夕木春央の『方舟』『十戒』『楽園』は、閉ざされた場所で殺人が起きる「クローズド・サークル」のミステリーです。3作は舞台も主人公も別の独立した作品ですが、読む順番は刊行順の『方舟』→『十戒』→『楽園』がおすすめ。なかでも『方舟』は『十戒』より先に読んでください。
2026年7月に『楽園』が出てから、3作のつながりや読む順番を調べる人が増えています。この記事では、結末や犯人には触れずに、3作の関係と読む順番、あらすじ、大正時代を舞台にした4作を含む全作品の一覧、文庫・電子書籍・Audibleの有無までを整理します。
『方舟』『十戒』『楽園』の読む順番は刊行順
3作を刊行順に並べました。どれも講談社から出ています。文庫の欄は2026年9月時点の状況です。
| 順番 | 作品 | 刊行 | 舞台 | 主人公 | 文庫 |
| 1 | 方舟 | 2022年9月 | 山奥の地下建築「方舟」 | 柊一 | 講談社文庫(2024年8月) |
| 2 | 十戒 | 2023年8月 | 伯父が所有していた島「枝内島」 | 里英 | 講談社文庫(2025年8月) |
| 3 | 楽園 | 2026年7月 | 群馬の山奥にある「楽園」と呼ばれる物件 | 康之 | 未文庫化(単行本のみ) |
講談社は3作を「シリーズ」とは呼んでいません。『十戒』は「『方舟』夕木春央、待望の最新作!」、『楽園』は「『方舟』『十戒』の著者が仕掛ける」という打ち出しで、続編という言葉は使っていません。一方で、小説丸に載った著者インタビュー(2026年8月10日)は『楽園』を「極限状態のクローズド・サークル」の第3弾と紹介し、夕木春央自身も3部作としてひと区切りにする考えを話しています。講談社によると、『方舟』と『十戒』の累計発行部数は100万部を超えました。
方舟は十戒より先に読む
3作のなかで、順番を守りたいのが『方舟』と『十戒』です。2作は舞台も登場人物も別ですが、読んだ人のレビューでは、『方舟』を先に読んでおくほうが『十戒』をより楽しめるという指摘が多く、『方舟』から読むよう勧めるものが目立ちます。どこがつながっているかは、それ自体が『十戒』の読みどころに関わるので、この記事では触れません。
楽園は単体でも読める
『楽園』は舞台も主人公も前2作と重ならないので、ここから読み始めても話は追えます。小説丸のインタビュー記事も、1作だけで楽しめて、前作を読んでいればなお楽しめる作品として紹介しています。前2作とのつながりについては、読んだ人の感想でも見方が分かれています。時間があれば刊行順に、まず新作を読みたいなら『楽園』からでもかまいません。
3作は「脱出の条件」の向きが毎回変わる
3作とも、閉じ込められた人たちに、生き延びるための条件が突きつけられます。その条件の向きが、作品ごとに変わっています。
- 方舟:誰か1人が犠牲になれば脱出できる。犠牲には犯人がなるべきだと考え、犯人探しが始まる
- 十戒:殺人犯が誰かを知ろうとしてはならない
- 楽園:誰か1人を殺さなければ脱出できない
「犯人を探す」から「犯人を知ってはならない」、そして「自分が殺人犯にならなければ出られない」へ。刊行順に読むと、この変化もそのまま味わえます。
『方舟』『十戒』『楽園』のあらすじ【ネタバレなし】
講談社の紹介をもとに、結末や犯人に触れない範囲でまとめます。
『方舟』|地下建築に閉じ込められ、1週間で水没する(2022年)
柊一は、大学時代の友人と従兄とともに、山奥の地下建築「方舟」を訪れます。偶然出会った三人家族とともに過ごしていたところ、地震で扉が岩にふさがれ、地下には水が流れ込み始めます。水没までの猶予はおよそ1週間。そのなかで殺人が起き、誰か1人を犠牲にすれば脱出できる状況で、犯人以外の全員が「犠牲には犯人がなるべきだ」と考えます。
2022年の「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門で1位、『このミステリーがすごい!』2023年版の国内編で4位、本屋大賞では2023年に7位に入りました。2024年8月に講談社文庫になり、オリコンの2026年上半期“本”ランキングでは文庫部門の1位(集計期間内の推定売上20.7万部)になっています。
『十戒』|「殺人犯が誰かを知ろうとしてはならない」島での3日間(2023年)
浪人中の里英は、父とともに、伯父が所有していた枝内島を訪れます。島にリゾートを開くため、関係者9人が集まっての視察でした。その翌朝、不動産会社の社員が殺され、十の戒律が書かれた紙片が見つかります。そこには、殺人犯が誰かを知ろうとしてはならず、守られなければ島に仕掛けられた爆弾が起爆すると書かれていました。里英たちは、犯人を探すことを禁じられたまま3日間を過ごすことになります。
題名は「じっかい」と読みます。2025年8月に講談社文庫になりました。
『楽園』|「殺人犯にならなければ脱出できない」3作目(2026年)
両親から不動産を相続した康之は、恋人の沙織とともに、群馬の山奥で「楽園」と呼ばれている物件を訪れます。切り立った岩壁に囲まれたその場所で、2人は6人の“住人”に捕らえられます。ここから出る条件は、誰か1人を殺すこと。講談社のキャッチコピーは「殺人犯にならなければ脱出できない」です。
2026年7月23日の発売で、講談社のページには「発売前&即重版」とあります。2026年9月時点では単行本(1,980円)と電子書籍で読めます。
夕木春央の全作品一覧【刊行順】
夕木春央の単著は、2026年9月時点で7作です。大正時代を舞台にしたミステリー4作と、現代のクローズド・サークル3作に分かれます。
| 刊行順 | 作品 | 刊行 | 文庫 | 系統 |
| 1 | 絞首商會 | 2019年9月 | 講談社文庫(2023年1月) | 大正ミステリー |
| 2 | サーカスから来た執達吏 | 2021年9月 | 講談社文庫(2023年8月) | 大正ミステリー |
| 3 | 方舟 | 2022年9月 | 講談社文庫(2024年8月) | クローズド・サークル |
| 4 | 時計泥棒と悪人たち | 2023年4月 | 講談社文庫(2026年8月) | 大正ミステリー(連作短編集) |
| 5 | 十戒 | 2023年8月 | 講談社文庫(2025年8月) | クローズド・サークル |
| 6 | サロメの断頭台 | 2024年3月 | 未文庫化 | 大正ミステリー |
| 7 | 楽園 | 2026年7月 | 未文庫化 | クローズド・サークル |
7作とも電子書籍版があり、Audible(オーディブル)では『楽園』を除く6作が聴けます。『楽園』は2027年1月22日の配信予定で、予約を受け付けています(2026年9月時点)。Audibleには30日間の無料体験があります(無料体験後は月額1,500円・2026年9月時点)。
このほか、講談社編のショートショート集『これが最後の仕事になる』と『だから捨ててと言ったのに』に、1編ずつ寄稿しています。
大正時代を舞台にした4作の読む順番とあらすじ
2019年のデビュー作『絞首商會』から続く4作は、大正時代を舞台にしたミステリーです。元泥棒の蓮野が謎を解く作品が中心で、読者のあいだでは「蓮野シリーズ」とも呼ばれています(講談社はこの名前を使っていません)。講談社は『時計泥棒と悪人たち』を「『絞首商會』『サーカスから来た執達吏』にも繋がる連作短編集」と紹介しているので、4作も刊行順に読むのがおすすめです。
『絞首商會』|元泥棒の蓮野が博士の刺殺事件を解くデビュー作(2019年)
大正時代の東京で、秘密結社「絞首商會」との関わりがささやかれていた村上博士が刺殺されます。謎を解くのは、元泥棒の蓮野です。「絞首商会の後継人」の題で第60回メフィスト賞を受賞したデビュー作で、2023年1月に講談社文庫になりました。
『サーカスから来た執達吏』|サーカス出身の少女と子爵家の三女が財宝を探す(2021年)
大正14年、サーカス出身の少女ユリ子と、樺谷子爵家の三女・鞠子が、明治44年の未解決事件にからむ財宝探しに乗り出します。4作のなかでは、蓮野が主人公ではない作品です。2023年8月に講談社文庫になりました。
『時計泥棒と悪人たち』|画家の井口と蓮野の連作短編集(2023年)
画家の井口と元泥棒の蓮野が、いくつもの事件に向き合う連作短編集です。講談社は『絞首商會』『サーカスから来た執達吏』にも繋がる作品と紹介しています。単行本は2023年4月、講談社文庫は2026年8月12日に出ました。
『サロメの断頭台』|盗作事件と戯曲『サロメ』に擬えた連続殺人(2024年)
油絵画家の井口と元泥棒の蓮野が、盗作事件と、戯曲『サロメ』に擬えた連続殺人に巻き込まれます。第25回本格ミステリ大賞(小説部門)の候補作です。2026年9月時点では単行本と電子書籍で読めます。
夕木春央の最新刊『楽園』と今後の予定【2026年9月時点】
2026年9月時点の最新刊は、7月23日に出た『楽園』です。文庫化の予定は発表されていません。『方舟』と『十戒』は、どちらも単行本からおよそ2年後に講談社文庫になりました。
夕木春央は小説丸のインタビューで、『方舟』『十戒』『楽園』について「一旦ここで、3部作として終了かなと思います」と話しています。映像化の発表はありませんが、『方舟』と『十戒』はガンガンONLINE(スクウェア・エニックス)でコミカライズされ、どちらも全3巻で完結しています(作画は悠木星人)。
編集長のひとこと:『楽園』の結末を調べる人は、順番を調べる人の約7倍。調べる前に『方舟』を開いてほしい
田中寛大月間検索数(推計)を見ると、「楽園 夕木春央」は2026年3月まで月10回以下でしたが、講談社が発売日を告知した4月に320回、発売月の7月に12,100回、8月には14,800回まで増えました。「方舟 十戒 楽園」も、6月の90回から8月は1,300回になっています。『楽園』の発売をきっかけに、3作をまとめて読もうとする人が一気に増えました。
気になったのは、8月の「楽園 夕木春央 ネタバレ」が1,600回と、「夕木春央 読む順番」(210回)の約7倍あったことです。「方舟 十戒 つながり」も、新刊とは関係なく毎月400〜900回ほど調べられています。3作とも結末の驚きが大きい作品なので、つながりや結末を先に知ってしまうと、読む楽しみの多くがなくなります。順番を『方舟』→『十戒』→『楽園』と決めたら、それ以上は調べずに読み始めてください。
夕木春央の『方舟』『十戒』『楽園』についてよくある質問
- 『方舟』『十戒』『楽園』はシリーズですか?
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講談社は「シリーズ」とは呼んでおらず、3作は舞台も主人公も別の独立した作品です。ただ、著者インタビューでは『楽園』が「極限状態のクローズド・サークル」の3作目として紹介され、夕木春央も3部作としてひと区切りにする考えを話しています。
- 『方舟』と『十戒』はどっちを先に読むべきですか?
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刊行順どおり『方舟』が先です。レビューでは『方舟』を先に読んでおくほうが『十戒』をより楽しめるという指摘が多いので、逆の順番はおすすめしません。
- 『楽園』から読んでも楽しめますか?
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楽しめます。舞台も登場人物も前2作とは別なので、話は単体で追えます。時間があれば『方舟』『十戒』を先に読むと、3作で「脱出の条件」がどう変わっていくかまで味わえます。
- 『十戒』は何と読みますか?
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「じっかい」と読みます。講談社も「ジッカイ」と表記しています。
- 『楽園』は文庫化されていますか?
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2026年9月時点では単行本(1,980円)と電子書籍だけで、文庫化の予定は発表されていません。『方舟』と『十戒』は、単行本からおよそ2年後に文庫になっています。
- 『方舟』は映画化されていますか?
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2026年9月時点で、映像化の発表はありません。『方舟』と『十戒』にはコミカライズ版(作画:悠木星人、ガンガンONLINE)があり、どちらも全3巻で完結しています。
- 夕木春央のデビュー作は何ですか?
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2019年に出た『絞首商會』です。「絞首商会の後継人」の題で第60回メフィスト賞を受賞し、改題して刊行されました。大正時代の東京を舞台にしたミステリーです。
まとめ|夕木春央の3作は『方舟』から刊行順に。順番を決めたら調べずに読み始める
- 読む順番:方舟 → 十戒 → 楽園の刊行順
- 外せない順番:『方舟』を『十戒』より先に読む
- 楽園:単体でも読めるが、前2作の後だと「脱出の条件」の変化まで楽しめる
- 大正ミステリー:絞首商會 → サーカスから来た執達吏 → 時計泥棒と悪人たち → サロメの断頭台
- 文庫:『楽園』と『サロメの断頭台』は未文庫化(2026年9月時点)
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