西加奈子のおすすめ本10選！関西弁で描く鮮やかな作品をご紹介

西加奈子は、2004年にデビューした大阪出身の作家です。小説やエッセイは、自身と同じ関西弁を多用し、軽快でリズム感のある文体で書かれています。読書に慣れない人にとっても本の世界観に入り込みやすいのが特徴。世の中に起きる様々な問題、家族が抱える悩みや傷などを独特のタッチで描き出し、読み終わると勇敢な気持ちになれる作品が多数あります。

ユニークな中にゆるぎない強さを持つ西加奈子の作風

西加奈子の作風や経歴を見てみましょう。

西加奈子の作風

西加奈子の小説には、作者同様、関西弁を話す人物が多く登場します。関西弁の持つ、独特の言葉のリズムや気負わない空気感、人懐っこさなどが全体に派生したような作品が多く見られます。実在していそうな登場人物たちの、豊かな感情が描かれたストーリーが魅力。本を読み慣れない人も、商店街で立ち話をしているような気軽さで読み進めていけるはずです。

奇抜でユニークな印象を受ける作風ですが、「それでも生きる」という芯の強さを感じられるストーリーが多く、読むと励ましをもらった気持ちになれます。

西加奈子の経歴

西加奈子は『きいろいゾウ』が2013年に映画化、『サラバ！』で2015年直木賞を受賞、『漁港の肉子ちゃん』は2021年にアニメ映画化されるなど人気作が多い作家です。イラン・テヘランで生まれ、２歳で帰国。小学校１年生から４年生まではエジプトのカイロで育ち、帰国後は大阪府和泉市で育ちました。

2004年に『あおい』でデビュー。『通天閣』で織田作之助賞大賞、『サラバ！』で直木賞、『くもをさがす』で書店員が選ぶノンフィクション大賞オールタイムベスト2023大賞などの受賞歴があります。

2012年に結婚、2017年に第一子を出産後、2019年から２年間語学留学としてカナダ・バンクーバーで暮らし、帰国。カナダではコロナ渦で乳がんを宣告され、８か月の治療を終えました。作品は芸能人にもファンが多く、芸人の又吉直樹や俳優の仲野太賀、歌手の椎名林檎などとの対談も多く実現しています。

西加奈子おすすめ作品10選

西加奈子の本は受賞作品、映画化された作品、絵本など話題作が多くあります。西加奈子本人が描いた、特徴的な絵を表紙に用いた作品も。気になるものから手に取ってみるのがおすすめですよ。

サラバ！

直木賞受賞作品です。西加奈子の作家生活10周年を記念して発表されました。主人公はイランで生まれ、帰国後大阪で暮らし、その後エジプトへ。環境が変わっても「うまく」生活しようとする主人公と、どの地でもなじまず「ご神木」と呼ばれるほど孤立する姉など風変りな家族をとりまく物語。上・下巻（文庫本では上・中・下巻）に渡る大作です。

さくら

ヒーローのような兄、綺麗で気性の荒い妹、世界で一番幸せだった母さん、宇宙で一番幸せな男だった父さん、そして犬のサクラとの日々。家族のしあわせな日々が、ある出来事をきっかけに崩れていきます。幸福な思い出と共にあった、いびつな愛の形を描いた物語。北村匠海、小松奈々、吉沢亮のキャストで映画化されています。

きいろいゾウ

動物や虫の声が聞こえるツマと売れない小説家のムコさんの夫婦。２人は田舎暮らしを始め、穏やかな日々を送っていました。ある手紙をきっかけに東京に行くムコさん。ムコさんの不在をきっかけに心が不安定となっていくツマ。安心できる拠り所であるようで、脆くもある夫婦という間柄。夫婦の形を単なるラブストーリーではなく、ファンタジーをも思わせる展開で描いています。原作のファンと公言していた宮崎あおいと向井理主演で2013年に映画化されました。

くもをさがす

コロナ渦のカナダで、乳がんの宣告を受けた作者のドキュメンタリーです。特徴的なのは、カナダの医療従事者の言葉がすべて関西弁で展開されているところ。現地での会話が関西弁に変換されていることで、会話の空気感や、状況の理不尽さ、心が通う時の温かさなどが、より身近な出来事として読み手にリアルに迫ってきます。「自分で決め、納得して生きるには」を考える作者。作者の生きる姿勢に背筋が伸びる思いになる作品です。

漁港の肉子ちゃん

東京から北陸の漁港にやってきた親子と港に住む人々の物語です。だまされてばかりで、恋を失うたびに盛大に泣き、悲しむ、母の肉子ちゃん。冷静な娘のキクりん。親子のユーモアあふれる温かい会話は読んでいると自然と笑顔になってしまいます。明石家さんまプロデュースでアニメ映画化され話題になりました。

夜が明ける

高校で出会った「俺」と、アキ。身長191㎝のアキは母親にネグレクトされ、ひどい吃音でした。「俺」の言葉をきっかけに、俳優を目指すアキと世界を変えたいとテレビ業界へと進む「俺」。理不尽に溢れた社会の中で、心身共に壊れていく２人。「助けてもらう」側であることの悲しさを感じながら、傷つき苦しくても夜が明けるまで生きていこうとする物語です。

i

アメリカ人と日本人の夫婦の養子となったシリアの孤児「アイ」。複雑な生い立ちでありながらも幸せに暮らしています。違う境遇の他者や社会の抱える問題を自分の幸福な生活と比較し、罪悪感を抱く主人公。世界の平和や幸せを願う主人公を通して、作者からの強いメッセージを感じる作品です。

きりこについて

きりこは「きりこのことを、自分のおへそや心臓よりも大切にしているパァパ」と「なかなかの美人であり、服のセンスもスタイルもいい」マァマの愛情を一身に受け育ちます。しかし思いを寄せる男の子から「やめてくれや、あんなぶす」と言われことで、きりこは今まで信じていた価値観に疑問を持ち始めるのです。賢い猫ラムセス２世に見守られながら、成長していくきりこ。誰かの意見に価値観が揺らぎながらも、自分とは何なのかを見つけていく物語です。

きみはうみ

クレヨンを使った絵を得意とする作者の、うみを舞台にした絵本です。他の作品の表紙にも、力強くカラフルな、自作の絵を多用している作者。言葉の少ない絵本ですが、そのヴィヴィットな世界観は小説とつながるものがあります。作者の多くの小説と同じく、「生きているだけで尊い」という普遍的なメッセージが込められた絵本です。

私に会いたい

女性の身体が社会でさらされている不自由さや窮屈さを、潔く清々しい文体で表明。苦しみを打ち破ってくれるような力強い物語です。グラビアアイドルが乳がんのためGカップの乳房を全摘出する話や脱毛の話など、周りの目と自分の意思との間に起きる摩擦を描いています。自分の身体を丸ごと大切にしたくなる短編集です。

西加奈子作品はこんな方におすすめ

西加奈子の作品では、人生に起きる様々な出来事を関西弁のように軽やかに、タフに受け止める主人公の姿が多く見られます。家族や社会、自分自身の中にある混沌とした思いに真正面から向き合い、主人公が納得しながら進むストーリーには勇気をもらえます。

読みやすい文体でありながら、重要な問題提起や気づきがたくさん含まれた作品たちは、きっと読書の豊かさを存分に味わわせてくれるはずです。普段はあまり本を読まないという方も、ぜひ読んでみてくださいね。