読書中の音楽は、歌詞の有無で結論が変わります。歌詞つきの曲は読解の成績を下げることが実験で確認されており、内容を頭に入れたい読書には歌詞なしの曲が基本です。
一方で、音楽には読み始めのハードルを下げる働きもあります。この記事では、読書に音楽を使う場面の分け方と選び方の基準を整理したうえで、ジャズ・クラシック・洋楽からおすすめのBGM9曲を紹介します。
読書中に音楽を聴くメリットは「集中」より「リラックス」

落ち着いて読み始められる
音楽のいちばん確かな効果は、読書に入るまでの気持ちの切り替えです。周囲の生活音や話し声が気になる環境では、静かな曲を流したほうが本に向かいやすくなります。
コーヒーを淹れて、就寝前に落ち着いたジャズを流しながら読む。この習慣そのものが「本を開く合図」として働き、読み始めるまでの時間を短くしてくれます。
「集中力が上がる」とは限らない
よく言われる「音楽を聴くと集中力が上がる」は、読書に関しては条件つきです。歌詞のある曲では、むしろ読解の成績が下がることが報告されています。
Sunらの研究「Impact of background music on reading comprehension: influence of lyrics language and study habits」(Frontiers in Psychology・2024年/18〜21歳の90名を対象)では、歌詞のある音楽を流しながら読んだ場合、無音のときより読解の正答率が低下しました。妨害がいちばん強かったのは、読んでいる文章と同じ言語の歌詞だったときです。
注目したいのは、外国語の歌詞でも無音より正答率が下がった点です。「意味が分からない言語なら邪魔にならない」とよく言われますが、この研究の結果はそこまで単純ではないことを示しています。中国語話者を対象にした研究のため日本語話者にそのまま当てはまるとは言えませんが、母語か外国語かで妨害の程度が変わるという傾向は参考になります。
音楽を流しても読書に集中できない場合は、原因が音楽以外にあることもあります。「本が読めない・読書に集中できない原因は?」もあわせて確認してください。複数の本を並行して読むことで集中を保つ方法もあります。

読書に合う音楽の選び方3つの基準

| 基準 | 選ぶもの | 避けるもの |
|---|---|---|
| 歌詞 | インストゥルメンタル(楽器のみ) | 日本語詞の曲。内容を頭に入れたい場面では外国語詞も避ける |
| テンポ | スローテンポで展開の緩やかな曲 | アップテンポ・激しいビートの曲 |
| 音量 | ページをめくる音が聞こえる程度 | 曲のほうに耳が向く音量 |
基本は歌詞なし・スローテンポ・小さめの音量の3点です。読書中は文章を頭のなかで追いながら意味を組み立てているため、そこに別の言葉が流れ込むと処理がぶつかります。歌詞を外すだけで、この衝突は避けられます。
テンポの速い曲や激しいビートの曲は、体を動かす場面には向いていても読書には不向きです。読書中の音楽はあくまで背景で、主役になった時点で読書の邪魔になります。
ただし、これは「内容を正確に理解したい読書」の話です。読み慣れた小説を楽しむ場面や、雰囲気を作りたいだけの場面なら、歌詞のある曲を選んでも構いません。読む目的によって基準を切り替えるのが現実的です。
読書におすすめのBGM9選

ジャズ・ピアノ、クラシック、洋楽の3ジャンルから3曲ずつ紹介します。前半6曲は歌詞なしで内容を追う読書にも使え、後半3曲は歌詞ありのため雰囲気づくり向けです。
ジャズ・ピアノ系(歌詞なし)
Bill Evans「Waltz for Debby」
ジャズピアニスト、ビル・エヴァンスの代表曲です。1961年にニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードで録音されたライブ盤の表題曲として知られています。
ゆったりしたテンポでありながらメロディに起伏があり、静かすぎて眠くなるということがありません。アルバムを通して流しても曲調が大きく変わらないので、長めの読書時間にも向いています。
広橋真紀子「ホール・ニュー・ワールド」
ディズニー映画『アラジン』の主題歌を、ピアノアレンジで収録した「リラクシング・ピアノ」シリーズの一曲です。原曲を知っている人が多いぶん、歌詞がなくてもメロディだけで情景が立ち上がります。
ミドルテンポで音数が少なく、部屋のスピーカーから小さめの音量で流すのに向いています。聞き覚えのある曲は意識が向きやすいので、集中したいときは音量を絞ってください。
Paul Desmond「When Joanna Loved Me」
ジャズサックス奏者ポール・デズモンドの一曲です。デイヴ・ブルーベック・カルテットの「Take Five」の作曲者としても知られ、角の立たない柔らかい音色が特徴です。
昔ながらの喫茶店で流れていそうな落ち着いた曲調で、就寝前の読書に向いています。眠気を誘うほど穏やかなので、読み進めたい場面より、寝る前に少しだけ読む場面に合います。
クラシック(歌詞なし)
エリック・サティ「ジムノペディ」
フランスの作曲家エリック・サティが1888年に発表したピアノ曲集で、第1番から第3番までの3曲で構成されています。テレビやカフェでも流れることが多く、一度は耳にしたことがある人が多い曲です。
テンポが遅く音数も少ないため、読書のBGMとしては扱いやすい部類です。雨の日や、静かに読み進めたいときに向いています。
ゴセック「ガボット」
フランスの作曲家フランソワ=ジョセフ・ゴセックの代表曲です。ヴァイオリンの練習曲としても定番で、軽快なテンポと明るいメロディが特徴です。
ここまで紹介した曲とは逆に、テンポが速めのため精読には向きません。雑誌をめくるときや、目次と気になる章だけを拾い読みするときのほうが合います。
ショパン「別れの曲」
ショパンの練習曲 作品10 第3番で、「別れの曲」は日本での通称です。ショパン自身の練習曲のなかでも、旋律の美しさで広く知られています。
物悲しさのなかに前向きさがある曲調で、朝の読書にも合います。中盤に速く激しい部分があるため、通しで流すより穏やかな録音を選ぶと読書の邪魔になりません。
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洋楽(歌詞あり・雰囲気づくり向け)
ここからの3曲には歌詞があります。前述の研究のとおり、内容を正確に理解したい読書には向きません。読み慣れた本を楽しむときや、読書の時間そのものの雰囲気を作りたいときに使ってください。
Sam Smith「Stay With Me」
2015年2月に開かれた第57回グラミー賞で、「Stay With Me(Darkchild Version)」が年間最優秀レコード賞と年間最優秀楽曲賞を受賞した一曲です。サム・スミスは同じ年に最優秀新人賞と最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバム賞も受賞しています。
ピアノと歌声だけで構成されたバラードで、音の要素が少ないぶん歌詞つきの曲としては読書に馴染みます。コーヒーやお酒を片手に本を開く時間に合う一曲です。
Jordy Searcy「All Night」
アメリカのシンガーソングライター、ジョーディ・サーシーが2021年に発表した楽曲です。全体にメロウで、抑えた音量で流すと空気だけが残るタイプの曲です。
移動中や休憩時間に本を開くときに向いています。仕事から読書へ気持ちを切り替える合図としても使いやすい一曲です。
Ariana Grande「My Everything」
アリアナ・グランデが2014年に発表したアルバム『My Everything』の表題曲です。透き通った歌声のバラードで、静かな読書時間に合います。
ただし歌詞は失恋を歌った内容で、意味を追い始めると本から意識が離れます。歌詞に引っ張られやすい人は、この曲は読書の前後に聴くほうが向いています。
監修者の視点:BGMは「集中させる道具」ではなく「読み始める合図」
田中寛大大学院で学術書を読んでいた頃、BGMを流して読む日と無音で読む日を両方試しましたが、難度の高い本ほど音楽が邪魔に感じられました。文章を頭のなかで追う作業と、音楽を聴く作業がぶつかるためだと思います。
一方で、一度読んだ本を読み返すときや小説を楽しむときは、音楽があったほうが机に向かう時間が長くなりました。BGMは集中力を上乗せする道具というより、読み始めるための合図として使うと無理なく続きます。
読書中の音楽についてよくある質問
- 読書中に音楽を聴いてもいいですか?
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歌詞のない曲であれば問題ありません。読み始めるまでの気持ちの切り替えや、周囲の生活音を消す用途では効果が期待できます。内容を正確に理解したい読書では、歌詞つきの曲は避けてください。
- 読書中に歌詞のある曲を聴くとどうなりますか?
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読解の正答率が下がることが報告されています。Frontiers in Psychologyに2024年に掲載されたSunらの研究(18〜21歳の90名)では、歌詞のある音楽を聴きながら読んだ場合、無音のときより正答率が低下しました。妨害が最も強いのは、読んでいる文章と同じ言語の歌詞のときです。
- 外国語の歌詞なら読書の邪魔になりませんか?
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母語の歌詞よりは影響が小さいものの、無音と比べると正答率は下がっています。同研究では、英語の歌詞つき音楽を流した群の正答率が無音の群を下回りました。「意味が分からなければ大丈夫」とは言い切れません。
- 読書に向いている音楽のジャンルは何ですか?
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歌詞のないジャズ・ピアノとクラシックが定番です。テンポが遅く、音数が少なく、展開の緩やかな曲を選んでください。サティ「ジムノペディ」やビル・エヴァンス「Waltz for Debby」が代表例です。
- 読書用BGMの音量はどのくらいがいいですか?
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ページをめくる音が聞こえる程度が目安です。曲そのものに耳が向く音量まで上げると、音楽が主役になり読書の妨げになります。
まとめ:歌詞の有無で使い分ける
読書中の音楽は、歌詞なし・スローテンポ・小さめの音量が基本です。内容を頭に入れたい読書ではインストゥルメンタルを選び、歌詞のある曲は雰囲気づくりの場面に回してください。
音楽は集中力を上乗せする道具ではなく、本を開くまでの距離を縮める道具です。その前提で使い分ければ、読書の時間はもっと続けやすくなります。











