窪美澄(くぼ みすみ)は、1965年東京都生まれの小説家です。2009年に「ミクマリ」で第8回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞してデビューし、2022年には『夜に星を放つ』で第167回直木三十五賞を受賞しました。
作風は、性・出産・介護・貧困といった生活の現実を、逃げずに書くこと。初めて読むなら、山本周五郎賞を受けた連作短編集『ふがいない僕は空を見た』(2010年)が入口として選ばれています。この記事では、おすすめ8作を刊行年と受賞歴つきで紹介し、受賞歴・映像化作品・近年の刊行物もあわせて整理します。
窪美澄の作風|性と生の現実を、きれいごとにせず書く

窪美澄は東京都稲城市の生まれ。フリーライターとして育児雑誌などの仕事を経てから小説を書き始め、43歳のときに「ミクマリ」でR-18文学賞大賞を受けました。遅いデビューと、それまでに見てきた生活の現場が、そのまま作風の土台になっています。
窪作品の特徴は、次の3点に整理できます。
- 性を物語の中心に置く…恋愛の甘さではなく、性が生活や関係にもたらす具体的な影響を書く
- 妊娠・出産・育児・介護を正面から扱う…助産院、幼稚園の保護者、介護職など、生活の現場が舞台になることが多い
- 複数の視点で1つの出来事を見る…連作短編や群像形式が多く、同じ出来事が立場によって違って見えることを書く
女性の心理や男女の関係をリアルに描く現代文学が好きなら、「角田光代のおすすめ10選」もあわせてどうぞ。
なお、女性の心理や直面する葛藤、男女の複雑な恋愛や人間模様を描く作家では、村山由佳も読まれています。

窪美澄の作品選びに迷ったら受賞作か映像化作品から

受賞歴のある作品から読む
窪美澄はデビューから直木賞まで、およそ13年で主要な賞を重ねてきました。迷ったらまず受賞作から手に取るのが確実です。
| 賞・ランキング | 年 | 対象作 |
|---|---|---|
| 第8回 女による女のためのR-18文学賞 大賞 | 2009年 | 「ミクマリ」 |
| 第24回 山本周五郎賞 | 2011年 | 『ふがいない僕は空を見た』 |
| 2011年本屋大賞 第2位 | 2011年 | 『ふがいない僕は空を見た』 |
| 第3回 山田風太郎賞 | 2012年 | 『晴天の迷いクジラ』 |
| 第36回 織田作之助賞 | 2019年 | 『トリニティ』 |
| 第167回 直木三十五賞 | 2022年 | 『夜に星を放つ』 |
映像化された作品から読む
映画・ドラマになった作品は3つあります。原作を先に読むか、映像を見てから原作に戻るかは好みで構いません。
| 作品 | 公開・放送 | 備考 |
|---|---|---|
| 映画『ふがいない僕は空を見た』 | 2012年 | 監督:タナダユキ |
| ドラマ『やめるときも、すこやかなるときも』 | 2020年1〜3月 | 日本テレビ |
| 映画『かそけきサンカヨウ』 | 2021年 | 監督:今泉力哉/『水やりはいつも深夜だけど』収録作が原作 |
窪美澄のおすすめ小説8選|刊行年と受賞つき

代表作から順に8作を紹介します。先に一覧で全体像をつかみたい方は、次の表をどうぞ。
| 刊行年 | 作品 | 受賞・映像化 |
|---|---|---|
| 2010年 | 『ふがいない僕は空を見た』 | 山本周五郎賞/本屋大賞2位/2012年映画化 |
| 2012年 | 『晴天の迷いクジラ』 | 山田風太郎賞 |
| 2014年 | 『水やりはいつも深夜だけど』 | 収録作が2021年に映画化 |
| 2017年 | 『やめるときも、すこやかなるときも』 | 2020年ドラマ化 |
| 2018年 | 『じっと手を見る』 | 直木賞候補(第159回) |
| 2019年 | 『トリニティ』 | 織田作之助賞/直木賞候補(第161回) |
| 2020年 | 『私は女になりたい』 | — |
| 2022年 | 『夜に星を放つ』 | 直木賞(第167回) |
『ふがいない僕は空を見た』|山本周五郎賞受賞・初めての1冊に(2010年)
2010年に発刊された、窪美澄の代表作です。デビュー作である「ミクマリ」を含む6篇を収録した連作短編集となっています。2011年に第24回山本周五郎賞を受賞し、2011年本屋大賞では第2位に選ばれました。2012年にはタナダユキ監督で実写映画化されています。
年上の人妻と関係を持つ高校生・斉藤をピックアップした「ミクマリ」をはじめ、不倫相手の里美、斉藤の友人でヤングケアラーの良太、助産院で働く斉藤の母など、さまざまな人物の「生」を描いた本作。暗く重いテーマながら、「性と命」に真摯に向き合っている作品です。初めて窪美澄の作品を読む方にもおすすめ。
『じっと手を見る』|直木賞候補になった恋愛小説(2018年)
2018年に発刊された「忘れられない恋愛小説」と謳われてる作品です。同年に第159回直木三十五賞の候補になりました。
変わり映えのない日々を送っている介護士の日奈と海斗。休日に行くショッピングモールだけが息抜きの生活に、ある日、東京から来た宮澤という男が現れます。町から離れるようにして宮澤に溺れていく日奈と、日奈への思いを断ち切れぬまま育った町に縛られる海斗。二人が歩む人生とは─…
地方の閉塞感と、そこから出ていく/とどまるという選択を、男女それぞれの視点から描いた作品です。
『やめるときも、すこやかなるときも』|2020年に日本テレビでドラマ化(2017年)
2017年に刊行された作品です。2020年1月から3月にかけて日本テレビでテレビドラマ化されました。
大切な人の死を忘れられず、心に深い傷を負っている家具職人・壱晴。そのトラウマから、毎年12月になると1週間ほど声が出なくなってしまう現象に侵されていました。一方、父親の代わりに家計を支えている桜子は、この生活から抜け出したいと願いつつも叶わぬ日々を送り続けています。孤独を抱える男女が、互いに自分のために生きるまでを描く恋愛小説です。他者と共に生きることの難しさや愛おしさを感じられる一冊。
『水やりはいつも深夜だけど』|映画『かそけきサンカヨウ』の原作を収録(2014年)
2014年に刊行された連作短編集です。収録作品である「かそけきサンカヨウ」は2021年に今泉力哉監督で映画化されました。
同じ幼稚園に通う子どもたちを軸に、それぞれの家庭の内側を生々しく描く本作。育児と仕事で板挟みになる父親や娘の発達に不安を感じる母親など、子どもを持つ人々にとって身近なテーマを鮮やかに表現しています。懸命に前を向いて生きる家庭を描いた、共感できる等身大の物語です。
『トリニティ』|織田作之助賞受賞作(2019年)
2019年に刊行された、女性の生き方を描く傑作小説です。2019年に第36回織田作之助賞を受賞し、第161回直木三十五賞の候補にもなりました。
50年前、出版社で出会った3人の女たち。イラストレーター、エッセイスト、専業主婦として別々の人生を歩む3人の葛藤が描かれています。高度成長期として移ろう激動の時代に、それぞれの選択はどのような結果をもたらしたのか─…。現代を生きる女性にも深く突き刺さる、夢と祈りの物語です。
『晴天の迷いクジラ』|山田風太郎賞受賞作(2012年)
2012年に刊行された長編小説です。2012年に第3回山田風太郎賞を受賞しました。
失恋と激務でうつを発症した24歳の由人と、由人の勤め先であるデザイン会社の社長・野乃花。自殺を決意した二人は死ぬ前に「迷いクジラ」を見に行くことに。しかし、そこで出会ったのは、同じく人生に絶望した女子高生の正子でした。生きることをやめようとした3人が織り成す、苛烈な生と希望の物語です。
『私は女になりたい』|47歳の女性を主人公にした恋愛小説(2020年)
2020年刊行の長編恋愛小説です。「美しい人生讃歌小説」と謳われています。
47歳の美容皮膚科医・赤澤奈美は、シングルマザーとして大学生の息子を育てる傍ら、老いた母の面倒を見て生活しています。しかし、ふとしたことをきっかけに14歳年下の男性と激しい恋に落ちてしまい─…。 母や妻、娘という肩書きの中で必死に生きてきた奈美が「ひとりの女」として選んだ道とは。大人の恋愛小説を読みたい方におすすめの作品です。
『夜に星を放つ』|直木賞受賞作(2022年)
2022年に発刊された、星をモチーフにした短編集です。同年に第167回直木三十五賞を受賞しました。
亡くなった双子の妹の恋人との関わりの中で、別れの哀しみに触れる「真夜中のアボカド」、新しい母親とうまく接することができない小学生の姿を描いた「星の随に」など、人の心の揺らぎを繊細に表現しています。人間関係に傷つき苦しむ人々の、希望と再生を綴った作品です。
窪美澄の新しい作品|2021年以降の刊行物
直木賞受賞後も刊行のペースは落ちていません。2021年以降に出た主な単行本は次のとおりです。
| 刊行 | 作品 | 版元 |
|---|---|---|
| 2021年1月 | 『ははのれんあい』 | KADOKAWA |
| 2021年7月 | 『朔が満ちる』 | 朝日新聞出版 |
| 2022年1月 | 『朱より赤く』 | 小学館 |
| 2022年5月 | 『夜に星を放つ』 | 文藝春秋 |
| 2022年9月 | 『夏日狂想』 | 新潮社 |
| 2023年4月 | 『夜空に浮かぶ欠けた月たち』 | KADOKAWA |
| 2023年7月 | 『ルミネッセンス』 | 光文社 |
| 2024年1月 | 『ぼくは青くて透明で』 | KADOKAWA |
| 2025年7月 | 『給水塔から見た虹は』 | 集英社 |
| 2026年3月 | 『君の不在の夜を歩く』 | 新潮社 |
直近では『君の不在の夜を歩く』(2026年3月・新潮社)が刊行されています。高校時代の同級生5人が、ひとりの自死をきっかけに人生の転機を迎える5つの短編で構成された一冊です。
監修者の視点:初めての作家は短編集から試す
田中寛大大学院で分厚い研究書を読み続けていた時期に痛感したのは、読む体力は日によって上下するということです。まとまった時間が取れない週に長編へ手を出すと、まず最後まで進みません。
窪美澄には短編集と連作短編集が複数あります。『ふがいない僕は空を見た』は6篇の連作、直木賞を受けた『夜に星を放つ』は短編集です。一篇ずつで区切れる本は、読書のリズムが崩れているときほど効きます。初めて読む作家なら、まず短編から入って文体が合うかを確かめるのが安全です。
連作短編の形式そのものが気に入ったら、「連作短編集のおすすめ10選」も参考になります。
窪美澄のおすすめ作品に関するよくある質問
- 窪美澄の直木賞受賞作はどれですか?
-
『夜に星を放つ』です。2022年に第167回直木三十五賞を受賞しました。星をモチーフにした短編集で、「真夜中のアボカド」「星の随に」などを収めています。
- 窪美澄のデビュー作は何ですか?
-
「ミクマリ」です。2009年に第8回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞しました。この作品は連作短編集『ふがいない僕は空を見た』(2010年)に収録されています。
- 窪美澄を初めて読むならどれがおすすめですか?
-
『ふがいない僕は空を見た』(2010年)です。2011年に第24回山本周五郎賞を受賞し、同年の本屋大賞で第2位に選ばれた代表作で、6篇の連作短編集なので少しずつ読み進められます。
- 窪美澄の作風はどのようなものですか?
-
性・妊娠・出産・育児・介護・貧困といった生活の現実を、きれいごとにせず書く作風です。連作短編や群像形式が多く、同じ出来事が立場によって違って見えることを描きます。
- 窪美澄の作品で映像化されたものはありますか?
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3つあります。映画『ふがいない僕は空を見た』(2012年・監督タナダユキ)、日本テレビのドラマ『やめるときも、すこやかなるときも』(2020年1〜3月)、映画『かそけきサンカヨウ』(2021年・監督今泉力哉。『水やりはいつも深夜だけど』収録作が原作)です。
- 窪美澄の新しい作品には何がありますか?
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『君の不在の夜を歩く』(2026年3月・新潮社)が直近の刊行です。そのほか『給水塔から見た虹は』(2025年7月・集英社)、『ぼくは青くて透明で』(2024年1月・KADOKAWA)、『夜空に浮かぶ欠けた月たち』(2023年4月・KADOKAWA)などがあります。
窪美澄は受賞作から読むと外れにくい
窪美澄の小説は、読む人の生活に直接触れてくるところに強さがあります。性、出産、育児、介護、金銭。ふだん物語の中心には置かれにくい題材を、登場人物の生活の側から書いてきた作家です。
- まず1冊…『ふがいない僕は空を見た』(2010年・山本周五郎賞)
- 受賞作で読む…『夜に星を放つ』(2022年・直木賞)
- 映像から入る…『やめるときも、すこやかなるときも』(2017年・2020年ドラマ化)
閉鎖空間の謎解きミステリーを探している方は、こちらの特集も参考にしてみてください。











