島田荘司(しまだ そうじ、1948年〜)は、広島県福山市出身の推理作家です。代表作は1981年のデビュー作『占星術殺人事件』。名探偵・御手洗潔と、刑事・吉敷竹史という性格の異なる2つのシリーズを書き分けてきました。
初めて読むなら『占星術殺人事件』から。この記事では、おすすめ7作を刊行年つきで紹介し、御手洗潔シリーズの長編17作と吉敷竹史シリーズの長編15作の読む順番も表にまとめます。
島田荘司とは|御手洗潔と吉敷竹史を生んだ本格ミステリーの書き手

島田荘司は1948年10月12日、広島県福山市の生まれ。武蔵野美術大学商業デザイン学科を卒業し、1981年に『占星術殺人事件』でデビューしました。この作品はもともと「占星術のマジック」の題で第26回江戸川乱歩賞に応募して最終候補に残ったもので、落選後に改題のうえ講談社から単行本化されています。
2008年に第12回日本ミステリー文学大賞を受賞。同じ2008年には、日本語圏以外の書き手も対象にした新人賞「島田荘司推理小説賞」が創設され、本人が最終選考を務めています。
主な受賞・候補歴は次のとおりです。デビュー前後に江戸川乱歩賞へ2年続けて残り、1980年代半ばには直木賞候補にも2度挙がっています。
| 賞 | 年 | 対象作 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 第26回 江戸川乱歩賞 | 1980年 | 「占星術のマジック」(のちの『占星術殺人事件』) | 候補 |
| 第27回 江戸川乱歩賞 | 1981年 | 『斜め屋敷の犯罪』 | 候補 |
| 第92回 直木三十五賞 | 1985年 | 『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』 | 候補 |
| 第94回 直木三十五賞 | 1986年 | 『夏、19歳の肖像』 | 候補 |
| 第12回 日本ミステリー文学大賞 | 2008年 | 作家としての業績に対して | 受賞 |
| 第1回 神奈川本大賞 | 2014年 | 『異邦の騎士』 | 受賞 |
島田荘司の作風|奇想のトリックと社会派の主題が同居する
島田荘司の作風は、物理的に大がかりなトリックと、実在の事件・史実を土台にした主題を同居させる点にあります。読むうえで押さえておきたい特徴は3つです。
- 建物や天体を使う大トリック…傾いた屋敷、星座、塔といった物理的な仕掛けが謎の中心に置かれる
- 史実・社会問題の取り込み…歴史上の出来事や社会の歪みが動機や背景として書き込まれる
- 探偵役が2系統…論理で解く占星術師の御手洗潔と、足で捜査する警視庁の刑事・吉敷竹史でタイプがまったく異なる
奇想を楽しみたいなら御手洗潔シリーズ、捜査と人間ドラマを読みたいなら吉敷竹史シリーズ、という選び分けができます。
島田荘司作品の選び方は3通り

作品数が多い作家なので、入口を決めてから読み始めるほうが迷いません。
- 御手洗潔シリーズから選ぶ…本格ミステリーの奇想を味わいたい場合。『占星術殺人事件』が第1作
- 吉敷竹史シリーズから選ぶ…刑事の捜査と人間ドラマを読みたい場合。『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』が第1作
- ノンシリーズから選ぶ…青春小説の『夏、19歳の肖像』や、実在人物を登場させた『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』など
御手洗潔シリーズの読む順番(長編17作)
御手洗潔シリーズは、登場人物の関係や過去が巻をまたいで積み上がるため、刊行順に読むのが基本です。長編の刊行順は次のとおりで、最新長編は2025年3月に原書房から刊行された『伊根の龍神』です。
| 巻 | 作品 | 刊行年 |
|---|---|---|
| 1 | 『占星術殺人事件』 | 1981年 |
| 2 | 『斜め屋敷の犯罪』 | 1982年 |
| 3 | 『異邦の騎士』 | 1988年 |
| 4 | 『暗闇坂の人喰いの木』 | 1990年 |
| 5 | 『水晶のピラミッド』 | 1991年 |
| 6 | 『眩暈』 | 1992年 |
| 7 | 『アトポス』 | 1993年 |
| 8 | 『龍臥亭事件』 | 1996年 |
| 9 | 『ロシア幽霊軍艦事件』 | 2001年 |
| 10 | 『魔神の遊戯』 | 2002年 |
| 11 | 『ネジ式ザゼツキー』 | 2003年 |
| 12 | 『龍臥亭幻想』 | 2004年 |
| 13 | 『摩天楼の怪人』 | 2005年 |
| 14 | 『星籠の海』 | 2013年 |
| 15 | 『屋上の道化たち』 | 2016年 |
| 16 | 『ローズマリーのあまき香り』 | 2023年 |
| 17 | 『伊根の龍神』 | 2025年 |
このほかに『御手洗潔の挨拶』『御手洗潔のダンス』をはじめとする短編集が多数あります。短編集は長編の合間に読んでも問題ありません。
吉敷竹史シリーズの読む順番(長編15作)
吉敷竹史シリーズは1作ごとに事件が完結しますが、元妻・通子との関係が物語の縦軸になっています。こちらも刊行順が読みやすい順番です。
| 巻 | 作品 | 刊行年 |
|---|---|---|
| 1 | 『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』 | 1984年 |
| 2 | 『出雲伝説7/8の殺人』 | 1984年 |
| 3 | 『北の夕鶴2/3の殺人』 | 1985年 |
| 4 | 『消える「水晶特急」』 | 1985年 |
| 5 | 『確率2/2の死』 | 1985年 |
| 6 | 『Yの構図』 | 1986年 |
| 7 | 『灰の迷宮』 | 1987年 |
| 8 | 『夜は千の鈴を鳴らす』 | 1988年 |
| 9 | 『幽体離脱殺人事件』 | 1989年 |
| 10 | 『奇想、天を動かす』 | 1989年 |
| 11 | 『羽衣伝説の記憶』 | 1990年 |
| 12 | 『ら抜き言葉殺人事件』 | 1991年 |
| 13 | 『飛鳥のガラスの靴』 | 1991年 |
| 14 | 『涙流れるままに』 | 1999年 |
| 15 | 『盲剣楼奇譚』 | 2019年 |
島田荘司のおすすめ小説7選

シリーズをまたいで、刊行順に7作を紹介します。
占星術殺人事件(1981年・御手洗潔シリーズ第1作)
島田荘司のデビュー作にして代表作。御手洗潔シリーズの第1作です。
1936年に起きた猟奇的な連続殺人事件が物語の軸になります。画家が遺した手記には、6人の娘の体を組み合わせて理想の人間「アゾート」をつくるという構想が記されていました。40年以上を経て、事件関係者の遺品が御手洗潔のもとに持ち込まれ、未解決事件の再検討が始まります。
読者に手がかりを開示したうえで挑戦する構成で、島田荘司作品を初めて読む人の入口としてもっとも選ばれている一冊です。
斜め屋敷の犯罪(1982年・御手洗潔シリーズ第2作)
御手洗潔シリーズの第2作。第27回江戸川乱歩賞の最終候補作でもあります。
舞台は北海道・宗谷岬の高台に建つ「流氷館」、通称・斜め屋敷。建物そのものが傾いて建てられた奇妙な洋館で、クリスマスの集まりの最中に密室殺人が起こります。
建築の構造そのものがトリックに直結する、いわゆる「館もの」の代表作です。前作とはまったく別種の仕掛けが用意されています。
漱石と倫敦ミイラ殺人事件(1984年・ノンシリーズ)
第92回直木賞の候補になった長編です。夏目漱石とシャーロック・ホームズを同じ物語に登場させています。
ロンドン留学中の漱石が、下宿の向かいに住むホームズとともに、ミイラをめぐる怪事件の謎を追います。実在の人物と、小説上の名探偵という異なる出自の2人を並べる大胆な設定です。
ホームズ像の描き直しと、漱石のロンドン時代という史実の使い方に、島田荘司の遊び心がよく出ています。
夏、19歳の肖像(1985年・ノンシリーズ)
第94回直木賞の候補になった青春ミステリーです。島田作品のなかでは異色の位置にあります。
バイク事故で入院した19歳の主人公が、病室の窓から向かいの家をながめるうち、その家の女性が庭に何かを埋める場面を目撃します。退院後、彼は自分が見たものの意味を確かめようとしていきます。
大がかりなトリックよりも、思い込みと感情に振り回される19歳の心情が中心にある作品です。本格ミステリーとは別の入口から島田荘司を読みたい人に向いています。
北の夕鶴2/3の殺人(1985年・吉敷竹史シリーズ第3作)
吉敷竹史シリーズの第3作。北海道を舞台にした長編ミステリーです。
刑事・吉敷竹史が追う事件の容疑者として、離婚した元妻・通子が浮かび上がります。捜査を進める吉敷の前に、大がかりな仕掛けと過去の因縁が立ちはだかります。
トリックの規模と、吉敷と通子の関係を描く人間ドラマが両立した一作で、吉敷竹史シリーズの代表作として挙げられることの多い作品です。
異邦の騎士(1988年・御手洗潔シリーズ第3作)
御手洗潔シリーズの第3作ですが、物語の時間軸ではシリーズでもっとも早い時期にあたります。2014年に第1回神奈川本大賞を受賞しました。
公園のベンチで目を覚ました男は、自分が誰なのかを思い出せません。記憶を失ったまま日常を組み立てていく彼が、御手洗潔と出会います。
シリーズ内での位置づけが特殊で、『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』を読んだあとに手に取ると効果が大きい一冊です。
暗闇坂の人喰いの木(1990年・御手洗潔シリーズ第4作)
御手洗潔シリーズの第4作。長編のなかでも分量の大きい作品です。
さらし首の名所として知られた暗闇坂に立つ巨大な楠と、その木にまつわる言い伝えが物語の中心にあります。木の周辺で起きる奇怪な事件を、御手洗潔が解いていきます。
怪奇趣味と本格ミステリーの論理が同居する構成で、シリーズの世界観が広がっていく分岐点にあたります。
島田荘司に似た作風の作家
大がかりなトリックや館ものを楽しむなら、「森博嗣のおすすめ「ミステリィ」8選」が近い読み口です。奇想の度合いをさらに振り切った作品を探しているなら「バカミスとは?おすすめの小説10選」もあわせてどうぞ。
監修者の視点:長いシリーズは中古の状態表記から見る
田中寛大島田荘司さんは御手洗潔シリーズだけで長編17作、吉敷竹史シリーズが長編15作あります。追いかけると冊数がかさむ作家なので、文庫と中古をうまく混ぜるのが現実的です。
オンライン古書店を運営していた時期(2019〜2022年)に、開業から約2年半で8,000冊超を販売しました。購入者評価は97%が肯定的で(累計189件・販売期間中の実績)、「本の状態は想定以上に良好」という声もいただいています。状態を「非常に良い」以上に絞れば、中古でも読書体験は新品とほとんど変わりません。長いシリーズをそろえるときは、価格より先にコンディション表記を確認することをおすすめします。
島田荘司についてよくある質問
- 島田荘司の代表作はどれですか?
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1981年のデビュー作『占星術殺人事件』です。御手洗潔シリーズの第1作で、第26回江戸川乱歩賞に「占星術のマジック」の題で応募して最終候補に残った作品を改題・改稿したものです。
- 島田荘司を初めて読むならどれがおすすめですか?
-
『占星術殺人事件』(1981年)です。御手洗潔シリーズの第1作であり、作風の中心にある大トリックがもっともはっきり出ています。本格ミステリー以外から入りたい場合は、青春小説の『夏、19歳の肖像』(1985年)という選び方もあります。
- 御手洗潔シリーズはどの順番で読めばいいですか?
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刊行順です。長編は『占星術殺人事件』(1981年)から『伊根の龍神』(2025年)までの17作で、登場人物の関係が巻をまたいで積み上がります。短編集は長編の合間に読んで問題ありません。
- 吉敷竹史シリーズは何作ありますか?
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長編は15作です。『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』(1984年)から『盲剣楼奇譚』(2019年)まで刊行されています。
- 島田荘司の最高傑作と呼ばれるのはどの作品ですか?
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評価の基準によって変わります。トリックの規模なら『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』、物語としての完成度なら『異邦の騎士』、吉敷竹史シリーズなら『北の夕鶴2/3の殺人』が挙がることが多い作品です。
- 島田荘司の近年の作品は何ですか?
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御手洗潔シリーズの長編『伊根の龍神』(2025年3月・原書房)です。その前は『ローズマリーのあまき香り』(2023年)が刊行されています。
島田荘司は『占星術殺人事件』から読み始めるのが確実
島田荘司は、大がかりなトリックと社会的な主題を同時に書いてきた作家です。初めて読むなら『占星術殺人事件』、刑事ものが好みなら『北の夕鶴2/3の殺人』、ミステリー以外から入るなら『夏、19歳の肖像』が入口になります。
シリーズを追うなら文庫が便利です。持ち運びやすい文庫本の選び方は次の記事にまとめています。











