坂口安吾のおすすめ名作10選|作風と読みやすい順・分量の目安

坂口安吾のおすすめ小説10選とは?作風も紹介!
  • URLをコピーしました!

坂口安吾を初めて読むなら、約5千字の短編『風博士』か、約7,600字の評論『堕落論』から入るのが手軽です。どちらも1時間かからずに読み終わります。この記事では代表10作を、発表年・初出誌・青空文庫での分量つきで、読みやすい順に並べました。

次に読む一冊、迷っていませんか?

「雨音選書」は、2〜3分の読書タイプチェックをもとに、あなたに合う本をプロが選ぶパーソナル選書サービス。自分では出会えなかった一冊が、最短3日で届きます。

まずは無料の読書タイプチェックだけでもOK

目次

坂口安吾の作風|無頼派の評論家であり、ミステリー作家でもある

坂口安吾の作風

坂口安吾(1906〜1955年)は、一つのジャンルに収まらない作家です。評論『堕落論』で知られる一方、幻想的な短編、歴史小説、そして本格ミステリーまで書き分けました。「安吾は難しそう」と身構える必要はなく、どの入口から入るかで印象が大きく変わります。

無頼派(新戯作派)の作家

無頼派とは、第二次世界大戦直後の数年間に、既成の文学観や価値観への反逆を示した作家群を指す呼称です。織田作之助、坂口安吾、太宰治、石川淳、檀一雄らが挙げられます。安吾自身が戯作の重要性を説いたことから、林房雄が新戯作派と名づけたとされ、両方の呼び名が使われます。

思想や方法論が統一されていたわけではなく、既成の道徳を疑う姿勢と、放埒な生活態度が共通していた集団です。安吾の作品も、戦後の常識を正面から疑うところから始まります。

評論・純文学・歴史小説・ミステリーにまたがる

安吾の主要作をジャンルで分けると、評論(『堕落論』『日本文化私観』『不良少年とキリスト』)、純文学の小説(『白痴』『桜の森の満開の下』『肝臓先生』『風博士』)、歴史小説(『二流の人』)、ミステリー(『不連続殺人事件』『明治開化 安吾捕物帖』)の4系統になります。

『不連続殺人事件』は1949年2月に第2回探偵作家クラブ賞の長編賞を受賞しており、ミステリー作家としても評価を得ています。純文学の作家がついでに書いた余技ではありません。

坂口安吾のおすすめ10作品の一覧

発表年・初出誌・分量を一覧にしました。分量は青空文庫の本文文字数(振り仮名を除く)を丸めた概算です。

作品発表年初出ジャンル分量の目安
風博士1931年6月『青い馬』第2号短編小説約5千字
堕落論1946年4月『新潮』評論約7,600字
不良少年とキリスト1948年7月『新潮』評論約1万4千字
桜の森の満開の下1947年6月『肉体』創刊号短編小説約1万7千字
日本文化私観1942年2月『現代文学』評論約2万2千字
肝臓先生1950年1月『文学界』短編小説約2万3千字
白痴1946年6月『新潮』小説約2万3千字
二流の人1947年1月単行本(九州書房)歴史小説約5万6千字
明治開化 安吾捕物帖『小説新潮』連載単行本第一集は1953年ミステリー連作連作短編
不連続殺人事件1947年8月〜1948年8月『日本小説』連載長編ミステリー約16万字
発表年・初出は青空文庫の底本(筑摩書房『坂口安吾全集』)の書誌情報にもとづく。分量は青空文庫の本文文字数(振り仮名を除く)の概算

坂口安吾は1955年に亡くなっており、著作権の保護期間はすでに満了しています。ここで挙げた作品はいずれも青空文庫で無料公開されているので、文庫を買う前に相性を確かめられます。

坂口安吾のおすすめ作品10選(読みやすい順)

坂口安吾のおすすめ作品10選

1. 『風博士』(1931年・約5千字)

安吾の名を文壇に知らせた短編で、この10作で最も短い作品です。『青い馬』第2号(1931年6月)に発表されました。語り手の僕は風博士の弟子で、師匠の死について疑いをかけられています。弁明のために公開した遺書には、知人の蛸博士への悪口がひたすら並んでいた——という話です。

筋を真面目に追う作品ではありません。勢いのある語り口そのものを楽しむ、ナンセンスな一編です。安吾の文体に触れる最初の1本として最適です。

2. 『堕落論』(1946年・約7,600字)

『新潮』1946年4月号に発表された評論で、安吾の代表作です。敗戦によって日本人が堕落したのではなく、そもそも人間はそういうものだと突きつけます。制度や道徳に寄りかかるのをやめ、堕ちるところまで堕ちて自分を発見せよ、という主張です。

約7,600字と短く、続編にあたる『続堕落論』(1946年12月・約7,600字)も同程度の長さです。合わせて読んでも文庫で数十ページ分にしかなりません。

3. 『不良少年とキリスト』(1948年・約1万4千字)

『新潮』1948年7月号に発表された評論です。同年6月に亡くなった太宰治について書かれました。安吾は太宰に文句をぶつけながら、その死を惜しんでいます。追悼文でありながら追悼の型を踏まない、安吾らしい一編です。

『堕落論』を読んだあとに続けると、安吾が誰に対して何を言おうとしていたのかが見えやすくなります。

4. 『桜の森の満開の下』(1947年・約1万7千字)

『肉体』創刊号(1947年6月)に発表された短編小説で、小説の代表作にあたります。強盗を働き、気に入った女を無理やり妻にする山賊が主人公。その男が唯一恐れていたのが、満開の桜の森でした。旅人を殺して連れ帰った女は彼を恐れず、一緒に暮らすうちに男は彼女の本当の怖さを知ることになります。

桜の下の静けさが恐怖に変わる場面が有名です。安吾の幻想的な側面を代表する作品として、評論から小説へ移るときの1本目に向いています。

5. 『白痴』(1946年・約2万3千字)

『新潮』1946年6月号発表。敗戦間際を舞台にした作品です。映画の演出見習いをしている男が、隣家から逃げ込んできた知的障害のある女性と過ごす日々を描きます。空襲の炎の中を2人であてもなく逃げる場面が中心です。

戦時下の混乱と人間の姿を、美化も断罪もせずに書いた作品です。『堕落論』で提示した見方が、小説の形で表れています。

6. 『肝臓先生』(1950年・約2万3千字)

『文学界』1950年1月号発表。戦中の伊東温泉が舞台です。主人公の医師は患者の病気をすべて肝臓病と見立てて診察するため、肝臓先生と呼ばれ慕われていました。ある日、重病の患者のために海へ出た医師でしたが、そこへ敵機が近づいてきます。

軽妙な文章のまま、最後に読者を静かに突き落とす構成です。ユーモアと悲哀を同居させる安吾の書き方がよく分かります。

7. 『日本文化私観』(1942年・約2万2千字)

『現代文学』1942年2月号に発表された評論です。ドイツの建築家ブルーノ・タウトを引き合いに、海外の権威が褒めたものをありがたがる風潮を批判しました。必要から生まれた形にこそ美しさがある、という主張です。

戦後ではなく戦中に書かれている点が重要です。『堕落論』の姿勢が、敗戦をきっかけに生まれたものではないことが分かります。

8. 『二流の人』(1947年・約5万6千字)

1947年1月に九州書房の中篇小説新書として刊行された歴史小説です。主人公は豊臣秀吉に仕えた黒田官兵衛(隠居後は如水)。切れ者の軍師でありながら、それゆえに秀吉から警戒された人物です。

二流という題名は、けなしているわけではありません。野望も才能もありながら時勢に合わず天下を取れなかった武将として描いています。安吾の歴史ものを読むならここからです。

9. 『明治開化 安吾捕物帖』(連作短編)

『小説新潮』に連載された連作ミステリーで、単行本の第一集は1953年に刊行されました。捕物帳という題名ですが、舞台は文明開化の只中にある明治20年ごろで、内容は探偵小説に近い作品です。

探偵役は警視庁からの信頼も厚い結城新十郎。隠居した勝海舟が安楽椅子探偵のように推理を披露しますが、たいていは的外れに終わります。1話ずつ独立しているので、好きなところから読めます。

10. 『不連続殺人事件』(1947〜48年・約16万字)

『日本小説』に1947年8月から1948年8月まで連載された長編ミステリーで、1949年2月に第2回探偵作家クラブ賞の長編賞を受賞しました。安吾が初めて書いた推理小説です。

戦後2年、詩人の歌川に人里離れた大邸宅へ招かれた語り手たち。集まったのは歌川家と恋愛や利害でつながる人物ばかりで、そこで殺人が起こります。探偵役は語り手の友人・巨勢博士。心理の足跡から動機を追う手法が本作の見どころです。

約16万字とこの10作で最も長いぶん、読み応えがあります。安吾を評論だけの作家だと思っていた人ほど驚く1冊です。

ありえない設定を本気で作り込んだ推理小説が好きなら、バカミスのおすすめ小説10選|ありえない展開を本気で作り込んだ傑作も合わせてどうぞ。

探偵が活躍する本格ミステリーが好きな方は、内田康夫の作品もあわせて参考にしてみてください。

あわせて読みたい
内田康夫の最高傑作はどれ?おすすめ10選と浅見光彦シリーズの読む順番 内田康夫に公式な「最高傑作」はありませんが、最も広く知られているのは『天河伝説殺人事件』(1988年)です。1991年に市川崑監督で映画化され、浅見光彦を榎木孝明が...

編集長のひとこと:安吾は「短い1本」から入ると印象が変わる

田中寛大

大学院で難しい本を読み続けた経験からいうと、評論で挫折する原因の多くは内容ではなく分量です。最初から300ページの評論集を開くと、主張が頭に入る前に体力が尽きます。

その点、坂口安吾は入りやすい作家です。『堕落論』は約7,600字、『風博士』は約5千字で、どちらも文庫なら十数ページ。しかも青空文庫で無料で読めます。まず短い1本を最後まで読み切って、文体が合うと分かってから『不連続殺人事件』のような長編に進む。この順序なら、無頼派という肩書きに身構えずに済みます。

坂口安吾に関するよくある質問

坂口安吾の代表作は何ですか?

評論『堕落論』(1946年)です。小説では『白痴』(1946年)と『桜の森の満開の下』(1947年)、ミステリーでは第2回探偵作家クラブ賞の長編賞を受賞した『不連続殺人事件』(1947〜48年連載)が代表作とされます。

坂口安吾で読みやすい作品はどれですか?

短編『風博士』(約5千字)と評論『堕落論』(約7,600字)です。どちらも文庫で十数ページ相当なので、1時間かからず読み終わります。小説から入るなら『桜の森の満開の下』(約1万7千字)が向いています。

坂口安吾の作風はどのようなものですか?

既成の道徳や価値観を正面から疑う姿勢が一貫しています。ジャンルは評論・純文学・歴史小説・ミステリーの4系統にまたがり、どれも軽妙な語り口が特徴です。第二次世界大戦直後に活躍した無頼派(新戯作派)の作家に数えられます。

無頼派とはどういう作家のことですか?

第二次世界大戦直後の数年間に、既成の文学観や価値観への反逆を示した作家群の呼称です。織田作之助、坂口安吾、太宰治、石川淳、檀一雄らが挙げられます。安吾が戯作の重要性を説いたことから、新戯作派とも呼ばれます。

坂口安吾の作品は無料で読めますか?

読めます。1955年に亡くなっており著作権の保護期間が満了しているため、青空文庫で無料公開されています。『堕落論』『白痴』『桜の森の満開の下』『風博士』『不連続殺人事件』など、この記事で紹介した作品はいずれも収録されています。

坂口安吾のおすすめの短編はどれですか?

『風博士』(約5千字)と『桜の森の満開の下』(約1万7千字)です。前者はナンセンスな笑い、後者は幻想的な恐ろしさと、同じ短編でも味わいが大きく違います。2本続けて読むと、安吾の振れ幅が分かります。

最初の1本は短編か評論から

坂口安吾は評論の人という印象が強い作家ですが、実際には幻想的な短編も歴史小説もミステリーも書いています。だからこそ、どこから入るかで印象が変わります。まず『風博士』か『堕落論』を最後まで読み、文体が合うと分かったら『桜の森の満開の下』へ、さらに読み進めたければ『不連続殺人事件』へ。いずれも青空文庫で試せるので、費用をかけずに相性を確かめられます。

📚 読者アンケート(30秒で完了)

※回答内容は個人を特定できない統計情報として、当メディアの記事内で紹介させていただく場合があります。

  • Amazonのアソシエイトとして、当メディアは適格販売により収入を得ています。
  • コンテンツ内で紹介した商品をご購入いただくと、売上の一部が運営会社(アマノート)に還元されることがあります。
  • 各商品の紹介文は、公式サイト等の情報を参照して作成しております。
  • 掲載情報は、アマノートが独自にリサーチした時点のものです。価格変動やその他の理由により、実際の情報と異なる場合があります。最新の価格、商品詳細、およびサービス内容については、各公式サイトでご確認ください。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次