吉田修一(1968年〜)は、長崎県長崎市出身の小説家です。2002年に「パーク・ライフ」で第127回芥川龍之介賞、同じ年に『パレード』で第15回山本周五郎賞を受賞しました。純文学とエンターテインメントの両方の賞を1年で取った、めずらしい経歴の書き手です。
近年もっとも話題になったのは『国宝』(2018年)。2025年6月に李相日監督・吉沢亮主演で映画化されました。この記事では、おすすめ11作を刊行年と受賞つきで紹介し、受賞歴と映像化作品も一覧にまとめます。
吉田修一とは|芥川賞と山本周五郎賞を同じ年に受けた作家

吉田修一は1968年9月14日、長崎県長崎市の生まれ。法政大学経営学部を卒業し、1997年に「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞してデビューしました。2002年には「パーク・ライフ」で芥川賞、『パレード』で山本周五郎賞を同じ年に受けています。
作風の特徴は次の3点です。
- 等身大の人物描写…強さと弱さを併せ持つ人物を、善悪の判断を置かずに書く
- 「孤独」という一貫した主題…都市の雑踏のなかの孤独、家族のなかの孤独を繰り返し描く
- 平易で速い文体…読みやすさとテンポがあり、映像化しやすい構成になっている
吉田修一の受賞歴
| 賞 | 年 | 対象作 |
|---|---|---|
| 第84回 文學界新人賞 | 1997年 | 「最後の息子」 |
| 第15回 山本周五郎賞 | 2002年 | 『パレード』 |
| 第127回 芥川龍之介賞 | 2002年 | 「パーク・ライフ」 |
| 第61回 毎日出版文化賞 | 2007年 | 『悪人』 |
| 第34回 大佛次郎賞 | 2007年 | 『悪人』 |
| 第23回 柴田錬三郎賞 | 2010年 | 『横道世之介』 |
| 第69回 芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門) | 2019年 | 『国宝』 |
| 第14回 中央公論文芸賞 | 2019年 | 『国宝』 |
| 第29回 島清恋愛文学賞 | 2023年 | 『ミス・サンシャイン』 |
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吉田修一の映像化作品|映画から原作に入るのもおすすめ
吉田作品は映像化が多く、映画やドラマを先に見てから原作に戻る読み方もできます。主な映像化は次のとおりです。
| 原作 | 形式・公開 | 備考 |
|---|---|---|
| 『悪人』 | 映画/2010年 | 李相日監督・妻夫木聡/深津絵里主演 |
| 『横道世之介』 | 映画/2013年 | 沖田修一監督・高良健吾主演 |
| 『怒り』 | 映画/2016年 | 李相日監督 |
| 『路』 | ドラマ/2020年 | NHK『路〜台湾エクスプレス〜』 |
| 『太陽は動かない』 | 映画/2021年3月 | 羽住英一郎監督・藤原竜也主演 |
| 『国宝』 | 映画/2025年6月 | 李相日監督・吉沢亮主演 |
原作と映像の違いを楽しむ読み方については、「小説が原作の映像化作品」も参考になります。
吉田修一のおすすめ小説11選|刊行年と受賞つき

代表作から順に11作を紹介します。先に一覧で確認したい方は次の表をどうぞ。
| 刊行年 | 作品 | 受賞・映像化 |
|---|---|---|
| 1999年 | 『最後の息子』 | 表題作が第84回文學界新人賞(1997年)/デビュー作 |
| 2002年 | 『パレード』 | 第15回山本周五郎賞 |
| 2002年 | 『パーク・ライフ』 | 第127回芥川龍之介賞 |
| 2007年 | 『悪人』 | 毎日出版文化賞/大佛次郎賞/2010年映画化 |
| 2009年 | 『横道世之介』 | 第23回柴田錬三郎賞/2013年映画化 |
| 2012年 | 『路』 | 2020年NHKドラマ化 |
| 2012年 | 『太陽は動かない』 | 鷹野一彦シリーズ第1作/2021年映画化 |
| 2014年 | 『怒り』 | 2016年映画化 |
| 2015年 | 『森は知っている』 | 鷹野一彦シリーズ第2作 |
| 2018年 | 『国宝』 | 芸術選奨/中央公論文芸賞/2025年映画化 |
| 2022年 | 『ミス・サンシャイン』 | 第29回島清恋愛文学賞 |
『パレード』|山本周五郎賞受賞作(2002年)
東京の一軒のアパートで共同生活を送る若者たちを描いた物語です。表面上は仲良く暮らしているように見える彼らですが、それぞれが深い孤独を抱えています。そんな中、近所で連続する通り魔事件が彼らの日常に不穏な影を落としていきます。都市の孤独と他者との関係性を描いた一作で、2002年に第15回山本周五郎賞を受賞しました。
『悪人』|毎日出版文化賞・大佛次郎賞のダブル受賞(2007年)
九州を舞台に、一人の女性の死をきっかけに交差する人々の人生を描いた作品です。犯人とされる青年と、彼を愛する女性の物語を中心に、「悪人」とは何かを問いかけます。人間の複雑さと救いの可能性を描き出した一作です。2007年に第61回毎日出版文化賞と第34回大佛次郎賞を受賞しました。2010年には李相日監督で映画化され、第34回日本アカデミー賞で妻夫木聡が最優秀主演男優賞、深津絵里が最優秀主演女優賞を受賞しています(同賞の最優秀作品賞は『告白』)。
『怒り』|2016年に李相日監督で映画化(2014年)
殺人事件の容疑者が逃亡中という状況の中、東京、沖縄、北海道という3つの土地で暮らす人々の間に生まれる疑心暗鬼を描いた作品です。突然現れた「見知らぬ人」への不信と恐怖、そして「怒り」という感情の正体に迫ります。社会不安が広がる現代日本を象徴するかのような物語は、読者の心に深い余韻を残します。2016年に李相日監督で映画化されました。
『国宝』|芸術選奨・中央公論文芸賞受賞、2025年に映画化(2018年)
『国宝』は、任侠の家に生まれた少年・立花喜久雄が歌舞伎の世界に入り、女方として頂点をめざしていく半生を描いた長編小説です。2018年9月に朝日新聞出版から上下巻で刊行されました。
2019年に第69回芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)と第14回中央公論文芸賞を受賞。2025年6月6日には李相日監督・吉沢亮主演で映画が公開され、吉田修一の作品のなかでも近年もっとも話題を集めた一作になりました。血筋と才能、芸に人生を差し出すこととは何かを、50年にわたる時間軸で書ききっています。
『横道世之介』|柴田錬三郎賞受賞の青春小説(2009年)
1980年代後半から90年代初頭の東京を舞台に、田舎から上京してきた青年・世之介の大学生活と成長を描いた青春小説です。何事にも一生懸命で人懐っこい世之介の姿を通して、人との出会いの尊さが描かれています。吉田作品のなかでもとくに明るく温かみのある一作で、2010年に第23回柴田錬三郎賞を受賞しました。2013年には沖田修一監督・高良健吾主演で映画化されています。
『パーク・ライフ』|芥川賞受賞作(2002年)
東京の公園を中心に、様々な人々の人生が交差する物語です。孤独な青年、家庭に悩む主婦、行き場のない少年など、都市に生きる人々の断片的な日常が、美しい筆致で描かれています。公園という公共空間に集う人々を通して、現代社会における人間関係の希薄さとつながりの可能性を問いかける一作で、2002年に第127回芥川龍之介賞を受賞しました。
『路』|台湾新幹線を背景にした群像劇(2012年)
台湾新幹線の建設を背景に、吉田修一の小説『路』は、日本と台湾を舞台にした人々の絆と人生模様を描いています。主人公の多田春香は商社員として台湾に赴任し、かつて特別な思い出を共有した台湾人エリックと再会します。一方で、遠距離恋愛中の日本人恋人との間で揺れる心情も描かれます。さらに、台湾新幹線プロジェクトに関わる様々な人物の人生が交錯し、国境を越えた人間ドラマが展開されます。2020年にNHKで『路〜台湾エクスプレス〜』としてドラマ化されました。
『最後の息子』|文學界新人賞を受けたデビュー作(1999年)
新宿のオカマバーを経営する閻魔ちゃんと同居する「ぼく」の視点で描かれた物語です。「ぼく」は閻魔ちゃんを愛しているわけではなく、怠惰な日々を送るために彼女と暮らしています。友人「大統領」が公園で殺害される事件を契機に、過去の日々をビデオで振り返りながら、自分の欺瞞や心の在り方に向き合います。愛とも友情とも異なる複雑な感情が繊細に描かれています。表題作は1997年に第84回文學界新人賞を受賞した吉田修一のデビュー作で、第117回芥川賞の候補にもなりました。単行本は1999年7月に文藝春秋から刊行されています。
『ミス・サンシャイン』|島清恋愛文学賞受賞作(2022年)
大学院生の岡田一心は、昭和の伝説的女優・和楽京子(本名:石田鈴)の荷物整理のアルバイトを通じて彼女と交流を深める。ハリウッドで「ミス・サンシャイン」と称された鈴の輝かしい過去や被爆者としての背景が明らかになる中、一心自身も恋愛や人生の葛藤を抱えながら成長していく物語です。2023年に第29回島清恋愛文学賞を受賞しました。
『太陽は動かない』|鷹野一彦シリーズ第1作(2012年)
情報機関の工作員として活動する若者と、彼を追う元上司の追跡劇を描いたサスペンス小説です。政府機関の陰謀と、そこに巻き込まれる人々の運命を緊迫感あふれる筆致で描き出しています。吉田作品の中でも異色のスパイアクションでありながら、人間の孤独という普遍的なテーマは健在です。2021年3月に羽住英一郎監督・藤原竜也主演で映画化されました。シリーズは『森は知っている』(2015年)、『ウォーターゲーム』(2018年)と続く3部作です。
『森は知っている』|鷹野一彦シリーズ第2作(2015年)
南の島で知子ばあさんと暮らす高校生・鷹野一彦は、普通の学生生活の裏で諜報機関の訓練を受けている。親友・柳が手紙を残して失踪し、逃亡か裏切りかと葛藤する中、鷹野は初ミッションに挑む。青春とスパイ活動が交錯する物語です。2015年4月刊行で、時系列では『太陽は動かない』より前の出来事を描いた前日譚にあたります。
監修者の視点:映像化作品は「原作が先か映画が先か」を作品ごとに決める
田中寛大映像化された小説を紹介するとき、編集の側でいつも迷うのが順番の案内です。映画を先に見ると結末を知った状態で原作を読むことになりますが、そのぶん人物の背景や心情の書き込みに集中できるという利点もあります。
吉田修一のように映像化が多い作家は、この選択が何度も発生します。目安として、筋の意外性が読みどころの作品は原作から、『国宝』のように人物の半生をたどる長編は映画からでも損をしにくい。そう考えて、この記事では各作品に映像化の年と監督・主演を添えました。
吉田修一のおすすめ作品に関するよくある質問
- 吉田修一の代表作はどれですか?
-
芥川賞を受けた「パーク・ライフ」(2002年)と、映画化で広く知られた『悪人』(2007年)です。近年では『国宝』(2018年)が、2019年に第69回芸術選奨文部科学大臣賞と第14回中央公論文芸賞を受け、2025年6月に映画化されて話題になりました。
- 吉田修一の芥川賞受賞作は何ですか?
-
「パーク・ライフ」です。2002年に第127回芥川龍之介賞を受賞しました。東京の公園に集まる人々の日常を描いた作品です。
- 吉田修一を初めて読むならどれがおすすめですか?
-
『悪人』(2007年)です。一人の女性の死をきっかけに複数の人物の人生が交差する構成で、映画版も広く知られているため入口にしやすい一作です。明るい話から入りたい場合は『横道世之介』(2009年)という選び方もあります。
- 『国宝』はどんな小説ですか?
-
任侠の家に生まれた少年・立花喜久雄が歌舞伎の女方として頂点をめざす半生を描いた長編です。2018年9月に朝日新聞出版から上下巻で刊行され、2025年6月6日に李相日監督・吉沢亮主演で映画が公開されました。
- 吉田修一の作品で映画化されたものはどれですか?
-
『悪人』(2010年・李相日監督)、『横道世之介』(2013年・沖田修一監督)、『怒り』(2016年・李相日監督)、『太陽は動かない』(2021年・羽住英一郎監督)、『国宝』(2025年・李相日監督)などです。『路』は2020年にNHKでドラマ化されました。
- 『太陽は動かない』はシリーズものですか?
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3部作です。『太陽は動かない』(2012年)、『森は知っている』(2015年)、『ウォーターゲーム』(2018年)の順で、産業スパイ組織に属する鷹野一彦を主人公にしています。『森は知っている』は時系列では第1作より前の出来事を描いた前日譚です。
吉田修一は受賞作か映像化作品から1冊選ぶ
吉田修一の作品は、都市と地方、個人と社会、孤独とつながりといった対立の間で揺れる人を描いてきました。扱う題材は青春小説からスパイアクション、歌舞伎の世界まで広く、作家名だけで選ぶより、賞か映像化を手がかりにしたほうが選びやすい書き手です。
- まず1冊…『悪人』(2007年・毎日出版文化賞/大佛次郎賞)
- 芥川賞受賞作から…『パーク・ライフ』(2002年)
- いま話題の作品から…『国宝』(2018年・2025年映画化)
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