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「奇妙な味」とは?風変りでちょっぴりダークな作品8選を紹介
「奇妙な味」の小説をご存じですか?
「小説なのに”味”?」と怪訝に思う方も多いと思いますが、「奇妙な味」は歴史あるジャンルの1つです。
今回は、風変りでダークな「奇妙な味」のおすすめ作品を8つ紹介します。
「奇妙な味」とは?
「奇妙な味」は江戸川乱歩の造語であり、推理小説のジャンルの1つです。乱歩は随筆「英米短編ベスト集と『奇妙な味』」(『幻影城』収録)のなかで、2つのベスト10を紹介しています。
1つは「謎の構成に重きを置く」作品のベスト10で、「純本格」の推理小説が対象です。ポーの『モルグ街の殺人』などが該当します。
そして、もう1つが「奇妙な味に重きを置く」作品のベスト10です。トリックに重きを置く「純本格」とは異なり、「奇妙な味」の作品はストーリーやキャラクターの異様さが際立っています。
推理小説でありながらミステリやホラー、SFの要素を持つ作品も多く、風変わりで残酷、不気味でモヤモヤする後味の悪さが特徴です。
「奇妙な味」について、乱歩は「純本格と肩を並べる」ほどの「探偵小説の重大な特徴となりつつある」としています。
「奇妙な味」は1950年代から60年代にかけてアメリカで大流行しましたが、しばらく忘れられていたジャンルでした。
日本では2000年以降再評価され、アンソロジーなどが多く刊行されています。
「奇妙な味」と言えばこれ!江戸川乱歩が愛した作品
はじめて「奇妙な味」を味わう方には、江戸川乱歩が愛した作品がおすすめです。
まずは「奇妙な味」の基本とも言える名短編を紹介します。
1.コナン・ドイル『赤毛連盟』
「シャーロック・ホームズ」シリーズの短編作品です。
赤い髪を持った成人男性だけが働ける組織「赤毛連盟」に隠された真実を暴くため、シャーロック・ホームズが活躍します。
児童文庫版も出版されているため、お子さんと一緒に楽しみたい方・気軽に奇妙な味を味わいたい方におすすめです。
Audibleでも楽しめます。
2.アガサ・クリスティ『夜鶯荘』
江戸川乱歩が奇妙な味の傑作と評した短編小説で、『ナイチンゲール荘』『うぐいす荘』とも呼ばれます。
新婚の女性が気付いた日常生活の違和感と恐怖が煽られる心理描写、そして不穏なラストが奇妙な後味を残す作品です。
残酷さや不気味さよりも、駆け引きやスリルを味わいたい方におすすめします。
3.ヒュー・ウォルポール『銀の仮面』
江戸川乱歩が「奇妙な味をもっともよく備えている作品」として挙げている作品です。
親切にした美青年につけ込まれ破滅する老嬢の姿は、読者に強烈な印象を残すでしょう。
残酷さや後味の悪さ、背筋が凍るような恐怖が味わえます。
「奇妙な味」をたっぷり味わえる作品
基本を押さえたら、次は古今東西のさまざまな「奇妙な味」を味わってみてはいかがでしょうか。
奇妙な味の豊かさや、奥深さを堪能できます。
1.オーガスト・ダーレス『ジョージおじさん〜十七人の奇怪な人々』
相次いで身内を亡くし、多額の遺産を相続した少女と「おじさん」を巡る表題作など、怖くて優しい奇妙な味が収められています。
ほかの作家の奇妙な味に比べると、残酷さや後味の悪さはやや控えめです。
奇妙な味を試したいけれど、残酷すぎる描写は避けたい方におすすめします。
2.スタンリイ・エリン『特別料理』
発表時にはエラリー・クイーンが絶賛し、近年は米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』の元ネタとなった作品です。
隠れ家レストランで提供される「特別料理」の素材・アミルスタン羊の正体とは…?
背筋が凍るような結末を味わえます。
3.阿刀田高『ナポレオン狂』
日本では、阿刀田高が奇妙な味の名手として知られています。
とくにおすすめしたいのが、第81回(1979年上半期)直木賞を受賞した短編集『ナポレオン狂』です。
自らをナポレオンの生まれ変わりだと信じている男の物語『ナポレオン狂』のほか、粒ぞろいの奇妙な味が収録されています。
「奇妙な味」をつまみ食い!翻訳アンソロジー
最後に、「奇妙な味」をたっぷりと味わえるアンソロジーを紹介します。
読み終えたころには「奇妙な味」の虜になっているはずです。
1.中村融・編『街角の書店』
一口に「奇妙な味」と言っても、作品ごとにその味わいはさまざまです。
『街角の書店』では、ひねりの効いた作品や有名作家の隠れた名作など、「奇妙な味」のフルコースともいえる18篇を堪能できます。
奇妙な味をもっと味わいたい方は、続編の『夜の夢見の川』を手に取ってみてはいかがでしょうか。こちらには、12篇の奇妙な味が収められています。
2.西崎憲・翻訳『怪奇小説日和 黄金時代傑作選』
18篇の怪奇小説が収められたアンソロジーです。
古典的な怪談から1900年代に書かれた短編まで、読後にモヤモヤが残る作品が集められています。
幻想的な作品の多さも特徴です。
後味の悪さ・薄気味悪さを重視する方におすすめします。
まとめ
「奇妙な味」は江戸川乱歩の造語で、トリックよりも風変りさに重きを置いた作品を指します。
日常生活から離れ、不思議な世界観や後味の悪さを楽しみたい方におすすめのジャンルです。
短編作品が多く、わずかな時間で読了できるため、隙間時間に楽しんでみてはいかがでしょうか。