ノンフィクション文学というと、実際にあったことがもとになっている文学作品というイメージがあります。しかし、実際はそれだけでなくジャンルは多岐にわたるため、意外に感じるかもしれません。
本記事ではノンフィクションのジャンルの解説とおすすめの作品の紹介をします。
目次
ノンフィクションとはどのようなジャンル?
ノンフィクションについて、どのような内容の文学作品が含まれるのでしょうか。細かくみていきましょう。
実際のできごとや実在の人物などへ評論
ノンフィクション(英語『non-fiction』)とは、創作ではない作品、実際のものごとを扱った作品のことをいいます。実際にあったできごと、実在した人物についての評論などを指すことも。広い意味では、日記や伝記、歴史などに書き手の意見を加えた文学作品をノンフィクションのジャンルに含むこともあります。
あまり知られていない地域などの紀行文
意外なようですが、旅行記もノンフィクションに分類されます。国内外にかかわらず、あまり馴染みがない地域の様子を記録した紀行文なども含まれますよ。ユーモラスな描写で楽しく読み進められる作品もありますね。
綿密な取材をした記録
新聞や週刊誌に掲載されている記事のような、細かい部分まで取材をした記録もノンフィクション作品です。社会問題となった事件、人目に触れないようにしたスキャンダルなどの真相を暴いたり、戦争や人種差別などの問題を多くの人に提起したりするために公表されることもあります。
ノンフィクション作品のおすすめ10選を紹介!
ノンフィクションのジャンルに含まれる作品を10編選んで紹介します。
『夜と霧 』(ヴィクトル・エミール・フランクル)
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第二次世界大戦中、ユダヤ人の作者がナチスの強制収容所にとらえられた経験をもとに書かれたノンフィクション作品。心理学者の作者が自身の体験を通じて、自分が生きる意味をはっきりと自覚していく方法について説いています。
『母という呪縛 娘という牢獄』(齊藤彩)
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コミック化もされ、親子関係に悩む女性を中心に広く読まれているノンフィクションです。両親の離婚後、母に『医者になれ』と、9年浪人するほど医学部進学を強要された娘がいました。苦しみから逃れるために、ついに母殺しを決行。著者は裁判の取材や収監された娘との面会を重ねて、母と娘の問題に迫っています。
『桶川ストーカー殺人事件 遺言』(清水潔)
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桶川市で若い女性がストーカー被害に遭い、命を奪われた悲惨な事件についてのノンフィクション。作者は週刊誌の記者です。被害者、遺族の訴えに真摯に耳を傾けて、事件の詳細な内容を丁寧に記述。綿密な取材で、彼女が訴えても取り合ってもらえなかった警察、事実を歪めて伝えるメディアのあり方などの問題も深く切り込んでいます。
『ある行旅死亡人の物語』(武田惇志・伊藤亜衣)
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2020年、現金3,400万円を残したままアパートで孤独死した女性。2人の記者が現金やペンダント、写真、印鑑などをわずかな所持品から、彼女の名前と身元を探していく様子を記録した作品です。記者たちの綿密な取材と、兵庫から広島にかけて移動して粘り強く調査する姿に圧倒されます。一見ミステリー小説のようです。
『冷血』(トルーマン・カポーティ)
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1959年にアメリカのカンザス州の農家の一家4人が惨たらしく殺害された事件を、作家のカポーティが関係者や加害者2人に綿密に取材したことをもとに書いた作品。作者は加害者のうちの1人が自身と同じような境遇に育ったことに同情しています。表題の意味は、表向きは『非道な事件を起こした極悪人』を指すようですが、『犯人の死刑を望み、本作を早く出版させたいと願う作者自身の身勝手さ』という意味も含むのではとも。
『イラク水滸伝』(高野秀行)
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本作は、日本人にとっては謎の多いイラクの巨大湿地帯を船で旅をした紀行文。作者の目を通じて、抵抗勢力や少数民族などいろいろな人や文化、食べ物などに触れ合う様子を感じられます。表題の『水滸伝』は中国の奇書で湿地帯に集まった英雄たちが体制と戦う話で、イラクの国家体制とは異なる民族がいることから付けられたのではないかということ。
『最貧困女子』(鈴木大介)
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頼れる家族や社会制度から切り離された女性のうち、風俗などの仕事でその日暮らしをする女性の姿を取材して記した作品。はっきりと見えにくい彼女たちの苦悩やこころの痛みを克明に描いています。本作が発行されたのは2014年。2025年3月現在で約10年が経過していますが、いまだに解決されていない問題だという感想を寄せる人もいるようです。
『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン)
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17世紀に数学者のフェルマーが示した『最終定理』、天才と評判の数学者ワイルズによって完全に証明されたところまでを描くノンフィクション。3世紀にわたって多くの学者を悩ませた超難問とどう向き合ってきたか、史実にもとづいて詳しく書かれています。中学生から数学に苦手意識を持つ大人にも、読みやすいと高評価。
『ウクライナ戦争』(小泉悠)
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日本人にはいまいちわかりにくい、2022年2月に起こったウクライナとロシアの戦争。本書は軍事研究家による入門書です。ロシアのプーチンの動向や、ウクライナのゼレンシキー(『ゼレンスキー』とも表記)政権の関係、アメリカの立場などにも詳しいです。第3次世界対戦、核戦争などの可能性など今後が気になるところにも意見を述べています。
『ジュリーがいた 沢田研二、56年の光芒』(島崎今日子)
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週刊文春の記事を単行本化した書籍。69人の芸能関係者に取材をして、昭和40年代~令和にかけて50年以上歌手や俳優として活躍する沢田研二の真の姿、支えたスタッフの努力を描いています。バンド『タイガース』のボーカルとソロ歌手、俳優として活動をし人気沸騰の時代を経て、70代の現在はライブ活動を中心に大奮闘。スタイルは変わっても歌とファンを大切にする姿勢が見て取れます。
ノンフィクション作品がおすすめ!真相などを理解したい人に!
ノンフィクションの作品は、読むのが難しいと感じる人もいるでしょう。ユニークで読みやすい文体、わかりやすく解説されているものもあります。事件などの真相を詳しく知りたい人、場所や馴染のないところについて理解を深めたい人におすすめしたいです。