横溝正史のおすすめ探偵小説8選|金田一耕助シリーズの読む順番も解説

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横溝正史を初めて読むなら、金田一耕助の初登場作『本陣殺人事件』(1946年)です。1948年の第1回探偵作家クラブ賞を受賞した、雪の日本家屋を舞台にした密室ものです。

この記事では、おすすめの探偵小説8作を発表年つきで紹介します。金田一耕助・由利麟太郎・人形佐七という3人の探偵の違い、金田一耕助シリーズを読む順番、無料で読めるかどうかまでまとめました。

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目次

横溝正史とは|金田一耕助を生んだ探偵小説の大家

横溝正史(よこみぞ・せいし)は、名探偵・金田一耕助を生んだ探偵小説作家です。旧家の因習や地方の閉ざされた共同体を舞台に、見立て殺人や密室といった本格ミステリの趣向を組み合わせた作品を多く残しました。

  • 生没年:1902年5月24日〜1981年12月28日
  • 出身:兵庫県神戸市
  • 金田一耕助の初登場作:『本陣殺人事件』(1946年・雑誌『宝石』連載)
  • 主な受賞:『本陣殺人事件』で第1回探偵作家クラブ賞(1948年)
  • 作品を冠した賞:横溝正史ミステリ&ホラー大賞(新人賞)

横溝正史の作風と3人の探偵

横溝正史作品の舞台をイメージした日本家屋

横溝作品の舞台は、疎開先の農村、人里離れた島、避暑地など、外から人が入りにくい土地に寄っています。そこに旧家の相続や血縁の秘密が絡み、濃密な人間関係の中で事件が起こる、というのが基本の形です。

地方の因習と緻密なトリックが同居する

地方の因習や濃密な人間関係を描くため、ドロドロとした雰囲気の中で話が進みます。ただし雰囲気に流されて終わるのではなく、密室・見立て殺人・人間心理を利用した仕掛けといった本格ミステリの趣向が最後まで機能します。怖さと論理の両方を味わえるのが横溝作品の特徴です。

探偵は金田一耕助・由利麟太郎・人形佐七の3人

横溝作品には主に3人の探偵が登場します。どの探偵が出るかで舞台も雰囲気も変わるため、先に違いを押さえておくと選びやすくなります。

探偵主な舞台雰囲気
金田一耕助戦後の農村・離島・旧家因習と血縁。横溝作品の代表格
由利麟太郎東京・大阪など都市部都会的。新聞記者の三津木俊助とコンビ
人形佐七江戸・神田の於玉ヶ池捕物帳。会話のテンポが良い

金田一耕助

よれよれの和服にぼさぼさの髪という、一見平凡な風体の私立探偵です。事件の核心に迫ると、興奮して頭をかきむしるのがくせになっています。

捜査の方法は、科学的な鑑識は警察に任せて結果を聞き、関係者の証言を論理的に組み立てて解決に至る、というもの。関係者の人間性や人脈を探ることを重視します。理不尽な犯人には厳しい一方、同情の余地がある犯人には別の態度を取ることもあります。

由利麟太郎

元は警視庁の捜査課長で、辞職後に私立探偵となった人物です。パイプや葉巻を好み、金田一耕助よりも洗練された雰囲気をまといます。事件の依頼が来ると、新聞記者の三津木俊助を助手にコンビで捜査にあたります。

登場作は『真珠郎』(1936〜1937年)や『蝶々殺人事件』(1946〜1947年)など。舞台は東京や大阪といった都市部が中心で、農村の因習を描く金田一ものとは読み口が違います。

人形佐七(にんぎょうさしち)

江戸・神田の於玉ヶ池(おたまがいけ)に住む岡っ引きで、本名は佐七。「人形佐七」は京人形のような美男子という意味のあだ名です。気前がよく度胸もあり頭も切れますが、女好きなところがあり、妻のお粂に焼きもちを焼かれています。

『人形佐七捕物帳』は1938年から書き継がれた捕物帳シリーズです。会話のテンポと合理的な推理が読みどころですが、作品によっては色っぽい描写が強く出るため、好みは分かれます。

横溝正史のおすすめ探偵小説8選【発表年つき】

横溝正史のおすすめ探偵小説を並べたイメージ

探偵が活躍する代表作を8作選びました。まず一覧で探偵と読みどころを確認してから、気になった作品の解説へ進んでください。

作品(発表年)探偵読みどころ
本陣殺人事件(1946年)金田一耕助金田一の初登場作。雪の密室。第1回探偵作家クラブ賞
蝶々殺人事件(1946〜1947年)由利麟太郎コントラバスのケースに隠された遺体
獄門島(1947〜1948年)金田一耕助俳句に見立てた連続殺人。瀬戸内海の島
八つ墓村(1949〜1951年)金田一耕助落武者伝説と遺産争い。映像化で有名
悪魔が来りて笛を吹く(1951〜1953年)金田一耕助没落した元子爵家に潜む「悪魔」
女王蜂(1951〜1952年)金田一耕助月琴島の令嬢をめぐる連続殺人
真珠郎(1936〜1937年)由利麟太郎殺人者として育てられた美少年
人形佐七捕物帳(1938年〜)人形佐七江戸を舞台にした捕物帳。短編集

『本陣殺人事件』(1946年)

本陣の跡取り息子と小作農出身の娘の婚礼が行われた旧家の屋敷。翌日の明け方、新郎新婦の寝室から琴の音と悲鳴が響きます。雪の上に侵入した足跡はなく、密室状態のまま二人が殺害されていました。花嫁の叔父が金田一耕助の後援者で、事件の解明を依頼します。

1946年に雑誌『宝石』へ連載された、金田一耕助シリーズの第1作です。1948年に第1回探偵作家クラブ賞を受賞しました。横溝正史を最初に読むなら、金田一の人物像がつかめるこの作品から入るのが確実です。

『蝶々殺人事件』(1946〜1947年)

オペラ『蝶々夫人』で人気の原さくら歌劇団。東京公演を終えて大阪へ向かいますが、座長のさくらの姿が見当たりません。スタッフがコントラバスのケースを落とすと、バラの花が敷き詰められた中にさくらの遺体が入っていました。夫の依頼を受けて由利麟太郎が捜査を始めます。

『本陣殺人事件』とほぼ同時期に発表された由利麟太郎ものの長編です。舞台は都市部で、金田一ものの土着的な雰囲気とは対照的な読み口になります。

『獄門島』(1947〜1948年)

同じ部隊にいた友人の戦死を伝えるため、瀬戸内海の獄門島へ向かった金田一耕助。3人の異母妹の行く末を心配していた友人の言葉が、頭から離れません。戦友の葬儀の後、妹の1人が異様な状態で発見されます。逗留先の寺の住職がつぶやいた言葉も気にかかり、金田一は調査を始めます。

俳句に見立てた連続殺人を扱った長編です。週刊文春が2012年に発表した「東西ミステリーベスト100」の国内編で1位に選ばれており、横溝作品の中でも評価がとくに高い一作です。

『八つ墓村』(1949〜1951年)

終戦後、徴兵先から戻った天涯孤独の若い男が、法律事務所で親族が自分を探していると告げられます。彼の父は旧家の当主で、村人から深く恨まれている存在でした。遺産をめぐる騒動と連続殺人が起こり、関連する事件を調べていた金田一耕助から、怪しい動きに注意するよう警告されます。

落武者伝説と旧家の因習を軸にした長編です。映画版のせりふが広く知られており、横溝作品の中でも入り口になりやすい一作です。

『悪魔が来りて笛を吹く』(1951〜1953年)

元子爵家の令嬢から、亡き父についての相談を受けた金田一耕助。元子爵は大がかりな犯罪の容疑をかけられたことのほかに、一族に潜む「悪魔」を家の恥として気にしていたようです。子爵家に関わる殺人事件との関係を疑った金田一は、子爵が直前に旅した神戸へ出向いて聞き込みを始めます。

没落した華族の家に流れる血の秘密を掘り下げた長編です。「悪魔」の正体が明らかになる終盤の展開が、横溝作品の中でもとくに陰惨だと評されます。

『女王蜂』(1951〜1952年)

伊豆南方の月琴島で育った大道寺智子は、18歳の誕生日に、父と弟が住む東京の屋敷へ引き取られることになっていました。島を出る直前、父あてに「智子を呼ぶな」という脅迫状が届きます。金田一耕助は彼女の護衛を依頼されます。

智子の亡くなった母にまつわる謎と、智子をめぐる連続殺人が絡み合う長編です。1951年から1952年にかけて発表されました。

『真珠郎』(1936〜1937年)

同僚に誘われて旅に出た大学講師の椎名は、湖畔の邸宅の一室を借ります。そこで家主とその姪、そして真珠郎という美少年に出会います。殺人者として育てられた真珠郎は家主を殺害し、洞窟へ逃げて行方不明に。一連の事件に心を痛めて体調を崩した椎名のもとを、由利麟太郎が訪ねてきます。

金田一耕助が登場する前、1936年から1937年にかけて発表された由利麟太郎ものです。戦前の横溝作品の雰囲気を知るのに向いています。

『人形佐七捕物帳』(1938年〜)

神田の岡っ引き・人形佐七が江戸で起こる事件を解決していく捕物帳シリーズです。1938年から長く書き継がれ、全体では膨大な数の短編があります。全作をそろえるのは現実的ではないため、選集で読むのが一般的です。

  • 『自選人形佐七捕物帳』(角川文庫)
  • 『人形佐七捕物帳傑作選』(角川文庫)
  • 『名月一夜狂言 人形佐七捕物帳ミステリ傑作選』(創元推理文庫)

金田一耕助シリーズの読む順番|発表順の主な長編

金田一耕助シリーズの各作品は独立しており、どれから読んでも話は通じます。ただし金田一の人物像や周辺人物は作を追うごとに積み上がるため、初めて読むなら発表順に進めるほうが自然です。主な長編は次の順で発表されました。

  1. 『本陣殺人事件』(1946年)…金田一耕助の初登場作
  2. 『獄門島』(1947〜1948年)…俳句の見立て殺人
  3. 『八つ墓村』(1949〜1951年)…落武者伝説と遺産争い
  4. 『犬神家の一族』(1950〜1951年)…遺言状をめぐる一族の争い
  5. 『女王蜂』(1951〜1952年)…月琴島の令嬢
  6. 『悪魔が来りて笛を吹く』(1951〜1953年)…没落華族の秘密

名探偵がシリーズで活躍する海外作品へ広げたいならコリンデクスターのおすすめ!モース警部シリーズ14編を紹介!が近い読み口です。逆に、横溝作品の血なまぐささが苦手だった人には日常の謎をテーマにした小説10選が向いています。

横溝正史の最高傑作はどれ?評価と受賞歴で見る答え

読者投票による評価では『獄門島』(1947〜1948年)です。週刊文春が2012年に発表した「東西ミステリーベスト100」の国内編で1位に選ばれています。

賞という指標で選ぶなら『本陣殺人事件』(1946年)です。1948年の第1回探偵作家クラブ賞を受賞しました(日本推理作家協会賞の前身にあたる賞です)。知名度で挙げられることが多いのは、映像化を重ねた『八つ墓村』と『犬神家の一族』です。

編集長のひとこと:横溝作品は版が多いのでコンディション表記を先に見る

田中寛大

オンライン古書店を運営していた時期(2019〜2022年)は、状態が「非常に良い」「良い」のものを中心に扱っていました。購入者評価は97%が肯定的(累計189件・販売期間中の実績)で、状態は想定以上に良好という声を多くいただきました。

横溝正史のように長く読まれてきた作家は、刊行年の違う文庫が中古市場に並びます。古い版ほど紙の焼けや折れが出やすいので、中古で買うときは価格より先にコンディション表記を見ることをおすすめします。まず1冊試すなら、金田一耕助の初登場作である『本陣殺人事件』から入ると、以降の作品で人物像がつかみやすくなります。

横溝正史のおすすめに関するよくある質問

横溝正史のおすすめはどれ?

『本陣殺人事件』(1946年)です。金田一耕助が初めて登場する作品で、雪に囲まれた日本家屋の密室という本格ミステリの型がはっきり出ています。1948年の第1回探偵作家クラブ賞受賞作でもあります。

横溝正史の最高傑作は?

読者投票では『獄門島』(1947〜1948年)です。週刊文春が2012年に発表した「東西ミステリーベスト100」の国内編で1位に選ばれています。賞で選ぶなら第1回探偵作家クラブ賞を受賞した『本陣殺人事件』です。

金田一耕助シリーズはどの順番で読めばいい?

発表順がおすすめです。各作品は独立しているのでどれから読んでも話は通じますが、『本陣殺人事件』(1946年)→『獄門島』(1947〜1948年)→『八つ墓村』(1949〜1951年)→『犬神家の一族』(1950〜1951年)の順に進めると、金田一の人物像が積み上がります。

『犬神家の一族』はシリーズのどの位置?

金田一耕助シリーズの長編で、1950年から1951年にかけて発表されました。遺言状をめぐる一族の争いを描いた作品で、映画・ドラマともに映像化が重ねられています。

横溝正史の作品は青空文庫で無料で読める?

読めません。横溝正史は1981年に亡くなっており、2018年12月30日施行の著作権法改正で保護期間が死後70年になったため、2026年8月時点で著作権は有効です。青空文庫の作家一覧にも横溝正史は含まれていません。

横溝正史は『本陣殺人事件』から読むと人物像がつかめる

横溝正史の作品の魅力は、地方の因習が生む不気味さと、最後まで機能する本格ミステリのトリックが同居している点です。探偵も機械的に謎を解くのではなく、犯人や関係者への態度に人間くささが出ます。

最初の1冊は、金田一耕助の初登場作『本陣殺人事件』(1946年)を選び、『獄門島』『八つ墓村』と発表順に進めるのが分かりやすい流れです。都会的な雰囲気を好むなら由利麟太郎もの、軽快な会話を楽しみたいなら人形佐七ものという選び方もできます。

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