奥田英朗は、ユーモラスな人間ドラマから重厚なサスペンスまでを描き分ける筆力と、読書初心者でも没頭できる読みやすさを兼ね備えた、日本を代表するエンターテインメント作家です。
コメディタッチの作品から社会派ミステリーまで作風が幅広いため、自分の好みに合った一冊を見つけることで、より深くその世界観を楽しむことができます。
この記事でわかること
- 奥田英朗の作家としての特徴と意外な経歴
- 失敗しない作品の選び方(受賞歴・メディア化作品一覧)
- 【厳選】絶対に読むべきおすすめ小説8選とあらすじ
奥田英朗さんの作品を通じて、新しい読書体験を始めてみましょう。
目次
奥田英朗の経歴や作風
奥田英朗さんは1959年、岐阜県出身の作家です。コピーライターや構成作家などを経験したのちに、1997年に「ウランバーナの森」で小説家デビューしました。2004年に「空中ブランコ」で直木賞を受賞したことをきっかけに広く知られるようになり、その後も「家日和」「オリンピックの身代金」など多くの受賞作品を生み出しています。
奥田英朗さんは、コメディから本格的なサスペンスまで幅広いジャンルで活躍している小説家です。どの作品も読みやすい筆致が特徴なので、読書に慣れていない初心者の方にもおすすめです。
奥田英朗作品の選び方
奥田英朗さんの作品選びに迷った場合の、選書のコツを紹介します。
受賞歴のある作品から選ぶ
まずは評価の定まった名作から入りたい方は、以下の主要な文学賞受賞作品から選びましょう。特に直木賞を受賞した『空中ブランコ』は入門編として最適です。
スクロールできます
| 受賞年 | 作品名 | 受賞した賞 |
| 2002年 | 邪魔 | 第4回大藪春彦賞 |
| 2004年 | 空中ブランコ | 第131回直木三十五賞 |
| 2007年 | 家日和 | 第20回柴田錬三郎賞 |
| 2009年 | オリンピックの身代金 | 第43回吉川英治文学賞 |
メディア化された作品から選ぶ
エンターテインメント性が高く映像化に適した作品が多いため、映画やドラマの原作から入るのもおすすめです。
主なテレビドラマ化作品
- 2001年:最悪
- 2005年:空中ブランコ
- 2013年:オリンピックの身代金
- 2016年:ナオミとカナコ
- 2019年:我が家のヒミツ
主な映画化作品
- 2005年:イン・ザ・プール
- 2007年:サウスバウンド
- 2012年:ガール
- 2022年:向田理髪店
奥田英朗のおすすめ作品8選
奥田英朗さんのおすすめ作品を紹介します。
イン・ザ・プール
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2002年に出版された、奥田英朗さんの代表作品のひとつです。2005年に映画化されました。
風変わりな精神科医・伊良部の元に訪れた患者に焦点を当てたオムニバス小説である本作。コミカルで読みやすい文体の中に、人間の心の内側に触れるような展開が隠れています。
精神科医・伊良部シリーズは本作を一作目として、「空中ブランコ」「町長選挙」「コメンテーター」と続刊が刊行されてます。気軽に読める短篇をお探しの方におすすめです。
空中ブランコ
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「イン・ザ・プール」に続く、精神科医・伊良部シリーズの二作目です。2004年に直木賞を受賞しました。
表題作は空中ブランコを跳べなくなってしまったサーカス団員が主人公。患者を振り回す奇想天外な伊良部の治療法とは?くすりと笑える短篇が5篇収録されています。前作同様、伊良部のとんでもない行動に目が離せない一冊です。
最悪
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2000年版「このミステリーがすごい!」で第7位にランクインした作品です。2001年にはテレビドラマ化されました。
不況にあえぐ真面目な鉄工所の社長、家庭問題やセクハラに悩む気弱な銀行員、その日暮らしの窃盗犯……無縁だった3人の人生が交差した時、運命が加速度的に転がり始めます。
比類なき犯罪小説と謳われる本作は、人間の本質と葛藤を描いた衝撃作です。
ガール
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2006年に刊行されたオムニバス小説です。2012年に映画化されました。
30代の女性の生き方を丁寧に描いた本作は、多くの読者の共感を呼びました。仕事、恋愛、結婚、自分らしい生き方とは……女性だけでなく、男性にも読んで欲しい一冊です。
サウスバウンド
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2005年に刊行された、家族をテーマにした長編小説です。2007年に映画化されました。
国家権力を嫌う元過激派の父の発案で、沖縄へ移住した上原家。それまで東京での暮らしを描いた第一部と、沖縄での日々を綴った第二部で構成されています。
読みやすく爽快感に溢れた本作は、初めて奥田英朗作品を読む方にもおすすめです。
リバー
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2022年に刊行された、奥田英朗さんの最新作です。(2025年2月現在)
連続殺人事件を中心に、容疑者、元刑事、被害者の家族など、さまざまな人物に焦点を当てた群像劇となっています。人間の内側に迫るストーリーと緊迫感溢れる展開に、読む手が止まらなかったという声も。圧巻の犯罪小説である本作は、ぜひ読んで欲しい一冊です。
どちらとも言えません
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総合スポーツ雑誌で連載していたものをまとめたエッセイ集です。
シニカルで軽妙な語り口で、スポーツに関する奥田英朗さんの意見がさまざまな角度から綴られています。スポーツ観戦中に誰もが感じる「あるある」な話や、各国の文化的背景にもズバッと切り込んでいる作品です。スポーツが好きな人もそうではない方も、ぜひ手に取ってみてください。
向田理髪店
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2022年に映画化された人気作品です。関連する6篇の短編が収録されています。
過疎化が進む寂れた炭鉱の町を舞台に、人々の暮らしと心情を丁寧に描いた作品です。若者の地元離れ、農家の後継者不足、介護問題、プライバシーについてなど、過疎地の現状をリアルに綴っています。決してハートフルな話ばかりではない、しかし生きていく上で大切なものは何かを考えさせてくれる一冊です。
奥田英朗作品に関するよくある質問(FAQ)
最後に、奥田英朗作品を読むにあたってよくある質問をまとめました。
- 奥田英朗の最高傑作はどれですか?
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一般的には直木賞を受賞した『空中ブランコ』が最高傑作と評されます。 大衆的な人気、文学的な評価、読みやすさの全てのバランスが良く、最初の一冊として最適です。一方、サスペンス好きの間では『最悪』や『リバー』を推す声も多くあります。
- 「伊良部シリーズ」はどの順番で読むべきですか?
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刊行順である『イン・ザ・プール』から読むのがおすすめです。
- イン・ザ・プール
- 空中ブランコ
- 町長選挙
- コメンテーター
の順で刊行されています。基本的には1話完結のオムニバス形式なのでどこから読んでも楽しめますが、キャラクターの背景を知るには1作目からの読書が推奨されます。
- 読書初心者でも読みやすいですか?
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非常に読みやすく、普段本を読まない方にこそおすすめです。 奥田英朗の文章はリズムが良く、難しい表現が少ないのが特徴です。特に『イン・ザ・プール』などのコメディ作品は、エンタメ性が高く、漫画を読むような感覚でスラスラと読むことができます。
奥田英朗の作品で読書の幅を広げよう
奥田英朗は、笑えるコメディから手に汗握るサスペンスまで、幅広いジャンルで高いクオリティの作品を生み出し続けている稀有な作家です。
まずは『空中ブランコ』や『イン・ザ・プール』などの代表作から手に取り、その圧倒的な「面白さ」と「読みやすさ」を体験してみてください。