泉鏡花の作品を読もうとしてもなかなか読みづらいという声もあるようです。本記事では、泉鏡花の作品の特徴と初めて読む人にもおすすめの小説について解説しています。
目次
泉鏡花の小説の特徴は?
泉鏡花の小説の特徴とはどのようなものでしょうか。簡単ではありますが、以下のような特徴があげられます。
幻想的で美しい世界
人ではない美しい妖怪や不思議な存在を登場させて、どことなく怖いようなイメージがあります。その中でも幻想的で美しい世界を表現するイメージが強いです。内容をはっきりと書かなくても、読者に想像の世界を膨らませて余韻を残すような作品も多くあります。
『観念小説』のジャンル
観念小説とは、人に言えない部分(現実世界では許されない秘めた恋、世間的に受け入れられない部分など)に踏み込むような内容を書いた小説のこと。泉鏡花の作品の多くは、観念小説のジャンルに含まれます。
美文調で読みにくい?
古めかしく装飾語が多い美文調の泉鏡花の文体は、読みづらいと敬遠する人もいるようです。しかし、音読すると文章にリズムがあり頭に入りやすいといわれています。音読が難しいのであれば、オーディブルなどの小説を読み上げるサービスや、動画サイトを利用するのもおすすめ。
内容を吟味したいのであれば、紙の本や電子書籍などの対訳本を読んでみるのもよさそうですね。下記のような本があります。
本当にさらさら読める!現代語訳版 泉鏡花 [怪異・幻想]傑作選
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本当にさらさら読める!現代語訳版 泉鏡花 [観念・人世]傑作選
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泉鏡花のおすすめ小説9選!
泉鏡花のおすすめ小説を9編紹介します。初めて読む人にもおすすめです。
『高野聖』
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作者の代表作の1つとして名高い作品。中国の怪奇小説から着想を得て書かれたといわれています。主人公の私は、帰省する汽車で会った僧侶と同宿することに。寝床で僧から若い頃の不思議な話を聞きました。修行のため飛騨の山を越える旅をした僧侶は、禍々しい雰囲気の美しい女と出会い誘惑されそうになります。その女の正体とは…。
『婦系図』
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本作品は、作者自身の体験を生かして書かれたのではないかといわれています。鏡花自身は、師の尾崎紅葉が亡くなった後、芸妓だった女性とよりを戻して結婚。現実ではハッピーエンドでした。
小説として発表された後、原作として演劇や映画などメディア化されています。主人公の文学士、早瀬主税と芸者のお蔦は恋仲で結婚を考えていました。しかし、早瀬の師匠は2人の付き合いに反対し別れさせました。早瀬は結婚制度に複雑な気持ちを抱きます。
『夜叉ヶ池』
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作者が初めて書いた戯曲で、さまざまな舞台で上演されています。夜叉ヶ池の竜神伝説をもとに書かれました。夜叉ヶ池に住む竜神が暴れて洪水を起こすのを防ぐため、鐘をついて竜を戒める役割をする夫婦。竜の白雪は恋の相手の竜のもとに行きたいが、戒めの鐘を鳴らす夫婦を恨んでいました。そんな中、夫婦の仲を引き裂こうとする出来事が。
『天守物語』
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作者本人が自身を持って発表した戯曲。鏡花の死後に映画や舞台で上演され、多くの人を魅了しています。姫路城の天守閣に住む謎の美人の妖精、富姫は地上を興味深げに見下ろしています。ある日、地上にいる鷹を奪い取ると若い美男子の鷹匠が、鷹を捕まえようとして天守閣に。姫と鷹匠の図書の助は互いに恋に落ちます。
『草迷宮』
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本作品も幻想的な美しさが感じられるという評価があります。表題に『迷宮』という語が入るだけあって、『不思議な世界に踏み入れて幻惑させられるかのようだ』といった感想を持つ人もいるようです。内容は、幼少期に亡き母が口ずさんでいた手毬唄をもう一度聞きたいと願う青年が、妖魔の住む古びた屋敷にたどりつく話です。
『義血侠血』
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本作品は、メディア化された『瀧の白糸』の原作です。水芸人の太夫、瀧の白糸は、法曹界を目指す若い男性と知り合います。彼女は東京で勉強をしたい男性に金銭的な援助を約束。彼が学業を修める時期になりましたが、瀧の白糸はお金を強奪されます。お金を工面しようとした彼女は、魔が差して強盗犯となり、検事となった男性の目の前に引き出されることに。
『歌行燈』
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本作は能楽の家に関係する話で、メディア化されています。作者の母は能楽や歌舞伎の太鼓を演奏する家の出身で、鏡花自身も能楽に造詣が深かったということ。主人公の喜多八は能楽の宗家の出身でしたが、謡の師匠を自殺に追い込み勘当されます。重病にかかった主人公は師匠の娘の三重に会い、二度と能に関わらない約束を破ってまで彼女に能と謡の稽古をつけることにしました。
『外科室』
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外科室を舞台に、伯爵夫人と高名な外科医の秘めた心の内を外科医の友人の目を通して表現した小説。身分にふさわしい結婚をしても幸せになれるのか、考えさせられる人もいるかもしれません。伯爵夫人の手術が行われることになったが、夫人は心に留めた秘密を言う恐れがあると麻酔を拒否します。周囲が止める中、外科医は彼女の意を汲んで手術を始めますが、彼女はメスを握って胸に突き立ててしまい…。
『春昼(しゅんちゅう)』
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春のうららかな日の中でうたた寝をするうちに、夢の中で出会ったものと恋に落ちる話です。主人公が観音堂の住職に呼び止められて、夢の中の恋バナを聞くという形。春の日差しとうたた寝が夢の中の世界のようでいて、美しい情景を表現しています。続きが気になったら、その後を書いた『春昼後刻』もぜひ。
美しい幻想的な世界が好きなら!泉鏡花の作品がおすすめ!
泉鏡花の作品をおすすめするのは、幻想的で美しい世界、美しくも恐ろしい話が好きな人です。文章が堅苦しいイメージがあり、難しく感じるのであれば、読み上げ機能がついた電子書籍などを活用したり、現代語訳がされている本を読んだりしてみるといいかもしれません。