壮大なスケールで読者を惹き込むSF小説。読書好きの間でも、熱狂的なファンを持つ人気ジャンルのひとつです。
この記事では、SF小説のおすすめ作品を紹介します。現実世界を飛び越えて、想像の旅に出てみましょう!
目次
SF小説の選書のポイント
SF小説は、国内外で数多くの作品が出版されています。選書に迷ったら、以下のポイントをチェックしてください。
興味のあるジャンルから選ぼう
SF小説は、タイムトラベルや宇宙探査、近未来など、さまざまなジャンルがあります。まずは興味のあるテーマから読み進めてみましょう。内容の難解さが気になる方には、ショートショートという選択肢も。数ページで、完成された世界観を味わえます。
映像化している作品もおすすめ
CG技術の発展により、近年は数多くのSF小説が映像化されています。映画やドラマとして楽しんでいる作品が、実は小説にルーツを持つことも。自らの想像力で描き出す読書体験は、映像とはひと味違う魅力があります。ぜひ一度、原作小説の世界を味わってみてください。
【おすすめ名作SF小説】
まずは、SF小説の名著とされている代表的な作品を紹介します。
「一九八四年」ジョージ・オーウェル
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二十世紀世界文学の最高傑作と謳われる作品です。
思想や言葉さえ管理される監視社会の中で生きる主人公・ウィンストン。体制への疑問と反抗心を抱いた彼は自由を求めますが、待ち受けていたのは圧倒的な支配と歪んだ社会構造でした。全体主義の恐怖を描いたSF小説の傑作です。
「夏への扉」ロバート・A・ハインライン
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1956年に刊行された、古典SF不動の名作です。
婚約者と親友に裏切られ、人生のすべてを奪われてしまった発明家のダン。冷凍睡眠によって目覚めた未来で、彼は再び夢と希望を取り戻すため動き出すことに…。切なさと温かさが交差する、タイムトラベルSFの傑作です。初めてSF小説を読む方にもおすすめ。
「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン
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ハードSFの傑作とされ、根強い人気を誇る作品です。サイエンスミステリーの要素を含んでいます。
月面で発見された、宇宙服を着た謎の遺体。それは、なんと死後5万年が経過していました。彼はいったい何者なのか?科学者たちは調査を通じて、歴史や常識を覆す真実に迫ることに。科学的推理と壮大なスケールが融合した、思索的SFの名作です。
「地底旅行」ジュール・ヴェルヌ
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1864年に刊行された、SF冒険小説です。
鉱物学者リーデンブロック教授は、古文書に記された手がかりをもとに、甥のアクセルらとともに火山口から地底世界へと旅立つことに。奇想天外な冒険と自然の神秘が詰まった、古典SFの代表作です。ワクワクドキドキの大冒険を楽しみたい方におすすめ。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」フィリップ・K・ディック
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古典SFの名作です。映画「ブレードランナー」の原案になりました。
人間そっくりのアンドロイドを処分する賞金稼ぎ・デッカード。火星から逃亡してきた奴隷のアンドロイド達を追っていたものの、彼らと接するうちに「感情」や「共感」の違いが曖昧になっていき…。人工知能と人間の違いとは何か?テクノロジーと倫理を交錯させた、SF文学の金字塔です。
「三体」劉慈欣
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アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長篇部門に輝いた小説です。現代中国最大のヒット作といわれています。
異変を起こす物理法則と、科学者たちを巻き込む謎のVRゲーム「三体」。その裏には、過酷な未知文明との接触と、この星を揺るがす思想的な危機が隠されており…。地球文明の未来が試される、圧倒的スケールのハードSF作品です。
SF小説【タイムトラベル系】
過去や未来への異動を題材にした「タイムトラベルSF」を紹介します。
「時をかける少女」筒井康隆
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1967年に刊行された青春SF小説です。さまざまな媒体でメディアミックスされています。
放課後の理科室でラベンダーの香りをかいだ少女・芳山和子は、突然「時間を跳ぶ力」を得ることに。不思議な力の正体と向き合ううちに、やがてとある少年との関係が深まります。静かな感動と切ない別れを描く、青春SFの名作です。
「タイム・マシン」ハーバート・ジョージ・ウェルズ
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古典SFの代表的作品です。
未来の世界を探るべく、科学者はタイムマシンで時間を跳び越え80万年後の世界へ。そこで目にしたのは、表面と地下に分かれた人類の末路でした。文明批評と想像力に満ちた、SF黎明期の名作です。
「マイナス・ゼロ」広瀬正
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「時間SFの最高峰」と謳われ、熱狂的ファンを多く持つ作品です。
ひょんなことから昭和初期にタイムスリップした青年が、過去の世界で出会う人々との交流や、歴史とのかかわりを通して成長していく様子を描いています。時間SFであり、昭和青春譚でもある本作。ラストで明かされる真実とは?何度も読み返したくなる作品です。
「四畳半タイムマシンブルース」森見登美彦
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2022年にアニメ化された作品です。
時は8月、灼熱の京都。オンボロアパートに突如現れたタイムマシン。学生たちは壊れてしまったエアコンのリモコンを取り戻すため過去へと向かいますが、やがて思わぬ騒動に巻き込まれてしまい…。ゆるさと緻密さが共存する、青春SF群像劇です。
「リプレイ」ケン・グリムウッド
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名作タイムリープ小説です。登場人物が同じ期間を何度も繰り返すという「ループもの」を広めた作品ともいわれています。
心臓発作で亡くなった主人公・ジェフは、なぜか18歳の自分に戻っていることに気が付きます。再び人生を謳歌するジェフですが、結局は同日同時刻に死亡。やがて人生を何度も“リプレイ”するうちに、彼は生きる意味を問い直していくことに…。時を超えた、再生と希望の物語です。
SF小説【スペースオペラ・宇宙】
宇宙空間を題材にしたSF作品を紹介します。
「ファウンデーション」アイザック・アシモフ
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SF小説の巨匠が描く、壮大なシリーズ作品です。
銀河帝国の崩壊を予見した数学者セルダンは、人類の知識を保存し文明再建を早めるため、科学的避難所「ファウンデーション」を設立。資源も軍事力もない辺境のファウンデーションが、知性を武器に強敵へと立ち向かう姿を描いています。知的興奮が止まらない、アイザック・アシモフの代表作です。
「火星の人」アンディ・ウィアー
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2015年の映画「オデッセイ」の原案となった作品です。
火星で置き去りにされてしまった宇宙飛行士が、あらゆる手段を使って生き抜こうと奮闘する様子を描いた本作。絶望のなかでも知性とユーモアを忘れない主人公の姿が、多くの読者の心をとらえました。ドキドキハラハラのスリルと、クスッと笑えるジョークの対比を感じられる作品です。
「銀河ヒッチハイク・ガイド」ダグラス・アダムス
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世界的ベストセラーになったSFコメディ作品です。
銀河バイパス工事のため地球が取り壊されしまい、宇宙を放浪するはめになったイギリス人のアーサー。「銀河ヒッチハイク・ガイド」を頼りに、ナンセンスな冒険と笑いに満ちた予測不能な旅が始まります。抱腹絶倒のSFコメディです。
「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク
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傑作SF小説といわれており、純文学やサブカルチャーにも影響を与えたとされる作品です。
ある日、人類の前に現れた知的宇宙生命体「オーバーロード」。彼らの平和的な導きにより、人類は戦争も貧困もない理想の社会を実現します。しかし、オーバーロードの本当の目的が明かされるとき、人類は「幼年期の終わり」を迎えることに…。詩情豊かな、SF史上屈指の名作です。
「さあ、気ちがいになりなさい」フレドリック・ブラウン
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短篇の名手、フレドリック・ブラウンの作品です。星新一が翻訳しています。
世界一短いショート・ショートと呼ばれる作品、「ノック」を含む12篇の短編集です。どの作品も「狂気」をテーマに繰り広げられており、鳥肌が立つようなゾクッとする後味を楽しめます。隙間時間にサクッと読書したい方におすすめです。
「プロジェクト・ヘイル・メアリー」アンディ・ウィアー
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2021年に刊行された作品です。
記憶を失った男が目を覚ましたのは、宇宙船ヘイル・メアリー号のなか。彼は地球滅亡を防ぐため、たった1人“最後の希望”として旅立った科学者でした。背負わされた使命、異星生命体との出会い、そして想定外の絆。心を打つ、SFサバイバル作品です。
「たったひとつの冴えたやりかた」ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
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アメリカの女性SF作家、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの短編集です。
16歳の少女コーティーは、こっそり小型宇宙船を改造し両親にも内緒で旅立つことに。思いがけず異星生命体と友情を育むコーティ―でしたが、そこにはとある使命と犠牲が待っていました。切なさが胸を打つ一作です。
SF小説【近未来・ディストピア】
近未来やディストピア社会をテーマにした作品を紹介します。
「華氏451度」レイ・ブラッドベリ
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1953年に刊行された、ディストピア小説の金字塔です。タイトルの「華氏451度」は、紙が燃え始める温度に由来しています。
本を持つことが禁じられた未来社会。仕事として本を焼く昇火士のモンターグは、ある少女との出会いをきっかけにこの歪んだ社会構造に疑問を抱き始めます。知識と言葉を巡る、抵抗と再生の物語です。
「新世界より」貴志祐介
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第29回日本SF大賞を受賞した作品です。
1000年後の世界、超能力を持つ人類が築いたユートピア。平和に見えたこの世界で、少年少女たちは禁断の歴史と衝撃の真実に触れてしまい…。倫理、進化、自由をめぐる深いテーマが織りなす、傑作ディストピア作品です。
「ハーモニー」伊藤計劃
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第40回星雲賞、第30回日本SF大賞、「ベストSF2009」国内篇第1位に輝いた作品です。
大災禍を経て「健康と調和」が義務となった未来社会。優しさと幸福に満ちた世界で暮らす少女・トァンは、かつての友人の死をきっかけに、社会の真実と自らの存在に向き合っていくことに…。生と死、倫理と自由の境界を描く、静かで深いSF長編です。
「すばらしい新世界」オルダス・ハクスリー
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ディストピア小説の源流とも呼ばれている作品です。
科学と技術で完全に管理されたワールド・ステート、ロンドン。人間は人工的に生まれ、階級に分けられて幸福に生きていました。しかし「自然な感情」を持つとある男の出現が、平穏な世界に波紋を投げかけます。本当の「すばらしい世界」とは?真の幸福を見つめなおす、傑作小説です。
「ここはすべての夜明けまえ」間宮改衣
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2024年に刊行された、ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作品です。
2123年、九州の山奥で暮らす「わたし」は、かつての家族との日々を綴ることに。失われた愛や過去の痛みを回想しながら、不老不死の身体で生きる孤独と向き合う物語です。ひらがな主体の独自の文章で、主人公の切なく静かな心情をダイレクトに感じられます。普段SFを読まない方にもおすすめです。
「世界99」村田沙耶香
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2025年に刊行された作品です。著者の新たな代表作として、話題となりました。
性格を持たない如月空子は、周囲に「呼応」し「トレース」することで適切な人格を演じ分けていました。やがて愛玩動物として登場した「ピョコルン」が社会に浸透する中、空子の世界は変容を見せ始め─…。現代社会の適応と個性を問う、衝撃の近未来巨編です。
SF小説【ロボット・アンドロイド・人工知能】
ロボットやAIが登場するおすすめSF作品を紹介します。
「われはロボット」アイザック・アシモフ
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1950年に刊行された、ロボットSFの古典的名作です。
「ロボットは人間に危害を加えてはならない」。ロボット工学三原則に従って作られたロボットと人類の関係を、技術者や心理学者の視点から描いた短編集です。各話を通じて、機械と人間の境界や倫理、進化の可能性を綴っています。ミステリーが好きな方にもおすすめです。
「月は無慈悲な夜の女王」ロバート・A・ハインライン
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「夏への扉」の著者、ハインラインのもうひとつの代表作です。ヒューゴー賞を受賞しています。
2076年、地球から資源を搾取され続けていた月面の人々は地球政府に独立を宣言。コンピュータ技師のマニーと意識を持つAI・マイクを旗手に、自由を求める壮大な戦いに挑みます。
「ボッコちゃん」星新一
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「日本SF史上もっとも有名な短編」とされている作品です。
女性型アンドロイド・ボッコちゃんに恋をしてしまった男性を描いた表題作を始め、星新一の著名な作品を収録している短編集です。幅広い年代から親しまれています。SF初心者や、読書に慣れていない方にもおすすめの作品です。
「鋼鉄都市」アイザック・アシモフ
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1954年に刊行された作品です。2025年に映画化の決定が発表されました。
遠い未来、閉鎖都市ニューヨークで殺人事件が発生。刑事であるベイリとロボットのダニールは捜査に乗り出し、人間と機械、地球と宇宙の対立に迫ることに…。ミステリーとロボットSFが融合した、圧巻の長編小説です。
「マーダーボット・ダイアリー」マーサ・ウェルズ
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ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞の主要SF賞3冠を達成した作品です。日本翻訳大賞受賞作も受賞しています。
保険会社の警備ロボット“弊機”は、人間が苦手でやさぐれた性格。やりたくもない仕事を淡々とこなし、唯一の趣味である連続ドラマに没頭する日々。そんな不愛想で不器用な彼が、嫌いなはずの人間に振り回されながら「自分の意思で生きる」ことを模索していく作品です。
「ソラリス」スタニスワフ・レム
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20世紀のSFを代表する作品と評価されています。
知性を持つ惑星・ソラリスの観測基地に赴任した心理学者ケルヴィン。そこでは、個人の記憶が具現化する謎の幻影によって、研究員たちの精神が追い詰められていました。やがてケルヴィン自身も、ソラリスの「海」が引き起こす不可解な事態と対峙することになり…。SF史に刻まれる不朽の名作です。
SF小説を読んで壮大な世界観に浸ろう!
想像の限界を超えて、未知の感動を味わえるSF小説。さまざまなジャンルからお気に入りを見つけて、圧倒的スケールの世界観に飛び込みましょう。初心者の方は、ショートショートから読むのもおすすめです。ぜひご一読ください。