瀬尾まいこ作品を初めて読むなら、『そして、バトンは渡された』(2019年・第16回本屋大賞第1位)から入るのが分かりやすい選び方です。中学生・小学生には、中学1年の国語教科書に載る「花曇りの向こう」を収めた『夏の体温』が入り口になります。作品はほとんどが独立した物語なので、読む順番に決まりはありません。ただし『あと少し、もう少し』と『君が夏を走らせる』の2作だけは、登場人物がつながっているため読む順番が効きます。
この記事では、瀬尾まいこの経歴と受賞歴を整理したうえで、目的別の読む順番と、おすすめの小説10作を紹介します。
瀬尾まいことは|元中学校国語教師の小説家

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年 | 1974年 |
| 出身 | 大阪府 |
| 経歴 | 大学卒業後、中学校の国語講師として勤務。教員と作家業を両立し、35歳で退職 |
| デビュー | 2001年、26歳のときに『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞・大賞を受賞 |
| 主なテーマ | 家族、学校生活、血のつながらない人どうしの関係 |
作品は学生生活や家族を扱ったものが多く、じんわりと沁みる読後感が特徴です。等身大の日常を穏やかに描くため、あたたかい気持ちになりたいときに手に取りやすい書き手といえます。文体が平易なので、小学生・中学生にも読み進めやすい作風です。
受賞歴|デビュー作から本屋大賞まで
瀬尾まいこの主な受賞歴は以下のとおりです。
| 受賞年 | 賞 | 作品 |
|---|---|---|
| 2001年11月 | 第7回坊っちゃん文学賞・大賞 | 『卵の緒』 |
| 2005年3月 | 第26回吉川英治文学新人賞 | 『幸福な食卓』 |
| 2009年1月 | 第24回坪田譲治文学賞 | 『戸村飯店 青春100連発』 |
| 2019年4月 | 第16回本屋大賞・第1位 | 『そして、バトンは渡された』 |
このほか『図書館の神様』が第25回吉川英治文学新人賞の候補に、『戸村飯店 青春100連発』が第57回小学館児童出版文化賞の候補になっています。
映像化された作品|映画5本・ドラマ2本
瀬尾まいこの小説は繰り返し映像化されています。
| 公開・放送 | 作品 | 形式 |
|---|---|---|
| 2004年10月 | 『七子と七生〜姉と弟になれる日〜』(原作「7's blood」/『卵の緒』収録) | NHKハイビジョンドラマ |
| 2007年1月 | 『幸福な食卓』 | 映画 |
| 2008年 | 『天国はまだ遠く』 | 映画 |
| 2017年1月 | 『僕らのごはんは明日で待ってる』 | 映画 |
| 2021年 | 『そして、バトンは渡された』 | 映画 |
| 2022年1月 | 『優しい音楽〜ティアーズ・イン・ヘヴン 天国のきみへ〜』 | テレビ東京 新春ドラマスペシャル |
| 2024年 | 『夜明けのすべて』 | 映画 |
教科書に載っている作品は「花曇りの向こう」
瀬尾まいこの作品のうち、光村図書の中学1年生用国語教科書に掲載されているのが「花曇りの向こう」です。教科書のための書き下ろしで、短編集『夏の体温』に収録されています。授業で読んだ生徒が同じ作者の本を探す入り口になっている作品でもあります。
瀬尾まいこはどれから読む?目的別の読む順番

瀬尾まいこの小説はシリーズものがほとんどなく、刊行順に読まなければ理解できない作品はありません。目的から1冊目を決めるほうが失敗しにくいでしょう。
| 目的 | 1冊目 | 次に読む |
|---|---|---|
| まず代表作を読みたい | 『そして、バトンは渡された』 | 『幸福な食卓』 |
| 中学生・小学生が読む | 『夏の体温』 | 『あと少し、もう少し』 |
| 短編から試したい | 『卵の緒』 | 『優しい音楽』 |
| 登場人物のつながりを追う | 『あと少し、もう少し』 | 『君が夏を走らせる』 |
初めてなら『そして、バトンは渡された』から
2019年の本屋大賞で第1位に選ばれた作品で、映画版(2021年)を先に観た人にも接続しやすい1冊です。血のつながらない親に育てられた主人公という設定でありながら重苦しくならない書き方が、瀬尾作品の特徴をいちばん分かりやすく示しています。
中学生・小学生なら『夏の体温』から
中学1年の国語教科書に載る「花曇りの向こう」を収めた短編集です。授業で読んだ作品の続きとして手に取れるうえ、三篇とも短く、読み切りやすい分量です。2冊目には、中学生自身が主人公の『あと少し、もう少し』が続けやすいでしょう。
『あと少し、もう少し』→『君が夏を走らせる』の順で読む
この2作だけは読む順番が意味を持ちます。『あと少し、もう少し』に登場する大田が、『君が夏を走らせる』では主人公として描かれるためです。先に『あと少し、もう少し』で中学時代の大田を読んでおくと、『君が夏を走らせる』での変化がはっきり見えます。
新しい作品から入るなら2020年以降の3冊
近年の作品から入りたい場合は、刊行順に次の3冊があります。
| 刊行 | 作品 | 版元 |
|---|---|---|
| 2020年10月 | 『夜明けのすべて』 | 水鈴社 |
| 2022年3月 | 『夏の体温』 | 双葉社 |
| 2023年7月 | 『私たちの世代は』 | 文藝春秋 |
『私たちの世代は』は、コロナ禍を経た子どもたちの時間を扱った長編です。『夜明けのすべて』は映画化(2024年)をきっかけに読まれた作品でもあります。
学生から大人まで楽しめる物語をさらに探すなら、ファンタジー小説もおすすめです。

思春期の心の揺れや家族の関係を描き、教科書や入試問題にも採用されている作家という点では、森絵都の作品も近い読み心地です。

瀬尾まいこの人気小説10選

ここからは、瀬尾まいこのおすすめ小説10作を紹介します。
そして、バトンは渡された
2019年の第16回本屋大賞で第1位に選ばれた、瀬尾まいこの代表作です。2021年に映画化されました。
幼いころに母親を亡くし、父親とは海外赴任を機に離れ、大人の都合で四回も苗字が変わった高校生・優子が主人公。血のつながらない親たちに育てられてきた日々と、巣立ちまでの時間が描かれます。
複雑な家庭環境を扱いながら、後ろ向きな重さがないのがこの作品の特徴です。瀬尾作品を初めて読むならここから入るのが分かりやすいでしょう。
幸福な食卓
2005年に第26回吉川英治文学新人賞を受賞した作品です。2007年1月に映画化されました。
「ちょっとヘン」な家庭を舞台に、家族それぞれが切なさを抱えながらつながり合い、やがて再生していく物語です。つらい場面もありますが、その中に家族のあたたかさが差し込みます。
文章と構成が読みやすく、幅広い年代にすすめられる一冊です。
卵の緒
デビュー作です。2001年11月、第7回坊っちゃん文学賞の大賞を受賞しました。同時収録の「7's blood」は、2004年10月にNHKハイビジョンドラマ『七子と七生〜姉と弟になれる日〜』として映像化されています。
表題作「卵の緒」は、自分を捨て子だと思っている小学生・育生と、彼に深い愛情を注ぐ母親の日常を描いた作品。二人が結ぶ「絆」の物語から、家族のあり方や人とのつながりを考えさせられます。異母姉弟の心の変化を描いた「7's blood」も、繊細なテーマながらあたたかい読後感が残ります。
瀬尾まいこを語るうえで外せない短編集です。
天国はまだ遠く
2008年に映画化された作品です。
仕事も人間関係も思うようにいかず、死ぬつもりで旅に出た23歳の千鶴。たどり着いた田舎で人々の優しさに触れ、自分のいるべき場所に気づいていく「出逢いと別れ」の物語です。
重い動機から始まりながら、読後は爽やかです。分量も控えめで、瀬尾作品の入り口としても選びやすい一冊。
君が夏を走らせる
16歳の不良少年と1歳の女の子が過ごすひと夏を描いた青春小説です。中学校の国語教師を務めた経歴を持つ著者ならではの、10代の描き方が生きています。
金髪ピアスで学校もサボりがちな高校生・大田が、ひょんなことから先輩の娘である1歳の鈴香を預かることに。初めての育児に奮闘しながら成長していく大田の姿が描かれます。
後述のとおり『あと少し、もう少し』の登場人物が主人公になった作品で、先に『あと少し、もう少し』を読むと人物像が立体的になります。
あと少し、もう少し
駅伝大会に挑む中学生たちを描いた青春小説です。
顧問もメンバーも寄せ集めでバラバラの駅伝部が、それぞれの事情を抱えながら襷をつなぎます。ぶつかり合いながら歩み寄っていく過程が、区間ごとの視点の切り替えで描かれる構成です。
中学生自身が主人公なので、中学生の読者にも入りやすい一冊。『君が夏を走らせる』につながる作品でもあります。
図書館の神様
思い描いていた夢をあきらめた主人公が、赴任先の高校で思いがけない出会いを経験する青春小説です。表題作と「雲行き」の二編が収録されています。第25回吉川英治文学新人賞の候補作になりました。
傷ついた心が少しずつ回復していく過程と、人と人との信頼関係が丁寧に描かれます。
全編を通して文章が柔らかく、読書に慣れていない人にも読み進めやすい作品です。
夜明けのすべて
本屋大賞受賞後の書き下ろしとして、2020年10月に水鈴社から刊行された作品です。2024年に映画化され、ベルリン国際映画祭のフォーラム部門にも出品されました。
PMS(月経前症候群)に悩む美紗と、パニック障害を抱える転職者・山添君。互いの事情を抱えたまま支え合う二人の関係が描かれます。恋愛でも友情でもない距離感が、この作品の核です。
疲れているときや落ち込んでいるときに、静かに寄り添ってくれる一冊です。
優しい音楽
不思議な出会いをテーマにした三篇の短編集です(双葉社)。表題作は2022年1月7日、テレビ東京の新春ドラマスペシャル『優しい音楽〜ティアーズ・イン・ヘヴン 天国のきみへ〜』として放送されました。
駅のホームでの出会いをきっかけに恋人同士になった二人と、彼女の家族との交流を描いた物語。切なくもあたたかい展開が続きます。世間的な「普通」から外れた関係にも、それぞれの事情と思いがあると気づかせてくれる作品です。
どこにでもありそうな「非日常」を穏やかに描いた三篇。もし自分だったら、と考え込んでしまう短編集です。
夏の体温
「出会い」がもたらす「奇跡」を描いた三篇の短編集です。中学1年生の国語教科書(光村図書)に掲載された「花曇りの向こう」が収録されています。
表題作は、夏休みに小児病棟へ入院した小学3年生・瑛介の日々を描いた物語。抱えている鬱憤や不安を、同じく入院中の壮太と過ごす時間が少しずつほどいていきます。同時収録は「魅惑の極悪人ファイル」と「花曇りの向こう」の二篇です(双葉社、2022年3月刊)。
三篇とも読後感が軽く、教科書掲載作も読めるため、小学生・中学生への1冊目として選びやすい短編集です。
『幸福な食卓』や『戸村飯店 青春100連発』のように、食卓や店が物語の中心になる小説が好きなら、心温まる食べ物小説をまとめた記事もあわせて読んでみてください。
監修者の視点:作者買いは「2冊目」で決まる
田中寛大オンライン古書店を運営していた2019年から2022年にかけて、開業から約2年半で8,000冊超の中古本を扱いました。同じ本が繰り返し売れるかどうかは、ジャンルよりも「何度でも読み返される性格を持っているか」で分かれる傾向が見受けられます。
作者買いも同じで、1冊目に選ぶ作品より、2冊目に何を続けるかで読書が定着するかが変わると感じています。瀬尾まいこは作品ごとの独立性が高いので、1冊目は代表作、2冊目は自分に近い年齢の主人公という決め方がしやすい書き手です。
- 瀬尾まいこはどれから読むのがおすすめですか?
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初めてなら『そして、バトンは渡された』です。2019年の第16回本屋大賞で第1位に選ばれた代表作で、映画版(2021年)もあるため内容をつかみやすくなっています。中学生・小学生なら、教科書掲載作を収めた『夏の体温』が入り口として選びやすいでしょう。
- 瀬尾まいこの作品に読む順番はありますか?
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基本的にはありません。ほとんどが独立した物語で、刊行順に読む必要はないためです。例外は『あと少し、もう少し』と『君が夏を走らせる』で、前者に登場する大田が後者の主人公になります。この2作は刊行順に読むほうが人物の変化が分かります。
- 中学生におすすめの瀬尾まいこ作品は?
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『夏の体温』と『あと少し、もう少し』です。『夏の体温』には光村図書の中学1年国語教科書に掲載されている「花曇りの向こう」が収録されています。『あと少し、もう少し』は駅伝に挑む中学生が主人公で、同年代の視点から読めます。
- 瀬尾まいこの代表作はどれですか?
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『そして、バトンは渡された』です。2019年4月、第16回本屋大賞で第1位に選ばれました。ほかに『幸福な食卓』が2005年に第26回吉川英治文学新人賞、『戸村飯店 青春100連発』が2009年に第24回坪田譲治文学賞を受賞しています。
- 瀬尾まいこの映画化作品は何がありますか?
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映画は『幸福な食卓』(2007年)、『天国はまだ遠く』(2008年)、『僕らのごはんは明日で待ってる』(2017年)、『そして、バトンは渡された』(2021年)、『夜明けのすべて』(2024年)の5本です。ドラマは2004年のNHK『七子と七生』と、2022年のテレビ東京『優しい音楽〜ティアーズ・イン・ヘヴン 天国のきみへ〜』があります。
瀬尾まいこは1冊目を目的で決めると迷わない
瀬尾まいこの小説は、家族と学校を舞台にした独立した物語がほとんどです。そのため読む順番に縛られる必要はなく、目的から1冊目を決めるのが近道になります。代表作なら『そして、バトンは渡された』、中学生・小学生なら『夏の体温』、短編から試すなら『卵の緒』。登場人物のつながりを追いたいときだけ、『あと少し、もう少し』→『君が夏を走らせる』の順で読んでみてください。










