山田風太郎の作品は、忍法帖シリーズなどの時代物を扱った印象が強いかもしれません。本記事では山田風太郎の作風と、おすすめの小説10編を紹介します。
目次
山田風太郎の作風とは?
山田風太郎の作品は、時代小説や第二次世界大戦中から戦後の小説が知られています。その2つのジャンルに絞って作風を紹介。
独自の解釈が好評!時代小説
山田風太郎の作品は、後世のアニメやゲームなどに影響する『バトルもの』も多く、非常に人気があります。また、歴史的な作品や原作のある作品について独自の解釈をしている小説も。『忍法帖シリーズ』、明治初期を舞台にした小説、元の作品や定説を覆した作品、異世界と人間界を巻き込んだ怪奇小説などもありますよ。
真実味がある!戦中から戦後が舞台の作品
第二次世界大戦中から戦後が舞台の作品は、事実や肌で感じた作者自身の実体験を通じて書かれたノンフィクションやエッセイの評価が高いです。また、戦時下に書き綴った日記が作品に生かされているとも。すさんだ戦後の時代の空気を感じさせるミステリーなどの作品も手掛けています。
おすすめの山田風太郎の小説10選!
ファンに人気の高い小説を紹介していきます。初心者の人でも読み応えがありますよ。^
『魔界転生』
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本作品は忍法帖シリーズの中で、傑作の1つと評されています。映像化もされて、作者自身も満足度の高い作品ということ。江戸幕府に恨みを持つ由井正雪が、島原の乱で滅ぼされた森宗意軒(もり・そういけん)と組み、同じく幕府と相対した天草四郎達の魂を現世に転生させて死闘を繰り広げていきます。彼らの前に立ちふさがる柳生十兵衛との戦いの場面が圧巻です。
『甲賀忍法帖』
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江戸幕府の間者として活躍した忍者の2つの派閥、(甲賀忍者と伊賀忍者)に注目して書かれている忍法帖シリーズの作品。数百年もの間対立してきた忍者の2つの部族は、服部半蔵の働きで関係を平和に保っていました。しかし、初代将軍の徳川家康が甲賀と伊賀を競わせたことで、互いの関係が悪化。彼らの熾烈な争いや、属する派閥を超えて愛し合う者など、互いの気持ちや関係も丁寧に書かれています。
『柳生忍法帖(上・下)』
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暴虐非道な主君への仇討ちのため、凄腕の剣術で名高い柳生十兵衛が加勢して強敵に立ち向かう話です。会津の大名加藤明成は暴力的で暗愚な人物。家臣の堀主水は彼を見限って敵対することに。しかし、武術に優れた会津七本槍の剣豪に返り討ちにあい、7人の女性のみ生き残りました。彼女たちは敵討ちのために、柳生十兵衛に剣術の指南を頼むことにします。
『八犬伝(上・下)』
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本作品は、滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』から着想を得ています。話の展開の仕方が独特で、2つの物語に書き分けて進めていく手法です。1つは『南総里見八犬伝』の犬士が悪者や妖怪を倒していく作中の世界が舞台。もう1つは作者の滝沢馬琴の立場から話の成り立ちを語る現実に近い世界を書いています。2つの物語を交互に書いて進行していく様子が見事です。
『妖説太閤記(上・下)』
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豊臣秀吉の一代記を描いた『太閤記』を、山田風太郎の独特の見方で解釈をして新たに書いた作品です。英雄で人好きのする秀吉のイメージを崩し、実際の奇妙で怪しい本性に迫ろうとしています。若い頃の秀吉は織田信長に取り立てられ、その妹のお市に出会います。欲望を隠しながら、計画通りに立てて戦乱を起こし、婚家や実家を潰してお市を自分のものにしようとしましたが…。
『妖異金瓶梅』
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中国の明の時代を舞台にした奇書『金瓶梅(きんぺいばい)』の作品をもとにしたミステリー。明の薬問屋の豪商、西門慶(せいもん・けい)は女性達と乱れた生活を送っていました。8人の妻や妾達が彼の愛を得ようと激しく争う中、第7夫人が悲惨な状態で見つかり、連続殺人事件が続発。西門慶は友人の王伯爵が事件の解決を図ろうとします。
『警視庁草紙(上下)』
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士族の世の中から明治政府の力が増していく移り変わりの時代が舞台になった作品。西郷隆盛が政争で敗れて下野し、時代は大久保利通を中心の明治政府になっていきます。警察は川路利良によって警視庁が作られ、元同心の千羽や南町奉行だった駒井相模守は内心不愉快で警視庁に戦いを仕掛ける日々。明治の文学者など著名人も登場し、リアリティが感じられます。
『同日同刻 太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日』
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太平洋戦争の記録を集めて、開戦の日(1941年12月8日)と終戦末期の15日(1945年8月1日~15日)を描いた作品です。敵国および日本の指導者、兵士、国民の姿を書くことにより、戦争に踊らされた人の心の動きや悲惨な最期について語られています。戦争が始まった当初と末期の15日間の違い、国家間での力の差が歴然としていてショックを受ける人もいるようです。
『太陽黒点』
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本作品は、語り手の視点が入れ替わる社会派ミステリー。戦争を経た時代の経験が、罪を犯す動機に。話が進むごとに、『死刑執行1年前』~『死刑執行8か月』各章が変化。最終章では予想もしない展開になります。主人公の鏑木は容姿も才覚もある苦学生。献身的な彼女がいますが、アルバイト先で社長令嬢に惚れられ彼女と別れを決意し、特権階級への足がかりを手に入れます。主人公は富裕層への復讐を企てて…。
『戦中派不戦日記』
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山田風太郎の自伝的な日記文学。戦中から戦後に至る1945年の1年間を、医学生で兵役を免除された著者の目から書いています。空襲の様子を書き記す記述が多く、戦争や人の死を冷徹に見つめながらも、日々を一生懸命生きるありのままの姿を描写しています。
山田風太郎の小説は好きなジャンルから読むのがおすすめ
山田風太郎の作品は、多ジャンルにわたっています。初めて読む人には、それぞれの好みのジャンルに合わせて選ぶのがおすすめ。最も評価が高いのが忍法帖シリーズで、剣豪の対決が好きな人はそちらから読み進めてみるとよさそうです。