「読書の秋」の由来は、唐の文人・韓愈(かんゆ/768〜824年)が816年に詠んだ漢詩『符読書城南』の一節「燈火稍く親しむべし」にさかのぼります。これが日本語の言い回しとして広く知られるようになったきっかけは、夏目漱石が1908年の小説『三四郎』で「燈火親しむべし」という漢語を作中に登場させたことだとされています。
スポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋と並ぶ「読書の秋」ですが、その言葉の背景には1200年前の漢詩と、明治の小説という2つの出どころがあります。この記事では由来の3説を整理し、あわせて秋の恒例行事である読書週間(毎年10月27日〜11月9日)についても解説します。
- 由来の中心は、唐の韓愈が816年に詠んだ漢詩『符読書城南』
- 日本での定着に効いたのは、夏目漱石『三四郎』(1908年)の一文
- 読書週間は1947年11月17日に第1回。第2回から10月27日〜11月9日に
- 10月27日は「文字・活字文化の日」
読書の秋とは?読書の秋の由来(説)3選
読書は1年中どの季節でも、どの時間でも楽しめますよね。
本を読むときは、静かな環境で集中しながら自分のペースで読めるに越したことはないでしょう。
「読書の秋」は辞書の中では読書に適した季節と定義されています。
秋は涼しく夜が長いため、読書をする環境が整えやすいです。
この感覚や認識は、現代に始まったものではありません。
読書は、はるか昔から秋に行うものだと考えられていました。
諸説ありますが、その由来を3つ紹介します。
| 説 | 時期 | 内容 |
| ①漢詩に由来 | 816年(唐) | 韓愈『符読書城南』の「燈火稍く親しむべし」が原典 |
| ②気候が合っている | — | 涼しく湿度が下がり、日没が早く屋内で過ごす時間が増える |
| ③夏目漱石が広めた | 1908年 | 『三四郎』で「燈火親しむべし」を作中に登場させた |
古代中国の漢詩に由来する
由来の1つは、古代中国の漢詩に起源します。
唐の文人・韓愈(768〜824年)が元和11年=816年に詠んだ「符読書城南」という漢詩の中に、読書の秋の原典があります。息子の韓符に、都の南で学問に励むよう説いた詩です。
「符読書城南」は学問の大切さを詠った漢詩で、読書の秋に言及しているのが以下の一節です。
「時秋積雨霽、新涼入郊墟。燈火稍可親、簡編可卷舒。」
現代語に置き換えると、「秋になり長雨が終わって空が晴れると、丘に涼しさが戻ってきている。ようやく夜の灯りの下で読書に興じられる。」と訳せます。
夏の夜は大変暑く、読書もできないほどだったのでしょう。
「燈火稍く親しむべし(灯火ようやく親しむべし)」の部分が、日本では「灯火親しむべし」という成句として定着しました。
読書の秋という言い方の出どころは、この漢詩だと考えられています。
過ごしやすい気候が読書に合っている
「符読書城南」で詠まれているとおり、秋は日本でも過ごしやすい気候になります。
夏より涼しくなり、夜長という言葉通り陽が短い季節です。
湿度も下がり1日を通して気持ちよく過ごせる日が増加します。
スポーツのように外で体を動かす過ごし方もあれば、静かに集中して本を読む過ごし方も選びやすくなる季節です。
高温多湿では屋内でも屋外でも不快に感じ、読書の妨げになります。
秋の気候は読書にぴったりといえるでしょう。
夏目漱石が小説に記載し浸透した
では古代中国の漢詩が現代日本でどのように浸透していったのでしょうか。
これにはきっかけがあります。
夏目漱石が1908年に朝日新聞で連載した小説『三四郎』に、次の一文があります。
「そのうち与次郎の尻が次第におちついてきて、燈火親しむべしなどという漢語さえ借用してうれしがるようになった」
正確には、漱石が韓愈の漢詩そのものを引用しているわけではありません。登場人物の与次郎が「燈火親しむべし」という成句を得意げに借用する、という書き方です。当時すでにこの言葉が知識人のあいだで通じる決まり文句だったことがうかがえます。
この一文をきっかけに、秋と読書を結びつける言い回しが一般にも広く知られるようになったといわれています。
読書の秋に合わせて実施される読書週間とは?
読書週間は、戦後間もない1947年(昭和22年)11月17日に第1回が開催された、日本の読書行事です。
主催団体である読書推進運動協議会によると、「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」という決意のもと、出版社・取次会社・書店と公共図書館、新聞・放送のマスコミ機関が加わって始まりました。
第1回の反響が大きかったため、第2回からは10月27日〜11月9日(文化の日を中心とした2週間)と定められ、現在まで同じ期間で続いています。1週間ではなく2週間なのは、この経緯によるものです。
なお、読書週間の初日にあたる10月27日は「文字・活字文化の日」に制定されています。
当初は「読書週間」のたびに実行委員会を作っていましたが、年間を通じて読書運動を進める組織として、1959年(昭和34年)11月に読書推進運動協議会(読進協)が設立されました。日本書籍出版協会・日本雑誌協会・教科書協会・日本出版取次協会・日本書店商業組合連合会・日本図書館協会・全国学校図書館協議会の7団体によるものです。
読書週間には毎年テーマとなる標語が選ばれます。2026年は第80回で、標語は「静かだけど、冒険中。」です(読書推進運動協議会の発表による)。
読書週間中は、書店や図書館で読書を推進するイベントやキャンペーンが活性化します。
店員がおすすめの一冊を紹介するイベントや、読書を促すようなポスターが多数貼り出されるなどさまざま。
本に関するグッズプレゼントが実施されることもあるため、本好きの人には魅力的な期間といえるでしょう。
監修者の視点:読書の秋は「季節」ではなく「環境」の話
田中寛大読書の秋の由来をたどると、韓愈の詩が言っているのは「涼しくなったから灯りの下で本が読める」という、かなり物理的な話です。大学院で学術書や古い文献を読んでいたころも、暑さで集中が切れる時期は明らかに進みが落ちました。
裏を返せば、秋を待たなくても、涼しくて明るくて静かな時間さえ作れば同じ条件は再現できます。読書の秋は季節の号令というより、環境を整えれば本が読めるという経験則の言い換えだと考えています。10月から読み始めようと決めている本があるなら、8月のうちに手元に置いておくほうが確実です。
秋に読む一冊を探している方は「一度は読むべきおすすめの本10選!本を読むべき理由も解説」、読書そのものの面白さを言葉にしたい方は「読書が楽しい理由とは?読書好きが徹底分析!」もあわせてご覧ください。
読書の秋に関するよくある質問(FAQ)
読書の秋の由来や、関連する行事についてよく寄せられる疑問をまとめました。秋の夜長を楽しむための参考にしてみてください。
- 現在の「読書週間」は具体的にいつからいつまで実施されていますか?
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毎年10月27日から11月9日までの2週間です。
1947年の第1回は11月17日からの1週間でしたが、反響が大きかったことから第2回以降は文化の日(11月3日)を中心とした2週間に改められ、現在まで同じ期間で続いています(読書推進運動協議会)。この期間中は全国の図書館や書店でイベントが開催されます。
- 秋が読書に向いているといわれるのはなぜですか?
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気温と湿度が下がり、日没が早くなって屋内で静かに過ごす時間が増えるため、と説明されるのが一般的です。
これは韓愈の漢詩「符読書城南」が詠んでいる内容とも一致します。ただし「気温が何度なら集中できる」といった数値で定説となっているものは見あたりません。秋が向いているというより、涼しく静かな環境が読書に向いている、と捉えるほうが実態に近いといえます。
- 「灯火親しむべし」とはどういう意味ですか?
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「秋になって涼しくなったので、灯りの下で本を読むのによい季節になった」という意味です。
唐の文人・韓愈が816年に詠んだ漢詩「符読書城南」の「燈火稍く親しむべし」に由来します。夏目漱石が1908年の小説『三四郎』で登場人物にこの言葉を使わせたことが、一般に知られるきっかけになったといわれています。
- 「読書の秋」はいつからいつまでを指しますか?
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明確な定義はありませんが、行事としては読書週間の10月27日〜11月9日が目安になります。
「読書の秋」は暦や法令で期間が決められた言葉ではなく、涼しくなって本を読みやすくなる時期を指す慣用表現です。目安がほしい場合は、読書週間の2週間や、暦の上の秋(立秋から立冬まで)を基準に考えるとわかりやすくなります。
- 「読書の秋」と「食欲の秋」「芸術の秋」の由来は同じですか?
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違います。読書の秋だけが、唐の漢詩という具体的な出典をもっています。
食欲の秋は収穫期にあたること、芸術の秋は秋に美術展や文化行事が集中することが背景といわれ、いずれも特定の作品を出典とするものではありません。読書の秋は韓愈の「符読書城南」と夏目漱石『三四郎』という2つの出どころをたどれる点が特徴です。
読書の秋は本を楽しもう
読書の秋の由来は、816年の漢詩「符読書城南」と、1908年の小説『三四郎』の2つにたどれます。行事としての読書週間は毎年10月27日から11月9日までの2週間です。
普段本を読まない人も、読書週間中だけでも本を読むと魅力に気づくかもしれません。
秋という季節を改めて感じるきっかけともなります。
古人から受け継がれる「読書の秋」を自分に合う方法で楽しんでみてください。











