落ち込んでいるときに一冊だけ選ぶなら、『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健)です。人間関係の悩みを「自分の課題」と「他人の課題」に切り分ける考え方が、動けなくなった気持ちをほどいてくれます。笑って元気を取り戻したいなら『もものかんづめ』、物語の力で背中を押されたいなら『本日は、お日柄もよく』が向いています。
この記事では、勇気が出る本を選ぶときの3つの型を整理したうえで、自己啓発書から小説・エッセイまで10冊を紹介します。「元気が出る本」「前向きになれる本」との違いにも触れるので、いまの気分に合う一冊を選んでください。
勇気が出る本の選び方は3つの型がある

ひとくちに「勇気が出る本」といっても、効き方は3つに分かれます。いまの自分がどれを必要としているかで選ぶと、外れにくくなります。
| 型 | 向いている状態 | 主なジャンル |
|---|---|---|
| 考え方を変える | 同じところでずっと悩んでいる | 自己啓発書・心理学・哲学 |
| 笑って軽くする | 気持ちが重く、何も入ってこない | エッセイ・コメディ小説 |
| 物語で背中を押される | 一歩を踏み出せずにいる | 小説・伝記・名言集 |
考え方を変えたいなら自己啓発書・心理学
同じことで何度もつまずいているときは、行動そのものより「ものの見方」が原因になっていることがあります。自己啓発書や心理学の本は、その見方を組み替える道具をくれます。
読むときのコツは、全部を実践しようとしないこと。ひとつだけ試すことを決めて読み終えると、読んだ翌日に変化が残ります。自己啓発書の選び方は「自己啓発本のおすすめ」でも紹介しています。
気持ちが重いときは笑えるエッセイ
落ち込みが深いときに正論を読むと、かえってつらくなることがあります。そんな日は、笑えるエッセイやコメディ小説のほうが効きます。
短い章立ての本なら、1本だけ読んで閉じてもかまいません。読み切ることを目的にしないほうが、結果的に最後まで読めます。
一歩を踏み出したいなら小説・伝記
理屈では分かっていても動けないときは、物語のほうが届きます。登場人物が迷って、決めて、動くところまでを一緒にたどると、自分の番になったときの心理的なハードルが下がります。
実在の人物の伝記や名言集も同じ働きをします。何十年も読み継がれてきた本ほど、その効き目が確かめられているという見方もできます。
勇気が出るおすすめの本10選

自己啓発書・小説・エッセイ・名言集から、背中を押してくれる10冊を選びました。
| 書名 | 著者 | 型 |
|---|---|---|
| 夢をかなえるゾウ | 水野敬也 | 考え方を変える |
| 人生ドラクエ化マニュアル | JUNZO | 考え方を変える |
| 嫌われる勇気 | 岸見一郎・古賀史健 | 考え方を変える |
| さいはての彼女 | 原田マハ | 物語で背中を押される |
| もものかんづめ | さくらももこ | 笑って軽くする |
| イン・ザ・プール | 奥田英朗 | 笑って軽くする |
| 本日は、お日柄もよく | 原田マハ | 物語で背中を押される |
| しないことリスト | pha | 考え方を変える |
| ココ・シャネル99の言葉 | 酒田真実 | 物語で背中を押される |
| きっと明日はいい日になる | 田口久人 | 笑って軽くする |
夢をかなえるゾウ(水野敬也)
『夢をかなえるゾウ』は水野敬也による自己啓発小説で、2007年に刊行されました。冴えないサラリーマンの前に、関西弁を話すゾウの姿の神・ガネーシャが現れるところから始まります。
ガネーシャが出す課題は「靴をみがく」「コンビニで募金する」といった、拍子抜けするほど小さなものばかり。それでも、実行するかどうかで人生が分かれると突きつけてきます。
何かを変えたいけれど、何から手をつければいいか分からない人に向いています。物語として読めるので、自己啓発書が苦手な人でも最後まで進みます。
人生ドラクエ化マニュアル(JUNZO)
『人生ドラクエ化マニュアル』は、人生をロールプレイングゲームに見立てて考える発想の本です。困難を「敵」、目標を「クエスト」として捉え直すことで、目の前の状況の見え方を変えていきます。
つらい出来事も、ゲームなら難易度が高いほど面白い。その一点を軸に据えるだけで、身動きが取れない状態から抜けやすくなります。
理屈で納得したいタイプの人や、ゲームに親しんできた人と相性のいい一冊です。
嫌われる勇気(岸見一郎・古賀史健)
『嫌われる勇気』は、哲学者の岸見一郎とライターの古賀史健による共著で、2013年にダイヤモンド社から刊行されました。アルフレッド・アドラーの心理学を、青年と哲人の対話形式で解説しています。
中心にあるのは「課題の分離」という考え方です。他人が自分をどう思うかは他人の課題であり、自分にはどうにもできない。そう線を引くことで、他人の評価に縛られていた行動が動きだします。
人間関係で足が止まっている人には、この10冊のなかでもっとも直接に効く一冊です。
さいはての彼女(原田マハ)
『さいはての彼女』は原田マハによる短編集です。表題作の主人公は、仕事一筋で走り続けてきた女性経営者。予約の手違いから、思っていたのとまったく違う土地に降り立つことになります。
予定外の場所で出会った人たちとの時間が、張りつめていた主人公をほどいていきます。休むことに罪悪感がある人ほど、読後に呼吸が深くなるはずです。
もものかんづめ(さくらももこ)
『もものかんづめ』は、漫画『ちびまる子ちゃん』で知られるさくらももこの初のエッセイ集です。1991年3月に集英社から刊行され、2001年3月に集英社文庫に収められました。単行本と文庫を合わせた累計は250万部を超えるベストセラーです。
身近な出来事を、独特の観察眼とユーモアで書きとめた一冊。深刻になりそうな話題も笑いに変えてしまう筆致に、読んでいるうちにこちらの肩の力も抜けていきます。
1話が短いので、気力がない日でも1本だけ読む、という付き合い方ができます。
イン・ザ・プール(奥田英朗)
『イン・ザ・プール』は、奥田英朗の「精神科医・伊良部」シリーズの第1作です。伊良部総合病院の地下にある神経科を舞台に、プール依存や携帯電話依存など、それぞれの悩みを抱えた患者たちが訪れます。
迎える医師の伊良部一郎は、白衣を着た変人としか言いようのない人物。まともな治療をしているようには見えないのに、患者たちはなぜか快方に向かっていきます。
自分の悩みを深刻に抱えすぎている人ほど、読み終えたあとに軽くなる作品です。シリーズ第2作の『空中ブランコ』は第131回直木賞(2004年)を受賞しており、続けて読むのもおすすめです。
本日は、お日柄もよく(原田マハ)
『本日は、お日柄もよく』は原田マハによる長編小説です。主人公のOL・二ノ宮こと葉は、片思いの相手の結婚式で、伝説のスピーチライター久遠久美のスピーチに衝撃を受けます。
その場で弟子入りを決意したこと葉が、言葉の力で人を動かす仕事に踏み込んでいく物語です。「やってみたい」と思いながら踏み出せずにいる人に、これ以上ないほど効きます。
しないことリスト(pha)
『しないことリスト』は、pha(ファ)による一冊です。やることを増やして前に進むのではなく、抱えているものを手放して身軽になるという方向から書かれています。
頑張りが足りないのではなく、頑張る対象が多すぎるだけかもしれない。そう思えたとき、動けなかった理由がひとつ減ります。
やるべきことで頭がいっぱいの人、疲れきっている人におすすめです。
ココ・シャネル99の言葉(酒田真実)
『ココ・シャネル99の言葉』(扶桑社文庫)は、酒田真実がココ・シャネルの言葉を集めた一冊です。ココ・シャネルは20世紀のファッションに革新をもたらしたデザイナーで、コルセットから女性を解放した服づくりで知られます。
自分の道を自分で決めてきた人の言葉は、まっすぐで容赦がありません。長い文章を読む気力がない日でも、1ページ開くだけで受け取れるのが名言集の強みです。
きっと明日はいい日になる(田口久人)
『きっと明日はいい日になる』は、Instagramで詩を投稿し続けてきた田口久人による言葉集です。「毎日が楽しくなる」「一歩踏み出す」「人間関係がよくなる」「心を整える」「自信を身につける」「夢をつかむ」「自分らしくいる」の7章に、182の言葉が収められています。
物語でも理論でもなく、短い言葉が並ぶだけの構成です。だからこそ、活字を追う気力がない日でも開けます。
前向きなエネルギーをもらう前に、まず傷ついた心を癒やしたいという方には、優しく寄り添ってくれる物語もおすすめです。心が疲れた時に読む小説については、下記の記事で詳しく解説しています。

編集長のひとこと:長く読み継がれた本から選ぶ
田中寛大オンライン古書店を2019〜2022年に運営していたとき、同じタイトルが何度も売れていく現象がありました。扱った6,951タイトルのうち2冊以上売れたのは959タイトル、13.8%です。その上位には『チーズはどこへ消えた?』や『「怒り」がスーッと消える本』のような、読み手の背中を押すタイプの本が並んでいました。
勇気が出る本を探すときは、話題の新刊よりも、そうやって何年も人の手を渡り続けている本から入るほうが外れにくいと感じています。中古でも状態が良いものを選べば、読書体験は新品とほとんど変わりません。
「勇気が出る本」と「元気が出る本」「前向きになれる本」の違い

似た言葉ですが、探している人の状態は少しずつ違います。求めているものがどれかで、選ぶ本も変わります。
- 勇気が出る本…やることは決まっているのに踏み出せない人へ。行動を後押しする本(『嫌われる勇気』『本日は、お日柄もよく』)
- 元気が出る本…気力そのものが落ちている人へ。笑える本や短い言葉の本(『もものかんづめ』『きっと明日はいい日になる』)
- 前向きになれる本…物事の受け取り方を変えたい人へ。考え方の枠を組み替える本(『夢をかなえるゾウ』『人生ドラクエ化マニュアル』)
気力が落ちきっているときに「勇気が出る本」を読むと、書かれていることが正しいほど責められている気持ちになります。順番としては、まず元気を戻す本、次に前向きになる本、最後に勇気が出る本。この並びで手に取ると無理がありません。
勇気が出る本に関するよくある質問(FAQ)
- 勇気が出る本を1冊だけ選ぶなら何がおすすめですか?
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『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健/ダイヤモンド社)です。他人の評価は他人の課題だと切り分ける「課題の分離」の考え方が、人間関係で止まっていた行動を動かしてくれます。物語で背中を押されたい場合は、原田マハ『本日は、お日柄もよく』が向いています。
- 勇気が出る小説を読みたいときは何がいいですか?
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原田マハの『本日は、お日柄もよく』と『さいはての彼女』の2作です。どちらも、立ち止まっていた主人公が人との出会いをきっかけに動きだす物語で、理屈より先に気持ちが動きます。
- 落ち込みが深いときでも読める本はありますか?
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さくらももこ『もものかんづめ』と、田口久人『きっと明日はいい日になる』です。前者は1話が短いエッセイ、後者は182の短い言葉を集めた本なので、長い文章を追う気力がなくても1ページから読めます。
- 「勇気が出る本」と「元気が出る本」は何が違いますか?
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勇気が出る本は「やることは決まっているのに踏み出せない人」向け、元気が出る本は「気力そのものが落ちている人」向けです。気力が落ちきっているときに勇気を促す本を読むと、責められている気持ちになりやすいため、元気を戻す本から入るほうが無理がありません。
- 自己啓発書は読んでも変わらない気がします
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全部を実践しようとすると、かえって何も残りません。1冊につき試すことをひとつだけ決めて読み終えるのがおすすめです。物語として読める『夢をかなえるゾウ』のような本から入ると、実践のハードルも下がります。
いまの気分に合う型から1冊選ぶ
勇気が出る本は、内容の良し悪しより「いまの自分の状態に合っているか」で効き方が変わります。考え方を変えたいのか、笑って軽くなりたいのか、物語に押されたいのか。まずそこを決めてから選んでみてください。
どれも決めきれないときは、長く読み継がれている一冊から。何年も人の手を渡り続けてきた本には、それだけの理由があります。
ビジネス書は「全部読む」必要がない本も多い
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