『このミステリーがすごい!』大賞は、宝島社が2002年に創設した新人ミステリー作家の公募賞です。大賞の賞金は1,200万円、文庫グランプリは200万円。海堂尊・中山七里・新川帆立といった作家がここから出ています。
最新の第24回(2025年)大賞は、犬丸幸平『最後の皇帝と謎解きを』が受賞しました。この記事では第1回から第24回までの大賞受賞作一覧と、そのなかから読んでおきたい8作品を紹介します。
『このミステリーがすごい!』大賞とは

『このミステリーがすごい!』大賞は、2002年に創設された新人作家のための文学賞です。宝島社が主催しており、ミステリーやエンターテインメント作品の発掘・育成を目的としています。純粋なミステリーだけでなく、ホラーやSF要素を含んだ作品も対象としている点が特徴です。
大賞の賞金は1200万円と高額で、文庫グランプリの賞金も200万円と魅力的です。毎年多くの応募作品の中から、厳正な審査を経て受賞作が選ばれています。
『このミス』大賞の歴代受賞作一覧(第1回〜第24回)
歴代の大賞受賞作を回・発表年つきで並べると次のとおりです。第8回は2作が同時に受賞しています。
| 回 | 発表年 | 受賞作 | 著者 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 2002年 | 四日間の奇蹟 | 浅倉卓弥 |
| 第2回 | 2003年 | パーフェクト・プラン | 柳原慧 |
| 第3回 | 2004年 | 果てしなき渇き | 深町秋生 |
| 第4回 | 2005年 | チーム・バチスタの栄光 | 海堂尊 |
| 第5回 | 2006年 | ブレイクスルー・トライアル | 伊園旬 |
| 第6回 | 2007年 | 仔羊の巣(ビストロ・コウタシリーズ) | 拓未司 |
| 第7回 | 2008年 | 屋上ミサイル | 山下貴光 |
| 第8回 | 2009年 | トギオ/さよならドビュッシー(2作受賞) | 太朗想史郎/中山七里 |
| 第9回 | 2010年 | 完全なる首長竜の日 | 乾緑郎 |
| 第10回 | 2011年 | 弁護士探偵物語 天使の分け前 | 法坂一広 |
| 第11回 | 2012年 | 生存者ゼロ | 安生正 |
| 第12回 | 2013年 | 警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官 | 梶永正史 |
| 第13回 | 2014年 | 女王はかえらない | 降田天 |
| 第14回 | 2015年 | 神の値段 | 一色さゆり |
| 第15回 | 2016年 | がん消滅の罠 完全寛解の謎 | 岩木一麻 |
| 第16回 | 2017年 | オーパーツ 死を招く至宝 | 蒼井碧 |
| 第17回 | 2018年 | 怪物の木こり | 倉井眉介 |
| 第18回 | 2019年 | 紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 | 歌田年 |
| 第19回 | 2020年 | 元彼の遺言状 | 新川帆立 |
| 第20回 | 2021年 | 特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来 | 南原詠 |
| 第21回 | 2022年 | 名探偵のままでいて | 小西マサテル |
| 第22回 | 2023年 | ファラオの密室 | 白川尚史 |
| 第23回 | 2024年 | 謎の香りはパン屋から | 土屋うさぎ |
| 第24回 | 2025年 | 最後の皇帝と謎解きを | 犬丸幸平 |
第24回の『最後の皇帝と謎解きを』は2026年1月に刊行されました。受賞作は原則として翌年1月ごろに宝島社から刊行され、多くが宝島社文庫に収録されています。
『このミス』大賞の魅力や楽しみ方

『このミステリーがすごい!』大賞(通称『このミス』大賞)の魅力は、新人作家の斬新なアイデアと、エンターテインメント性の高い作品に出会えることです。受賞作品は、ミステリーの枠を超えた多様なジャンルの要素を含んでいることが多く、ホラーやSF、ときには恋愛要素なども楽しめます。
新人作家の成長を見守り、お気に入りの作家を見つけるのも醍醐味の一つです。また、過去の受賞作品を遡って読むことで、ミステリー小説のトレンドや変遷を感じ取れるでしょう。
『このミス』大賞おすすめ受賞作品8選

『このミス』大賞受賞作品の中から、読んでおきたいおすすめ作品8つを紹介します。
『チーム・バチスタの栄光』海堂尊|第4回大賞
第4回(2005年)の大賞受賞作で、医療ミステリーの代表格として知られています。病院を舞台に、手術中の不可解な死亡事故の真相に迫るストーリーが展開。医療現場の実態と緻密な推理が絶妙に絡み合い、読者を引き込みます。
海堂尊は同じ舞台・同じ登場人物の作品が多く、刊行順に読むと関係がつかみやすくなります。シリーズごとの順番は海堂尊の読む順番とおすすめ小説8選|シリーズ別の刊行順一覧にまとめています。
『さよならドビュッシー』中山七里|第8回大賞
中山七里のデビュー作で、第8回(2009年)の大賞受賞作です。この回は太朗想史郎『トギオ』とあわせて2作が受賞しました。ピアニストを目指す少女・遥が、火事で家族を失いながらも夢を追う中で、不可解な事件に巻き込まれていきます。音楽と推理が見事に融合し、遥の音楽の才能が事件解決の鍵となる点が魅力です。映画化・ドラマ化もされ、ミステリー初心者にも親しみやすい作品となっています。
『生存者ゼロ』安生正|第11回大賞
第11回大賞を受賞した作品です。北海道根室半島沖の石油掘削基地で全職員が死亡する事件から始まり、陸上自衛官の廻田と感染症学者の富樫が真相究明に挑みます。未知の感染症の脅威と政府の隠蔽工作が絡み合う中、北海道本島でも同様の事件が発生。壮大なスケールで描かれるパニック・スリラーは、読者を緊張感溢れる展開に引き込みます。人類の存亡をかけた闘いを通じて、現代社会の脆弱性と自然の猛威を鋭く描き出した作品です。
『元彼の遺言状』新川帆立|第19回大賞
新川帆立のデビュー作で、第19回大賞受賞作品です。物語は、大手製薬会社の御曹司である森川栄治が「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という奇妙な遺言を残して亡くなったことから始まります。元彼の遺産を狙う敏腕女性弁護士・剣持麗子が、依頼人を「犯人」に仕立て上げようと奔走する様子が描かれています。新川帆立自身が弁護士としての経験を持っているので、リアリティのある法廷シーンも魅力ですよ。
『四日間の奇蹟』浅倉卓弥|第1回受賞作
第1回(2002年)の受賞作です。ピアニストの道を絶たれた如月敬輔が、サヴァン症候群でピアノの才能を持つ少女・千織を引き取り、各地で演奏して回る物語です。療養所での出来事を通して、人生の再生と希望が描かれます。2003年1月に宝島社から刊行され、累計127万部を記録。2005年に映画化されました(主演・吉岡秀隆、石田ゆり子)。
『ファラオの密室』白川尚史|第22回大賞
第22回大賞受賞作品です。紀元前1300年代の古代エジプトを舞台に、ミイラとなった神官セティが主人公で、セティは3日間だけ現世に蘇り、自身の死の謎と先王のミイラ消失事件を解明しようとします。古代エジプトの信仰を背景に、密室トリックや不可能犯罪などの本格ミステリー要素を巧みに織り交ぜているのが特徴です。歴史ものでありながら、読みやすい描写と斬新な設定で、エンターテインメント性の高い作品となっています。
『怪物の木こり』倉井眉介|第17回大賞
第17回大賞を受賞し、2023年に映画化された作品です。物語は、絵本に登場する怪物の仮面を被った殺人鬼による連続猟奇殺人事件を軸に展開します。次の標的となった弁護士の二宮彰が、実はサイコパスであることが明かされ、殺人鬼との対決を通じて驚くべき真相に迫ります。閉鎖的な山村社会を舞台に、過去の罪と向き合う人間の姿を描き、重厚な雰囲気と鋭い社会批評が特徴的な作品です。
『謎の香りはパン屋から』土屋うさぎ|第23回大賞
第23回大賞受賞作品であるこちらは、大阪府豊中市のパン屋「ノスティモ」を舞台とした日常の謎を描いた連作ミステリーです。主人公の市倉小春は、大学一年生で漫画家志望のアルバイト店員。パン屋で起こるさまざまな謎を、パンにまつわる手がかりを元に解決していきます。焼きたてのパンの香りが漂う中、クロワッサンやフランスパン、シナモンロールなど、各章のタイトルにもパンが登場し、読者を楽しませる工夫が施されています。
編集長のひとこと:新人賞の受賞作は文庫化まで待つ手もある
田中寛大『このミス』大賞の受賞作は、単行本ではなく最初から宝島社文庫で出る作品が多いのが特徴です。新人賞の受賞作を追いかけるうえでは、1冊あたりの負担が軽いというのは実務的に効きます。
そのうえで、新人賞は当たり外れの幅が大きい賞でもあります。まずは映像化された『チーム・バチスタの栄光』『怪物の木こり』のように、受賞後に読者がついた作品から入るほうが失敗が少ないと考えています。気に入った作家が見つかったら、その作家のデビュー後の作品を追う。この順番が結局いちばん早いです。
『このミステリーがすごい!』大賞についてよくある質問
- 『このミステリーがすごい!』大賞とはどんな賞ですか?
-
宝島社が2002年に創設した、新人ミステリー作家の公募賞です。大賞の賞金は1,200万円、文庫グランプリは200万円。純粋な本格ミステリーに限らず、ホラーやSF、医療や法律を題材にしたエンターテインメント作品も対象になります。受賞作は翌年1月ごろに刊行されるのが通例です。
- 『このミス』大賞と『このミステリーがすごい!』のランキングは同じものですか?
-
別のものです。『このミステリーがすごい!』は宝島社が毎年刊行しているミステリーのランキング本(ムック)で、その年に出た作品の国内編・海外編ベスト10などを発表します。一方『このミステリーがすごい!』大賞は、未発表の作品を公募して新人を選ぶ文学賞です。名前は共通していますが、仕組みが異なります。
- 最新の受賞作は何ですか?
-
第24回(2025年)の大賞は、犬丸幸平『最後の皇帝と謎解きを』です。2026年1月に宝島社から刊行されました。前年の第23回は土屋うさぎ『謎の香りはパン屋から』、第22回は白川尚史『ファラオの密室』が受賞しています。
- この賞の受賞作でどれから読むのがおすすめですか?
-
映像化された作品から入るのが確実です。『チーム・バチスタの栄光』(第4回)は映画・ドラマ化、『怪物の木こり』(第17回)は2023年に映画化、『さよならドビュッシー』(第8回)も映画・ドラマ化されています。話の骨格を知ってから読めるため、新人賞の受賞作でも外しにくくなります。
- この賞から出た有名な作家は誰ですか?
-
海堂尊(第4回『チーム・バチスタの栄光』)、中山七里(第8回『さよならドビュッシー』)、新川帆立(第19回『元彼の遺言状』)が代表的です。いずれも受賞後に多くの作品を発表し、映像化された作品も持っています。新人賞としての実績が積み上がっている賞だといえます。
『このミステリーがすごい!』大賞の世界を楽しもう
『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作品には、従来のミステリーの枠にとらわれない斬新なアイデアと、高いエンターテインメント性を兼ね備えた作品が多くあります。これらを読むことで、ミステリー小説の奥深さと多様性を体感することができるでしょう。
また、この賞は新人作家の登竜門としても機能しています。受賞をきっかけに活躍の場を広げる作家も多く、読者にとっては新たな才能との出会いの場となっています。毎年の受賞作品に注目することで、ミステリー界の最新トレンドを把握することもできます。この記事で紹介した作品を入り口に、魅力的なミステリーの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
時代を超えて愛される日本の大御所ミステリー作家、赤川次郎おすすめについては、下記の記事で詳しく解説しています。











