コリンデクスターはイギリスの推理小説作家。優れたミステリーに贈られる『ゴールド・ダガー賞』の受賞経験もあります。本記事ではコリンデクスターの作風やおすすめの小説を紹介しています。
目次
コリンデクスターの作風
コリンデクスターの作品の作風を解説しています。(国内では一部未発行の作品もあるため、入手が難しい場合もあります。)
モース警部の推理小説が有名
コリンデクスターの小説は『モース警部シリーズ』が有名です。多くの作品はモース主任警部が探偵役を務めています。モースはテムズバレー警察本部犯罪捜査課の主任警部。酒と女性とクラシック(ワーグナー)が好き、クロスワードパズルが趣味の40代独身の男性です。ときには捜査で知り合った女性がモースに好意を持つことも。自分の名前を嫌い『E.モース』と略称を用いています。
探偵役の推理が二転三転
モースはインテリですが、推理の方法は論理的ではありません。自分の直観に従って仮説を無理に当てはめていく手法です。部下たちは、二転三転するモースの推理や捜査方針に振り回されます。モースは仕事にひたむきに取り組み、一目置かれる存在です。
魅力的な登場人物が多数
主人公のモースを取り巻く登場人物は魅力的で、多くの読者に好まれています。代表的な登場人物、テムズバレー警察本部の3人を紹介します。
- ルイス部長刑事…モースとは正反対の実直な性格。聞き込みなど粘り強い捜査を好みますが、突飛な捜査をするモースに振り回されても彼を信じています。モースにとって直属の部下であり、最も信頼できる存在です。
- ストレンジ警視正…モースの上司。モースの能力を高く評価しています。『推理や捜査が脇にそれることもあります。しかし、誰よりも早く真相にたどり着く。』と認めています。
- マックス警察医…モースの理解者であり友人の1人で、病理学者。被害者の死亡時刻をしつこく質問するモースにあきれながらも、軽くあしらっています。モースの名前をからかっておもしろがる様子も。
コリンデクスターのおすすめ作品14編!
国内で発行されているコリンデクスターの小説は14編を紹介します。出版は早川書房(『ハヤカワ・ポケット・ミステリ』および『ハヤカワ・ミステリ文庫』)。短編以外の作品、長編13編は前の書籍の内容を後から登場人物が述べている場面もあり、下記で紹介した通り出版順に読むのがおすすめです。ネタバレの心配がありません。
注…2025年3月現在、未訳もしくは未発行の短編があります。
『ウッドストック行最終バス』
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若い2人の女性が、ウッドストックに行く最終バスに乗車しようとしていました。しかし、停留所で待っていてもバスが来ません。1人はヒッチハイクを企て、酒場で遺体となって発見。もう1人の女性は行方不明。所轄のモース主任警部が事件を担当しましたが、事故で入院する羽目に。療養中に仮説を立てて推理をし、事件の解決を試みますが…。
『キドリントンから消えた娘』
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2年前にキドリントンを出たまま行方不明の女性、バレリー。彼女から自宅の両親あてに、心配しないようにという内容の手紙が届きます。前任の警部から引き継ぎをしたモースは、この手紙は偽物で彼女はすでにこの世にいないと推理。しかし、彼女をめぐる謎は意外な様相を見せ、モースの推理は目まぐるしく変化していきます。
『ニコラス・クインの静かな世界』
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重度の難聴を抱えるニコラスクインは、海外学力検定試験の委員に選出されます。反対する者もいましたが、人柄や能力を高く評価する人も。クインは読唇術を使って仕事を順調にしていました。職について3か月が経ち、殺されてしまいます。モースと部下のルイスの捜査は難航します。
『死者たちの礼拝』
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休暇中のモースは暇つぶしに教会に出かけます。前年に教会の一室で教区委員の刺殺体が見つかった事件を耳に挟みました。しかも、体内には致死量のモルヒネも検出され、確実に殺そうとしたのかどうか…。その後に牧師が墜落して亡くなったとのこと。モースは直観的に殺人事件と判断して捜査を進めますが、解決には程遠いようです。
『ジェリコ街の女』
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パーティでジェリコ街に住む女性と知り合ったモース。彼女と気が合い、会う約束をしたモースは彼女の家に立ち寄りました。留守ではないかと、仕方なく警察での勤務に戻りますが、彼女は首つり自殺をしていた様子。モースは自殺という判断に納得せず、捜査担当者がいるにもかかわらず独自捜査をすることに…。
『謎まで三マイル』
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オックスフォード大学の教授が失踪後、近くの運河から切断遺体が発見。遺留品からは教授の持ち物とおぼしき物があり、モースも教授が被害者として事件の捜査をしました。しかし、教授から生存を知らせる手紙が。主な容疑者は5人に絞られ、被害者と犯人は誰か、動機も何かわからず、捜査は困難を極めます。
『別館三号室の男』
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年が明けてホテルの別館3号室に、大晦日の仮装コンテストで優勝した男の遺体が残されていました。モースはコンテスト参加者の中に犯人がいるのではと仮説を立てます。ただ、被害者も含め宿泊客はすべて嘘の名前を使い、被害者の妻とされていた人物も消え失せた様子。解決の手がかりは何もありません。
『オックスフォード運河の殺人』
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ゴールド・ダガー賞受賞作。胃潰瘍で倒れたモースは、命に別状はなくても入院を余儀なくされます。暇つぶしにアマチュアの研究者が書いた『オックスフォード運河の殺人』という本を読むことに。モースは著者がミスをしていることに気づきます。実際の殺人の犯人は誰なのか、安楽椅子探偵のモースの出した結末はどのようなものでしょうか。
『消えた装身具』
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アメリカ人のツアー客の女性がホテルで死亡。殺人事件の可能性は低いですが、彼女の持っていたアンティークの装身具が盗まれてしまいます。モースは気乗り薄。しかし、女性から装身具を受け取る約束をした博物館員が遺体で発見。連続殺人と見立て、モースはツアー客たちを調べます。
『森を抜ける道』
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ゴールド・ダガー賞受賞作、日本国内でも人気で『このミステリーがすごい!』5位に選出。休暇中のモースは、失踪したスウェーデンの若い女性の真相を語る詩が警察に送付されたという新聞記事を目にします。女性は森の中で殺されて発見を待ち望んでいるという内容のもの。事態を重く見たモースは失踪した森を捜査し、白骨遺体を発見します。
『カインの娘たち』
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大学教授が殺され、容疑者の男性も行方不明になり刺殺体で発見。2つの殺人では同じナイフが使われ連続殺人が疑われます。被害者を恨む3人の女性が容疑者に絞られますが、どの女性にも一見アリバイがあり犯行は不可能にかんじられますね。容疑者の1人に恋するモースの姿、50歳を過ぎて体調不良に悩まされる様子に心配する読者も。
『死はわが隣人』
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本作はシリーズの最後の作品になる予定だったとのこと。愛読者の猛反対で撤回されました。オックスフォード大学の次期学寮長の選挙を巡る中で、女性が殺害される事件が発生。闘病しながらルイスと捜査をするモース。事件の解決だけでなく、ルイスとの強い結びつきがわかる作品です。
『悔恨の日』
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病気療養で休むモースに上司のストレンジが事件の再調査を打診します。事件は1年前に起こった猟奇的な殺人で、看護師が自宅で夫に発見されたもの。いつもならモースが自ずと捜査を引き受けそうな事件ですが、あまり気が進まない様子。部下のルイスはそんなルースに不信感を抱きます。
本作はモースシリーズの最終巻でモースの死とともに完結します。モースの死後にある事実を知らされ、ルイスが彼の心情を想う姿が印象的です。
『モース警部、最大の事件』(短編集)
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本作は、『森を抜ける道』の後、『カインの娘たち』の前に発行された短編集。前後のつながりはないため、とくに読む順番に注意しなくても問題ないでしょう。モースシリーズ以外のノンシリーズ、シャーロック・ホームズのパロディなどの11編が掲載されています。
表題作は、クリスマスの日に起こった酒場での盗難事件。寄付金と娘へのお見舞いのぶどうを入れたバッグから寄付金400ポンドを盗まれた女性。容疑者は店内の常連客30名で、どの人も動機がありお金を盗む機会がありました。居合わせたモースは事件の解決をしようとします。
コリンデクスターがおすすめ!迷走する推理を楽しみたい人に
コリンデクスターの推理小説をおすすめしたいのは、主人公の推理が迷走して次々に話が展開していく様子を描いた作品を読んでみたい人です。予想もしない推理をするモース主任警部の姿をユーモラスに表現していて楽しめるでしょう。イギリス本国では、映像化されて親しまれる存在の探偵。日本でも動画サイトなどで視聴できますよ。
注…出版された書籍情報は2025年3月現在のデータを参考にしています。