加賀恭一郎シリーズは、刑事・加賀恭一郎が登場する東野圭吾のミステリーで、紙の本は1986年の『卒業』から2023年の『あなたが誰かを殺した』までの12作。読む順番は『卒業』からの刊行順です。ほかに、Audibleだけで配信された13作目『誰かが私を殺した』(2024年)があります。
事件は1冊ごとに解決するので、ミステリーランキングで1位になった『新参者』から読み始めても楽しめます。この記事では全作を刊行順の一覧にし、最初の1冊の選び方、加賀の立場の移り変わり、ドラマ・映画の原作までを整理します。
加賀恭一郎シリーズ全作品の一覧【刊行順】
紙の本12作を刊行順に並べ、最後にAudible版を加えました。『悪意』の単行本だけは双葉社から出ており、ほかは講談社(『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』は講談社ノベルス)です。文庫はすべて講談社文庫で出ています。
| 順番 | 作品 | 刊行年 | 形式 | 読みどころ |
| 1 | 卒業 | 1986年 | 長編 | 大学生の加賀が初登場 |
| 2 | 眠りの森 | 1989年 | 長編 | 刑事になった加賀とバレエ団 |
| 3 | どちらかが彼女を殺した | 1996年 | 長編 | 容疑者2人の犯人当て |
| 4 | 悪意 | 1996年 | 長編 | 犯人が語らない動機を追う |
| 5 | 私が彼を殺した | 1999年 | 長編 | 容疑者3人の犯人当て |
| 6 | 嘘をもうひとつだけ | 2000年 | 短編集(5話) | 秘密を隠す人々を描く5話 |
| 7 | 赤い指 | 2006年 | 長編 | 住宅街の事件と「平凡な家族」 |
| 8 | 新参者 | 2009年 | 連作 | 日本橋に着任・ランキング1位 |
| 9 | 麒麟の翼 | 2011年 | 長編 | 日本橋の上で息絶えた男 |
| 10 | 祈りの幕が下りる時 | 2013年 | 長編 | 吉川英治文学賞・加賀の母の謎 |
| 11 | 希望の糸 | 2019年 | 長編 | 加賀と松宮が捜査 |
| 12 | あなたが誰かを殺した | 2023年 | 長編 | 休暇中の加賀と別荘地の事件 |
| Audible | 誰かが私を殺した | 2024年 | オーディオブック | 紙の本はなし |
『あなたが誰かを殺した』は2026年8月12日に講談社文庫になり、紙の本12作はすべて文庫で読めるようになりました。
加賀恭一郎シリーズとは|大学生から刑事になった加賀恭一郎が事件を追う東野圭吾のミステリー
加賀恭一郎シリーズは、加賀恭一郎を主人公にした東野圭吾のミステリーです。東野圭吾のデビュー2作目『卒業』では大学生として登場し、シリーズ2作目の『眠りの森』からは刑事として、所属や舞台を変えながら事件を解いていきます。紙の本は1986年から2023年まで、37年にわたって書かれました。
作者の東野圭吾は1958年、大阪府生まれ。1985年に『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受けてデビューし、2026年7月23日に68歳で亡くなりました(講談社の発表による)。シリーズ以外の作品も含めて選びたい場合は、東野圭吾のおすすめ小説15選にまとめています。
加賀恭一郎の立場の移り変わり
作品ごとに加賀の立場が変わるのも、このシリーズの特徴です。出版社の紹介文で確認できる範囲では、次のように移っていきます。
- 『卒業』:大学生
- 『眠りの森』:若い刑事
- 『どちらかが彼女を殺した』:練馬署の刑事
- 『新参者』:日本橋に着任したばかりの刑事
- 『あなたが誰かを殺した』:長期休暇中の刑事
- 『誰かが私を殺した』:警視庁捜査一課の警部
講談社文庫編集部は、加賀が「警視庁捜査一課、練馬署、日本橋署と舞台を変えながら」事件を解決してきたと紹介しています(講談社の2016年の記事)。後半の『祈りの幕が下りる時』『希望の糸』では、刑事の松宮脩平も捜査にあたります。
加賀恭一郎シリーズの読む順番は刊行順|最初の1冊の選び方は4通り
加賀恭一郎シリーズは、前の巻を読んでいないと事件の筋が追えない作品はありません。順番が効いてくるのは、加賀の立場の変化と、日本橋を舞台にした後半の3作です。読み方は次の4通りから選べます。
全作を読むなら『卒業』から刊行順に
大学生だった加賀が刑事になり、所属を変えていく流れをそのまま追えます。紙の本12作を読んだあとに、Audible版を聴く順番です。
- 卒業(1986年)
- 眠りの森(1989年)
- どちらかが彼女を殺した(1996年)
- 悪意(1996年)
- 私が彼を殺した(1999年)
- 嘘をもうひとつだけ(2000年)
- 赤い指(2006年)
- 新参者(2009年)
- 麒麟の翼(2011年)
- 祈りの幕が下りる時(2013年)
- 希望の糸(2019年)
- あなたが誰かを殺した(2023年)
- 誰かが私を殺した(2024年・Audible)
3作目と4作目は、資料によって順番が入れ替わります。刊行は『どちらかが彼女を殺した』(1996年6月)が先ですが、講談社文庫編集部の2016年の記事は『悪意』を3番目、『どちらかが彼女を殺した』を4番目の事件として紹介しています。どちらを先に読んでも筋は追えます。
評価の高い作品から読むなら『新参者』から
『新参者』は「このミステリーがすごい!2010年版」と「週刊文春ミステリーベスト10」(2009年・国内部門)でともに1位になった作品です(TBSのドラマ公式サイトによる)。日本橋に着任したばかりの加賀が、下町の人々の小さな謎を一つずつ解きながら事件に近づく構成で、2010年のドラマ『新参者』の原作でもあります。
日本橋の3作を続けて読むなら『新参者』『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』の順に
後半の3作は、どれも東京・日本橋が舞台です。
- 『新参者』(2009年)… 日本橋に着任した加賀が、女性の絞殺事件を追う
- 『麒麟の翼』(2011年)… 胸を刺された男が日本橋の上で息絶える
- 『祈りの幕が下りる時』(2013年)… 日本橋を囲む12の橋の名が、加賀の母へとつながる
講談社は『祈りの幕が下りる時』を「加賀恭一郎は、なぜ『新参者』になったのか」という問いで紹介しています。この順に読むと、加賀が日本橋にいた理由まで一続きで追えます。
犯人当てに挑むなら『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』から
この2作は、講談社が「究極の“犯人当て”小説」「東野圭吾からの挑戦状」と打ち出している作品です。容疑者は『どちらかが彼女を殺した』が2人、『私が彼を殺した』が3人。手がかりを拾いながら自分で犯人を考えたい人に向いています。どちらも2023年に講談社文庫の新装版が出ています。
加賀恭一郎シリーズ全作品の内容【刊行順】
各作品の内容を、結末に触れない範囲で紹介します。刊行年は最初に本になった年です。
『卒業』|大学生の加賀が初登場する長編(1986年)
大学4年生の祥子が、鍵のかかった自分の部屋で死んでいるのが見つかります。同じ大学に通う加賀は、祥子の日記を手がかりに真相を追いますが、茶道の作法の場で第二の事件が起こります。最初の題は『卒業―雪月花殺人ゲーム』でした。
『眠りの森』|バレエ団を舞台にした長編(1989年)
バレエ団のプリマが、忍び込んできた男を正当防衛で殺してしまいます。捜査にあたる若い刑事の加賀は、調べを進めるうちに、あるバレリーナに惹かれていきます。刑事としての加賀が初めて描かれる作品です。
『どちらかが彼女を殺した』|容疑者2人の犯人当て長編(1996年)
妹を自殺に見せかけて殺された警察官の兄が、自分の手で復讐するために証拠を隠します。容疑者は妹の元恋人と親友の2人。兄と並行して、練馬署の刑事・加賀も事件を調べます。
『悪意』|犯人が語らない動機を追う長編(1996年)
人気作家が仕事場で殺され、第一発見者は作家の妻と旧友でした。犯人は逮捕されますが、なぜ殺したのかを語りません。誰がやったかではなく、動機そのものが謎になる作品です。単行本は1996年に双葉社から出て、のちに講談社ノベルス(2000年)、講談社文庫(2001年)に入りました。
『私が彼を殺した』|容疑者3人の犯人当て長編(1999年)
流行作家が、自分の結婚式の当日に毒殺されます。容疑者は3人で、謎を解く鍵は毒の入ったカプセルがどこから来たかです。講談社は旧版を「全編、読者への挑戦状」と紹介していました。
『嘘をもうひとつだけ』|シリーズ唯一の短編集(2000年)
思わぬ過ちを犯し、それを隠すためにさらに秘密を抱え込んでいく人たちを、加賀が見抜いていく5話です。収録は「嘘をもうひとつだけ」「冷たい灼熱」「第二の希望」「狂った計算」「友の助言」。1話ずつ短いので、シリーズの雰囲気を試したいときにも向いています。
『赤い指』|家族のあり方を問う長編(2006年)
住宅街で少女の遺体が見つかり、捜査線上にごく平凡な一家が浮かびます。「この家には隠されている真実がある」という加賀の言葉が物語の軸です。東野圭吾が直木賞を受けたあとの最初の作品として刊行されました。2011年にTBSでドラマ化されています。
『新参者』|日本橋に着任した加賀の連作(2009年)
日本橋で、ひとりの女性が絞殺されます。着任したばかりの加賀は、下町の人々が抱える小さな謎を一つずつ解きながら、事件の中心へ近づいていきます。2019年には英訳版が、英国推理作家協会(CWA)のインターナショナル・ダガー賞の最終候補に入りました。
『麒麟の翼』|日本橋の上で息絶えた男の謎を追う長編(2011年)
胸を刺された男が、日本橋の上まで歩いて息絶えます。瀕死の体でなぜ橋まで向かったのか。加賀は「七福神巡り」を手がかりに、その理由を探ります。2012年に『麒麟の翼〜劇場版・新参者〜』として映画化されました。
『祈りの幕が下りる時』|加賀の母をめぐる謎に決着がつく長編(2013年)
明治座に演出家を訪ねた女性が、遺体で見つかります。遺品には日本橋を囲む12の橋の名が書かれていて、それを知った加賀は激しく動揺します。事件は、孤独死した加賀の母へとつながっていきます。講談社は「シリーズ最大の謎が決着する」と紹介しています。
2014年に第48回吉川英治文学賞を受けました(主催の講談社の受賞作一覧)。2018年に映画化されています。
『希望の糸』|加賀と松宮が捜査する長編(2019年)
喫茶店を営む女性が殺され、加賀と松宮が捜査にあたります。同じころ金沢では、余命わずかな男性の遺言書に、思いもよらない名前が記されていました。二つの出来事がどう結びつくのかが読みどころです。
『あなたが誰かを殺した』|休暇中の加賀が検証会に加わる長編(2023年)
夏の別荘地で開かれたバーベキューの夜に、5人が殺されます。出頭した犯人は、死刑を望むとだけ話しました。納得できない遺族たちが事件の「検証会」を開くと、そこに長期休暇中の加賀が現れます。紙の本では最後の加賀作品で、2026年8月12日に講談社文庫になりました。
『誰かが私を殺した』|Audibleだけで配信された作品(2024年)
2024年7月24日にAudibleで配信が始まった書き下ろしで、紙の本は出ていません。月命日に墓前で襲われた女性実業家が、魂だけの存在になって自分を殺した犯人を捜します。捜査にあたるのは、警視庁捜査一課の警部になった加賀と、部下の女性刑事・新澤。加賀の声を高橋克典、新澤の声を逢田梨香子が担当しています(講談社のプレスリリース)。
講談社は加賀シリーズの作品として紹介していますが、2026年7月の講談社の訃報に添えられた東野圭吾の著作一覧(106冊)には入っていません。聴くにはAudible(オーディブル)を使います。Audibleには30日間の無料体験があります(無料体験後は月額1,500円・2026年9月時点)。
加賀恭一郎シリーズのドラマ・映画と原作の対応
2010年以降の映像化では、加賀恭一郎を阿部寛が演じています。連続ドラマ『新参者』から始まり、スペシャルドラマ2本と映画2本が作られました。
| 映像作品 | 公開・放送 | 原作 |
| 連続ドラマ『新参者』 | 2010年4〜6月(TBS日曜劇場) | 『新参者』 |
| スペシャルドラマ『赤い指』 | 2011年1月(TBS) | 『赤い指』 |
| 映画『麒麟の翼〜劇場版・新参者〜』 | 2012年1月 | 『麒麟の翼』 |
| スペシャルドラマ『“新参者”加賀恭一郎「眠りの森」』 | 2014年1月(TBS) | 『眠りの森』 |
| 映画『祈りの幕が下りる時』 | 2018年1月 | 『祈りの幕が下りる時』 |
ドラマと映画を放送・公開順に見るなら、上の表の順番です。映画だけなら『麒麟の翼』(2012年)→『祈りの幕が下りる時』(2018年)。刑事・松宮脩平は溝端淳平が演じています。
編集長のひとこと:加賀恭一郎シリーズは『新参者』から日本橋の3作を続けて読むのがいい
田中寛大ブッククランチの小野寺史宜の読む順番の記事では、スマホで読んだ人が目次から押した項目は、作品一覧の表(11回)がいちばん多く、刊行順(6回)、読む順番(5回)が続きました(Microsoft Clarity・2026年9月下旬までの30日間)。作品の紹介を読むより先に、シリーズ全体の並びを確かめたい人が多いと受け止めています。この記事で一覧表を冒頭に置いたのもそのためです。
そのうえで、加賀恭一郎シリーズは全作を刊行順に読まなくてかまいません。1作目の『卒業』は大学生の加賀が友人の死を追う話で、刑事の加賀が下町を歩く『新参者』とはだいぶ雰囲気が違います。最初の1冊で止まってしまうくらいなら、『新参者』から入り、『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』と日本橋の3作を続けて読むほうが、加賀という人物に一番入り込みやすいと考えています。
加賀恭一郎シリーズについてよくある質問
- 加賀恭一郎シリーズは何作ありますか?
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紙の本が12作、Audibleだけで配信された作品が1作で、あわせて13作です。紙の本は『卒業』(1986年)から『あなたが誰かを殺した』(2023年)まで、Audible版は『誰かが私を殺した』(2024年)です。
- 加賀恭一郎シリーズは完結していますか?
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出版社から「完結」とは発表されていません。作者の東野圭吾は2026年7月23日に亡くなっており、紙の本では2023年の『あなたが誰かを殺した』、シリーズ全体では2024年にAudibleで配信された『誰かが私を殺した』が、2026年9月時点の最後の作品です。
- 加賀恭一郎シリーズの最高傑作はどれですか?
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賞とランキングで見ると、第48回吉川英治文学賞を受けた『祈りの幕が下りる時』(2013年)と、「このミステリーがすごい!2010年版」と「週刊文春ミステリーベスト10」で1位になった『新参者』(2009年)が代表格です。どちらも阿部寛主演で映像化されています。
- 加賀恭一郎シリーズは順番に読んだほうがいいですか?
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事件は1冊ごとに解決するので、どこから読んでも楽しめます。ただし『新参者』『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』の3作は日本橋を舞台にしたつながりがあり、『祈りの幕が下りる時』で加賀が日本橋にいた理由が明かされるので、この3作は刊行順に読むのがおすすめです。
- 加賀恭一郎シリーズの最新作は何ですか?
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紙の本の最新作は『あなたが誰かを殺した』で、単行本は2023年9月、講談社文庫は2026年8月12日に出ました。紙の本以外も含めると、2024年7月にAudibleで配信が始まった『誰かが私を殺した』が最も新しい作品です。
- ドラマや映画はどの順番で見ればいいですか?
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放送・公開順に、連続ドラマ『新参者』(2010年)→ドラマ『赤い指』(2011年)→映画『麒麟の翼』(2012年)→ドラマ『眠りの森』(2014年)→映画『祈りの幕が下りる時』(2018年)です。映画だけなら『麒麟の翼』→『祈りの幕が下りる時』の順です。
まとめ|加賀恭一郎シリーズは『卒業』から刊行順に、迷ったら『新参者』から
- 全作を読むなら:『卒業』(1986年)から『あなたが誰かを殺した』(2023年)まで刊行順に12作、最後にAudible版『誰かが私を殺した』
- 評価の高い作品から入るなら:ランキング1位の『新参者』から
- 加賀の過去まで追うなら:『新参者』→『麒麟の翼』→『祈りの幕が下りる時』の日本橋の3作
- 推理に挑むなら:講談社が「読者への挑戦状」とうたう『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』
東野圭吾のほかのシリーズはガリレオシリーズの読む順番とマスカレードシリーズの読む順番で整理しています。刑事が主人公の小説をほかにも探すなら警察小説のおすすめ10選を参考にしてください。次に読む本を自分の好みに合わせて選んでほしい場合は、読書タイプチェックをもとに本を選ぶ選書サービス「雨音選書」もあります。










