読みやすい小説おすすめ15選|初心者でも挫折しない本の選び方5つ

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読書に慣れていない人が最初に読むなら、星新一『ボッコちゃん』です。1編3〜6ページのショートショートを50編収めた文庫なので、途中で中断しても続きが分からなくなりません。読みやすい小説とは、文体が平易で、1話の分量が短く、予備知識がなくても筋を追える小説のことです。この記事では条件の整理と、おすすめ15作を形式つきの一覧表で紹介します。

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目次

読みやすい小説の条件は3つ

開いた本とコーヒー

「読みやすい」は感覚的な言葉に見えますが、分解すると3つの条件に整理できます。どれが欠けても途中で止まりやすくなります。

条件目安当てはまる例
文体が平易一文が短く、修飾が少ない星新一/江戸川乱歩の少年向け作品
1話が短いショートショート・短編・連作短編ボッコちゃん/地雷グリコ/成瀬は天下を取りにいく
予備知識が不要設定説明が冒頭で完結するカラフル/お探し物は図書室まで

選び方は5つ

  • 短編・連作短編から選ぶ……上下巻の長編は、途中で止まると再開のハードルが上がります。1話ごとに区切りがある本なら、中断しても戻れます。
  • 映像化された作品から選ぶ……あらすじを知った状態で読めるため、人物関係でつまずきません。カットされた心理描写を拾う楽しみもあります。
  • 自分に近いテーマから選ぶ……学校、就職活動、仕事、家族など、自分の生活と地続きの題材は、説明されなくても状況が想像できます。
  • 長く読み継がれてきた名作から選ぶ……刊行から何十年も文庫で残っている作品は、読者に届き続けた実績があります。
  • 最初の数ページを試し読みする……書店の立ち読みや電子書籍の試し読みで冒頭を読み、文章が抵抗なく入るかを確かめます。ベストセラーでも文体が合わないことはあります。

長編を読み切るコツや、途中で挫折したときの対処は小説の読み方のコツ5選でまとめています。

読みやすい小説おすすめ15選【一覧表】

並べられた文庫本
作品著者形式読みやすい理由
ボッコちゃん星新一ショートショート50編1編3〜6ページ。どこから読んでもいい
カラフル森絵都長編中学生が主人公。児童書として書かれている
しゃばけ畠中恵長編(シリーズ第1作)妖怪が出る時代物。会話が多く明るい
お探し物は図書室まで青山美智子連作短編5編1話完結。年代の違う5人が主人公
歌人探偵定家 百人一首推理抄羽生飛鳥連作短編5編1編ごとに和歌1首の謎が解ける
成瀬は天下を取りにいく宮島未奈連作短編2024年本屋大賞。1話ずつ完結
水車小屋のネネ津村記久子長編登場人物に悪人がほぼいない
地雷グリコ青崎有吾連作短編5編1編=1ゲーム。ルール説明から始まる
六人の嘘つきな大学生浅倉秋成長編就職活動が舞台。会話中心で進む
ゴールデンスランバー伊坂幸太郎長編逃走劇。先が気になって進む
暗いところで待ち合わせ乙一長編登場人物が少なく分量も短い
怪人二十面相江戸川乱歩長編(少年向け)もともと少年向けに書かれている
Xの悲劇エラリー・クイーン長編古典本格ミステリーの基本形
坊っちゃん夏目漱石中編文豪作品では最も口語に近い
国語入試問題必勝法清水義範短編7編1編が短く、笑いながら読める

『ボッコちゃん』(星新一)

星新一が自作から50編を選んだショートショート集で、1971年5月に新潮文庫として刊行されました。1編はおおむね3〜6ページです。表題作「ボッコちゃん」は1958年に雑誌で発表された作品で、バーに置かれた女性型ロボットと、彼女に恋をした客の話です。

文章に難しい語がほとんどなく、状況説明も最小限です。1編ごとに完全に独立しているため、目次から気になった題名を選んで読む形でも成立します。読書のリハビリに向く1冊です。

『カラフル』(森絵都)

死んだはずの「ぼく」が天使のプラプラに指名され、自殺した中学3年生・小林真の体に乗り移って「ホームステイの修行」をおこなう長編です。1998年7月に理論社から刊行され、第46回産経児童出版文化賞を受賞しました。文春文庫版は2007年刊行です。

もともと児童書として書かれているため、一文が短く語彙も平易です。家庭や学校で真が置かれていた状況が少しずつ明かされる構成で、先が気になって進みます。中学生にも大人にも読める、間口の広い1冊です。

『しゃばけ』(畠中恵)

江戸の大店の跡取りである病弱な若旦那が、身のまわりに仕える妖たちとともに事件を追う時代ファンタジーです。畠中恵は2001年に本作で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、デビューしました。長く続くシリーズの第1作にあたります。

時代物ですが、会話が中心で語り口も軽く、時代小説の作法を知らなくても読めます。妖たちのやりとりが賑やかで、重い場面が続かないのも特徴です。ドラマ・アニメ化されており、映像から入ることもできます。

『お探し物は図書室まで』(青山美智子)

小さなコミュニティハウスの図書室を訪れた年代も職業も違う5人が、司書から一風変わった本と手作りの「本の付録」を手渡され、それぞれの行き詰まりに向き合っていく連作短編集です。2020年にポプラ社から刊行され、2021年本屋大賞で第2位に選ばれました。

1話ごとに主人公が変わり、それぞれ独立して読めます。仕事や生き方の悩みが題材ですが、語り口はやわらかく、暗い方向に落ちません。米『TIME』誌の「2023年の必読書100冊」にも選出されています。

『歌人探偵定家 百人一首推理抄』(羽生飛鳥)

1186年を舞台に、平家一門の生き残りである平頼盛の長男・保盛と、若き藤原定家が5つの謎を解く連作ミステリーです。各編に『小倉百人一首』に採られた和歌が絡みます。2024年6月に東京創元社から刊行されました。

1編ごとに和歌1首とその謎が対応しているため、区切りが明確です。古典の知識がなくても、作中で必要な説明がされます。百人一首に触れたことがある人や、古文の授業で和歌に興味を持った学生に向きます。前作にあたる『平家物語推理抄』シリーズでは、保盛の父・平頼盛が主役を務めています。

『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈)

滋賀県大津市を舞台に、中学2年生から高校3年生までの成瀬あかりの型破りな行動と、周囲を巻き込む騒動を描いた連作短編集です。2023年に新潮社から刊行された宮島未奈のデビュー作で、2024年本屋大賞を受賞しました。

第1話は、閉店が決まった地元の百貨店「西武大津店」に主人公が毎日通いはじめる話です。1話が短く、語り手も回ごとに変わるため、どこから読んでも状況がつかめます。読後に嫌な感情が残らないタイプの作品です。

『水車小屋のネネ』(津村記久子)

18歳の姉と8歳の妹が身勝手な母親のもとを離れ、山あいの町にたどり着く長編です。そこで出会うのが、言葉を話す鳥のネネでした。以後40年にわたる、人が人を助ける連鎖が描かれます。2023年に毎日新聞出版から刊行され、第59回谷崎潤一郎賞を受賞しました。

分量はある長編ですが、登場人物に悪人がほとんど出てこないため、身構えずに読み進められます。誰かの親切が別の誰かに渡っていく構成で、読み終えたあとの後味が良い1冊です。2024年本屋大賞では第2位に選ばれました。

『地雷グリコ』(青崎有吾)

女子高生・射守矢真兎が、圧倒的に不利なルールのゲームで相手を出し抜いていく頭脳バトル小説です。2023年11月に角川書店から刊行され、第37回山本周五郎賞、第77回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、第24回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞しました。

「地雷グリコ」「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」「だるまさんがかぞえた」「フォールーム・ポーカー」の5編を収めています。各編がルールの説明から始まるため、前の話を覚えていなくても読めます。表題作は、階段のどこかに仕掛けた「地雷」を踏まずに先に上りきったほうが勝ち、というじゃんけんゲームです。

『六人の嘘つきな大学生』(浅倉秋成)

IT企業の最終選考に残った6人の就活生が、「6人で協力して内定者1名を決める」という課題に取り組む長編です。当日、6人それぞれの過去を告発する文書が会場から見つかります。2021年にKADOKAWAから刊行され、2022年本屋大賞にノミネートされました。角川文庫版は2023年刊行です。

物語のほとんどが会議室での議論で進むため、場面転換に頭を使いません。人の善い面と悪い面が同時に見えてくる構成で、終盤で見え方が反転します。叙述トリックが好きな人にもすすめられる1冊です。

『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎)

仙台の凱旋パレード中に新首相が暗殺され、元宅配ドライバーの青柳雅春が犯人に仕立て上げられる逃走劇です。2007年に新潮社から刊行され、2008年本屋大賞と第21回山本周五郎賞を受賞しました。題名や各章の題はビートルズの曲から採られています。

追われる主人公を、かつての友人や思わぬ人物が助けていく構成で、次に何が起きるかで引っ張られます。分量はありますが、章が細かく切られているため中断しやすい作りです。無実の人が簡単に犯人にされてしまう怖さが、読後に残ります。

『暗いところで待ち合わせ』(乙一)

職場の人間関係に追い詰められた青年が殺人の疑いをかけられ、駅に近い一軒家に住む視覚障害のある女性の家に身をひそめる長編です。彼女は、家のなかに他人がいることに気づきながら、通報しません。

設定はサスペンスですが、物語の重心は孤独な2人が距離を縮めていく過程にあります。登場人物が少なく分量も抑えめで、1〜2日で読み切れます。乙一の他作品は乙一作品のおすすめ10選で紹介しています。

『怪人二十面相』(江戸川乱歩)

名探偵・明智小五郎と少年探偵団が、変装の名人である怪人二十面相と対決する長編です。1936年に少年向け雑誌で連載が始まった「少年探偵団」シリーズの第1作にあたります。

二十面相が被害者の家族に化け、明智が逆に変装で潜り込むといった攻防が続きます。もともと少年読者に向けて書かれているため、文章が平易で場面の切り替えも分かりやすい構成です。冒険小説として、大人が読み返しても速く進みます。

『Xの悲劇』(エラリー・クイーン)

聴覚を失って引退した名優ドルリー・レーンが探偵役を務めるシリーズの第1作で、1932年に発表されました。満員電車のなかで評判の悪い男が毒針によって殺され、続いて事件に関係する人物がフェリーから墜落死します。

手がかりが読者にも公平に示される古典本格ミステリーで、推理の道筋を追うだけで読み進められます。題名の「X」は未知の犯人という意味と、真犯人を特定する手がかりの両方を指しています。ミステリーの型を知るのに向く1冊です。

『坊っちゃん』(夏目漱石)

1906年に雑誌『ホトトギス』で発表された中編で、無鉄砲な主人公が四国の中学校に数学教師として赴任し、同僚たちと衝突していく話です。主人公の名前は最後まで明かされません。

「赤シャツ」「山嵐」「野だいこ」といったあだ名で同僚を呼ぶため、人物を取り違えません。文豪の作品のなかでは口語に近く、テンポの速い一人称で進みます。主人公を可愛がる使用人の清との関係が、読後に効いてきます。文豪作品の入口として定番の1冊です。

『国語入試問題必勝法』(清水義範)

国語の入試問題という制度そのものを皮肉った短編集で、表題作を含む7編を収めています。1987年に講談社から刊行され、第9回吉川英治文学新人賞を受賞しました。参考書ではなく小説です。

表題作は、家庭教師が受験生に「本文を読まずに正解を当てる法則」を伝授していく話です。設問の作り方そのものへの疑問が笑いに変わっていきます。1編が短く、他人の文体を模倣するパスティーシュという手法が使われているため、いろいろな書き方に触れられます。

監修者の視点:短編集から入ると挫折しにくい

田中寛大

大学院で社会学の学術書を読んでいた頃、分厚い本を最初から通して読もうとすると、たいてい途中で止まりました。章ごとに区切って読むほうが、結果的に速く読み終えられます。小説でも同じで、1話ごとに区切りがある本のほうが再開しやすいと感じています。

オンライン古書店を運営していた時期(2019〜2022年)に扱った6,951タイトルのうち、2冊以上売れたのは959タイトル、全体の13.8%でした。繰り返し動いたのは、刊行時の話題性より読み返しやすさが残っている本という印象です。読みやすさは文章の平易さだけで決まるわけではなく、どこで中断して戻れるかでも変わります。

読みやすい小説に関するよくある質問

読書に慣れていない人が最初に読むならどれですか?

星新一『ボッコちゃん』です。1編が3〜6ページのショートショート50編で構成されており、目次から気になった題名を選んで読めます。1編ごとに独立しているため、途中でやめても続きが分からなくなりません。次の1冊としては、森絵都『カラフル』か青山美智子『お探し物は図書室まで』が向いています。

文字が多い本が苦手ですが、読める小説はありますか?

ショートショートか連作短編を選んでください。ショートショートは数ページで完結するため、隙間時間だけで1編読み切れます。連作短編なら、この記事の『お探し物は図書室まで』『地雷グリコ』『歌人探偵定家 百人一首推理抄』『国語入試問題必勝法』が該当します。児童書として書かれた『カラフル』や、少年向けの『怪人二十面相』も語彙が平易です。

映画やドラマの原作を読むメリットはありますか?

あらすじと人物関係をすでに知っているぶん、活字だけでも場面を思い浮かべやすく、途中でつまずきにくくなります。映像でカットされた心理描写や、原作だけの結末を確認できるのも利点です。この記事では『しゃばけ』『ゴールデンスランバー』『カラフル』『暗いところで待ち合わせ』が映像化されています。

話題のベストセラーなら間違いなく読めますか?

必ずしもそうとは限りません。売れている本でも、文体が合わなかったりテーマが重すぎたりすることがあります。書店での立ち読みか電子書籍の試し読みで最初の数ページを読み、文章が抵抗なく入るかを確かめるのが確実です。売上や評価より、冒頭が読めるかどうかを基準にしてください。

文豪の作品でも読みやすいものはありますか?

夏目漱石『坊っちゃん』と江戸川乱歩『怪人二十面相』です。『坊っちゃん』は1906年発表の中編で、テンポの速い一人称と、同僚をあだ名で呼ぶ書き方のおかげで人物を取り違えません。『怪人二十面相』はもともと少年読者向けに書かれており、語彙も場面転換も平易です。どちらも文庫で薄く、数日で読み切れます。

受賞作から選べば失敗しませんか?

読みやすさを重視するなら、本屋大賞の受賞作が目安になります。全国の書店員の投票で決まる賞のため、読者に手渡しやすい作品が選ばれる傾向があります。この記事では『成瀬は天下を取りにいく』(2024年受賞)『ゴールデンスランバー』(2008年受賞)『お探し物は図書室まで』(2021年第2位)『水車小屋のネネ』(2024年第2位)が該当します。ただし賞は面白さの保証であって、文体が自分に合うかは別の問題です。

まとめ|1話が短い本から始める

読みやすい小説を選ぶ基準は、文体が平易・1話が短い・予備知識が不要の3つです。この3つがそろう『ボッコちゃん』から始めて、慣れてきたら連作短編、その次に長編と進めると挫折しにくくなります。

合わないと感じた本は途中でやめてかまいません。1冊目を読み切ることより、次に読みたい本が見つかることのほうが大事です。読み切った達成感を先に得たい場合は、一生に一度は読むべき本10選もあわせて参考にしてください。

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