読書効率を上げる方法は、「読む前」「読む最中」「読んだ後」の3段階に分けると整理できます。いちばん効くのは読む前の段階で、目的と読む範囲を先に決めること。読む速さを上げるより、読まない部分を決めるほうが早く終わります。
ただ、その前に押さえておきたい前提があります。文化庁の調査では、読書量が減っている理由の1位は「情報機器で時間が取られる」の43.6%。読み方の工夫より先に、時間がどこへ消えているかを見たほうが効くケースが少なくありません。
読書効率が落ちる原因の1位は「情報機器で時間が取られる」43.6%

文化庁の令和5年度「国語に関する世論調査」(2024年9月公表)によると、読書量が「以前に比べて減っている」と答えた人は69.1%。その人たちに理由を聞いた結果(二つまで回答)は次のとおりです。
| 読書量が減っている理由 | 割合 |
|---|---|
| 情報機器(スマートフォン・パソコン・ゲーム機等)で時間が取られる | 43.6% |
| 仕事や勉強が忙しくて読む時間がない | 38.9% |
| 視力など健康上の理由 | 31.2% |
| テレビの方が魅力的である | 19.8% |
同調査では年齢別の結果も出ており、「情報機器で時間が取られる」は年齢が低いほど高く、16〜19歳で70.9%、20〜30代で6割台。一方「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」は20〜40代で6割台と、働き盛りの世代に集中しています。
つまり、多くの人にとっての「読書効率」は、読む速さの問題ではなく読書に回せる時間をどう取り戻すかの問題です。読み方のテクニックはそのうえで効きます。
読書術全体を比較したい方は、こちらもあわせてどうぞ。

読む前にやること3つ|ここで9割決まる
読書効率で最も差がつくのは、ページを開く前です。
1. 何を知りたいかを1行で書く
「この本から何を持ち帰るか」を1行で書いてから読み始めます。目的が決まると、どの章を丁寧に読み、どこを飛ばすかが自動的に決まります。逆に目的がないまま最初のページから均等に読むと、全ページに同じ時間をかけることになり、読み終わっても何が残ったか分かりません。
2. 「目次」「はじめに」「結論」を先に読む
本文に入る前に、目次で全体の構造を、「はじめに」で著者の狙いを、結論部分で結末を先に確認します。特に実用書・ビジネス書では、結論を先に知っておくと、本文が「その結論をどう支えているか」を確かめる作業になり、読む速さが変わります。小説では結末を先に読むわけにいかないので、この手は使いません。
3. 自分のレベルに合う本を選ぶ
難しすぎる本は、読む速さが落ちるだけでなく途中で止まります。同じテーマなら、まず入門書で地図を作ってから専門書に進むほうが、結果的に速く着きます。興味が持てない本を義務感で読み進めるのも、効率という点では最も分が悪い選択です。

読む最中にやること3つ|全部読まないことを決める
1. 必要な章に絞り、それ以外は飛ばす
専門書や参考書は、全体を通読するより特定の章に絞るほうが早く身につきます。目的に関係しない章は目次で判断して飛ばし、必要になったら戻る。本は最初から順に読まなければならないものではありません。
2. メモとマークで「戻れる状態」にする
重要な箇所に線を引く、余白に一言書く。この手間の見返りは、読んでいる最中よりも読み終えた後に来ます。後から見返せる状態になっていれば、同じ本を最初から読み直す必要がなくなるからです。線を引く基準は「自分の考えが変わった箇所」に絞ると、引きすぎを防げます。
3. 時間を区切って読む
「1時間だけ」と先に区切ると、その時間内で読み切るために読む優先順位を考えるようになります。だらだら読み続けるより、短く区切って何度も戻るほうが集中は保ちやすくなります。集中が切れやすい人は、姿勢を変えるのも手です。

読んだ後にやること2つ|知識として残す
1. 自分の言葉でアウトプットする
読んだ内容を要約して書く、誰かに説明する。要約しようとすると、分かったつもりだった箇所がはっきりします。書けない部分こそ、実は読めていなかった部分です。形式に迷うなら、読書ノートの書き方をまとめた記事で型を選んでください。
2. 目的が変わったら読み直す
同じ本を複数回読むのは、参考書や専門書では有効です。ただし「3回読む」と回数を先に決めるより、目的が変わったときに読み直すほうが効率的です。1回目は全体像、2回目は実際に使う段になってから該当箇所だけ、というように、読み直す範囲は毎回変わっていいものです。
読む時間そのものが足りないならオーディオブック
文化庁調査で2位だった「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」(38.9%)に当てはまるなら、読み方の工夫では追いつきません。通勤・家事・運動の時間を読書にあてられるオーディオブックは、この層に効く選択肢です。手と目がふさがっている時間を使えるので、読書時間を新たに作らずに済みます。
ただし、聴く読書は飛ばし読みや線引きが効きません。物語や通読向きの本は聴く、調べながら読む実用書は紙か電子で読む、と使い分けるのが現実的です。
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監修者の視点:速く読むより「読まない範囲」を決める
田中寛大大学院で学術書や論文を大量に読む必要があったとき、いちばん効いたのは速く読む訓練ではなく、読まない範囲を先に決めることでした。目次と序論と結論を読んで、自分の問いに関係する章だけを精読する。残りは必要になってから戻る。この順序に変えただけで、同じ時間で扱える文献の数が変わりました。
逆に、最初のページから律儀に読み進める読み方は、内容が難しいほど途中で止まります。効率という言葉で本を粗末に扱うのではなく、丁寧に読む場所を絞るために、ほかを飛ばすのだと考えると気が楽になるはずです。
かえって効率を下げる読み方3つ

- 興味のない本を義務感で読み進める:読む速さが落ちるうえ、読書そのものが続かなくなる。合わないと思ったら途中でやめてよい
- 休憩を挟まずに長時間読む:集中力が落ちた状態で読んだページは、結局あとで読み直すことになる
- 通知が届く環境で読む:読書量が減る理由の1位が情報機器である以上、スマートフォンを手元に置いたままの読書は最初から不利
3つ目は「静かな場所を選ぶ」より優先度が高い項目です。カフェの話し声は慣れれば気になりませんが、通知は一度見るたびに読書に戻る時間が必要になります。
なお、1冊に集中できないタイプの人は、無理に1冊ずつ読み切ろうとせず、並行読書(併読)のやり方を試すと詰まりにくくなります。
読書効率に関するよくある質問
- 読書効率を上げるには何から始めればいいですか?
-
読む前に「この本から何を持ち帰るか」を1行で決めることからです。目的が決まると、丁寧に読む章と飛ばす章が自動的に分かれます。読む速さを上げる訓練より、読まない範囲を決めるほうが先に効きます。
- 本を読んでも知識が身につかないのはなぜですか?
-
読みっぱなしでアウトプットしていないことが多い原因です。読み終えたら要約を書く、誰かに説明するといった形で自分の言葉に置き換えると、分かったつもりだった箇所がはっきりします。書けなかった部分が、読めていなかった部分です。
- 本は飛ばして読んでもいいのですか?
-
実用書や専門書なら問題ありません。目次で目的に関係しない章を判断して飛ばし、必要になったら戻れば十分です。ただし小説は筋の流れがあるため、飛ばし読みには向きません。
- 読書量が減っている人はどれくらいいますか?
-
文化庁「令和5年度 国語に関する世論調査」(2024年9月公表)では、読書量が以前に比べて減っていると答えた人は69.1%でした。理由の1位は「情報機器で時間が取られる」43.6%、2位は「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」38.9%です。
- 同じ本は何回読むべきですか?
-
回数を先に決める必要はありません。目的が変わったタイミングで、必要な範囲だけ読み直すのが効率的です。1回目で全体像をつかみ、実際に使う段になってから該当箇所に戻る、という読み方で足ります。
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