロス
リンク
2025年の本屋大賞翻訳小説部門で第1位を獲得しました。
ドラゴンの騎手を育成するバスギアス軍事大学に無理やり入学させられたヴァイオレット。華奢で身体の弱い彼女は、死と隣り合わせの過酷な環境に身を置くことに。命を狙う者、信じ合える仲間、そして恋。大人のファンタジー作品を読みたい方におすすめです。
ファンタジー小説を読んで異世界への扉を開こう!
唯一無二の世界観を堪能できるファンタジー小説。読書に慣れていない方でも親しめる作品がたくさんあります。ぜひお気に入りの一冊を見つけて、心躍る異世界の旅を楽しみましょう。