遠藤周作というと、信仰や日本文化を絡めた著作が多いイメージを持つ人もいるでしょう。苦悩する人物の生き方を問う重厚な作品もあります。しかし、軽妙な文体でユーモアと皮肉をちりばめている作品もあり、親しみが感じられるかもしれません。
この記事でわかること
- 遠藤周作の作風や特徴
- 遠藤周作のおすすめ作品のあらすじ
本記事では、遠藤周作の登場人物に寄り添うような作品から、著者の茶目っ気のある人柄を感じさせる作品まで8作品を紹介しています。
目次
遠藤周作の作風とは?
- キリスト教の宗教観を取り入れ、日本と外国を比較
- 人間の弱さや苦悩に寄り添う
- 軽妙なエッセイ
遠藤周作はキリスト教の信者です。作品の中に自身の宗教観を取り入れて、日本文化や風土と外国文化の違いを描写しています。国内外の違いはあっても同じ人としての生き方を書き、人の弱さや苦悩に、温かい目線で寄り添っているようにも感じられます。ユーモアあふれる語り口のエッセイは気軽に読め、はじめて遠藤周作の作品に触れる人にもおすすめです。
遠藤周作のおすすめ作品8選
遠藤周作のおすすめ作品を8つ選び、特徴やあらすじを紹介します。
| 作品名 | 特徴 |
|---|
| 『沈黙』 | 信仰の思想的な違いで苦悩する異国の司祭を描く |
| 『海と毒薬』 | 捕虜への残虐な人体実験で、人の残虐性を問う作品 |
| 『深い河』 | ガンジス河で、人生や救いの意味を考える人々の姿 |
| 『白い人・黄色い人』 | ゲシュタポに同調した主人公の残虐性や弱さを描く |
| 『十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』 | 未発表のエッセイを書籍化。手紙の書き方の指南書。 |
| 『わたしが・棄てた・女』 | 弄ばれても、一途に慕う女性主人公の姿を描く |
| 『侍』 | キリスト教に入信した侍を帰国後に待ち受ける運命とは |
| 『王妃 マリー・アントワネット』 | フランス革命に翻弄される王妃の一生を描く |
『沈黙』
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信仰の問題と文化の絡みを知りたい人におすすめです。主人公は、島原の乱が鎮圧された後のキリシタン弾圧下の日本に潜入し、やがて投獄されるポルトガル人司祭。彼は神の存在を信じていても、『なぜ救済せずに黙ったままなのか』と苦悩します。迷いながらも教えを捨てざるをえない決意、キリスト教を信じる国々と日本の思想との超えられない壁を丹念に描写。本作品は海外で映像化され、話題になりました。
『海と毒薬』
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映像化され、世間に注目された重厚な作品を読もうとする人におすすめ。第二次世界大戦末期に行われた、米兵捕虜の生体解剖事件を下敷きにした長編小説です。大学病院の助手が主人公で、教授から打診されて解剖への参加を決意。事件の描写から、『なぜ残虐なことができたのか』『良心はないのか』と、現代の感覚では納得しがたい心理や問題点をあぶり出しています。
『深い河』
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自分の生き方について、立ち止まって考えたい人におすすめ。インドのガンジス河で出会った五人の日本人は、おのおの深い失望を抱えていました。現在に至るまでを振り返り、五人は大河を前に思索を重ねます。遠藤周作の集大成と評価されました。愛情や信じる神、それぞれの人生など、哲学書のようにも感じられる作品。映像化もされています。
『白い人・黄色い人』
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『親しい人を追い詰める人の姿を通じ、相手が赦されるのか』疑問を感じた人におすすめしたい二作の連作小説です。
『白い人』はナチスに加入した主人公と、拷問に苦しむ敬虔なキリスト友人の話。主人公がさらにひどい拷問をし、友人を追い詰めようとするのには、彼なりの理由がありました。『黄色い人』は、西洋のキリスト教の神父と独特な世界観を抱く日本人との文化的な違いを描いた話です。互いに認め合い、許しあえるのかがポイントとなります。
『十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』
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人の心を揺さぶるような手紙や、相手の心に寄り添うメッセージを伝えたい人におすすめ。本作品は手紙を書く前の準備から相手への気づかいができる文章を、場面ごとに書く秘訣を紹介したエッセイ風の指南本です。
長い年月を経過して、ようやく発見された未発表の原稿がまとめられています。古臭さは感じられず、軽妙な語り口で、作者のほかのエッセイのように気軽に読み進められる内容です。『手紙を書いてみたくなった』という読後感を持つ人もいます。
『わたしが・棄てた・女』
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辛酸をなめつつも非情な恋人に片想いし続け、一途に生きた女性の話にこころ寄せたい人におすすめ。映像化やミュージカルの原作にもなり、現代でも主人公の気持ちに共感する女性は少なくありません。
主人公の男子大学生は、遊び目的で知り合った若い女性を捨て去り、就職先の社長の親族と婚約します。棄てられた女性は主人公を忘れられず、不幸にも不治の病にかかり療養所へ入所の憂き目に。主人公の婚約者と知り合いだった女性は、結婚が近いことを知り、自分が棄てられたと悟ります。
『侍』
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キリスト教の信仰と、命にかけても信念を大事にする武士の姿を描いた歴史小説を鑑賞したい人におすすめです。主人公のモデルは伊達政宗の家臣で、藩主の命令でヨーロッパに派遣された支倉常長(文中では、東北の藩の下級武士『長谷倉六右衛門』)。
主人公の長谷倉は、親書を手にし、ローマ法王に謁見するよう藩主から命じられました。しかし、面会はキリスト教徒に限られ、改宗して洗礼を受け入れざるをえません。数年後にやっと帰国しましたが、すでに幕府はキリスト教を厳しく禁じ、鎖国へと向かう政策を進めていました。主人公は武士の信念と信仰の間で窮地に立たされます。
『王妃 マリー・アントワネット』
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悲劇の王妃、マリー・アントワネットの運命に気持ちを寄せる人におすすめ。ミュージカルの原作にもなり、写実的な文章で場面の情景や心の動きがわかりやすく、上下巻と長編小説でも飽きません。
愛らしい14歳のオーストリアの王女が、フランスの王妃となりヴェルサイユに君臨。その後、平民の気持ちに寄り添えずに断頭台で消えるまでを描いています。フェルセン伯爵との恋愛と王妃を助けようとする様子に感銘を受けたり、牢獄での姿を丁寧に記されていたりして、涙する女性が多いようです。
遠藤周作のおすすめ作品でよくある質問(FAQ)
- 遠藤周作の代表作は何ですか?
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人の弱さや信仰、救いを描いた『沈黙』『海と毒薬』『深い河』の三作品です。
- はじめて遠藤周作の本を読むなら何がおすすめですか?
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まずは肩のこらない作品、短編のエッセイがおすすめです。
遠藤周作の作品をおすすめ!人の心に寄り添う本を探している人へ
遠藤周作の作品をおすすめするのは、読み手の気持ちや悩みに寄り添うような本を探している人です。長編の中には、心理描写が丁寧に書かれていても、宗教や立場や文化の違いを扱った重厚な作品も多く見られます。読みこなせるか心配になる人も少なくありません。まずはユニークな語り口の短編エッセイから、気楽な気持ちで選んでみてはいかがでしょう。