「ブックディレクター」という言葉を聞いたことはありますか?
近年、本の需要が年々減少する中で、新たに注目されつつある本に関する職業が「ブックディレクター」です。本をただ読むだけでなく、空間やコンセプトに合わせて“本の体験”をプロデュースするこの仕事には、独自の魅力と可能性があります。
この記事では、ブックディレクターの概要や仕事内容、そして代表的な人物についてご紹介します。
ブックディレクターとは?

ブックディレクター(Book Director)とは、本と人、本と空間、本とコンセプトの間を“つなぐ”専門家です。
「ディレクター」という職業名には、プロジェクトの方向性を決め、関係者を調整しながら進行する役割が含まれます。たとえば、Webディレクターが開発チームとクライアントの橋渡しをするように、ブックディレクターも「本」という媒体を使って、クライアントの意図や空間の価値を引き出します。
ブックディレクターの仕事内容

ブックディレクターの仕事は多岐にわたります。以下は主な業務内容です。
選書(本のセレクト)
クライアントの要望やテーマ、空間の雰囲気に合わせて本を選びます。たとえば、美容室やホテルのロビーに置かれている書籍も、ブックディレクターによって選ばれたものかもしれません。
企画・編集
イベントや展示のための「本を使った演出」も企画します。たとえば、あるテーマに沿った本棚の設計や、期間限定のポップアップライブラリーの立ち上げなどが挙げられます。
キュレーション
本を一冊ずつ紹介するだけでなく、複数冊を組み合わせることで世界観やストーリーを作り上げるのも大事な仕事です。
執筆・発信
自身でコラムや解説記事を書くこともあります。本の魅力や背景を伝えることで、より深い読書体験を提供します。
ブックディレクションに近い個人向けのサービスとして、当社でも読書タイプに合わせたパーソナル選書を提供しています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

ブックディレクターになるには?

ブックディレクターになるために、必須の資格や免許はありません。問われるのは、幅広い本を知っている選書のセンスと、本を通して場やテーマを形にする企画力です。
王道のルートは、書店・出版社・図書館など本に関わる現場で経験を積むこと。あわせて、SNSやブログで選書・書評を発信して実績を可視化したり、パーソナル選書のように小さく仕事として始めたりする人も増えています。特別な学歴よりも、「この人に本を選んでほしい」と思わせる実績づくりが近道です。
本と場づくりの両方に関心があるなら、街の独立書店の棚づくりから学べることも多いはずです。まずは自分の「推し本棚」を人に見せるところから始めてみましょう。
先駆者・幅允孝さんに学ぶ
ブックディレクターという職業のパイオニアとして知られているのが、幅允孝(はば よしたか)さんです。ブックディレクションの第一人者として、企業や公共空間に数多くの本のセレクトを手がけています。
そんな幅さんの仕事に密着したのが、ジャーナリストの高瀬毅さんによる『本の声を聴け ブックディレクター幅允孝の仕事』(文藝春秋・2013年)です。ブックディレクションの現場や、依頼する企業側の意図まで丁寧に追った一冊で、幅さんの仕事術や思想を知るのに最適です。
この本を読むことで、単なる読書ではなく“本を通じた体験づくり”の魅力が見えてきます。
監修者の視点:選書は「選ぶ」より「届ける」
田中寛大オンライン古書店を約2年半で8,000冊超販売し、いまはパーソナル選書も手がける立場からいうと、本は「どの一冊を選ぶか」だけでなく「どこに、どう並べて届けるか」で価値が大きく変わります。ブックディレクターは、その届け方そのものをデザインする専門職だと感じます。
未経験から目指すなら、まずは身近なテーマで数十冊を選び、並べ、人に手渡してみるのがおすすめです。相手の反応を手がかりに選書の精度を少しずつ上げていく——この積み重ねが、遠回りに見えていちばんの近道になります。
まとめ:本の未来をつむぐ「読書のディレクター」
今回は、ブックディレクターという新しい職業について紹介しました。
「読む」ことにとどまらず、「選ぶ」「伝える」「空間を演出する」ことを通じて、本とクライアントをつなぐ――それがブックディレクターの仕事です。
本が好きな人、本の力を信じている人にとって、ブックディレクターは非常にやりがいのある職業です。今後さらにニーズが広がる可能性もあり、注目すべき分野といえるでしょう。











