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平家物語というと、平清盛を中心とした平家の栄華や、子孫の代で急速に衰退していく話という印象が強いかもしれません。
『祇園精舎の鐘の声~』というフレーズは有名ですが、全編について詳しく分からない方もいるでしょう。
平家物語のあらすじ・内容を簡単に解説し、作者や源氏物語との関係性も紹介します。
平家物語は全部で12巻と最後の『灌頂巻(かんじょうのまき)』 からなる軍機物語(歴史上の合戦をもとにした物語)。
鎌倉時代初期、1200年代前半に成立したと言われています。
書物で読みつがれるのではなく、琵琶法師が演奏しながら語る形で広まっていきました。
武家でありながら太政大臣まで上りつめた平清盛とその一族である平家。栄華を極めた後、源頼朝を中心とした武士達によって滅びます。
平家の没落だけで終わらずに、実際に追い詰めた頼朝の弟義経の死まで描いていきます。
各地に落人として隠れ住んだ平家の人たちへ、非業の死を遂げた先祖の鎮魂を目的として作られたという説もあります。
仏教の影響を深く受け、どんなに栄えている者もずっと同じ状態でいるわけではないということを表しています。
ちなみに「平家」とは平氏の中でも平清盛を中心とした一族のこと。
平氏全体が滅びたわけではありません。
鎌倉幕府の執権で有名な重臣の北条氏も、平氏の一族です。
平家物語の作者は厳密に言うとはっきりと分かってはいません。
最も有力な説は、吉田兼好『徒然草(第226段)』に記載のある「信濃前司行長(しなののぜんじゆきなが)」です。
「前司」とは、以前信濃国の国司を勤めていたという意味。
関白・九条兼実の家司(いえのつかさ:家政にかかわる家来)の中山行長とされています。
ただ、役職は下野守(しもつけのかみ)ですので、吉田兼好の書き誤りかもしれません。
その行長が、目の不自由な「生仏」という琵琶法師に(平家物語の筋を)教えて、語らせたようですね。
「生仏」は東国出身で、武士のことや戦のことなどは直接坂東武士に取材させて、それをもとにして行長が執筆したとのこと。
徒然草の中で、平家の敵方の源義経のことはよく描写されているけれども、兄の源範頼についてはあまり資料がなく記述が少ないことにも言及しています。
吉田兼好いわく、その当時の琵琶法師は生仏の声色を真似て諸国で語り継いでいるということです。
中山行長が使えた九条兼実は、浄土宗の開祖「法然上人」に深く帰依していました。
平家物語に浄土思想などの仏教の影響が残るのは、法然の教えによるものかもしれません。
平家物語のあらすじを簡単にわかりやすく解説していきます。
平忠盛が死去後、長男の清盛が後を継ぎ、太政大臣にまで出世。
後白河法皇を父に、正室の時子の妹を母とする高倉天皇が即位し、平家は絶頂の時期を迎えます。
比叡山延暦寺との対立が深まる清盛。
その最中に後白河院の近臣・西光や大納言・藤原成親らによる鹿ヶ谷の陰謀が発覚。
陰謀に関わったものは処罰を受ける。
清盛の長男・重盛が取り成すが、西光は斬首され、成親は崖から突き落とされて暗殺されます。
清盛の娘で高倉天皇の中宮・徳子が懐妊。
恩赦が行われ、鹿ヶ谷の陰謀で鬼界ヶ島に流罪になった藤原成経と平康頼が帰京。
ただ一人、俊寛僧都は許されず島に残ることに。
平家で最も人望のあった重盛が死去し、清盛との関係が悪化した後白河法皇は幽閉されます。
高倉天皇が譲位し、清盛の孫の安徳天皇が3歳で即位します。
後白河法皇の三男・以仁王が源頼政らと挙兵し、謀反を起こします。
敗北し、以仁王と頼政は戦死。
清盛は危険を感じ、福原京に遷都を決定。
以仁王の綸旨が国内に出回り、源頼朝が挙兵。
富士川の戦いで水鳥の羽音に驚いた平家の総大将・維盛(重盛の長男)が逃げて、歴史的な大敗を喫します。
不満が多いため都を元の場所に戻します。
清盛の五男・重衡により南都(興福寺や東大寺)が焼き討ちされました。
高倉上皇が崩御。源氏の木曽義仲が挙兵しました。
その後、清盛は64歳で死去します。墓前に頼朝の首を持ってくるようにと言い残しました。
横田河原合戦で義仲が勝利します。
義仲の嫡男・吉高が頼朝の人質に。源氏一門で関係を強化し、平家追討に力を入れます。
倶利伽羅峠の戦いで、平家は義仲に大敗。
比叡山も源氏の味方をし、平家一門は福原京を焼いて、船で退去。都落ちをしていきます。
清盛の弟・頼盛は、母が頼朝を助けたため、助命を期待して都にとどまります。
比叡山から後白河法皇が帰京し、後鳥羽天皇が4歳で即位。平家追討の院宣を出します。
平家は太宰府で敗北し、屋島に撤退します。頼朝を征夷大将軍に任命。
木曽義仲の横暴な振る舞いが原因となり、法皇や近臣との関係が悪化。
義仲は法住寺合戦で勝ち、法皇と後鳥羽天皇を幽閉してしまいました。
宇治川の戦いで、鎌倉の頼朝方の範頼と義経兄弟と義仲が激突。
六条河原の合戦、粟津の戦いで義仲が死去し、敗北します。
範頼と義経軍は勢いづき、一の谷の戦いにも勝利。
平忠度や敦盛の最期、重衡の生け捕りなどの場面が描かれます。
戦死した平家方の首が河原にさらされます。
生け捕りにされた重衡が授戒する様子、千手の前によるもてなしの場面の描写、平維盛が出家して入水する場面などが書かれています。
義経軍と平家との屋島の戦いや壇ノ浦の戦いの場面。
有名な那須与一の扇を射るところも描かれています。
義経と梶原景時の仲間割れの様子もあり、義経が没落する一因も予想されます。
壇ノ浦で敗北を覚悟した平家一門は、安徳天皇と平時子をはじめとして、天皇のしるしである三種の神器を携えて入水。
清盛の三男・宗盛と清宗父子、安徳天皇の母建礼門院徳子は生け捕りにされ、都に連れて行かれます。
重衡と宗盛父子は河原で斬首され、徳子は出家します。
梶原景時の告げ口や勝手に法皇から官位を受けたことなどから、源頼朝と義経兄弟は敵対することになっていきました。
義経は都落ちし、奥州藤原氏を頼ることになります。
京では最後の平家の生き残り、維盛の息子六代御前が殺され平家は滅亡します。
建礼門院徳子が出家し、大原の寂光院に移り住んで平家の菩提を弔うことになります。
後白河法皇は女院を見舞い、中宮であった頃とすっかり変わり果てた姿に涙が止まりません。
法皇と「この世は六道の苦しみを見ているようだ」と語り合いました。
女院の極楽往生を遂げる様子で終えます。
『源氏物語』は平安時代中期に紫式部によって書かれた文学作品です。
源氏とは、武士のことではなく、親王(天皇の子ども)が臣下に下った時に賜る姓のこと。
桐壺帝の皇子・主人公の「光源氏」から取られています。
光源氏の誕生から晩年まで、そして『宇治十帖』で息子の薫大将(かおるだいしょう:表向きは光源氏と正室の女三の宮の子)の実らぬ恋の顛末が描かれます。
『源氏物語』は「もののあはれ」、物事に触れて、優美な中にもしみじみとした感情や物悲しさを伴った感情を描いています。
対して、成立年代が遅い『平家物語』も「あはれ」を表現していますが、少し意味合いが違うようですね。
平家が滅んでいく様子、源平の武将や家来などの無名の人の死を通して、悲しみや哀切の気持ちを表現しています。
美しく死を描写することで、無念の死を遂げた人の魂を鎮める役目をしたのかもしれません。
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以上、駆け足ではありますが平家物語を簡単にまとめてみました。
もし、平家物語に興味がありましたら、全注釈本も出版されています。
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