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食べ物小説のおすすめ10選|ほっこりできるグルメ・料理の名作を紹介

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食べ物小説でほっこりしたいなら、まず『食堂かたつむり』(小川糸・2008年)と『鴨川食堂』(柏井壽・2013年)の2冊です。前者は一日一組だけを迎える食堂、後者は忘れられない味を捜し出す京都の食堂が舞台で、どちらも人が料理をきっかけに立ち直る話です。

この記事では、料理やごはんが中心にある小説10冊を、著者・刊行年・舞台つきで紹介します。舞台は食堂・ビストロ・デパ地下の3系統に分かれるので、好みの系統から選べるように整理しました。

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目次

食べ物小説がほっこりするのは「食卓に人が集まる」構造があるから

ほっこり癒され幸せな気分になれる食べ物小説

食べ物小説とは、料理や食事の場面が物語の中心にある小説のことです。グルメ小説・料理小説とも呼ばれ、飲食店を舞台にした連作短編集の形をとることが多くあります。

読後感が穏やかになりやすいのは、構造上の理由があります。誰かのために作られた食事の周りには人が集まり、その場が登場人物の居場所になっていくためです。事件が起きても解決の場は食卓に戻ってくるので、話が荒れたままで終わりません。

食べ物小説の選び方は舞台で決まる

10冊を舞台で分けると、次の3系統になります。読みたい空気感から選ぶのがいちばん外れません。

  • 食堂・定食屋系…『食堂かたつむり』『鴨川食堂』『食堂のおばちゃん』『とにもかくにもごはん』。素朴な家庭料理が中心で、人情ものの色が濃い
  • ビストロ・カフェ系…『キッチン常夜灯』『タルト・タタンの夢』『パンとスープとネコ日和』。洋食とスープが中心で、静かな読み口
  • 職場・デパ地下系…『ランチのアッコちゃん』『和菓子のアン』『まずはこれ食べて』。働く場面と食が結びつき、仕事小説としても読める

料理を実際に作ってみたくなったときは、レシピ側の本もあわせて探すと読書が続きます。料理の電子書籍なら台所に持ち込んでも場所を取りません。

ほっこりできる食べ物小説のおすすめ10選

おいしいグルメがテーマの食べ物小説10選

食堂、ビストロ、デパ地下と舞台を散らして10冊を選びました。まず一覧で著者・刊行年・形式を確認してください。

作品著者・刊行年・出版社舞台と形式
『ランチのアッコちゃん』柚木麻子/2013年/双葉社オフィスと街の飲食店/連作短編
『鴨川食堂』柏井壽/2013年/小学館京都の食堂/連作短編
『パンとスープとネコ日和』群ようこ/2012年/角川春樹事務所サンドイッチとスープの店/長編
『食堂かたつむり』小川糸/2008年/ポプラ社一日一組の食堂/長編
『まずはこれ食べて』原田ひ香/2019年/双葉社ベンチャー企業の家庭料理/連作短編
『とにもかくにもごはん』小野寺史宜/2021年/講談社子ども食堂/群像劇
『食堂のおばちゃん』山口恵以子/2015年/角川春樹事務所下町の大衆食堂/連作短編
『キッチン常夜灯』長月天音/2023年/KADOKAWA夜だけ開くビストロ/連作短編
『和菓子のアン』坂木司/2010年/光文社デパ地下の和菓子店/連作短編ミステリー
『タルト・タタンの夢』近藤史恵/2007年/東京創元社ビストロ/連作短編ミステリー

『ランチのアッコちゃん』(柚木麻子/2013年/双葉社)

『ランチのアッコちゃん』は、昼食の交換から始まる連作短編集です。本屋大賞にもノミネートされました。

恋人にふられた派遣社員の三智子は、営業部長の黒川敦子から「1週間、お弁当と昼食を交換しよう」と持ちかけられます。三智子は自作の弁当を渡し、代わりに昼食代と行き先の指定を受け取ります。指定された屋台や立ち食い店に通ううちに、三智子の生活の輪郭が変わっていきます。

1篇が短く、働く人の昼休みがそのまま舞台なので入り込みやすい1冊です。弁当のメニュー描写も具体的で、作り置きの参考にもなります。

『鴨川食堂』(柏井壽/2013年/小学館)

『鴨川食堂』は、京都で「食捜し」を請け負う食堂を描いた連作短編集です。NHK BSプレミアムで2016年1月から2月にかけて全8回のドラマが放送されました。

元刑事で調理担当の鴨川流と、探偵事務所を営む娘のこいしが営む食堂には看板がありません。グルメ雑誌のそっけない一行広告だけを頼りに客が訪ねてきて、記憶のなかにある忘れられない一皿の再現を依頼します。

客の思い出話から材料と時代を割り出していく過程が推理小説のように進みます。京都の地名や店の描写が細かく、旅行前に読むのにも向いています。

『パンとスープとネコ日和』(群ようこ/2012年/角川春樹事務所)

『パンとスープとネコ日和』は、母の残した食堂を建て直す女性を描いた長編です。2013年にWOWOWの連続ドラマWとして映像化されました。

母を亡くしたアキコは、残された店を改装し、サンドイッチとスープとサラダだけに絞った小さな店を開きます。ところが母の代からの常連には受け入れられず、店をどう続けるかで迷うことになります。

料理の品数を絞るという決断が、そのまま生き方の話になっている構成です。店に居着く猫の描写も多く、静かな読み口の1冊です。

『食堂かたつむり』(小川糸/2008年/ポプラ社)

『食堂かたつむり』は、声を失った女性が故郷で食堂を開く長編です。2011年にイタリアのバンカレッラ賞料理部門を受賞しています。

同棲していた恋人に家財と調理道具を持ち逃げされ、ショックで声が出なくなった倫子(りんこ)は、故郷に戻って「食堂かたつむり」を始めます。予約は一日一組だけ。事前に客と話し、その人のためだけの献立を組み立てます。

ザクロカレー、ジュテームスープなど、食べる相手を想定して作られた料理が次々に出てきます。母との関係や飼い豚エルメスとの別れも描かれ、後半は食べることと生きることが正面から重なります。

『まずはこれ食べて』(原田ひ香/2019年/双葉社)

『まずはこれ食べて』は、ベンチャー企業に通う家政婦を軸にした連作短編集です。

大学時代の友人同士で会社「ぐらんま」を立ち上げた面々のもとへ、家政婦の筧みのりが通うようになります。片付いていく部屋と、毎回置かれていく作りたての家庭料理が、社員それぞれの停滞を少しずつ動かしていきます。

各篇で語り手が交代し、人物ごとの事情が明かされる構成です。献立の説明が具体的なので、自炊を再開したい人にも刺さります。

『とにもかくにもごはん』(小野寺史宜/2021年/講談社)

『とにもかくにもごはん』は、子ども食堂を舞台にした群像劇です。

夫を事故で亡くした松井波子が、自宅を開放して子ども食堂を始めます。物語はスタッフ、通ってくる子ども、その親と、章ごとに語り手を替えながら進みます。

誰かが劇的に救われる話ではありません。それぞれが後悔や引け目を抱えたまま同じ食卓につき、少しずつ影響し合う。その距離感が読後に残る1冊です。

『食堂のおばちゃん』(山口恵以子/2015年/角川春樹事務所)

『食堂のおばちゃん』は、東京・佃の大衆食堂を舞台にした連作短編集で、長く続くシリーズの第1作です。

嫁と姑が二人で切り盛りする「はじめ食堂」には、焼き魚やコロッケといった定番のほか、たらこと白滝の炒り煮のような小鉢が並びます。集まる常連客の事情が1篇ずつ描かれます。

登場した料理のレシピが巻末に付いているのが特徴です。読んだその日に作れるので、料理小説のなかでもとくに実用寄りの1冊といえます。

『キッチン常夜灯』(長月天音/2023年/KADOKAWA)

『キッチン常夜灯』は、夜から朝にかけてだけ開くビストロを舞台にした連作短編集です。

疲れ切ったファミリーレストランの店長・みもざは、路地裏で夜だけ営業している「キッチン常夜灯」に通うようになります。寡黙なシェフが出す農夫風ポタージュや仔羊料理が、眠れない夜の体をほどいていきます。

飲食の現場で働く人の消耗が具体的に書かれていて、お仕事小説としても読めます。深夜に読むと効く1冊です。

『和菓子のアン』(坂木司/2010年/光文社)

『和菓子のアン』は、デパ地下の和菓子店を舞台にした連作短編ミステリーです。

高校を出た梅本杏子(アンちゃん)は、デパ地下の和菓子店「みつ屋」でアルバイトを始めます。客の妙な注文や店で起きる小さな謎を解くうちに、和菓子の銘に込められた意味と季節の約束事を知っていきます。

人が死なない日常の謎の系統なので、ミステリーが苦手でも読めます。同じ手触りの作品を探すなら、日常の謎ミステリーのおすすめもあわせて確認してみてください。

『タルト・タタンの夢』(近藤史恵/2007年/東京創元社)

『タルト・タタンの夢』は、下町のビストロ「パ・マル」を舞台にした連作短編ミステリーです。テレビ東京系で2021年5月から8月にかけて放送されたドラマ「シェフは名探偵」(主演・西島秀俊)の原作にあたります。

無口なシェフの三舟は、客が漏らしたひと言や料理への反応から事情を読み取り、店の内外で起きた謎を解いていきます。事件は殺人ではなく、日常のなかの引っかかりです。

フランス料理の解説が丁寧で、料理を知る楽しみと謎解きが同じ比重で入っています。シリーズは『ヴァン・ショーをあなたに』『マカロンはマカロン』と続きます。

編集長のひとこと:読書が止まった時期は連作短編から戻す

田中寛大

大学院で分厚い専門書を読み続けていた時期は、夜に読む本を意識して軽いものへ切り替えていました。1話完結の連作短編なら、集中力が残っていない日でも1篇だけ読んで区切れるからです。

この記事で挙げた10冊のうち、『鴨川食堂』『食堂のおばちゃん』『和菓子のアン』『タルト・タタンの夢』『ランチのアッコちゃん』『まずはこれ食べて』『キッチン常夜灯』は連作短編集です。読書が止まってしまった時期の再開には、長編よりこちらから入るほうが戻りやすいと考えています。

食べ物小説についてよくある質問

食べ物小説とは何ですか?

料理や食事の場面が物語の中心にある小説のことです。グルメ小説・料理小説とも呼ばれます。食堂やビストロなど飲食店を舞台にした連作短編集の形が多く、1篇ごとに客と料理が入れ替わる構成が定番です。

ほっこりできる食べ物小説でいちばんのおすすめはどれですか?

『食堂かたつむり』(小川糸・2008年・ポプラ社)です。一日一組だけを迎える食堂で、客ひとりのために献立を組み立てる話で、食べることと生きることが正面から重なります。京都が舞台の話がよければ『鴨川食堂』(柏井壽・2013年・小学館)を選んでください。

料理が出てくる小説で短時間に読めるものはありますか?

連作短編集を選んでください。『和菓子のアン』『タルト・タタンの夢』『食堂のおばちゃん』『ランチのアッコちゃん』はいずれも1篇が短く、通勤中や寝る前に1話ずつ読み進められます。

食べ物小説でドラマ化・映像化された作品はどれですか?

3作あります。『鴨川食堂』はNHK BSプレミアムで2016年に全8回、『パンとスープとネコ日和』はWOWOWで2013年、『タルト・タタンの夢』はテレビ東京系のドラマ「シェフは名探偵」として2021年に放送されました。

作中の料理を実際に作れる小説はありますか?

『食堂のおばちゃん』(山口恵以子・角川春樹事務所)です。登場した料理のレシピが巻末に収録されているため、読んだその日に再現できます。

ミステリー要素のある食べ物小説はありますか?

『和菓子のアン』(坂木司・2010年)と『タルト・タタンの夢』(近藤史恵・2007年)です。どちらも人が死なない日常の謎の系統で、料理や和菓子の知識が謎解きの手がかりになります。

舞台と形式から食べ物小説の1冊を選ぶ

食べ物小説は、食堂・ビストロ・デパ地下という舞台の違いで読み口がはっきり分かれます。人情ものが読みたいなら食堂系、静かな夜に読むならビストロ系、仕事の話として読むならデパ地下・職場系です。一覧表の著者と形式を見比べて、いまの気分に合う1冊から始めてみてください。

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