「ミステリー」は、小説のなかでもとくに人気のあるジャンルのひとつです。巧妙なトリックや伏線だけでなく、深層心理をあぶりだすようなドラマ性も楽しめる作品が多数あります。
この記事では、ミステリー小説のおすすめ作品を紹介します。カテゴリー別に詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ミステリー小説の選び方に迷ったら
小説の一大ジャンルであるミステリー。作品選びに迷ったときは以下を参考にしてください。
まずは「名著」とされる作品を読もう
長い歴史を持つミステリー小説。名著と呼ばれる作品だけでも数多く存在します。ミステリーの名著は、どの作品もあっと驚く仕掛けや鳥肌が立つような展開が楽しめることが特徴です。ぜひご一読ください。
初心者はジャンルで選ぶのもおすすめ
初心者の方は、王道の推理小説や読みやすい青春ミステリー、後味の悪さが尾を引くイヤミスなど、自分の気になるジャンルから選んでみましょう。それぞれに違った魅力があるので、興味のある本から気軽に手に取ってみてください。
【おすすめ名作ミステリー】絶対読むべき至高の傑作
代表的なミステリー小説を紹介します。
「十角館の殺人」綾辻行人
リンク
1987年に刊行された作品です。日本のミステリー界に大きな影響を与えたと言われています。長年「実写化は不可」とされていましたが、2024年にドラマ化されて話題となりました。
絶海の孤島にある「十角館」に集まった7人の大学生。合宿が始まって3日目の朝、閉鎖された環境のなかで悲惨な殺人事件が発生します。次に殺されるのは誰なのか?犯人の目的とは?誰も予測できない至高の叙述トリックに多くの読者が虜になりました。日本中に衝撃を与えた、新本格ミステリーの金字塔です。
「占星術殺人事件」島田荘司
リンク
1981年に発表された、島田荘司のデビュー作です。2014年にイギリスの有力紙ガーディアンで「世界の密室ミステリーベスト10」の第2位に選ばれました。
1936年、とある画家の奇怪な遺言が発見されます。それは、6人の若い女性の体がバラバラにされ、星座に従い「理想の女性」を作るという異常な怪事件・占星術殺人の幕開けでした。事件前に死亡している容疑者、全国で発見される遺体。迷宮入りの事件に、天才探偵・御手洗潔が挑みます。島田荘司の代表作にして、新本格ミステリーの原点とも言える作品です。
「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティ
リンク
1934年に発表された、アガサ・クリスティの代表作品です。発刊から現在まで世界中で高く評価されています。
イスタンブール発の寝台列車・オリエント急行で、乗客のアメリカ人実業家が刺殺される事件が発生。名探偵ポアロが捜査に乗り出しますが、すべての乗客に完璧なアリバイがありました。吹雪で閉ざされた列車は脱出不可。完全な密室状態の中、ポアロはやがて驚愕の真実に辿り着きます。クローズドサークルの傑作とされる作品です。
「すべてがFになる」森博嗣
リンク
1996年に発表された作品です。第1回メフィスト賞を受賞しています。
孤島の研究所に隔離された天才プログラマー・真賀田四季。人類のうちでもっとも神に近いとされている彼女の部屋から、ウェディング姿で手足が切断された遺体が発見されました。この不可思議な密室殺人に、N大助教授・犀川創平と女子学生の西之園萌絵が挑みます。理系的視点と緻密な論理が光る、現代本格ミステリの代表作品です。
「カササギ殺人事件」アンソニー・ホロヴィッツ
リンク
2016年に刊行された、イギリスの小説家アンソニー・ホロヴィッツの代表作です。
1955年7月、イギリスのとある田舎町では家政婦の葬儀がおこなわれていました。屋敷の階段下で発見された彼女の死は、単なる事故だったのか?その疑念は、やがて村の人々へ波紋を広げていき─…。古き良き王道ミステリーを楽しめる本作ですが、物語の特異な構成により、巧妙な現代ミステリーも味わえます。多くのミステリーファンから支持されている作品です。
「ハサミ男」殊能将之
リンク
1999年に発表された長編推理小説です。2005年に映画化されています。
主人公は、連続猟奇殺人犯の「ハサミ男」。計画していた3人目を殺害するはずが、標的の少女がすでに自分の手口を真似て何者かに殺されているのを発見してしまいます。いったい誰が犯人なのか、なぜ自分と同じ手口で殺人を犯したのか?巧妙な構成と叙述トリックが楽しめる作品です。
「方舟」夕木春央
リンク
2022年に刊行された作品です。物語の根底を覆す驚愕の結末に、大きな話題となりました。
地震により、地下建築に閉じ込められてしまった10人。脱出するには「誰か1人を犠牲にする必要がある」と判明した矢先、殺人事件が発生します。信じていた相手が敵かもしれない状況の中、犯人探しと脱出のための生贄を決める争いが繰り広げられることに…。極限状況での心理描写と緊迫感を味わえる、衝撃の作品です。
「葉桜の季節に君を思うということ」歌野晶午
リンク
2003年に発売された長編小説です。第57回日本推理作家協会賞や第4回本格ミステリ大賞など、多数の賞を受賞しています。
元私立探偵の主人公・将虎は、同じフィットネスクラブに通う女性から奇妙な相談を受けます。しかし、その事件の裏には複雑な陰謀が隠されていたのでした。いくつもの謎が絡み合った先で明かされる真実とは?「最後の1ページまで目が離せない恋愛活劇ミステリー」と謳われた作品です。
【人気の新作ミステリー】巧妙に仕組まれたトリックに脱帽
近年発行された、話題のミステリー作品を紹介します。
「楽園の楽園」伊坂幸太郎
リンク
2025年に発行された、伊坂幸太郎のデビュー25周年記念作品です。
大規模停電やウイルスの蔓延、航空機事故など連続する災害に見舞われた世界。原因は人工知能「天軸」の暴走とされ、それを止めたとされる開発者「先生」も姿を消してしまいます。選ばれた五十九彦、三瑚嬢、蝶八隗の3人は、先生が遺した水彩画・楽園を手がかりに、天軸と先生の行方を追う旅に出ることに。やがて彼らを待ち受けるのは、誰も予想しえない結末でした。SF要素を含んだ、壮大な作品です。
「あなたが誰かを殺した」東野圭吾
リンク
2023年に刊行された作品です。
閑静な別荘地で行われた恒例のバーベキューパーティ。しかし参加者15人のうち5人が殺害され、1人が重傷を負う凄惨な事件が発生してしまいます。犯人は自首するも、動機や経緯は謎のままでした。真相を知りたい遺族たちは「検証会」を開催し、そこに長期休暇中の刑事・加賀恭一郎も参加することに。加賀はやがて、この事件が無差別ではなく、計画された犯行である可能性に迫っていきます。ミステリー初心者にもおすすめの作品です。
「世界でいちばん透きとおった物語」杉井光
リンク
2023年に刊行された作品です。2025年に続編が発売されています。
大御所ミステリ作家の不貞の子である主人公の僕は、とあるきっかけで父の遺稿を探すことに。消えてしまった謎の小説、「世界でいちばん透きとおった物語」とは?徐々に明かされていく驚きの真実とは?予測不能の結末が待つ、衝撃の物語です。
「硝子の塔の殺人」知念実希人
リンク
2021年に刊行された作品です。2022年の本屋大賞にノミネートされ、話題となりました。
地上11階、地下1階からなる謎の建築物・硝子館。ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれます。しかし、美しく巨大なこの館を舞台に、次々と惨劇が起こってしまい…。数々の伏線と「読者への挑戦状」が仕掛けられた、読み応えのある作品です。
【海外ミステリー】古典の名作から現代モノも
人気の海外作品を紹介します。
「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティ
リンク
1939年にイギリスで刊行された、アガサ・クリスティの代表作です。
謎の招待状により孤島に招かれた10人の男女。職業も年齢もさまざまな彼らは、全員「とある秘密」を抱えていました。やがて童謡の歌詞になぞらえて、1人、また1人と何者かに殺されていき…。クローズドサークルや見立て殺人といった、ミステリーの定番とされる設定を巧みに用いた傑作小説です。ぜひご一読ください。
「ゴーン・ガール」ギリアン・フリン
リンク
2012年に刊行された作品です。2014年に映画化されました。
完璧な夫婦のはずだったニックとエイミー。5回目の結婚記念日を迎えたある日、エイミーが突然失踪し、ニックは殺人の容疑をかけられます。無実を晴らすためエイミーを探すニックでしたが、徐々に妻の知られざる一面を知っていくことに…。夫婦双方の視点が重なるとき、やがて浮かび上がる衝撃の真実とは?大胆な仕掛けが施された作品です。
「Xの悲劇」エラリー・クイーン
リンク
1932年にアメリカで発表された、エラリー・クイーンの長編推理小説です。
ニューヨークで起きた路面電車での毒殺事件を皮切りに、奇怪な連続殺人が発生。多数の容疑者がいる中、名探偵ドルリー・レーンが巧妙に仕組まれた犯行に挑みます。ダイイングメッセージの「X」が示す意味とは一体?本格ミステリの巨匠、エラリー・クイーンの代表作です。
「頬に哀しみを刻め」S・A・コスビー
リンク
2024年の「このミステリーがすごい!海外編」で第1位を獲得した作品です。
過去に殺人を犯して服役していた、黒人のアイク。庭師として地道に働いていたある日、同性婚をしていた息子がその夫と共に殺害されたことを知ります。やがてアイクは、同じく被害者である息子の結婚相手の父・バディと手を組み、犯人を突き止めることに。息子を拒絶してきた2人の父親が、血と暴力の渦に呑まれながら、真相と自身の贖罪に向き合います。ジェンダーや人種差別問題にも触れている作品です。
「自由研究には向かない殺人」ホリー・ジャクソン
リンク
イギリスで大ベストセラーとなった謎解き青春ミステリーです。日本でも2022年の本屋大賞 翻訳小説部門で第2位を獲得するなど、多数のランキングで上位になりました。
5年前に起こった少女失踪事件。彼女の交際相手の少年が遺体で発見されたことから、警察は少年が彼女を殺害して自殺したと発表しました。主人公の高校生・ピップは、殺人の容疑をかけられた亡き友人のため、独自に捜査を行うことに。やがて自由研究を口実にしたピップの調査で、次々に新事実が判明していき…。BBC制作のドラマでも話題になった作品です。
【青春ミステリー】学生から大人まで楽しめる
学校を舞台にした作品や、学生同士の謎解きが楽しめる「青春ミステリー」は、幅広い年代におすすめのジャンルです。この項では、青春ドラマを味わえる作品を紹介します。
「地雷グリコ」青崎有吾
リンク
2023年に刊行された作品です。4大ミステリランキングを完全制覇し、話題となりました。
主人公の射守矢真兎は、勝負事にめっぽう強い女子高生。驚異的な頭脳を持った策略家である彼女が、風変わりな数々のゲームで強敵たちを打ち破ります。究極の頭脳戦の先にあるものとは?「ミステリ界の旗手が仕掛ける、本格頭脳バトル小説」と謳われた作品です。
「氷菓」米澤穂信
リンク
2001年に刊行された作品です。2012年にテレビアニメ化、2017年に実写映画化されています。
「何事にも積極的に関わらない」をモットーとする省エネ高校生の奉太郎が、好奇心旺盛な少女・えるによって事件の推理に巻き込まれる様子を描いた本作。青春の瑞々しさとほろ苦さを味わえる、学園ミステリーの傑作です。読書に慣れていない方や、ミステリー初心者にもおすすめの作品です。
「教室が、ひとりになるまで」浅倉秋成
リンク
2019年に刊行された作品です。本格ミステリ大賞と日本推理作家協会賞にダブルノミネートされ、話題となりました。
「全員が仲のいい最高のクラス」で突如起こった連続自殺。主人公の友弘は、幼馴染みの美月から“他人を自殺させる”という不可解な能力の存在を告げられます。証明不可能な罪を前に、一体どう立ち向かえばいいのか?不可解な能力の正体とは?高校生が抱える葛藤も丁寧に描かれている本作。新世代の傑作青春ミステリです。
「アヒルと鴨のコインロッカー」伊坂幸太郎
リンク
2003年に刊行された作品です。2007年に映画化されています。
大学生活を始めた椎名は、隣人の河崎に突然「一緒に本屋を襲おう」と誘われます。そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、気が付けばモデルガンを手に書店の裏口に立つ椎名。冗談のような出来事が、やがて過去の悲しい事件と結びついていき…。ユーモアと哀しみが絶妙に交差する、伊坂ワールド全開の一冊です。
「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月
リンク
2004年に発行された作品です。第31回メフィスト賞を受賞しています。
ある冬の日、突然校舎に閉じ込められてしまった高校生の男女。自分たち以外の姿が見当たらない中、どうしても思い出せない「誰か」の存在に気がつきます。この8人のうち、1人が死んでいるのでは?彼らが忘れてしまった悲しい事件の記憶とは─…。高校生の心情をリアルに描いた、青春ミステリの傑作作品です。
「Another」綾辻行人
リンク
「十角館の殺人」の著者・綾辻行人さんが手掛ける学園ミステリーです。ホラーとサスペンスの要素も含まれています。漫画やテレビアニメ、映画など、さまざまな媒体でメディアミックスされました。
物語の舞台は1998年。転校生の恒一は、夜見山北中学3年3組で見崎鳴という謎の少女と出会います。しかしクラスでは彼女の存在が完全に無視されており、異様な空気が漂っていました。やがて始まる連続する死。原因は、3年3組が秘めている「厄災」でした─…。運命に翻弄される少年少女から目が離せない作品です。
【イヤミス】深い心理描写と後味の悪さが特徴
読んだ後にイヤな気持ちになる「イヤミス」。救いのない展開や不快感に、不思議と魅了されてしまう人気ジャンルです。
「告白」湊かなえ
リンク
2008年に刊行された、湊かなえのデビュー作です。2010年に実写映画化されました。
中学校の女性教師・森口は、愛娘を事故で失ったことをきっかけに退職を決意。3学期の終業式で、生徒たちに衝撃の事実を語ります。それは、娘の死は事故ではなく、クラスの生徒による殺人だったという“告白”でした―…。イヤミスの女王、湊かなえの原点となった作品です。
「ユリゴコロ」沼田まほかる
リンク
2014年に刊行された作品です。2017年に映画化されました。
婚約者の失踪、父の末期がん発覚、母の事故死と、立て続けに不幸に襲われた亮介。人生に絶望していた彼は、実家で「ユリゴコロ」と書かれた4冊のノートを発見します。そこには、人の死を「心の拠り所」にする女性の生々しい告白が書き記されていました。家族の愛と葛藤が交差する衝撃作です。
「ボトルネック」米澤穂信
リンク
2006年に刊行された作品です。
主人公のリョウは、恋人が転落死した東尋坊を訪れますが、自身も崖から転落してしまいます。やがて目覚めた場所は、自分が生まれていない別の平行世界でした。そこで出会う家族は別人のようで、周囲の人々も現実とは異なることに気付きます。違和感と向き合ううちに、リョウは自分自身の存在意義に直面していくことに…。青春イヤミスの傑作です。
「汚れた手をそこで拭かない」芦沢央
リンク
2020年に刊行された短編集です。直木賞の候補作に選ばれました。
日常に溢れる「綻び」を巧みに描いた5篇の短編が収録された本作。失敗を隠蔽しようとたり、嘘に嘘を重ねてしまったり、誰もが経験し得る事象をじわじわと綴っています。人間の持つ後ろめたさをこれでもかと突きつけられる作品です。イヤミス初心者にもおすすめ。
【バカミス】笑いと衝撃の「ありえない」展開
バカミスとは、「おバカなミステリー」や「ばかばかしいミステリー」の略称です。個性的で娯楽性が高いバカミスは、思わず「そんなバカな!」と言いたくなる展開が楽しめます。
「六枚のとんかつ」蘇部健一
リンク
「ギャグと謎解きの革命的コラボレーション」と謳われた作品です。第3回メフィスト賞を受賞しています。
保険会社の調査員である主人公がさまざまな事件を推理するショートショートが収録された作品です。名作ミステリーのオマージュもちりばめられています。一般的な短編よりもさらに短いので、サクッと読みたい方や読書に慣れていない方にもおすすめ。
「名探偵の掟」東野圭吾
リンク
1996年に刊行され、2009年にテレビドラマ化された作品です。
探偵・天下一大五郎が挑むのは、トリック満載のお決まりミステリー。しかし彼はその「お約束」に真っ向から反論し、犯人当てのルールに鋭いツッコミを入れていきます。密室、アリバイ、見立て殺人…探偵自身が掟に振り回される、パロディと風刺が効いた痛快推理短編集です。
「○○○○○○○○殺人事件」早坂吝
リンク
第50回メフィスト賞を受賞した、早坂吝のデビュー作です。
仮面の男・黒沼が所有する孤島で開催された夏休み恒例のオフ会。楽しいはずのイベントが一転、メンバーの2人が突如失踪し、さらに殺人事件が起きてしまいます。いったい誰が犯人なのか?仕掛けられた秘密とは?タイトルに隠された謎が解けた時、笑いと驚愕の事実が待ち受けています。
ミステリー小説を読んで究極の読書体験をしよう
ミステリー小説は名作と呼ばれる作品ばかりです。ぜひ気になった作品から手に取って、謎解きの世界に没頭してください。