「館シリーズ」は、綾辻行人さんが手掛ける大人気ミステリー小説です。冊数が多いため、「読む順番がわからない」「十角館の殺人の次の刊が知りたい」という方もいるのではないでしょうか。
この記事では、「館シリーズ」の読む順番について解説します。それぞれの作品のあらすじも紹介しますので、ぜひ選書の参考にしてください。
目次
館シリーズとは?
まずは「館シリーズ」の概要をおさえましょう。
作者は本格ミステリー作家・綾辻行人
「館シリーズ」は、ミステリー作家の綾辻行人さんが執筆している長編推理小説です。綾辻行人さんは1987年に「十角館の殺人」でデビューし、当時の日本に新しい本格派推理小説ブームを巻き起こしました。叙述トリックを巧みに利用した作品が多く、物語の構図を大きく転換させるどんでん返しを得意としている作家として知られています。
全10作品の構想で現在は9作目まで刊行
綾辻行人さんのデビュー作「十角館の殺人」を第1作とし、全10作品で完結するとされている「館シリーズ」。2025年現在で9作目までが単行本として刊行されており、最終作は文芸誌にて連載中となっています。
「館シリーズ」は基本的に各単行本が独立した話になっているので、どのような順番で読んでも大きな問題はないとされています。しかし、登場人物や作中の設定に過去のエピソードが絡むことがあるので、より深くシリーズを楽しみたいという方は「刊行順で読む」とよいでしょう。
館シリーズの読む順番
「館シリーズ」の各作品を、おすすめの順番で紹介します。
1.十角館の殺人
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1987年に刊行された、綾辻行人さんのデビュー作品です。「館シリーズ」の第1作目であり、日本のミステリー界に大きな影響を与えた作品と言われています。巧妙な叙述トリックを用いており、長年「実写化は不可」とされていましたが、2024年にドラマ化されて大きな話題となりました。
ミステリー好きの学生7人がやってきたのは、絶海の孤島にある「十角館」という奇妙な館。外部と隔絶された空間で、学生たちが1人、また1人と何者かに殺されていき─…。はたして犯人は7人の中にいるのか?外部からの侵入者なのか?推理と疑念が交錯する緊張感のある展開に、多くの読者が虜になりました。誰も予測できない真相と驚愕の犯人が明かされる、新本格ミステリーの金字塔です。
2.水車館の殺人
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1988年に刊行された、「館シリーズ」2作目の作品です。古典的なミステリーの要素が多用されており、王道の正統派推理小説と評されています。
仮面の当主と謎の美少女が住まう異形の屋敷「水車館」。とある惨劇が起こった1年後、かつて館に集った者たちが再び集結します。外界から隔たれた不穏な環境で、悲劇は繰り返されてしまうのか。1年前の事件の真相とは。現在と過去を交錯しながら、衝撃の真実が解き明かされます。
シリーズものとしてはもちろん、本格的なミステリー作品を楽しみたい方にもおすすめの作品です。
3.迷路館の殺人
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1988年に刊行された、「館シリーズ」3作目の作品です。綾辻行人さんらしい緻密な構成と徹底的な遊び心で、多くのミステリーファンから支持されています。
本作の舞台は、奇妙奇天烈な地下の館「迷路館」。招かれた4人の作家たちは莫大な賞金を手にするべく、迷路館を舞台にした推理小説の執筆を始めます。しかし、やがてそれぞれが手掛けた小説のとおりに作家たちが殺されていき─…。作品の中に別の物語が登場する「作中作」という技法を用いた本作は、最後の最後まで散りばめられた叙述トリックが見どころです。どんでん返しに次ぐどんでん返しを楽しみたい方におすすめです。
4.人形館の殺人
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1989年に刊行された、「館シリーズ」の第4作目です。シリーズ内では『ひときわ異彩を放つ作品』と謳われています。
顔のないマネキンが邸内の各所に置かれた「人形館」。周辺では通り魔殺人事件が続発し、「私」のもとには脅迫状が届きます。次々と起こる奇妙で不気味な出来事から逃れるため、「私」は旧友である探偵に助けを求めますが─…。
前作までの完全なクローズドサークルとは違い、京都の街中にある屋敷を舞台にした本作。なぜこの場所で事件が起こったのか、迫りくる脅迫者は一体誰なのか、最後まで予想ができない作品です。前作までを読んでいるとより深く楽しめるので、ぜひご一読ください。
5.時計館の殺人
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1991年に刊行された、「館シリーズ」の第5作目です。1992年に日本推理作家協会賞を受賞し、綾辻行人さんの代表作のひとつとされています。シリーズ内でもファンが多く、高く評価されている作品です。
本作の舞台は、鎌倉の外れに建つ「時計館」。3年前に起きた十角館での惨劇を知る青年・江南は、雑誌の記者として時計館を訪れます。そこで行われた少女の亡霊を呼ぶ交霊会の夜、閉ざされた館内で、恐るべき殺人劇が繰り広げられてしまいます。
「十角館の殺人」で活躍した江南孝明が登場する本作は、館シリーズでも屈指の名作と呼ばれています。壮大なトリックと作りこまれたストーリーが魅力の作品です。
6.黒猫館の殺人
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1992年に刊行された、「館シリーズ」の第6作目です。壮大な伏線の数々が、多くのミステリーファンから評価されています。
記憶喪失になった男の依頼で、人里離れた謎の館「黒猫館」とそこで起きた事件の真相を追うことになった鹿谷と江南。北海道にあるという館を探しながら、男の手記に書かれた奇妙な殺人事件を紐解いていきます。すべての謎が解き明かされるとき、世界が覆されるほどの衝撃が待ち受けている作品です。「時計館の殺人」に関する内容が含まれるので、前作を読んでから見るのがおすすめです。
7.暗黒館の殺人
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2004年に刊行された、「館シリーズ」の第7作目です。シリーズ内ではもっとも長大な作品です。
外界から隔絶された湖に建つ「暗黒館」。忌まわしき影に包まれた浦登(うらど)家の人々が住まうその館で、大学生の中也は数々の謎めいた出来事に遭遇します。塔からの転落者、美しい双子、奇怪な宴…浦登家と館が持つ秘密とは一体何なのか。「館シリーズ」の中ではサスペンスの要素が強い作品です。幻想的なダークファンタジーに浸りたい方におすすめです。
8.びっくり館の殺人
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2006年に刊行された、「館シリーズ」の第8作目です。児童向けのミステリーレーベルから刊行されており、話題となりました。
あやしい噂が囁かれるお屋敷町の「びっくり館」。そこにはとある少年とその祖父が住んでいました。少年と友人関係になった小学生の三知也とあおいは、やがてびっくり館に出入りするようになります。怪しげな人形や七色のびっくり箱が配置された奇妙な館で、クリスマスの夜に、恐ろしい殺人事件が起きてしまいます。事件の真相は?びっくり館の秘密とは?「館シリーズ」の他作品と比較して、ホラー要素の強い作品です。
9.奇面館の殺人
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2012年に刊行された、「館シリーズ」の第9作目です。
本作の舞台は、豪雪で孤立した謎の屋敷「奇面館」。仮面で顔を隠すよう強要された奇妙な集まりで、主催者・影山の凄惨な遺体が発見されました。しかし、その遺体は頭部と指が欠けており、本当に影山なのかわかりません。仮面を被ったままの客たちは、疑心や恐怖に飲み込まれていき─…。正統派ミステリーとも謳われる本作は、綾辻行人さんらしい驚きと緻密なトリックを存分に味わえます。裏をかく予想外の展開を楽しみたい方におすすめです。
館シリーズを読んで世界観に浸ろう!
綾辻行人さんの「館シリーズ」は、作りこまれたトリックとあっと驚く展開が楽しめる本格ミステリー小説です。読む順番に迷ったら、刊行順に手に取ってみてください。
それぞれに違った魅力がありますので、お気に入りの一冊を見つけましょう。