ミステリーをはじめ、多彩なテーマを巧みに描く雫井脩介さん。多くの著書が映像化され、文学賞受賞やランキング上位の常連として、幅広い読者から支持を集めています。
この記事では、雫井脩介さんのおすすめ小説を紹介します。初心者向けに選書のポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
雫井脩介の経歴と作風
雫井脩介さんは、1968年愛知県生まれの作家です。出版社で編集者として勤務していた経歴があります。1999年に「栄光一途」で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞、翌年に作家としてデビューしました。2004年に刊行された「犯人に告ぐ」が週刊文春ミステリーベスト10の第一位に選ばれ、2005年に大藪春彦賞を受賞。その後、推理小説を中心に、恋愛小説や家族小説など幅広い分野で活躍しています。
繊細な心理描写で、人間関係の細やかな動きを丁寧に描写する雫井脩介さん。読みやすい作品が多いので、読書に慣れていない人にもおすすめの作家です。
雫井脩介の作品選びに迷ったら
雫井脩介さんの作品を選ぶポイントを解説します。
映像化作品を読もう
代表作「犯人に告ぐ」をはじめ、雫井脩介さんの作品は多数映像化されており、多くの読者から支持を得ています。どの作品を読むか迷ったときは、話題になった映像化作品から選んでみましょう。
テレビドラマ(一部抜粋)
2005年 『火の粉』
2014年 『ビター・ブラッド〜最悪で最強の親子刑事〜』(原作:ビター・ブラッド)
2019年 『仮面同窓会』
映画
2007年 『クローズド・ノート』
2007年 『犯人に告ぐ』
2018年 『検察側の罪人』
2020年 『望み』
ランキング上位の作品を読もう
日本を代表するミステリーランキングで、たびたび上位に選ばれている雫井脩介さん。ミステリーファンから高い支持を集める人気作から読み始めるのもおすすめです。
このミステリーがすごい!(宝島社)
2005年 『犯人に告ぐ』8位
2014年 『検察側の罪人』8位
2017年 『望み』13位
週刊文春ミステリーベスト10(文藝春秋)
2001年 『虚貌』24位
2004年 『犯人に告ぐ』1位
2013年 『検察側の罪人』4位
2016年 『望み』9位
雫井脩介のおすすめ小説
雫井脩介さんのおすすめ作品を紹介します。
「犯人に告ぐ」
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2004年に刊行された、雫井脩介さんの代表作です。2007年に映画化され、ベストセラー作品となりました。
連続児童殺人事件の捜査が難航する中、警察は前代未聞の手法としてテレビを通じた呼びかけを開始することに。地方に左遷されていた訳アリの刑事・巻島が犯人に向けて語りかける姿は、やがて世間を巻き込む騒動へと発展していきます。はたしてこの「劇場型捜査」は成功するのか?ハラハラドキドキが止まらない、警察小説の傑作です。
「火の粉」
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2003年に刊行された作品です。2005年と2016年にテレビドラマ化されています。
元裁判官・梶間の隣に引っ越してきたのは、かつて彼が無罪判決を下した殺人事件の被告である武内という男。人当たりがよく親切な彼に梶間の家族も好意を抱きますが、次第に違和感が積み重なっていき……。日常が崩れていく恐怖を描いた、心理サスペンスの傑作です。
「クローズド・ノート」
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2006年に刊行された恋愛小説です。2007年に映画化されています。
大学生の香恵が自室で見つけたのは、前の住人が残した一冊のノート。そこには、とある女性教師の静かで丁寧な日々が綴られていました。やがて読んでいくうちに、香恵の心にも変化が訪れるようになり――。時を超えて心が触れ合う、瑞々しくあたたかな感動作です。
「望み」
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2016年に刊行された作品です。2020年に映画化されました。
突然失踪した高校生の息子・規士。失踪と同時期に同級生が殺害され、規士を含む三人の少年が行方不明に。現場では逃走する二人の少年の姿が目撃されており、規士は「被害者として命を落としたのか」「加害者として逃走しているのか」判然としないまま――。極限の状況下で、親として抱く「望み」が揺れ動く様子を巧みに描いた本作。濃厚な心理描写で綴られた、読む手が止まらない作品です。
「クロコダイル・ティアーズ」
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2022年に刊行された作品です。同年の直木賞の候補に選ばれました。
老舗陶磁器店を営む貞彦と暁美。息子が殺害され、犯人が嫁である想代子の元交際相手だったという事実が浮上します。裁判で男が「想代子から夫殺しを依頼された」と供述したことから、家族は疑念の渦に飲み込まれてしまい─…。家族の絆が試される、心を抉る圧巻の長編小説です。
「虚貌」
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2001年に刊行された作品です。2005年にテレビドラマ化されています。
岐阜県で起きた運送会社社長一家殺傷事件。元社員である荒は仲間に裏切られ主犯に仕立てられてしまい、犯人のうちもっとも重い刑を科せられることに。そして21年後、仮出所した荒の共犯者が次々と殺されていき……。復讐と人間の仮面を浮かび上がらせる、心理犯罪小説です。
「検察側の罪人」
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2013年に刊行された作品です。2018年に映画化されました。
刑事部に配属された新人検事の沖野は、師匠である最上と共に老夫婦殺害事件を捜査することに。やがて容疑者として時効寸前の未解決事件の参考人・松倉が浮上すると、最上は異常なほどの執念深さを見せ始めます。本当の正義とは一体何か?司法の光と闇を描いた作品です。
「ビター・ブラッド」
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2007年に刊行された作品です。2014年にテレビドラマ化されています。
新人刑事の佐原夏輝は、配置先の銀座署で少年時代に別れた実の父・島尾明村とバディを組むことに。対照的な性格の父子が難事件に挑みながら、刑事としても、家族としても互いを認め合っていく様子が軽快に描かれています。テンポのいい文体で、初めて雫井脩介さんの作品を読む方にもおすすめです。
雫井脩介が描く人間ドラマを楽しもう
雫井脩介さんの小説は、登場人物の繊細な心の動きを丁寧にすくい上げ、読者の共感を呼ぶ作品が多くそろっています。ミステリーに加え、家族の物語や切ない恋愛を描いた作品も多く手掛けており、ジャンルの幅広さも魅力のひとつです。ぜひ気になる一冊を手に取ってみてください。