竹取物語は現在伝わる中でも、『日本最古の物語』と言われています。現在ではおとぎ話の1つで有名で、小さな頃に読んだことのある人もいるのではないでしょうか。本記事では竹取物語のあらすじを、現代の女性に共通する悩みも含めて紹介します。
目次
竹取物語の背景
実は竹取物語は、平安時代前期には成立していたのではないかという説があります。これほど有名な作品でありながら、作者はまったくわかっていません。ただ、作者が文字の読み書きができる、当時の貴族や帝の様子などを熟知している、権力者(とりわけ藤原氏)に批判的なことから、貴族で藤原氏に恨みのある人物ではないかと推定されています。
竹取物語のあらすじをざっくりと説明!
竹取物語のあらすじを簡単に紹介します。『かぐや姫』は子供向けに書かれたおとぎ話で、『竹取物語』をもとにしている作品です。
主な登場人物は以下の通り
- かぐや姫…主人公の女性、異世界(天界)に属する人物
- 竹取の翁(たけとりのおきな)…竹取りのおじいさん、本名『讃岐造(さぬきのみやっこ)』
- 媼(おうな)…竹取の翁の妻、おばあさん
- 帝(みかど)…日本の権力者、かぐや姫に結婚を迫る
5人の求婚者…色好み(プレイボーイ)の男性でいずれも身分が高い
- 石作皇子(いしづくりのみこ)…天武天皇の頃の左大臣『丹比島(たじひのしま)』がモデル
- 庫持皇子(くらもちのみこ)…飛鳥~奈良時代の実力者『藤原不比等(ふじわらのふひと)』がモデル
- 阿部御主人(あべのみうし)…天武天皇の頃の右大臣で実在の人物
- 大伴御行(おおとものみゆき)…天武天皇に仕えた重臣で実在の人物
- 石上麻呂足(いしかわのまろたり)…天武天皇の頃の左大臣『石上麻呂(いそのかみのまろ)』がモデル
竹から生まれたかぐや姫
昔、竹取りの翁と呼ばれるおじいさんがいて、山で竹を取りいろいろなものを作ってつましく暮らしていました。ある日、根元が光る竹を見つけて節の中を見ると、可愛らしい女の子が座っています。彼女は手のひらに収まるくらいの小ささで、おじいさんは妻のおばあさんに相談。
女の子を夫婦で大切に育てることにしました。女の子が来てからというもの、節の間に砂金がつまった竹を何度も発見。家族3人で暮らし向きが裕福になっていきます。
5人の求婚者に試練を与えるかぐや姫
わずか3か月で、成人式を迎えるほどになった彼女は美しく成長。『かぐや姫』と名付けられ、縁談が舞い込みます。姫は、縁談を受けるようにかき口説くおじいさんとおばあさんに反抗。名家の男性貴族5人が選ばれます。彼らは美女と評判の女性を競うように求める色好み。結婚を嫌がる姫は探すのが難しい品をあげて、持ってきた人の求婚に応じると言い渡します。しかし、5人とも無惨な結果に…。
石作皇子(いしづくりのみこ)…仏の御石の鉢
石作皇子は『天竺(てんじく、現在のインド)にある仏様に供えられた石の鉢』をかぐや姫に望まれます。彼は探し出すあてもなく、苦難の旅を強いられることを嫌悪。大和(やまと)国の山寺にあった古い鉢を持ち帰り、かぐや姫に渡します。光輝く様子もなく、偽物を仕込んだことがばれて求婚は大失敗。
庫持皇子(くらもちのみこ)…蓬莱の玉の枝
庫持皇子には『蓬莱(ほうらい)山にある玉の枝』を所望。狡猾な彼は、絶海の孤島にある蓬莱山を目指すふりをして、すぐに港にUターン。細工職人を6人集めて秘密裏に作らせます。素晴らしい枝を見て、竹取りの翁は『人柄もよい、約束を守った皇子と結婚を』と。姫は気が進みません。
皇子は口からでまかせに、枝を取りに行く冒険話を聞かせます。かぐや姫の家に職人たちが現れ『玉の枝の制作費を支払ってほしい』と訴えを。作り物だとわかったかぐや姫は、満足したように彼を拒絶します。
阿部御主人(あべのみうし)…火鼠の皮衣
かぐや姫から難題を出された阿部御主人は、知り合いの中国人の商人に『火鼠の皮衣を手に入れてほしい』と依頼。商人は中国から日本へ頼まれた品物を送ってきました。お人好しの求婚者はしたたかな商人騙され、偽物をつかまされることに。かぐや姫は『本物なら燃えないはず』と言い、火を入れたところ簡単に燃えてしまいます。大金をはたいたのに無駄になってしまいました。
大伴御行(おおとものみゆき)…竜の首の珠
竜の首にある五色の光を放つ珠を所望された求婚者は、家臣に旅に必要な金品を用意。家臣は馬鹿らしいと興ざめして『品物を探すまで帰るな』と言われたのを逆手に取り、金品を分け合い身を隠していました。業を煮やした主人は自ら乗船して探しにいきますが、悪天候に巻き込まれ船長から叱責。ひどい状態で帰国した挙げ句、宝物は入手出来ず、離縁した妻にも笑われて散々な結果に…。
石上麻呂足(いしかわのまろたり)…燕の子安貝
石上麻呂足には燕が産卵する時に出る子安貝を所望。家臣たちは『子安貝は人が見ると消えてしまう』と説得。諦めきれない彼は巣に家臣に命じて巣を探させますが、大勢いる人を恐れ燕が身を隠す始末。燕が産卵したタイミングで、急いで巣の中に手を入れて見てはと進言する家来の案を採用します。家臣に任せず自分でやろうとし、はしごから落下して大怪我を負うことに。必死でつかんだのは、子安貝ではなく燕のふんでした。
帝の求婚も拒絶するかぐや姫
5人の求婚を跳ねのけるかぐや姫が気になり、ぜひ妃にと考える帝。使いを出して、竹取りの翁と媼も宮仕えに応じるよう説得。しかし、『いくら帝でも結婚するくらいなら死んでやる』と姫は怒りをあらわに。帝は不意打ちして無理に邸内を訪ねて結婚しようとしますが、姫の体は発光し見えません。帝は姫が人間ではないと悟り、歌のやり取りをして心を通わせるようになりました。
月へ帰るかぐや姫
帝とかぐや姫が歌のやり取りをして3年。姫は月を眺めては打ち沈む様子を見せています。姫は月の都の出身で実の父母がいる身でした。8月15日の満月(中秋の名月)の頃に月から迎えが来て、帰らなくてはいけないと竹取りの翁と媼に告げます。帝が警備の者を配置し、姫を建物の奥深くに隠しますが、月の使者の前ではみな無力です。天人から衣装を着せかけられると、すっかり地上のことを忘れて帰ってしまいました。
後日談…竹取の翁夫婦と帝の悲嘆
かぐや姫は月に帰る直前に、手紙と不死の薬を残して行きました。翁と媼夫妻はかぐや姫がいなくなり『誰のために長く生きるのか』と嘆き、寝込んでしまいます。帝にも献上されますが、『もう姫に会うことは叶わない。長生きしても仕方がないだろう』と言い、国内で天に近い駿河国の山(富士山)で手紙と薬の入った壺を焼くように命じました。山頂で焼いた煙が、今でも雲に紛れて立ち登っていると伝えられています。
かぐや姫と現代女性との共通する悩み
平安時代の初期に書かれた竹取物語。昔も今も女性の悩みとつながる部分があるようです。
結婚させようとする周囲の圧力が嫌
令和7年の現代ではだいぶ考え方も変わってきましたが、なるべく若いうちに結婚させようとする周囲の圧力をひしひしと感じることもあるでしょう。かぐや姫は必死に抵抗しているかのようです。
かぐや姫の両親代わりの竹取りの翁と媼でさえ、5人の求婚者から選ぶ際に、自分たちが死んだ後も幸せに暮らせるように子どもを生んで子孫を繁栄させよと結婚を迫っています。姫は無理難題を言って断る気持ちが満々です。帝との結婚話を勧める際も立身出世のため結婚を迫っていると、かぐや姫になじられて図星の様子。
自分の考え方を大事にしたい
かぐや姫は、相手が権力者であってもなびかずに自分の気持ちを大切にしたいように見えます。共感する人も少なくないでしょう。不意打ちをして彼女の姿を見て結婚しようとする帝に拒絶反応を示しますが、彼女が常人でないと悟り、歌のやり取りをして距離を少しずつ縮めていく帝。彼女を尊重する姿に、徐々に好感を持っていく様子が見て取れます。
竹取物語を読みたい!あらすじがわかる現代語訳の書籍の紹介
子供向けのおとぎ話ではなく、大人が味わえる『竹取物語』を読んでみたいと感じる人もいるでしょう。おすすめの書籍を3冊紹介します。
『竹取物語』(角川書店ビギナーズ・クラシックス)
原文に現代語訳、補足の説明とエピソードごとのコラムがバランスよく書かれ、内容が理解しやすいです。原文の良さを味わいたい人や、古典文学にあまり慣れていない人にもおすすめ。
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「竹取物語(角川文庫)」 (訳…星新一)
日本最古のSF小説の雰囲気を楽しみたい人におすすめ。章ごとに書かれた作者の感想が共感できると評価されています。原文に配慮しつつ、現代の言葉に合うように読み進められますよ。巻末に原文の記載あり。
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「竹取物語 (河出文庫)」(訳…森登美彦)
堅苦しくなく、登場人物それぞれの人となりを身近に感じて読みたい人におすすめ。かぐや姫に翻弄される男性たちの姿をユニークに描きながら、姫の心の内が変化していく様子を丁寧に表現しています。
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竹取物語のあらすじで再確認!時代を超えて共感される女性の悩み
『竹取物語』のあらすじを読んで、かぐや姫は生き生きとした自分の意思を持った人物として描かれています。現代の女性に通じる悩みを持ち身近に感じられるでしょう。最初は強く意見されると言い返したり、嫌味を言ったりする気の強さがありながら、月に帰る前には成長して育ての親や帝に対するおもいやりが感じられる場面も。ぜひ現代語訳やあらすじの掲載された原文を読んで、竹取物語に触れてみてはいかがでしょうか。