小野不由美の代表作は、2020年に吉川英治文庫賞を受けた『十二国記』シリーズと、2013年に第26回山本周五郎賞を受けたホラー『残穢』です。ファンタジーから入るなら『月の影 影の海』、ホラーから入るなら『残穢』か『営繕かるかや怪異譚』が最初の1冊に向いています。この記事では、代表作5点を刊行年つきで紹介します。
小野不由美とは|ファンタジーとホラーを両方書く作家

小野不由美は、1960年12月24日生まれ、大分県中津市出身の小説家です。大谷大学文学部仏教学科を卒業し、1988年に『バースデイ・イブは眠れない』でデビューしました。翌1989年に始まった「悪霊」シリーズは、のちに全面改稿されて『ゴーストハント』全7巻として刊行され直しています。
1991年の『魔性の子』から始まる「十二国記」シリーズは、35年以上にわたって書き継がれている代表作です。主な受賞歴は次のとおりです。
- 2013年 第26回山本周五郎賞(『残穢』)
- 2020年 第5回吉川英治文庫賞(「十二国記」シリーズ)
ほかに『屍鬼』が1999年の第12回山本周五郎賞と第52回日本推理作家協会賞(長編部門)の候補、『営繕かるかや怪異譚 その弐』が2019年の第10回山田風太郎賞候補になっています。夫は『十角館の殺人』などで知られる推理作家の綾辻行人です。
小野不由美の作品全体を通していえるのは、キャラクターの感情の機微や葛藤といった丁寧な心理描写が読者の心に深く刺さり、人間ドラマという印象を強く与えることでしょう。
さらにホラー要素が加えられた作品では、日常にひそむ異常性や徐々に増していく恐怖感をあおる巧みな表現が、読者に緊張感を与え、怖いながらも次のページを繰る手を止められなくなります。影響を受けた作家として、スティーヴン・キングやディーン・R・クーンツの名前を挙げています。
読みたいジャンル別の入口は次のとおりです。
| 読みたいもの | 最初の1冊 | 分量 |
|---|---|---|
| 異世界ファンタジー | 『月の影 影の海』 | 上下巻 |
| ホラー(短編でお試し) | 『営繕かるかや怪異譚』 | 短編集 |
| ホラー(実話系の怖さ) | 『残穢』 | 1冊 |
| 長編ホラー | 『屍鬼』 | 文庫全5巻 |
| ミステリー×心霊 | 『ゴーストハント1 旧校舎怪談』 | 全7巻 |
小野不由美のおすすめ小説5選

代表作といえば「十二国記」シリーズですが、小野不由美の魅力はファンタジーだけではありません。ホラーとミステリーの両方に代表作を持っています。ここからは5作品を紹介します。
『月の影 影の海』(1992年・「十二国記」シリーズ)
現代世界と異世界を舞台にしたファンタジー「十二国記」シリーズで、十二国の世界そのものを描く最初の1冊です。2002年にNHKでアニメ化されました。シリーズ全体は2020年に第5回吉川英治文庫賞を受賞しています。
本作品の主人公は、現代日本に生きる女子高校生・中嶋 陽子(なかじま ようこ)。突然現れた謎の男に連れ去られ、目が覚めるとそこは別世界だったー。人々からの裏切り、妖魔との戦いに心身をすり減らしながらも、生きて元の世界へ戻ろうともがき成長していく少女の姿に目が離せません。
人を信じる強さを語りかけてくるこの作品は、現代社会において忘れがちな何かを思い出させてくれることでしょう。
シリーズは新潮文庫にまとまっており、刊行順は次のとおりです。1991年の『魔性の子』はもともと単独のホラーとして書かれ、2012年の新潮文庫版からシリーズに組み入れられました。異世界の物語から読みたい場合は『月の影 影の海』から入って問題ありません。
- 魔性の子(1991年)
- 月の影 影の海(1992年)
- 風の海 迷宮の岸(1993年)
- 東の海神 西の滄海(1994年)
- 風の万里 黎明の空(1994年)
- 図南の翼(1996年)
- 黄昏の岸 暁の天(2001年)
- 華胥の幽夢(2001年)
- 丕緒の鳥(2013年)
- 白銀の墟 玄の月(2019年・全4巻)
2019年の『白銀の墟 玄の月』は、長編としては18年ぶりの新作として話題になりました。さらに新潮文庫からは『幽冥の岸』が2026年9月17日に刊行される予定です。
『ゴーストハント』シリーズ(全7巻・角川文庫)
1989年から刊行された「悪霊」シリーズを全面改稿し、全7巻として出し直した作品です。2020年から2021年にかけて角川文庫版がそろい、いまはこちらで読めます。ミステリー要素とホラー要素の両方が巧妙に絡み合い、ドキドキ感を味わえます。2006年にはテレビ東京系でアニメ化されました。
高校生である谷山麻衣(たにやま まい)は、ひょんなきっかけから、心霊現象を科学的に調査している研究所のアシスタントをすることに。そこの所長は生意気な自信家の、17歳の美少年。2人は協力して事件を無事解決することができるのか。
次々登場する個性的なキャラクターたちや、軽快なやり取りも楽しめるのが魅力です。夜に読み始めると、すべての謎が解けるまで眠ることができなくなるので、しっかり時間を確保して読み始めるのがおすすめです。
こうした怪異やミステリーの要素を含みつつ、個性的なキャラクター同士の軽快な掛け合いを楽しめる現代のエンターテインメント小説を探している方には、こちらの作家もおすすめです。
西尾維新おすすめ作品については、下記の記事で詳しく解説しています。

『屍鬼』(1998年・新潮社/新潮文庫は全5巻)
1998年に上下巻で刊行され、2002年に新潮文庫で全5巻になった長編です。1999年の第12回山本周五郎賞と第52回日本推理作家協会賞(長編部門)の候補になりました。2010年にフジテレビの「ノイタミナ」枠でアニメ化され、漫画化もされています。漫画版では、あえて展開を小説と異なるようにしたとのことで、それぞれ楽しむことができますよ。
土葬という昔ながらの風習が残る、人口1300人余りの孤立した集落。ある夏の日、3人の村人が死体で発見されるところから物語が動き出します。事件性はないものとして扱われたものの、その後から連続する不審死が村を襲い始め、恐怖に覆われていく村人たち。一体村に何が起こったのか。
スティーブン・キング著『呪われた町』のオマージュと小野不由美自身が語る本作品。後半になればなるほど、伏線が回収されつつ先の読めない展開に、思わず息を止めながら読んでしまうかもしれません。
『残穢』(2012年・新潮社)
2013年に第26回山本周五郎賞を受賞し、2016年1月に竹内結子主演で『残穢 -住んではいけない部屋-』として映画化された作品です。「残穢」は「ざんえ」と読み、清浄ではないけがれた悪しきものが残った状態を意味します。
ある日、小説家である「私」に届いた女性読者からの手紙。彼女が住むマンションでは不思議な音や気配がするとのこと。一緒に真相を調査するにつれ、過去の因縁から恐怖は拡大していきます。
実話なのではと感じるほど、リアルな描写のドキュメンタリー・ホラー作品。読了後は、自分にも「穢れ(けがれ)」が染み付いてしまったのではないかと、恐怖のあまり本を手放したくなるかもしれません。
『営繕かるかや怪異譚』(2014年・KADOKAWA)
「営繕」とは、建築物の営造と修繕のことを指す言葉です。つまり、建物を建てたり直したりすること。怪異譚と営繕が一体どうつながるのか、疑問ですよね。
舞台は日本の古い家屋。何度閉めても開いている奥座敷。誰もいないはずの屋根裏から感じる人の気配。先ほどそこにいた人は、存在するのかしないのか…。
さまざまな怪奇現象に向き合うのは、大工である営繕屋の尾端。彼は怪異を悪しきものと扱わず、その哀しい存在にそっと寄り添い、人とどう共存できるかを模索していく。
静かな怖さが特徴で、1話ごとに完結する短編集です。雰囲気を伝える描写が素晴らしく、懐かしさと切なさを感じることでしょう。
シリーズはその後も続いており、2026年時点で次の4冊が刊行されています。1冊が短編集なので、どの巻から読んでも構いません。
- 営繕かるかや怪異譚(2014年)
- 営繕かるかや怪異譚 その弐(2019年/第10回山田風太郎賞候補)
- 営繕かるかや怪異譚 その参(2022年)
- 営繕かるかや怪異譚 その肆(2025年)
短編集なので、気に入った1話から作家の文体を確かめられます。
監修者の視点:長いシリーズは短編集で相性を見る
田中寛大古書店を運営していた時期(2019〜2022年)に扱った在庫は、出品から売れるまでの中央値が37日、30日以内に45%が動きました。ただ2冊以上繰り返し売れたのは6,951タイトル中959タイトル、全体の13.8%にとどまります。長く読み継がれてきた本だけが何度も動く、という傾向が見受けられます。
小野不由美はシリーズが多く、十二国記は10冊、ゴーストハントは7巻あります。いきなり全巻に手を出すと途中で止まりやすいので、まず短編集の『営繕かるかや怪異譚』か1冊完結の『残穢』で文体との相性を確かめ、合うと分かってから長いシリーズに進む順番をおすすめします。
小野不由美の作品についてよくある質問
- 小野不由美の代表作はどれですか?
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「十二国記」シリーズと『残穢』です。十二国記は2020年に第5回吉川英治文庫賞を受賞し、『残穢』は2013年に第26回山本周五郎賞を受賞しました。ほかに1998年の長編ホラー『屍鬼』も代表作に挙げられます。
- 十二国記はどの順番で読めばいいですか?
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刊行順に読むのが基本です。ただし1冊目の『魔性の子』はもともと単独のホラーとして書かれ、あとからシリーズに組み入れられた作品なので、異世界の物語から読みたい場合は『月の影 影の海』(1992年)から入って構いません。以降は『風の海 迷宮の岸』『東の海神 西の滄海』『風の万里 黎明の空』と続きます。
- 小野不由美のホラーでおすすめはどれですか?
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まず短編で試すなら『営繕かるかや怪異譚』(2014年)です。1話ごとに完結し、怪異を退治せずに折り合いをつけていく静かな怖さが特徴で、シリーズは2025年の『その肆』まで4冊出ています。実話に近い手触りを求めるなら山本周五郎賞受賞作『残穢』、長編なら『屍鬼』が向いています。
- 「悪霊」シリーズと『ゴーストハント』の違いは何ですか?
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同じ物語です。1989年から講談社X文庫ティーンズハートで刊行された「悪霊」シリーズを全面改稿し、『ゴーストハント』全7巻として出し直したものです。いま新刊で手に入るのは2020年から2021年に刊行された角川文庫版になります。
- 十二国記の新刊は出ますか?
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新潮文庫から『幽冥の岸』が2026年9月17日に刊行される予定です。長編としては2019年の『白銀の墟 玄の月』(全4巻)以来になります。
ファンタジーなら『月の影 影の海』、ホラーなら『営繕かるかや怪異譚』から
小野不由美は、壮大な異世界ファンタジーとホラー・ミステリーの両方に代表作を持つ作家です。異世界ものが読みたいなら『月の影 影の海』(1992年)、怖い話を短く試したいなら『営繕かるかや怪異譚』(2014年)から入るのが確実です。ホラー小説をほかにも探している方は、小説の読み方のコツをまとめた記事もあわせてどうぞ。










