平野啓一郎のおすすめ作品7選|作風の変化と代表作を刊行年つきで紹介

平野啓一郎のおすすめ作品7選!幅広いジャンルから人気作を紹介
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平野啓一郎の代表作は、第2回渡辺淳一文学賞を受けた恋愛長編『マチネの終わりに』(2016年)と、第70回読売文学賞を受けた『ある男』(2018年)です。芥川賞デビュー作は23歳で書いた『日蝕』(1998年)で、受賞は1999年の第120回、当時の最年少受賞でした。

恋愛小説・近未来SF・社会派長編・評論と、作品ごとにジャンルが変わる作家です。この記事では平野啓一郎のおすすめ作品7冊を、刊行年とジャンル、受賞歴つきで紹介します。

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目次

平野啓一郎とは|23歳で芥川賞を受けた1975年生まれの小説家

平野啓一郎とは?

平野啓一郎(ひらの けいいちろう)は、1975年6月22日生まれ・愛知県蒲郡市出身の小説家です。2歳から18歳までを福岡県北九州市で過ごし、京都大学法学部に進みました。在学中の1998年に『日蝕』を文芸誌『新潮』へ投稿して掲載され、翌1999年に第120回芥川龍之介賞を当時最年少の23歳で受賞しています。

デビュー後は同じ作風にとどまらず、恋愛小説、近未来SF、社会派長編、評論と書く対象を変え続けてきました。「分人(ぶんじん)」という人格のとらえ方を提唱していることでも知られ、小説だけでなく評論やエッセイでもこの考え方が下敷きになっています。

平野啓一郎の作品を選ぶ2つの基準

平野啓一郎作品の選び方

作品ごとに文体もテーマも変わるため、「1冊読んで合わなかったから作家ごと合わない」とは言いにくい書き手です。選ぶ基準は次の2つに絞れます。

基準1:受賞作から選ぶ

読む順番に迷ったら、受賞作から入るのが確実です。主要な受賞歴は次のとおりです。

対象作
1999年第120回 芥川龍之介賞『日蝕』
2009年芸術選奨文部科学大臣新人賞『決壊』
2009年第19回 Bunkamuraドゥマゴ文学賞『ドーン』
2017年第2回 渡辺淳一文学賞『マチネの終わりに』
2018年度第70回 読売文学賞『ある男』
2023年第22回 小林秀雄賞『三島由紀夫論』

基準2:ジャンルから選ぶ

平野作品は初期の擬古文体と、2010年代以降の読みやすい現代文体で印象がかなり違います。ジャンル別の目安は次のとおりです。

  • 恋愛小説…『マチネの終わりに』。文体がいちばん平易で入りやすい
  • ミステリー寄りの長編…『ある男』。他人の人生をたどる構成で先が気になる
  • 近未来SF・社会派…『ドーン』『決壊』。テーマは重いが読み応えがある
  • 評論・新書…『三島由紀夫論』『「カッコいい」とは何か』。小説より論の骨格がはっきりしている
  • 初期の耽美な文体…『日蝕 一月物語』。難度は高いので2冊目以降に回してよい

評論から入るのも手です。批評や思想の本を読み慣れていないなら、哲学本のおすすめで入門書に触れてから『三島由紀夫論』に進むと、議論の前提がつかみやすくなります。

平野啓一郎のおすすめ作品7選

平野啓一郎のおすすめ作品

小説5冊と評論2冊を、ジャンルを散らして選びました。まず一覧で刊行年とジャンルを確認してください。

作品刊行年ジャンル
『マチネの終わりに』2016年恋愛小説(2019年映画公開)
『日蝕 一月物語』1998年・1999年デビュー作+中編(芥川賞受賞作を収録)
『ある男』2018年ミステリー寄りの長編(2022年映画公開)
『三島由紀夫論』2023年評論
『ドーン』2009年近未来SF
『決壊』2008年社会派長編
『「カッコいい」とは何か』2019年評論・新書

『マチネの終わりに』(2016年)

『マチネの終わりに』は第2回渡辺淳一文学賞を受賞した恋愛長編で、平野啓一郎の作品でもっとも広く読まれている1冊です。2019年11月1日には福山雅治・石田ゆり子の主演で映画が公開されました。

天才クラシックギタリストの蒔野聡史と、通信社の記者・小峰洋子が出会い、強く惹かれ合います。ただし洋子には婚約者がおり、蒔野は演奏家として深刻なスランプに入っていきます。東京・パリ・ニューヨークと舞台を移しながら、40代の二人がすれ違い続ける話です。

文体が平易で会話も多く、平野作品のなかでは断然読みやすい部類です。最初の1冊にこれを勧めるのは、難しさではなく物語で引っ張ってくれるからです。

『日蝕 一月物語』(1998年・1999年)

『日蝕 一月物語』は、デビュー作『日蝕』と次作の中編『一月物語』を1冊にまとめた本です。『日蝕』は1998年に文芸誌『新潮』に掲載され、翌1999年に第120回芥川龍之介賞を受賞しました。執筆時、著者は23歳の大学生でした。

『日蝕』の舞台は15世紀末のフランス。異端審問の時代に、南仏の村で神学僧が目にした出来事を、擬古文に近い硬質な文体で描きます。『一月物語』は明治30年の日本が舞台で、自由民権運動に挫折した青年が蝶に導かれ、夢と現実の境目に迷い込む幻想譚です。

発表当時は「三島由紀夫の再来」と評されました。漢語の多い文体なので読み進めるのに体力が要りますが、後年の平易な作品との落差を知るには外せない1冊です。

『ある男』(2018年)

『ある男』は第70回読売文学賞(2018年度)を受賞した長編です。2022年11月18日に妻夫木聡・安藤サクラ・窪田正孝の出演で映画が公開され、第46回日本アカデミー賞で最優秀作品賞に選ばれました。

離婚して故郷に戻った里枝は、再婚した夫「大祐」を事故で亡くします。ところが法要に現れた大祐の兄が、遺影の人物は弟ではないと言い出します。里枝から依頼を受けた弁護士の城戸が、夫が名乗っていた名前の持ち主と、戸籍を交換した相手の人生をたどっていきます。

戸籍・出自・差別といった重い主題を扱いながら、正体を追う推理小説の形で進むので途中で止まりません。ミステリーが好きな人にも勧めやすい一作です。

『三島由紀夫論』(2023年)

『三島由紀夫論』は第22回小林秀雄賞を受賞した評論で、構想から刊行まで20年以上をかけた672ページの評論です。

『仮面の告白』『金閣寺』『英霊の聲』『豊饒の海』という4作を軸に、三島由紀夫の思想と作品を四部構成で読み解きます。三島作品を1冊も読んでいなくても、引用が丁寧なので議論を追うことはできます。

672ページの大著で、通読には時間がかかります。関心のある章から拾い読みしても成立する構成なので、まず気になる作品を扱った部から開いてみてください。

『ドーン』(2009年)

『ドーン』は第19回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した近未来SF長編です。

2036年、人類初の有人火星探査から帰還した宇宙飛行士の佐野明日人は英雄として迎えられます。しかし航行中に起きたある出来事が公になり、アメリカ大統領選を揺るがすスキャンダルへ発展します。

監視社会や「分人」という人格のとらえ方が正面から扱われ、平野啓一郎の思想がいちばん見えやすい小説です。SFとして読んでも、現在の社会の話として読んでも成立します。

『決壊』(2008年)

『決壊』は、インターネットと家族の崩壊を扱った上下巻の長編です。翌2009年に芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました。

会社員の沢野崇と、弟の良介。良介は匿名の日記に家族への不満を書き続け、兄弟の関係は静かに悪化していきます。やがて良介が出張先から姿を消し、遺体で発見されたことで、事件は思わぬ方向へ広がります。

描写がかなり厳しく、読後感も軽くありません。平野作品のなかでもっとも重い1冊なので、体調のよいときに読むことを勧めます。

『「カッコいい」とは何か』(2019年)

『「カッコいい」とは何か』は、日常語の「カッコいい」を手がかりに戦後日本の文化と価値観を読み解いた評論です。

ジャズ、映画、文学、ファッションといった具体例から、「カッコいい」という感覚がいつ生まれ、何を支えてきたのかを追います。新書なので分量は抑えめで、平野啓一郎の評論を初めて読む人にも向いています。

小説より論旨がはっきりしているぶん、要点を拾いやすい1冊です。同じように読み物として楽しめる評論を探しているなら、教養が身につくおすすめの本もあわせて参考にしてください。

平野啓一郎を初めて読むなら『マチネの終わりに』から

刊行順に読む必要はありません。目的別の入口は次の3つです。

  1. 物語として楽しみたい…『マチネの終わりに』(2016年)。文体が平易で会話が多い
  2. 先が気になる話がいい…『ある男』(2018年)。他人の人生をたどる構成で最後まで運んでくれる
  3. 芥川賞受賞作から入りたい…『日蝕 一月物語』(1998年・1999年)。ただし擬古文に近い文体なので体力が要る

初期作品から刊行順に読むと、文体が硬質なまま数冊続くため途中で止まりやすくなります。2010年代の小説を1冊読んでから初期に戻る順番のほうが、作風の変化そのものを楽しめます。

監修者の視点:分厚い評論は読む場所を先に決める

田中寛大

大学院で社会学の学術書を読み続けた経験から言うと、『三島由紀夫論』のような700ページ近い評論は、通読を前提にすると高い確率で止まります。最初から順に読む本ではなく、関心のある章から開いて構いません。

同じ理由で、この種の本は持ち歩かずに読む場所を1か所決めてしまうほうが進みます。机に置いて1日15分ずつでも、章単位で区切れば数か月で読み終えられる分量です。

平野啓一郎についてよくある質問

平野啓一郎の代表作は何ですか?

『マチネの終わりに』(2016年)と『ある男』(2018年)です。前者は第2回渡辺淳一文学賞、後者は第70回読売文学賞を受賞し、どちらも映画化されています。芥川賞受賞作は1998年発表のデビュー作『日蝕』です。

平野啓一郎を初めて読むならどれがおすすめですか?

『マチネの終わりに』(2016年)です。平野作品のなかで文体がもっとも平易で、40代の恋愛という一本の筋で最後まで読ませます。ミステリーが好きなら『ある男』(2018年)から入るのも向いています。

平野啓一郎はいつ芥川賞を受賞しましたか?

1999年、『日蝕』で第120回芥川龍之介賞を受賞しました。京都大学法学部在学中で、当時23歳。受賞時点での最年少記録でした。

平野啓一郎の作風はどんな感じですか?

作品ごとに大きく変わります。デビュー作『日蝕』は漢語の多い擬古文に近い文体、2010年代以降の『マチネの終わりに』『ある男』は会話中心の平易な文体です。テーマも恋愛・近未来SF・社会派・評論と幅があり、人格を複数の面でとらえる「分人」の考え方が通底しています。

平野啓一郎の作品で映像化されたものはありますか?

2作あります。『マチネの終わりに』が2019年11月1日、『ある男』が2022年11月18日に映画公開されました。『ある男』は第46回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞しています。

平野啓一郎の新刊・最近の作品は何ですか?

2026年9月時点で公式サイトに掲載されている最新の小説は『富士山』(2024年10月・新潮社)です。その前が評論の『三島由紀夫論』(2023年)、小説では『本心』(2021年)が続きます。

ジャンルと受賞歴から平野啓一郎の1冊を選ぶ

平野啓一郎は、23歳の芥川賞デビューから四半世紀のあいだに、恋愛小説・近未来SF・社会派長編・評論を行き来してきた作家です。1冊が合わなくてもジャンルを変えれば読み口はまるで変わります。受賞歴の表とジャンル一覧を見比べて、いま読みたい系統から選んでみてください。

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