デビューから現在に至るまで、多くの賞を受賞している窪美澄さん。女性の生きる姿をリアルに描いた作風で、多くの読者の共感を呼びました。
この記事では、窪美澄さんのおすすめ作品を紹介します。初めて読む方向けに選書のコツも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
窪美澄とは?経歴と作品の魅力
窪美澄さんは、1965年生まれ、東京都出身の作家です。2009年に「ミクマリ」で『女による女のためのR-18文学賞大賞』を受賞しました。「ミクマリ」を収録した代表作「ふがいない僕は空を見た」は、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10で第1位、2011年本屋大賞で第2位に選ばれています。その後も多くの著書で賞を受賞し、2022年には「夜に星を放つ」で第167回直木賞に選ばれました。
窪美澄さんの作品は、女性が直面する社会的な課題や心情を鋭く描き、恋愛や妊娠・出産などの繊細な問題に寄り添ったものが多いことが特徴です。また、社会的な規範に苦しむ人々の孤独や苦悩を細やかに描写しており、多くの支持を得ています。
窪美澄の作品選びに迷ったら
窪美澄さんの作品を選ぶときのポイントを解説します。
受賞歴のある作品を読む
数多くの賞を受賞し、高い評価を得ている窪美澄さん。まずは、受賞歴のある代表作から読んでみましょう。
2009年 「ミクマリ」R-18文学賞大賞
2011年 「ふがいない僕は空を見た」山本周五郎賞、本屋大賞第2位
2012年 「晴天の迷いクジラ」山田風太郎賞
2019年 「トリニティ」織田作之助賞
2022年 「夜に星を放つ」直木賞
映像化された作品を読む
窪美澄さんの作品は、映像化されたものも多くあります。話題になった原作をぜひ読んでみましょう。
2012年 映画「ふがいない僕は空を見た」
2020年 テレビドラマ「やめるときも、すこやかなるときも」
2021年 映画「かそけきサンカヨウ」(単行本『水やりはいつも深夜だけど』収録作品)
窪美澄のおすすめ作品
窪美澄さんのおすすめ作品を紹介します。
ふがいない僕は空を見た
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2010年に発刊された、窪美澄さんの代表作です。デビュー作である「ミクマリ」を含む6篇を収録した連作短編集となっています。2012年に実写映画化されました。
年上の人妻と関係を持つ高校生・斉藤をピックアップした「ミクマリ」をはじめ、不倫相手の里美、斉藤の友人でヤングケアラーの良太、助産院で働く斉藤の母など、さまざまな人物の「生」を描いた本作。暗く重いテーマながら、「性と命」に真摯に向き合っている作品です。初めて窪美澄さんの作品を読む方にもおすすめ。
じっと手を見る
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2018年に発刊された「忘れられない恋愛小説」と謳われてる作品です。同年に直木賞の候補に選ばれています。
変わり映えのない日々を送っている介護士の日奈と海斗。休日に行くショッピングモールだけが息抜きの生活に、ある日、東京から来た宮澤という男が現れます。町から離れるようにして宮澤に溺れていく日奈と、日奈への思いを断ち切れぬまま育った町に縛られる海斗。二人が歩む人生とは─…
日奈と海斗にそれぞれ共感したという声も。男女の生き方をリアルに描いた作品です。
やめるときも、すこやかなるときも
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2017年に刊行された作品です。2020年にテレビドラマ化され話題となりました。
大切な人の死を忘れられず、心に深い傷を負っている家具職人・壱晴。そのトラウマから、毎年12月になると1週間ほど声が出なくなってしまう現象に侵されていました。一方、父親の代わりに家計を支えている桜子は、この生活から抜け出したいと願いつつも叶わぬ日々を送り続けています。孤独を抱える男女が、互いに自分のために生きるまでを描く恋愛小説です。他者と共に生きることの難しさや愛おしさを感じられる一冊。
水やりはいつも深夜だけど
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2014年に刊行された連作短編集です。収録作品である「かそけきサンカヨウ」は2021年に映画化されました。
同じ幼稚園に通う子どもたちを軸に、それぞれの家庭の内側を生々しく描く本作。育児と仕事で板挟みになる父親や娘の発達に不安を感じる母親など、子どもを持つ人々にとって身近なテーマを鮮やかに表現しています。懸命に前を向いて生きる家庭を描いた、共感できる等身大の物語です。
トリニティ
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2019年に刊行された、女性の生き方を描く傑作小説です。直木賞の候補にも選ばれました。
50年前、出版社で出会った3人の女たち。イラストレーター、エッセイスト、専業主婦として別々の人生を歩む3人の葛藤が描かれています。高度成長期として移ろう激動の時代に、それぞれの選択はどのような結果をもたらしたのか─…。現代を生きる女性にも深く突き刺さる、夢と祈りの物語です。
晴天の迷いクジラ
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2012年に刊行された長編小説です。「命のありようを迫真の筆致で描いた作品」と謳われています。
失恋と激務でうつを発症した24歳の由人と、由人の勤め先であるデザイン会社の社長・野乃花。自殺を決意した二人は死ぬ前に「迷いクジラ」を見に行くことに。しかし、そこで出会ったのは、同じく人生に絶望した女子高生の正子でした。生きることをやめようとした3人が織り成す、苛烈な生と希望の物語です。
私は女になりたい
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2020年刊行の長編恋愛小説です。「美しい人生讃歌小説」と謳われています。
47歳の美容皮膚科医・赤澤奈美は、シングルマザーとして大学生の息子を育てる傍ら、老いた母の面倒を見て生活しています。しかし、ふとしたことをきっかけに14歳年下の男性と激しい恋に落ちてしまい─…。 母や妻、娘という肩書きの中で必死に生きてきた奈美が「ひとりの女」として選んだ道とは。大人の恋愛小説を読みたい方におすすめの作品です。
夜に星を放つ
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2022年に発刊された、星をモチーフにした短編集です。同年に直木賞を受賞しました。
亡くなった双子の妹の恋人との関わりの中で、別れの哀しみに触れる「真夜中のアボカド」、新しい母親とうまく接することができない小学生の姿を描いた「星の随に」など、人の心の揺らぎを繊細に表現しています。人間関係に傷つき苦しむ人々の、希望と再生を綴った作品です。
窪美澄のリアリティのある繊細な筆致を味わおう
窪美澄さんの作品は、心の内側を鮮明に映し出す作風が特徴です。リアルな情景描写に、多くの読者が共感の声をあげています。読みやすい短編集も多く刊行されていますので、ぜひ手に取ってみてください。